上 下
24 / 33

秘密活動

しおりを挟む
「したいですっ。」

プリッと頬を膨らませながら俺に部活に参加したいと100回言った愛は拗ねた顔をして俺が神の仕事へ行こうとする足を止めるために腕を掴む。

結心「ダーメ。あれは参加資格がないと入れないの。」

愛「んー…ぅ。なんでその参加資格を教えてくれないんですか?」

結心「それは俺だけが知ってて、メンバーは誰も知らないから。」

愛「メンバーさんはなんで入れたんですか?」

結心「俺からのスカウト。あの学校の教室借りてるだけで学生じゃない奴もいるから。」

俺は愛がどうしても納得してくれない様子なので、家を余裕持って出ようとしていたのを辞めて携帯でニーナに車を出してもらうようメッセージを送る。

愛「私もスカウトしてください。やりたいことリストにも書きました。」

そう言って、半分以上達成シールがついたやりたいことリストに新しく『結心さんの部活に入る!』と書かれていることを見せてくる。

結心「参加資格があったらするけど、今んとこない。」

愛「えー?ととくんは?」

結心「とと丸は愛のスパイになるからダメ。そんな駄々こねても入れないもんは入れないから。」

愛「じゃあチョコ返してください。」

結心「ダメ。もう俺のもんだもん。」

俺は自分の胸ポケットに入れている愛手作りのチョコが入った箱を取られないようにブレザーの胸元を締める。

愛「入りたいぃ…。部活入ったことないから結心さんと一緒にしたい…。」

と、愛はしょぼくれた顔で俺の足元にしゃがみ、涙目で上目遣いしてくる。

俺はその破壊力に動悸を感じていると、電話が鳴った。

結心「もう行かないと。既存してる部活だったら一緒に入るから選んどいて。」

俺は自分の財産と言える情報が詰まったノート1冊のページをちぎり、そこに書いてある部活動を見て愛にあと1ヶ月もやらない部活を選んでもらうことにした。

愛「……今日も朝ですか?」

と、愛はまだふてくされた顔で俺を見つめてそう聞いてきた。

結心「うん。寂しい?」

愛「…ちょっと。でも、ととくんいるので大丈夫です。」

俺は初めて『ちょっと』と言ってもらったことに嬉しくなり、愛と抱かれているとと丸ごと抱きしめて頬にキスをする。

結心「なるべく早く帰れるようにするから。寝てればあっという間に朝になるから布団でゆっくり寝てな。」

愛「…は、はいっ。」

愛は顔も耳も真っ赤にして小さく頷き、俺を玄関先で見送ってくれた。

俺はそんな愛がしっかり戸締りした音を確認してニーナが持ってきてくれた車に乗り込み、本家に行くと父親が玄関先で新顔の女と楽しげに話しているところに出くわしてしまった。

陽旦「お、ちょうどいいとこに来た。」

そう言って父親は親しげに女の腰に腕を回し、抱き寄せた。

陽旦「今日から俺の妻になった信実 和子しんみ かずこ。これは俺の息子の結心に会計士の凛 青藍りん せいらん。」

父親は今までのタイプにはいなかった少し枯れている女に俺とニーナを紹介して握手をさせた。

陽旦「和子はこれから奥の蓮の間に住むことになったから。」

結心「そこは…」

陽旦「和子も了承済み。いい加減、前に進まないとな。」

思ってもないことを言った父親は人前でニーナを自分の部屋に誘う時に使うペンをニーナのブラウスの襟元に挿し、妻になった女と一緒に俺を産んだ母親が使っていた部屋に向かっていった。

凛「…結心、大丈夫?」

結心「胸貸して。」

凛「うん。」

俺は玄関に座り、その膝の上にニーナを座らせてたわわな胸に顔を埋めさせてもらい、苛立ちを性欲で沈めさせてもらう。

結心「…なんで、今?」

凛「分からない…。私も今知ったからなんの情報もないよ。」

結心「あいつ、若い奴ばっかり食ってたじゃん。なんで今更あんなババァと結婚すんの?」

凛「んー…、やっぱり気持ちが落ち着くのかな。陽旦さんは見た目年齢若いけど50でしょ?だから波長が合うのかも。」

結心「絶対、なんかある。調べといて。」

凛「分かった。」

俺は薄れた香水の匂いがする胸で心の平穏を取り戻してもらい、そのままいつもの営業に向かった。


環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす

和泉杏咲
恋愛
私は、もうすぐ結婚をする。 職場で知り合った上司とのスピード婚。 ワケアリなので結婚式はナシ。 けれど、指輪だけは買おうと2人で決めた。 物が手に入りさえすれば、どこでもよかったのに。 どうして私達は、あの店に入ってしまったのだろう。 その店の名前は「Bella stella(ベラ ステラ)」 春の空色の壁の小さなお店にいたのは、私がずっと忘れられない人だった。 「君が、そんな結婚をするなんて、俺がこのまま許せると思う?」 お願い。 今、そんなことを言わないで。 決心が鈍ってしまうから。 私の人生は、あの人に捧げると決めてしまったのだから。 ⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚ 東雲美空(28) 会社員 × 如月理玖(28) 有名ジュエリー作家 ⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚

あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~

けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。 ただ… トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。 誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。 いや…もう女子と言える年齢ではない。 キラキラドキドキした恋愛はしたい… 結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。 最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。 彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して… そんな人が、 『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』 だなんて、私を指名してくれて… そして… スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、 『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』 って、誘われた… いったい私に何が起こっているの? パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子… たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。 誰かを思いっきり好きになって… 甘えてみても…いいですか? ※after story別作品で公開中(同じタイトル)

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた――― ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。 それは同棲の話が出ていた矢先だった。 凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。 ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。 実は彼、厄介な事に大の女嫌いで―― 元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――

今更だけど、もう離さない〜再会した元カレは大会社のCEO〜

瀬崎由美
恋愛
1才半の息子のいる瑞希は携帯電話のキャリアショップに勤めるシングルマザー。 いつものように保育園に迎えに行くと、2年前に音信不通となっていた元彼が。 帰国したばかりの彼は亡き祖父の後継者となって、大会社のCEOに就任していた。 ずっと連絡出来なかったことを謝罪され、これからは守らせて下さいと求婚され戸惑う瑞希。   第17回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました。

【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~

蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。 なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?! アイドル顔負けのルックス 庶務課 蜂谷あすか(24) × 社内人気NO.1のイケメンエリート 企画部エース 天野翔(31) 「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」 女子社員から妬まれるのは面倒。 イケメンには関わりたくないのに。 「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」 イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって 人を思いやれる優しい人。 そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。 「私、…役に立ちました?」 それなら…もっと……。 「褒めて下さい」 もっともっと、彼に認められたい。 「もっと、褒めて下さ…っん!」 首の後ろを掬いあげられるように掴まれて 重ねた唇は煙草の匂いがした。 「なぁ。褒めて欲しい?」 それは甘いキスの誘惑…。

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。 絶対に離婚届に判なんて押さないからな」 既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。 まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。 紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転! 純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。 離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。 それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。 このままでは紘希の弱点になる。 わかっているけれど……。 瑞木純華 みずきすみか 28 イベントデザイン部係長 姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点 おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち 後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない 恋に関しては夢見がち × 矢崎紘希 やざきひろき 28 営業部課長 一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長 サバサバした爽やかくん 実体は押しが強くて粘着質 秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?

処理中です...