てんしとおコタ

環流 虹向

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12/21

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うるせぇ、うるせぇ…。

なんでもかんでも僕に聞いてくる奴ら、本当にうざったい。

僕は24日の終業式終わりにクラスメイト半分とクリスマス会をすることになったけど、全く行く気が起きない。

爽太「部活がある奴もいるから集合は18:30に夏來ん家の最寄り駅でいいか?」

と、爽太は僕の顔色を伺うように聞いてくる。

琥太郎「みんなが分かりやすいんだったらいいんじゃん?」

風喜「一応人数多いから500円くらいでなんか食い物持ち寄ろっか?」

琥太郎「まあ…、夏來ん家の人が大変だからそうした方がいいんじゃない?」

夏來「渡辺くん、ありがと!みんな、ママが大きなケーキ作ってくれるみたいだからケーキ以外よろしくね!」

その言葉にそばにいた参加者は頷き、その場で何を持ち寄るか考え始めるけれど誰かが休み時間の終わりが近づいていることに気づいて少し早歩きで次の授業がある家庭科室に向かう。

爽太「どうせ自習だし、寝るかー。」

風喜「あの人、プリントやれば点数くれるもんね。」

爽太「そのプリントがめんどいんだよな。真面目にやってんのって天使ちゃんくらいじゃね?」

と、爽太は久しぶりに日向のあだ名を口に出した。

風喜「だねぇ。勉強と先生しか友達いないしね。」

爽太「顔はいいのにずっと真顔だし、何考えてっか分かんねーから怖いよな。」

風喜「けど、ああいうのが根っこエロいらしい。」

爽太「え?それどこ情報?」

風喜「兄ちゃんから。清楚系で恥じらう乙女的なのがスイッチ入れるとどエロいんだって。」

爽太「風喜の兄ちゃん地下アイドルなんだろ?恋愛禁止じゃね?」

風喜「地下じゃなくて“地底”。顔売れてないからヤリまくり。」

爽太「うらやまぁ。」

くだらない情報を吐き出した風喜は胸ポケットに隠し持っていた飴玉を口に入れて歯が欠けそうなほどの音を出しながら爽太と一緒に童貞を拗らす。

僕はその仲間に入りたくなかったので適当に相槌を打って家庭科室に入ると家庭科の尚春なおはる先生と日向だけがまだ温まりきっていない教室にいた。

爽太「女々っ子めめっこ先生、おはー。」

尚春「中坊主ちゅうぼうず、おはー。」

と、尚春先生は僕たちから悪意のあるあだ名で呼ばれてもそれと似たギリギリのあだ名を呼んでくる。

その攻め方が絶妙で爽太のモンペも食い下がるほど、言葉を巧みに使う。

そんな尚春先生はよく日向に話しかけていて、見ると仲睦まじそうにしている。

それが嫌で僕は2学期が始まってから日向に時々用がなくても話しかけるけど、そんな空気感にはならない。

だから家庭科の班で一緒になっても2人だけの空間でしか見せない意地悪げな笑顔は見れないし、自然な笑顔は尚春先生にしか見せてくれない。

琥太郎「なんでそっち向いてんの。」

僕は日向の隣を今日もまたゲットしたけど、日向は班の机を背にして後ろにあった棚でプリントをやり始めてしまい、僕の言葉に何も反応をしてくれないので体全部を使って顔を覗き込む。

琥太郎「あとで答え教えてよ。」

今日もらったプリントの回答は全部分かるけど、日向との繋がりが欲しい僕はそうお願いしてみる。

日向「…やだ。」

琥太郎「なんで?」

日向「尚春先生はやらなくてもいいって言ってたし、私に構わないで。」

琥太郎「成績上げたい奴はやれって言ってたから教えてよ。」

日向「だったら自分で解きなよ。勉強は自分でしないと意味ないよ。」

僕は正論すぎることを言われ、どう次の口実を出すか考えていると爽太と風喜が今日の塾前にファミレスに行こうと話しかけられてしまい、せっかくの会話チャンスを邪魔されてしまった。

けど、冬休みに入れば監督と日向と僕3人だけの撮影が始まるから学校にいるよりチャンスは多いはず。

僕は冬休みがさっさと来てくれるように祈りながらパパッとプリントの問題を解き、昼寝をした。


環流 虹向/てんしとおコタ
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