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今日は久しぶりに愛と2人だけのデートの日。
けど、愛はそのデートの準備のために元の家に置いてきてしまったお気に入りのニットを取りに家へ帰った。
愛「…いる、かな。」
とと「音はしないけど…。」
俺たちは人の気配が全くしない少し埃臭くなった実家にそっと入り、母親の気配を耳で感じようと息をひそめる。
けれど、数分経っても物音ひとつしないので愛は土足のまま家に上がり、忍び足で自分の部屋へ駆け込んだ。
愛「…怖かったぁ。」
と、愛はホッと胸を撫で下ろして俺から顔を上げた途端、一気に顔が凍りつく。
とと「どうした?」
愛「私の部屋が…。」
そう言って愛は俺に部屋を見せると、家を出て行った時には母親が暴れて散乱した物がなにひとつなくなっている。
愛「…私の部屋、なくなっちゃった。」
と、愛は寂しそうに呟き、俺を抱きしめて埃っぽい床にしゃがみこんでしまう。
とと「多分、ひとりには広すぎる家だから別の所に引っ越したんだよ。だからもうここは愛の家でもあいつの家でもないよ。」
俺は背中で愛の涙を受け取り、しばらくの間愛の気持ちがこの家から離れるように待っていると、愛は突然立ち上がって家の中を散歩し始めた。
愛「本当に何もないや…。」
とと「だね。今度は葉星と住む?」
愛「何もないから住みにくいよ。」
そう言って愛は空っぽの家から外に出て俺としたかったというピクニックを平日の真昼間で誰もいない公園のベンチに座り、美味しそうにサンドイッチを食べて楽しむ。
愛「 今度は部活動のみんなでここに来たいね。」
とと「そうだね。卒業式終わった後ならみんな予定が空いてるじゃない?」
愛「親睦会とお別れ会一緒にやるのってちょっと嫌だね。」
と、愛は卒業後の想像をして少し頬を膨らませる。
とと「お別れ会って言ってもずっとじゃないんだからそんな顔しないで。」
俺は花の蜜がどこからか届いてくる風で動いた手を愛の膝に乗せて機嫌を直してもらう。
愛「でも、湊さんは大学に行かないで警察官になるっぽいし、結心さんは神様のお仕事があるよ。」
とと「それでも人なら休息が貰えるから時たまだけど会えるよ。一生会えないのは死んだ時だけ。」
愛「…そうだね。」
愛は拗ねた顔を悲しげな顔に変えてしまったけれど、それがこの世の一生の別れ方だから仕方がない。
だから卒業式1週間前を切ってもまだ蕾しか付いていない桜の木を見上げて、また気持ちが沈んだとしても自分では変えられない現状だから仕方がない。
俺は葉星のデートの下見と思われるデートを愛として、愛の気持ちを出来るだけ沈ませてから葉星がいる家に戻ると真っ暗な部屋で本を読みながら寝落ちしてしまった葉星が少し肌寒い春風に肩を竦ませていた。
それを見た愛は俺と静かに部屋に入り、綺麗に畳まれた布団の上から毛布を取って俺と自分と毛布で葉星を包み込むよう隣に寝そべった。
すると、その暖かさに気づいた葉星はゆっくりと目を開けて俺と目を合わせると、自分の体を包んでいた愛の腕を撫でるように手を置き、優しく微笑みながらまた眠りについた。
その幸せそうな顔に俺は安心しきって2人の寝息を聞きながら今日のデートを終えた。
環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様
けど、愛はそのデートの準備のために元の家に置いてきてしまったお気に入りのニットを取りに家へ帰った。
愛「…いる、かな。」
とと「音はしないけど…。」
俺たちは人の気配が全くしない少し埃臭くなった実家にそっと入り、母親の気配を耳で感じようと息をひそめる。
けれど、数分経っても物音ひとつしないので愛は土足のまま家に上がり、忍び足で自分の部屋へ駆け込んだ。
愛「…怖かったぁ。」
と、愛はホッと胸を撫で下ろして俺から顔を上げた途端、一気に顔が凍りつく。
とと「どうした?」
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そう言って愛は俺に部屋を見せると、家を出て行った時には母親が暴れて散乱した物がなにひとつなくなっている。
愛「…私の部屋、なくなっちゃった。」
と、愛は寂しそうに呟き、俺を抱きしめて埃っぽい床にしゃがみこんでしまう。
とと「多分、ひとりには広すぎる家だから別の所に引っ越したんだよ。だからもうここは愛の家でもあいつの家でもないよ。」
俺は背中で愛の涙を受け取り、しばらくの間愛の気持ちがこの家から離れるように待っていると、愛は突然立ち上がって家の中を散歩し始めた。
愛「本当に何もないや…。」
とと「だね。今度は葉星と住む?」
愛「何もないから住みにくいよ。」
そう言って愛は空っぽの家から外に出て俺としたかったというピクニックを平日の真昼間で誰もいない公園のベンチに座り、美味しそうにサンドイッチを食べて楽しむ。
愛「 今度は部活動のみんなでここに来たいね。」
とと「そうだね。卒業式終わった後ならみんな予定が空いてるじゃない?」
愛「親睦会とお別れ会一緒にやるのってちょっと嫌だね。」
と、愛は卒業後の想像をして少し頬を膨らませる。
とと「お別れ会って言ってもずっとじゃないんだからそんな顔しないで。」
俺は花の蜜がどこからか届いてくる風で動いた手を愛の膝に乗せて機嫌を直してもらう。
愛「でも、湊さんは大学に行かないで警察官になるっぽいし、結心さんは神様のお仕事があるよ。」
とと「それでも人なら休息が貰えるから時たまだけど会えるよ。一生会えないのは死んだ時だけ。」
愛「…そうだね。」
愛は拗ねた顔を悲しげな顔に変えてしまったけれど、それがこの世の一生の別れ方だから仕方がない。
だから卒業式1週間前を切ってもまだ蕾しか付いていない桜の木を見上げて、また気持ちが沈んだとしても自分では変えられない現状だから仕方がない。
俺は葉星のデートの下見と思われるデートを愛として、愛の気持ちを出来るだけ沈ませてから葉星がいる家に戻ると真っ暗な部屋で本を読みながら寝落ちしてしまった葉星が少し肌寒い春風に肩を竦ませていた。
それを見た愛は俺と静かに部屋に入り、綺麗に畳まれた布団の上から毛布を取って俺と自分と毛布で葉星を包み込むよう隣に寝そべった。
すると、その暖かさに気づいた葉星はゆっくりと目を開けて俺と目を合わせると、自分の体を包んでいた愛の腕を撫でるように手を置き、優しく微笑みながらまた眠りについた。
その幸せそうな顔に俺は安心しきって2人の寝息を聞きながら今日のデートを終えた。
環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様
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