9 / 33
ふかふか
しおりを挟む
結心さんと出会ってから学校生活がガラリと変わった。
朝は結心さんが自転車で私とととくんを迎えにきてくれて、授業中は私が少しでも暇そうにすると先生がこっそりと教室を出たいか聞いてくる。
お昼は結心さんと3人でランチタイムを楽しんで屋上で日向ぼっこしたり、校庭が空いていればミステリーサークルを作ったり遊ぶ。
それから夜にかけて結心さんが連れて行ってくれるご飯屋さんでご飯をご馳走してもらって家まで送ってもらうのがここ最近の私たちの日常。
今日も自転車に乗せてもらって学校まで連れてきてもらい、授業を受けていたけど今と次の時間は文化祭の準備をクラスみんなでするはずなのに私とととくんには割り振りされなかった。
私たちも手伝いたいと担任のツカダ先生に声をかけても、ノートを貸してくれるクラスメイトに声をかけても、『好きなことしてればいい。』の一点張り。
だから結心さんと遊ぼうと思って、結心さんの教室を覗いてみたけど1番後ろの窓際の席は空っぽだった。
愛「結心さんどこ行ったんだろう?」
とと「んー…、サボるなら中庭とか保健室かな。」
愛「確かに。人あんまり来ないからね。」
私たちは男女の声が入り混じる音が時々聞こえる屋上には行かず、その下の階段の踊り場にある窓から中庭を覗くけれど結心さんはいない。
やっぱりベッドがあるから保健室で寝てるのかもと話しながら、ととくんとそっと保健室を覗いてみる。
愛「こんにちはー…?」
頭だけ保健室に入れるけど保健の凜先生の姿さえ見つからない。
とと「誰もいな…」
「…よ、せいっ。」
と、ととくんが何か言いかけると同時にカーテンが閉じられているベッドで息遣いの荒い女性の声が聞こえた。
私たちは凜先生が寝言を漏らしてるのかなと思い、忍び足で軋むベッド前に近づきサッとカーテンを開けると凜先生がシャツのボタンが全開になった結心さんの上に馬乗りになってキスしていた。
愛「ご、ごめんなさいっ!」
私がびっくりしてカーテンを閉めようとすると、凜先生は素早く体を起こし私の腕を掴んだ。
凜「助けて。葉星が起きない。」
愛「…え?」
私はその意味が分からず数秒凜先生の様子を見て、学期始めにあった防災訓練を思い出す。
凜「いき…っ、吹き込んで…。」
と、凜先生は必死に結心さんの心臓マッサージをしながら私に目で指示をしてきた。
固まっていた私はしっかり覚えていた人工呼吸でめいいっぱいの一呼吸を結心さんに入れると、結心さんの真っ青の唇がふるふると震えながら開き、大きく息を吸って薄目を開いた。
結心「…くろ、れー…す。」
と、結心さんがボソッと呟くと凜先生がばちんと結心さんの頬を叩いた。
凜「見たいならしっかり息しろ。」
そう言って顔を真っ赤にして怒っている凜先生は結心さんから降りて定位置のデスクに戻り、何かを探し始めた。
とと「…大丈夫、なのか?」
愛「…結心さん。大丈夫ですか?」
パンツに夢中で私たちを視界にいれてくれなかった結心さんに声をかけると、結心さんはその声に反応してゆっくりと顔を向けてくれた。
結心「おー…、らぶ子ととと丸じゃん。授業は?」
愛「い、今は文化祭の準備時間なんで暇なんです…。」
結心「ああ、そっか。来週だもんな。」
と、結心さんは大きく深呼吸を3度して起き上がり、ベッド脇にかけてあったブレザーのポケットから電子煙草を出した。
愛「…煙草、やめたほうがいいんじゃないですか?」
結心「んー…?やだ。」
愛「え?なんで…」
結心「俺の人工呼吸器ってとこ。」
そう言って結心さんは大きく煙草を吸い、顔が隠れてしまうほどの煙を吐いた。
とと「そんな訳ないだろ。」
愛「肺とかなんかとか悪そう…、です…。」
結心「悪いかもだけど、これを吸うってことは必然的に酸素も吸うって事だし、息の吸い方思い出すの。」
愛「…思い出す?」
私とととくんが首を傾げていると、凜先生が結心さんに聴診器を当てたり血中酸素を測り始めた。
凜「こいつ、息忘れる癖あるから。」
愛「そんな癖あるんですか…?」
結心「癖って言うか知らないうちに忘れてるんだよね。」
息って勝手に吸ったり吐いたりするもんだと思ってたけど、結心さんは違うのかな。
そう思っていると結心さんは私の頭を撫でた。
結心「お目覚めちゅーありがと。」
愛「…え。」
結心「ニーナだったらいつもコーヒー臭いから。」
凜「おい。恩人に臭いって言うな。」
結心「俺、コーヒー好きじゃないし、黒レースよりシームレスのベージュがいい。」
凜「お前の好みで私を作るな。まあ、そんな口は聞けるし、数値も問題なし。今日のとこはゆっくりな。」
結心「あーい。」
と、結心さんは乱れた制服を直しながらブレザーからお財布を出した。
結心「今日は屋上じゃなくてここでいい?」
愛「え…、あ、はいっ。」
結心「じゃあ恩人たちにジュース奢っちゃうねー。」
凜「ブラック。」
結心「ん?コーラ?」
凜「…なんでもいい。」
結心「はーいっ。らぶ子たちは一緒に来て。」
愛「はい!」
私とととくんはいつものように結心さんについていき、中庭にある自販機に向かった。
環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様
朝は結心さんが自転車で私とととくんを迎えにきてくれて、授業中は私が少しでも暇そうにすると先生がこっそりと教室を出たいか聞いてくる。
お昼は結心さんと3人でランチタイムを楽しんで屋上で日向ぼっこしたり、校庭が空いていればミステリーサークルを作ったり遊ぶ。
それから夜にかけて結心さんが連れて行ってくれるご飯屋さんでご飯をご馳走してもらって家まで送ってもらうのがここ最近の私たちの日常。
今日も自転車に乗せてもらって学校まで連れてきてもらい、授業を受けていたけど今と次の時間は文化祭の準備をクラスみんなでするはずなのに私とととくんには割り振りされなかった。
私たちも手伝いたいと担任のツカダ先生に声をかけても、ノートを貸してくれるクラスメイトに声をかけても、『好きなことしてればいい。』の一点張り。
だから結心さんと遊ぼうと思って、結心さんの教室を覗いてみたけど1番後ろの窓際の席は空っぽだった。
愛「結心さんどこ行ったんだろう?」
とと「んー…、サボるなら中庭とか保健室かな。」
愛「確かに。人あんまり来ないからね。」
私たちは男女の声が入り混じる音が時々聞こえる屋上には行かず、その下の階段の踊り場にある窓から中庭を覗くけれど結心さんはいない。
やっぱりベッドがあるから保健室で寝てるのかもと話しながら、ととくんとそっと保健室を覗いてみる。
愛「こんにちはー…?」
頭だけ保健室に入れるけど保健の凜先生の姿さえ見つからない。
とと「誰もいな…」
「…よ、せいっ。」
と、ととくんが何か言いかけると同時にカーテンが閉じられているベッドで息遣いの荒い女性の声が聞こえた。
私たちは凜先生が寝言を漏らしてるのかなと思い、忍び足で軋むベッド前に近づきサッとカーテンを開けると凜先生がシャツのボタンが全開になった結心さんの上に馬乗りになってキスしていた。
愛「ご、ごめんなさいっ!」
私がびっくりしてカーテンを閉めようとすると、凜先生は素早く体を起こし私の腕を掴んだ。
凜「助けて。葉星が起きない。」
愛「…え?」
私はその意味が分からず数秒凜先生の様子を見て、学期始めにあった防災訓練を思い出す。
凜「いき…っ、吹き込んで…。」
と、凜先生は必死に結心さんの心臓マッサージをしながら私に目で指示をしてきた。
固まっていた私はしっかり覚えていた人工呼吸でめいいっぱいの一呼吸を結心さんに入れると、結心さんの真っ青の唇がふるふると震えながら開き、大きく息を吸って薄目を開いた。
結心「…くろ、れー…す。」
と、結心さんがボソッと呟くと凜先生がばちんと結心さんの頬を叩いた。
凜「見たいならしっかり息しろ。」
そう言って顔を真っ赤にして怒っている凜先生は結心さんから降りて定位置のデスクに戻り、何かを探し始めた。
とと「…大丈夫、なのか?」
愛「…結心さん。大丈夫ですか?」
パンツに夢中で私たちを視界にいれてくれなかった結心さんに声をかけると、結心さんはその声に反応してゆっくりと顔を向けてくれた。
結心「おー…、らぶ子ととと丸じゃん。授業は?」
愛「い、今は文化祭の準備時間なんで暇なんです…。」
結心「ああ、そっか。来週だもんな。」
と、結心さんは大きく深呼吸を3度して起き上がり、ベッド脇にかけてあったブレザーのポケットから電子煙草を出した。
愛「…煙草、やめたほうがいいんじゃないですか?」
結心「んー…?やだ。」
愛「え?なんで…」
結心「俺の人工呼吸器ってとこ。」
そう言って結心さんは大きく煙草を吸い、顔が隠れてしまうほどの煙を吐いた。
とと「そんな訳ないだろ。」
愛「肺とかなんかとか悪そう…、です…。」
結心「悪いかもだけど、これを吸うってことは必然的に酸素も吸うって事だし、息の吸い方思い出すの。」
愛「…思い出す?」
私とととくんが首を傾げていると、凜先生が結心さんに聴診器を当てたり血中酸素を測り始めた。
凜「こいつ、息忘れる癖あるから。」
愛「そんな癖あるんですか…?」
結心「癖って言うか知らないうちに忘れてるんだよね。」
息って勝手に吸ったり吐いたりするもんだと思ってたけど、結心さんは違うのかな。
そう思っていると結心さんは私の頭を撫でた。
結心「お目覚めちゅーありがと。」
愛「…え。」
結心「ニーナだったらいつもコーヒー臭いから。」
凜「おい。恩人に臭いって言うな。」
結心「俺、コーヒー好きじゃないし、黒レースよりシームレスのベージュがいい。」
凜「お前の好みで私を作るな。まあ、そんな口は聞けるし、数値も問題なし。今日のとこはゆっくりな。」
結心「あーい。」
と、結心さんは乱れた制服を直しながらブレザーからお財布を出した。
結心「今日は屋上じゃなくてここでいい?」
愛「え…、あ、はいっ。」
結心「じゃあ恩人たちにジュース奢っちゃうねー。」
凜「ブラック。」
結心「ん?コーラ?」
凜「…なんでもいい。」
結心「はーいっ。らぶ子たちは一緒に来て。」
愛「はい!」
私とととくんはいつものように結心さんについていき、中庭にある自販機に向かった。
環流 虹向/桃色幼馴染と煙気王子様
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる