聖夜は無価値

環流 虹向

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消費者

Fin.

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まっさらで綺麗だけれど、少しアルコール臭がする女はタイプ。

それは元彼の凛奈がそういう女だったから。

外デート以外の日にはいつもスウェットにジーパンのラフな格好で俺の家に来てくれて、近くのコンビニにふらっと立ち寄るくらいの感覚ですっぴんのまま何も気にせず宅呑みをしてくれる所が好きと思えていた。

けど、今思えば俺はただの性欲処理付きATMでしかなかったんだろう。

凛奈はいつも俺の長いまつげや高めの鼻を褒めてくれたけれど、優しいとか怒りっぽいとか泣き虫とか性格面の言葉を俺に向けて使ったことは今思い返せばなかった。

だから使い捨てナプキンみたいに用を済ませたら雑にトイレットペーパーで包んで簡易ゴミ箱に捨てるように俺も捨てられた。

だからその腹いせに俺は胡桃さんに腰を振ってもらい、優越感を味わっているとその腰が止まってしまった。

唯「…疲れた?」

胡桃「うん…。」

その返事を聞いて俺は寝ていた体を起こして次は胡桃さんにベッドで寝転んでもらう。

けど、顔は凛奈じゃないのでうつ伏せに寝て腰だけを浮かせてもらい、体を繋げると胡桃さんはさっきよりも艶っぽい声を出して俺の性的欲求を増させる。

そんな胡桃さんの腰を持とうと俺は手をそっと横腹から腰に這わせると、ここが持ち手と教えてくれるホクロが腰の両脇にあって俺はそこに親指を合わして凛奈よりも少し太い腰を持つととても手にフィットしていい感じ。

どちらもフィット感が最高な胡桃さんのもっと崩れる姿が見たい俺は自分の欲求に任せて腰を振り続け、登ってきた体液を体外に出すとそれと同時に胡桃さんは腰を跳ねさせながらベッドにとろけるように倒れる。

俺はそんな可愛い胡桃さんがもっと見たいと思ってしまったので、まだ体の痙攣が止まらない胡桃さんの背中を撫でるようにキスしながらうつ伏せだった体を仰向けにさせると、潤目で少しヨダレを垂らしながら舌をしまいきれていないはしたない胡桃さんがそこにいた。

唯「気持ちよかった?痛かった?」

そう聞くけど、まだ息が整わず焦点が定まりきってない胡桃さんは力なく首を振り俺に触るなと言ってくる。

けれど、俺はこの聖夜が終わってしまえば何もない2人になるのは元から分かっていたから時間の無駄を省くために頬から耳へ、耳から首へ、首から鎖骨へとどんどん下っていくようにキスをして少しゴム臭い胡桃さんの大きめの口下にキスをし、とても小さな舌を絡ませていると胡桃さんが抑えきれなくなった喉奥からざらつく声で可愛げもなく喘いで快楽に浸る。

その素直すぎる胡桃さんに俺は少し新しい気持ちが芽生えたけれど、こんな気持ちは今の関係性では持ってはいけない気持ちで危険なもの。

だから俺はただただ自分の本能に従って、目の前にいる女の体を快楽の沼に落とそうと勝手に動く体に従っていると胡桃さんの声が聞こえなくなったことに気がつく。

俺はもしかして快感の向こう側に行ってしまったのかなと思って、座りながら繋ぎ合せていた胡桃さんの体を起こすと薄目で白目を向いて寝息を立てていた。

それを見て俺は充電をしていた携帯で時間を確認してみると、日付はとっくに超えていてもうすぐ日が昇る時間になってしまっていた。

さすがにやり過ぎた俺は濡れたベッドに乾燥させていたタオルを敷いてその上に胡桃さんを寝かせ、布団を被せた。

すると胡桃さんはとても寝心地よさそうに口角を上げて顔半分を枕に埋めてしっかりと睡眠を取り始めた。

俺はそれを見てから外に出て、嘔吐物と廃棄物と朝焼けの臭いがする街で一度深呼吸して肺に入っていた胡桃さんと共有していた空気をなくす。

そうすると自然に俺は口角が上がり、ずっと重かった体がとても軽く感じて歩くのが楽しくなる。

これで好きな人がいたらと思うけれど、俺の好きな人はこの時間ベッドの中でぐっすりで俺のことを夢見ることもないから俺もこんな妄想を辞めよう。

俺は何も生み出せなかった聖夜を過ごし、やっと分かった。

この聖夜が無価値なんじゃなくて、俺自身が無価値で誰もが一生大切にしようと思わない人間なんだって。

だから日々や周りに文句を言うのであれば、まずは自分の行動を改めようと思った俺はその足で今好きな人の元へ向かった。


環流 虹向/聖夜は無価値
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