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第四章☆愚か者は藁を掴んで燃やす(6話)

仲良し姉妹に問題が2つ

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架空、創作の話です。現実世界と混同しないようご注意ください。


◇~◇~◇

アレッサさんのお宅(社宅)にお邪魔するインシュア。勢いよく扉を開けてくれたのはアレッサさんの妹でイレッサさんである。腕にはイレッサさんの第一子をしっかりと抱えている。


アレッサさんとイレッサさんは実の姉妹。とても仲が良くてこうやって連絡をすれば直ぐに駆けつけて来てお互いの子供の面倒を見ているのだ。
実はご主人さんも兄弟同士である。しかし立場は逆転していて、妹のイレッサさんは兄と、姉のアレッサさんは弟の方と結婚をしている。

同じ職場で働く兄弟(ご主人さんたち)で共に救助隊に加入をしているが、イレッサさんのご主人は先月当番だったので今月は救助隊はお休みで本業にのみ従事している。
救助隊と言うのは、街の消防団のようなものであるのだ。



両親は王都の中心部を挟んで逆側に住んでいるがもう60代である。
コツコツ働いた両親は小さいながらも商店を経営していた。現在はその商店を人に貸して家賃収入がある。
結婚が遅かった事もあり、共に働いて優雅に遊べるわけではないが商店の家屋とは別に自宅を所有している。自宅と言っても貴族のような豪邸ではなくこじんまりとした一軒家で庭もあるが、庭の広さは馬車が置けるほど広くはない。昨年バリアフリーにリフォームをしたばかりである。




実はシャボーン国では貴族よりも平民の方が保険をかけている割合が高い。
貴族でなんらかの保険を個人に対してかけているのは3%に過ぎないがそれも馬車保険であったり、法人的な保険で領地の農産物が水害、冷害、日照りなどで不作だったりする時の保険であるが掛けているのは主に低位貴族。

高位貴族になると私財で十分事足りるので保険を利用しないものが多い。
フェオン未亡人や先代スザコーザ公爵夫人がかなり珍しいのだ。もっともこの2人もインシュアに言われて契約をしたので、それまでは保険と言うものを利用した事がない。

ちなみに国の管轄事業などを行う際や、街道、先日の危険指定された崖崩れなど必要がある場合には最低限の労働災害補償をする為に、読者の皆様の世界で言う強制保険とも言われているが自賠責(自動車損害賠償責任保険)と同じようなものを必須で加入するようになっている。
但し、内容としては皆さまの世界の自賠責(自動車損害賠償責任保険)と同じなので【対人】にしか効力を発揮しない。人がケガをする、死亡をしたという場合にしか使えないから、ものを壊した場合には使えないのだ。


平民は多種多様な保険をなにがしか掛けているというものは84%である。
子供に、孫に何か残してやりたいと言う者も多いが高齢者になると大半は葬儀代があればいいになっている。そう、葬儀はなんだかんだと金がかかるのである。

シャボーン国は火葬ではないので火葬費用というものはない。
リアルな世界では市によって費用が異なり、言い方は悪いが空きがない場合は他の市での火葬となるとその市の住民登録がないので割高になる。これはクレカや電子マネーは使えず現金で支払わねばならない。
そういった火葬費用は発生しないが、宗教によって神父、牧師、お坊さんなどに渡すお礼も現金である。相場は幾らと決まっていないのが怖い所であるが、シャボーン国では本葬時10万ベルが平民の大体の金額である。

但し、初七日や四十九日というような節目も一緒に行う場合はそれぞれなのでその分現金を用意しなければならない。シャボーン国で初七日や四十九日を行うのは、その宗教を信仰している者だけである。当然だ。




と、言う訳でアレッサさんとイレッサさんはそれぞれインシュアを介して保険に加入をしてくれているご契約者様である。ご両親の保険も丁度死亡保障は一生続くが払い込み期間をそろそろ終える終身の商品があった。


死亡保障についてはもう触る必要がないのだが1つ目の問題は病気やケガに対しての保障も同時に終わる事だ。
こちらはセットで加入しなければならないのに、生涯保障とはならないのだ。
払い込み期間の終了は保障期間の終了と同じとなる特約タイプであった。

高齢となると掛け金が高くなりホイホイとは払えない。
商店は日用雑貨を売っていたのだが持病の腰痛や血圧が高い事もあって買い付けに遠くまで行くのが限界となり廃業したのだ。現在は商店街の青年団を経由して他人に建物を貸して家賃収入で年金支給開始日まで細々と暮らす両親の為に現在はアレッサさんとイレッサさん世帯が折半して払っている。

両親は少なくても蓄えはあるから構わないと言ったが、実は2人の住んでいる家は貸し家ではなくそれぞれに両親が建ててくれた。
ご主人さん兄弟は孤児だったため家を借りるにも苦労をしたのを見かねて建ててくれたのだ。

ルルージェさんの御主人のように妻を愛し、家庭を大事にする良いご主人なのだが世間は孤児には甘くないのだ。だが、【人間性】を認めた姉妹の両親は、その兄弟に姉妹を託したのだ。
呼び寄せて一緒に住みたいが、年を取ると知らない土地で生活をするのは話し相手がいなくなり寂しいし、生まれ育った土地を離れたくないと現在に至っている。

最も、転勤もあるので2人いや、2つの世帯とも折角建ててもらった家は人に貸しているという状態でもある。


「インシュアさん、いったいどうしたの?」

「はい、そろそろご両親の保険の払い込み期間が終わります。以前に説明をさせて頂きましたが払い込みが終わっても死亡保障は続きますのでご安心ください」

「うん。それは前に聞いて安心した。死亡保障の付いたやつをあの年で新規とか見直し転換してもビックリする掛け金になるし、保障が続くって聞いて安心したのよ」

「そうそう。後は医療っていうかケガと入院は切れるんだよね。いいやつあった?」



「はい、医療保険に尽きましては年齢も65歳がお父様、64歳がお母様で、お二人とも血圧のお薬を少しきつめで服用されていますのでどうしても制限がかかってしまいます。

モッスグリ共済でしたら70歳まで持病や血圧の数値に不安があっても入れる商品が御座いますが、月の掛け金がお二人とも7300ベル。日額3500ベルですが入院給付は年間60日まで。入院御見舞金はありません。手術は一律10万ベルなのですが、通院はついておりません。71歳の誕生日の末日で保障が終わりとなります。

次にユズリッハ保険商会の日額保障ですが、年齢から月の掛け金が9千ベル前後になります。高齢者対応になるので日額3千ベルが90日保障。入院御見舞金は1万ベル、手術給付金は一律5万ベルです。

そして同じくユズリッハ保険商会の一時金タイプですが年齢とお薬の関係で引き受け出来るのが一時金10万ベルの(4)までとなります。ですので手術給付金は1万ベル。これで月にお1人6200ベルになります。通院は別途付ける事は可能ですが日額千ベルでこちらも年間60日までの保障。つけるとすればプラス1500ベル。年払いにすれば月割りで考えると1か月弱分ほど安くはなります。


あとは余裕がある場合ですが、ケガに特化した損保。こちらはケガのみですが入院、通院共に日額2500ベルを1000日対応。手術は内容問わず1万ベル、死亡保障が100万どうしてもついてきます。1000日ですのでケガで入院をされて寝たきりとなっても退院をされない限り起因した事象で考えますので3年弱まで給付金は受け取れます。年払いとなっていて1万4千ベル。ケガのみなので心筋梗塞などの病気では使えません」

「1000日って事は2年目とか支払いは?」

「なくても大丈夫です。保障期間内に起こったケガでの入院が2年半に及んでも2年目、3年目は言ってみればもう一つ契約するようなものです。但し既に入院をされている分については2重の給付金受け取りは出来ません」


「そっかぁ。年取ると高くなるもんね。もっと早い段階で見直し出来れば良かったんだけど」

「仕方ないよね。ウチら年とってからの子供だもん」

「まだ払い込み期間満了までは1年弱ありますし、お二人とも誕生日が来たばかりですから慌てなくて構いません。本日お時間を頂いたのだはまさに死亡保障の分です」

「死亡保障?触るの?もうすぐ終わるのに?」

「いいえ、保障そのものはもう触りません。終身ですし払い込み満了まで1年を切りましたから、ずっと持っていたほうがお得です。問題はここです」


アレッサさんとイレッサさんは、両親の保障内容を書いた書類のインシュアが指で示した部分を見たが、何が問題なのかサッパリ判らなかった。
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