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今日は初めて結心さんと2人だけでデートをする日。
最近の結心さんはなんだか忙しそうで暇があれば寝ていたけれど、今日はしっかりと目を開けて私と手を繋いでくれる。
それがただ嬉しくて偽物の桜の映像と香りに少し吐き気がしたけれど、結心さんがいるから悪いものが浄化されるような気がする。
これは結心さんが神様だからなのか、結心さんが人だからなのかと少し難しいことを1人で考えていると突然頬を摘まれた。
結心「聞いてる?」
愛「え?」
私は何のことを聞いているのか分からない結心さんに首を傾げると、結心さんはプロジェクションマッピングをしている会場から飛び出し西日が暖かい外に出た。
結心「とと丸に会いたい?」
と、結心さんはそばにあったベンチに腰かけて私の手を繋いだまま顔を見上げてきた。
愛「会いたいけど…、今は結心さんとデート中なので…。」
私は悲しそうな顔する結心さんの手を握り返し、気持ちを伝えるけれど結心さんの顔は変わらない。
結心「無理に合わせなくていいよ。もう帰ろっか。」
そう言って結心さんは手を緩めて私から離れようとしたので私はさっきよりも強い力で握る。
愛「嫌です。今日は結心さんと1日デートするんです。いちごパフェ半分こするんです。」
私は湊さんにととくんと遊んでとお願いしてきたので、ととくんの寂しさよりも今目の前にいる結心さんの寂しさの方が気になってしまう。
愛「さっきは本物の桜を一緒に見たかったなって考えてただけで、結心さんとのデートが嫌だとは一切思ってないです。」
しっかりと気持ちを伝えた私は最近笑うことが少なくなった結心さんの隣に座り、少し緊張するけれど腕に抱きつく。
愛「卒業した後、部活動のみんなでお花見ピクニックしたいねってととくんと話したんです。結心さんはいつ空いてますか?」
私は卒業式後にある結心さんの予定を一度も教えてもらえていなかったので、今日思い切って聞いてみると結心さんは力なく笑い腕を掴んでいる私のおでこにキスをした。
結心「桜、見に行こう。」
そう言って結心さんは私を連れて暮れ始めた空とどんどん進む腕時計の針を見ながら、電車でどこかへ向かう。
私はいつもの結心さんじゃないなと思ったけれど、本物の桜を見せようとしてくれる今の結心さんにただ着いていくことにした。
すると、結心さんは今住んでいる街がよく見渡せる坂上の駐車場に私を連れてきてくれた。
結心「ここにある107歳の木が後もう少しで桜をつけるよ。」
結心さんは蕾しかない大木を指差し、地べたに座った自分の膝の上に私を座らせて抱きつく。
結心「ここの桜は、桜の花びらの中に蓮華が咲いたみたいな花をつけるんだ。」
そう説明してくれた結心さんは自分の顔を私の肩に置き、地面の砂で大きな桜の中に一輪の蓮華が咲いたような絵を描いてくれる。
結心「色はこんな色。」
と、結心さんは暗くなってきた空と一緒に枝しかない桜の木を指すと、そこには濃いピンク色の空が広がっていて一瞬本当に満開の桜が咲いてくれたのかと思った。
結心「ここの桜を拾って桜ごはんにするのが一番好き。」
愛「今度、作り方教えてください。」
私は一番好きな食べ物を教えてくれた結心さんにそうお願いすると、結心さんは無言のまま頷くように私の首に顔を埋めた。
結心「…時間があったら教える。」
愛「ありがとうございますっ。」
ため息を吐くように約束をしてくれた結心さんの手を私はぎゅっと握り、どんどんと色を変えていく桜を見ているとあっという間に散ってしまった。
その間、結心さんは何も喋らずただ私の後ろで煙を吐いていた。
その煙の香りは結心さんお気に入りのはちみつではなく、苦手と言っていたコーヒーの香りで私は少しほろ苦くもどこかから届く花の蜜と一緒に吸い込み、結心さんとの初デートの思い出としてその香りを記憶に刻んだ。
環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様
最近の結心さんはなんだか忙しそうで暇があれば寝ていたけれど、今日はしっかりと目を開けて私と手を繋いでくれる。
それがただ嬉しくて偽物の桜の映像と香りに少し吐き気がしたけれど、結心さんがいるから悪いものが浄化されるような気がする。
これは結心さんが神様だからなのか、結心さんが人だからなのかと少し難しいことを1人で考えていると突然頬を摘まれた。
結心「聞いてる?」
愛「え?」
私は何のことを聞いているのか分からない結心さんに首を傾げると、結心さんはプロジェクションマッピングをしている会場から飛び出し西日が暖かい外に出た。
結心「とと丸に会いたい?」
と、結心さんはそばにあったベンチに腰かけて私の手を繋いだまま顔を見上げてきた。
愛「会いたいけど…、今は結心さんとデート中なので…。」
私は悲しそうな顔する結心さんの手を握り返し、気持ちを伝えるけれど結心さんの顔は変わらない。
結心「無理に合わせなくていいよ。もう帰ろっか。」
そう言って結心さんは手を緩めて私から離れようとしたので私はさっきよりも強い力で握る。
愛「嫌です。今日は結心さんと1日デートするんです。いちごパフェ半分こするんです。」
私は湊さんにととくんと遊んでとお願いしてきたので、ととくんの寂しさよりも今目の前にいる結心さんの寂しさの方が気になってしまう。
愛「さっきは本物の桜を一緒に見たかったなって考えてただけで、結心さんとのデートが嫌だとは一切思ってないです。」
しっかりと気持ちを伝えた私は最近笑うことが少なくなった結心さんの隣に座り、少し緊張するけれど腕に抱きつく。
愛「卒業した後、部活動のみんなでお花見ピクニックしたいねってととくんと話したんです。結心さんはいつ空いてますか?」
私は卒業式後にある結心さんの予定を一度も教えてもらえていなかったので、今日思い切って聞いてみると結心さんは力なく笑い腕を掴んでいる私のおでこにキスをした。
結心「桜、見に行こう。」
そう言って結心さんは私を連れて暮れ始めた空とどんどん進む腕時計の針を見ながら、電車でどこかへ向かう。
私はいつもの結心さんじゃないなと思ったけれど、本物の桜を見せようとしてくれる今の結心さんにただ着いていくことにした。
すると、結心さんは今住んでいる街がよく見渡せる坂上の駐車場に私を連れてきてくれた。
結心「ここにある107歳の木が後もう少しで桜をつけるよ。」
結心さんは蕾しかない大木を指差し、地べたに座った自分の膝の上に私を座らせて抱きつく。
結心「ここの桜は、桜の花びらの中に蓮華が咲いたみたいな花をつけるんだ。」
そう説明してくれた結心さんは自分の顔を私の肩に置き、地面の砂で大きな桜の中に一輪の蓮華が咲いたような絵を描いてくれる。
結心「色はこんな色。」
と、結心さんは暗くなってきた空と一緒に枝しかない桜の木を指すと、そこには濃いピンク色の空が広がっていて一瞬本当に満開の桜が咲いてくれたのかと思った。
結心「ここの桜を拾って桜ごはんにするのが一番好き。」
愛「今度、作り方教えてください。」
私は一番好きな食べ物を教えてくれた結心さんにそうお願いすると、結心さんは無言のまま頷くように私の首に顔を埋めた。
結心「…時間があったら教える。」
愛「ありがとうございますっ。」
ため息を吐くように約束をしてくれた結心さんの手を私はぎゅっと握り、どんどんと色を変えていく桜を見ているとあっという間に散ってしまった。
その間、結心さんは何も喋らずただ私の後ろで煙を吐いていた。
その煙の香りは結心さんお気に入りのはちみつではなく、苦手と言っていたコーヒーの香りで私は少しほろ苦くもどこかから届く花の蜜と一緒に吸い込み、結心さんとの初デートの思い出としてその香りを記憶に刻んだ。
環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様
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