てんしとおコタ

環流 虹向

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12/22

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水曜日の1時間目が終わると日向はいつも通りスクールバッグに自分の荷物を全て入れてどこかに走って行ってしまった。

いつもあんなに慌ててどこに行ってるだろうと思うけれど、次の授業がある音楽室にはいないし、他のクラスを覗いても見ない。

本当にどこへ行ってるんだろうなと思っていると、爽太が僕の机をトントンと叩いた。

爽太「見ろ!マドンナのアレは白だ!」

と、爽太は携帯で写真を出し、若干パンチラしている学年1モテ女の淡島 妃李あわしま ゆりを見せてきた。

琥太郎「…光の反射じゃないの?」

爽太「いや…、これは穢れのない処女が履くシルクのパンティ…。」

琥太郎「キモい。だったら処女とシルク奪って証拠持ってこいよ。」

爽太「淡島様は周りのガードが硬いんだよ。しかも噂では琥太が好きだってさー。」

デマばっかり吐く爽太はため息をつき、分かりやすく落ち込んでいるとその隣に用を足しに行っていた風喜が戻ってきた。

風喜「ハンカチとティッシュの常備って女子力っていうか、常識じゃんね?」

琥太郎「なんの話?」

僕は全く興味のない話題をまた振られてしまったので風喜の話を聞き流しながら音楽の授業に必要なものを机の上に出していると、風喜の言葉が耳に残った。

風喜「天使ちゃん、音楽室から真逆に走ってたけどまた夏來か誰か騙してる?」

琥太郎「真逆…?」

風喜「そうそう。家庭科室とか図書室側。」

…そういうことか。

僕は夏前から感づいていた日向の気持ちに気づき、一気に気持ちが落ち込む。

琥太郎「とりま、音楽室行こ。」

落ち込んでも時間は刻々と進んでしまっているので、授業の時間に間に合うように音楽室に行きまだ来てない日向を待っていると休み時間終了1分前に教室にやってきて席に座った。

その日向の肩にあったスクールバッグがさっき見たよりも膨れてて、どこかで何かを入れてきたことを物語っていた。

それに僕がまた落ち込んでいると音楽の授業なのに、家庭科の尚春先生がなぜか教壇に立った。

尚春「タチバナ先生はインフルになったらしいので、今日は私と一緒に映画鑑賞でーす。」

と、尚春先生は自習に近い授業に好き勝手に席移動を始める生徒たちを無視して、TVでミュージカル映画を見始めた。

僕もその映画を見ようと思ったけれど、目の前にも身の回りにも人がいて見れない。

だから後で調べられるようにタイトルだけ頭に焼き付けて過ごしていると、日向が周りの雑音に耐えられなかったのか、TV前の空いた席に移動した。

それに気づいた尚春先生は日向の隣に座り、何か楽しげに話す。

それが何よりも悔しくて誰の声も入ってこないと、いつのまにか隣に座っていた夏來が僕の肩を叩いた。

夏來「ねえ、聞いてる?」

琥太郎「は?何が?」

夏來「妃李たちと明日遊ぼうって話。カラオケかボウリングどっちにするか多数決とってんの。」

…あぁ?

なんで勝手に遊ぶことになってんだよ。

夏來「部活も委員会も職員会議で潰れるから夜ご飯も食べようよ。」

爽太「食い放題とか?」

風喜「寒いから温かぁいの食いたーい。」

その言葉に昨日食べたモツ鍋の味を思い出した僕は机の下で携帯を取り出し、あの店の平均単価を見てみる。

1人5000円はさすがに高いか…。

美味しいものはやっぱり高いんだなと改めて実感していると、マドンナの淡島さんがふわっと綿毛が降り立ったように夏來の隣に座った。

淡島「しゃぶしゃぶ食べに行こうよ。」

と、優しげに笑う淡島さんに爽太の頬が染る。

風喜「いいねっ!お鍋だし温かいね♡」

夏來「じゃあ温しゃぶで。2000円くらいで足りるかなー。」

僕はまたつまらない約束を取り付けられてしまうのに飽き飽きしながらも、今いる立ち位置の居心地の良さにあぐらをかいてるのも嫌気がさし、また自分を嫌いになった。


環流 虹向/てんしとおコタ
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