てんしとおコタ

環流 虹向

文字の大きさ
上 下
16 / 25
12/27

10:00

しおりを挟む
僕は久しぶりに朝の時間をゆっくり過ごしているお父さんに学校からそのまま友達の家に行くと伝え、今年はもう会わないことを伝える。

けれど、お父さんは寂しい顔も引き止める言葉も僕にはくれないで開いた玄関の扉を寒そうにすぐに閉めて鍵をした。

それがただ一緒の家に暮らしている人という感じがひしひしと伝わってきて、さらに嫌に思ってしまった僕は1日一緒にいるであろう1月7日の七草がゆも作るのをやめてしまおうかなと思う。

そんなことを考えていると同じ部活の爽太と校門前で鉢合わせた。

爽太「おはー。なんか久しぶりって感じ。」

琥太郎「クリスマス会から会ってなかったからかも。」

僕がそう言うと爽太は少し気まずそうに目線を軽く空に向けて、歩き出す。

僕もそれについていくと爽太は少しぎこちなく口を開いた。

爽太「…琥太って、あの夜何してた?」

琥太郎「あの夜?」

爽太「クリスマス会。淡島様と一緒にいたじゃん。」

ああ、あれか。

そういえば、爽太って淡島さんのこと気になってたっけ。

琥太郎「駄弁ってただけ。で、座ってるだけだと寒いから、歩きながら話してたとこに爽太がいた。」

爽太「…手、繋いで?」

やっぱり見られてたか。

まあ、顔が見えてれば手元も見えるか。

琥太郎「暗いから変質者に絡まれないように。爽太もすれば?」

僕は話しながら歩いていると、爽太が隣にいないことに気づき振り返ると爽太は足を止めていた。

爽太「告られたんじゃないの?」

琥太郎「されてないよ。話しただけって言ってんじゃん。」

そろそろしつこくなってきた爽太に強めに言葉を返すと、爽太はトボトボと歩くように僕のそばに来て足を止めた。

爽太「…伝えたいことってなんだった?」

…手紙、見たのかよ。

まあ、こいつだったら見るかもしれないな。

琥太郎「目が悪いから部活が終わる時間同じだったら一緒に帰ってほしいだって。」

爽太「そう…。」

琥太郎「まあ、向こうは吹奏楽部だし、日が暮れても学校にいるから僕たちより遅いよね。」

爽太「…待ったりしないのか?」

琥太郎「僕はそのあと塾あったり、予定入れてたりするから待つ暇ない。」

僕がそう言い切ると、爽太は小さな深呼吸を一度してまた歩き始めた。

爽太「じゃあ、俺が待とうかな。」

と、少し自信なさげに爽太は呟いた。

琥太郎「時間あるならいいんじゃん?向こうも時間あるならチチ婆のとこ行って飯食えばいいし。」

爽太「…そう、する。」

爽太は見え透いた好意を隠そうとしたけれど、僕はそれを見て見ぬフリをして春先にある地区大会に向けて練習に励んだ。


環流 虹向/てんしとおコタ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...