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End Time
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「おーい、愛ちゃん。」
また不法侵入してきた探偵は朝が明ける前に葉星のアパートにやってきて、眠り続ける愛の肩を揺らす。
健吾「起きてー。あいつ、時間通りじゃないと契約破棄するって言ってるからお願いっ。」
と、探偵は愛の体を無理矢理起こし、頬をペチペチ軽く叩くと愛のまぶたがゆっくりと開く。
愛「…あれ?湊さん?」
健吾「着替えて。葉星 結心のお願いで連れて行かないといけない所があるんだ。」
そう言って探偵は近くのタンスから葉星のスウェットと愛のチェックのミニスカートを取り出して雑に渡した。
愛は寝ぼけた頭で着替え始め、探偵が手に取った葉星のロングコートにも何も反応せずに身につけて外に出た。
すると、探偵は小走りでアパート前にあった原付バイクに腰かけ、後ろの席をぽんぽんと叩いた。
健吾「近道したいけどそっちには交番あるから遠回りしないと。時間ないから早く乗って。」
愛「は、はい…。」
愛は言われるがままヘルメットをかぶり、俺を探偵と一緒に挟み込むように座ってしっかりと腰に抱きつく。
探偵はそれを確認すると、葉星がいつも出すスピードよりも早く景色を飛ばして愛たちが住んでる街が全て見えそうな坂上のひらけた土地にやってきた。
健吾「ここであいつと待ち合わせだから寒いけどちょっと待っててね。」
そう言って探偵は自分の腹に貼っていたカイロを愛に渡し、暖を分け合っていると陽光が一本俺を刺すように照らしてきた。
愛「わぁ…。朝って感じです…。」
健吾「あれー…?日の出の時間に待ち合わせだったんだけどな…。」
愛は登り始める朝日を俺と一緒に浴び、探偵はダウンジャケットの内ポケットから青い便箋を取り出すと大きな爆発音が街にこだまする。
愛「え…っ。火事…?」
と、愛は俺を強く抱きしめてタンポポのような黒煙が登って行く中、その下でバチバチと火花を飛ばす5つの家にクギ付けになる。
とと「…葉星は?」
俺はまだ来ていない葉星を安否を愛に聞くけれど、目の前の光景が信じられない愛は俺の声が届いてないらしく何も言葉を発しない。
健吾「…愛ちゃん。」
と、探偵は体が固まってしまった愛の肩に優しく手を置き、意識をここに戻す。
健吾「これ見て。」
そう言って、探偵は青い便箋に入っていた手紙を愛に見せた。
『 愛に花畑を見せる 』
葉星の字で書かれた手紙の後ろで火花が舞い、それが落ちるとまた別のところでも大輪が咲く。
健吾「愛ちゃんがこれ見たいって言ったの…?」
愛「ちが…う…。私は…、結心さんと一緒に…。」
愛はうまく呼吸が出来なくなり、俺の背中に顔を埋めて卒業式の日の葉星のように息を正す。
愛「…結心さんは?」
そう聞きながら愛は俺の背中から顔を離し、探偵を見上げた。
健吾「ここで待ち合わせって言われたけど…、来てないね…。」
愛「……行かなきゃ。」
と、愛は突然走り出し、バイクで来た長い道のりを自分の脚で戻ろうとする。
けれど、愛より足が早い探偵が愛の前に立ちはだかった。
健吾「あんなとこ行ったら爆発に巻き込まれちゃうよ!」
愛「でも、結心さんが無事なのか知りたいです!」
健吾「…多分、いつもの家にはいないんじゃないかな。」
と、探偵は何か知っているように語尾を濁し、また走り出そうとする愛を捕まえる。
愛「湊さんは結心さんのストーカーなんですよね!?実家知ってますか!?」
健吾「ストーカーじゃないって言ってるでしょ…。」
愛「でも、私が知らない結心さんの事は知ってました!連れてってください!」
愛は探偵に引っ張られる方向とは逆方向に足を向けるけれど、裏が擦れているスニーカーはするすると探偵が思う方向へ行ってしまう。
愛「お願いです!湊さんのお友達も巻き込まれてるかもしれませんよ!」
愛がそう言うと探偵は足を止めた。
健吾「…でも、明日会うって約束してくれた。」
愛「湊さんのことを信用しないって言ってた結心さんを信用するんですか!?」
愛は目で行き先を迷っている探偵に一か八かの言葉を投げつけた。
愛「私は結心さんに絶対会いたい、湊さんはお友達に絶対会いたい。なら今すぐに会いに行きましょうよ!」
愛が爆発音とサイレンに負けないほどの大声で探偵に訴えると、探偵は愛から手を解きヘルメットを渡した。
健吾「絶対、外さないで。絶対、俺から離れないで。」
愛「…分かりました!」
2人は意思を結合してバイクに飛び乗り、まだ花を咲かせる街へ戻った。
環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様
また不法侵入してきた探偵は朝が明ける前に葉星のアパートにやってきて、眠り続ける愛の肩を揺らす。
健吾「起きてー。あいつ、時間通りじゃないと契約破棄するって言ってるからお願いっ。」
と、探偵は愛の体を無理矢理起こし、頬をペチペチ軽く叩くと愛のまぶたがゆっくりと開く。
愛「…あれ?湊さん?」
健吾「着替えて。葉星 結心のお願いで連れて行かないといけない所があるんだ。」
そう言って探偵は近くのタンスから葉星のスウェットと愛のチェックのミニスカートを取り出して雑に渡した。
愛は寝ぼけた頭で着替え始め、探偵が手に取った葉星のロングコートにも何も反応せずに身につけて外に出た。
すると、探偵は小走りでアパート前にあった原付バイクに腰かけ、後ろの席をぽんぽんと叩いた。
健吾「近道したいけどそっちには交番あるから遠回りしないと。時間ないから早く乗って。」
愛「は、はい…。」
愛は言われるがままヘルメットをかぶり、俺を探偵と一緒に挟み込むように座ってしっかりと腰に抱きつく。
探偵はそれを確認すると、葉星がいつも出すスピードよりも早く景色を飛ばして愛たちが住んでる街が全て見えそうな坂上のひらけた土地にやってきた。
健吾「ここであいつと待ち合わせだから寒いけどちょっと待っててね。」
そう言って探偵は自分の腹に貼っていたカイロを愛に渡し、暖を分け合っていると陽光が一本俺を刺すように照らしてきた。
愛「わぁ…。朝って感じです…。」
健吾「あれー…?日の出の時間に待ち合わせだったんだけどな…。」
愛は登り始める朝日を俺と一緒に浴び、探偵はダウンジャケットの内ポケットから青い便箋を取り出すと大きな爆発音が街にこだまする。
愛「え…っ。火事…?」
と、愛は俺を強く抱きしめてタンポポのような黒煙が登って行く中、その下でバチバチと火花を飛ばす5つの家にクギ付けになる。
とと「…葉星は?」
俺はまだ来ていない葉星を安否を愛に聞くけれど、目の前の光景が信じられない愛は俺の声が届いてないらしく何も言葉を発しない。
健吾「…愛ちゃん。」
と、探偵は体が固まってしまった愛の肩に優しく手を置き、意識をここに戻す。
健吾「これ見て。」
そう言って、探偵は青い便箋に入っていた手紙を愛に見せた。
『 愛に花畑を見せる 』
葉星の字で書かれた手紙の後ろで火花が舞い、それが落ちるとまた別のところでも大輪が咲く。
健吾「愛ちゃんがこれ見たいって言ったの…?」
愛「ちが…う…。私は…、結心さんと一緒に…。」
愛はうまく呼吸が出来なくなり、俺の背中に顔を埋めて卒業式の日の葉星のように息を正す。
愛「…結心さんは?」
そう聞きながら愛は俺の背中から顔を離し、探偵を見上げた。
健吾「ここで待ち合わせって言われたけど…、来てないね…。」
愛「……行かなきゃ。」
と、愛は突然走り出し、バイクで来た長い道のりを自分の脚で戻ろうとする。
けれど、愛より足が早い探偵が愛の前に立ちはだかった。
健吾「あんなとこ行ったら爆発に巻き込まれちゃうよ!」
愛「でも、結心さんが無事なのか知りたいです!」
健吾「…多分、いつもの家にはいないんじゃないかな。」
と、探偵は何か知っているように語尾を濁し、また走り出そうとする愛を捕まえる。
愛「湊さんは結心さんのストーカーなんですよね!?実家知ってますか!?」
健吾「ストーカーじゃないって言ってるでしょ…。」
愛「でも、私が知らない結心さんの事は知ってました!連れてってください!」
愛は探偵に引っ張られる方向とは逆方向に足を向けるけれど、裏が擦れているスニーカーはするすると探偵が思う方向へ行ってしまう。
愛「お願いです!湊さんのお友達も巻き込まれてるかもしれませんよ!」
愛がそう言うと探偵は足を止めた。
健吾「…でも、明日会うって約束してくれた。」
愛「湊さんのことを信用しないって言ってた結心さんを信用するんですか!?」
愛は目で行き先を迷っている探偵に一か八かの言葉を投げつけた。
愛「私は結心さんに絶対会いたい、湊さんはお友達に絶対会いたい。なら今すぐに会いに行きましょうよ!」
愛が爆発音とサイレンに負けないほどの大声で探偵に訴えると、探偵は愛から手を解きヘルメットを渡した。
健吾「絶対、外さないで。絶対、俺から離れないで。」
愛「…分かりました!」
2人は意思を結合してバイクに飛び乗り、まだ花を咲かせる街へ戻った。
環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様
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