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第一章☆喚く女(5話)
☆第一章の最終話☆契約者様の備えですから
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架空、創作の話です。現実世界と混同しないようご注意ください。
◇~◇~◇
4日後
前日の帰宅時に朝は顧客の元に直行すると伝えてあったインシュアは伯爵家から直接ハワードの家に向かった。
その前日、インシュアは幾つかの商会を訪問していた。
恐らくは契約になるだろうからと、掛け金払い込み確認で契約成立となるか、免責があるかを確認し、重要だと思われる事項をかきだすと書面を出した。
「では、こちらに署名を」
契約書ではない。しかし確認事項はこれからハワード一家にとっては大事なことだ。
手抜かりは許されない。
「インシュアさんには敵わないね。どう?ウチに来ない?」
「ユズリッハ保険商会さんには育てて頂いた恩があるので遠慮しますわ」
「そういう律儀な所もイイねぇ。また頼むよ」
「まだ頼むと決まっておりません。決まればよろしくお願いします」
そしてハワード家にやってきたのだ。
「ふぅ~」インシュアでも契約がどうなるか。緊張をするものである。
息を整えると、インシュアはドアをノックした。
「はーい」
声と同時にドアを開けてくれたのはハワードの妻エレンである。
「ユズリッハ保険商会、王都西南支店のインシュア・ランスと申します。この度は当社のサマンサ・ビーン販売員との契約でご迷惑をおかけいたしました。お詫び申し上げます。申し訳ございませんでした」
玄関先で深々と頭をさげるインシュアにエレンは早く話が聞きたいと家に入れてくれた。
女の子のアンナとコリンは教会にいっているという事で部屋の中にはハワードとエレン、ジョセフである。
インシュアは早速パンフレットを幾つかテーブルに広げた。
「ねぇ、どうしてあの保険がダメだって言ったの?」
エレンはパンフレットを並べるインシュアに問うた。
並べる手を止めてエレンを真っ直ぐにみてインシュアは答える。
「ご説明いたしましょう。判らない点は言葉を遮って構いませんので聞いてください」
インシュアの向かいにハワードとエレンが座るとパンフレットを2人の方向に向ける。
そしてユズリッハ保険商会で現在契約となっている書面を広げた。
「現在ハワードさんご一家は家族型の保険に定期保険で加入頂いております。内容はハワードさんが亡くなった時500万ベル、他の方は100万ベル。それに医療保障がついております。こちらは入院6日目から日額ハワードさんは3千ベル、他の方は千ベル。60日型となっております」
「待って、60日型って何?」
「一定期間、当社では1年間ですがその間に60日の入院分は給付金をお支払いするという事です。家族型ですのでお一人当たり年間12日が均等割りな日数です。ですが例えばハワードさんが年間30日、エレンさんが年間27日でも足して60日に達していませんので合計57日分の入院給付金をお支払いを致します」
「えっ?待って、じゃぁ、じゃぁなんだけどもしもよ?子供3人が20日づつ入院したらどうなるの?」
「それぞれ20日で3人分。合計60日ですから合計6万ベルの入院給付金をお支払いします」
「じゃ、もしもよ?その後旦那が4日入院したら?」
「年間使用分は既に使われていますのでお支払いの対象にはなりません。契約日を過ぎるのをお待ちください。1年間でリセットされますので」
「うっ嘘でしょ?」
「いえ、本当です。大げさな例になりますが、長期入院となった場合も5日目を経過した6日目から数えて61日目からは出ません。あと、手術ですが、規約をサマンサ・ビーンがお渡ししたと思うのですが入院給付金の支払い対象になる入院中の手術についてですが手術が入院の対象となる5日以前の場合は対象外になります。日帰り手術についても対象外です。入院給付金の出ない入院中の手術も対象外になります」
「えっ?じゃぁ腹切ったり、頭きったりする手術はその60日の中に入ってないとダメって事か?」
「そうです。この保険についてはそうなっております。そしてこの保険には入院御見舞金は付帯されておりません。その他、ケガについての入院は対象外となっております。大腿骨骨折、腱の切断、アキレス腱などですね。そう言うので入院をしても病気ではないので対象外です」
「何にもついてないじゃない。それでどうしてこんなに掛け金が高いの?」
「生存給付金が付いているからです。5年間保険を使う事無く皆さまご健康でしたら15万ベルが給付される、非常~にわかりやすく言うと、健康ご褒美金です。ですが小さなお子様のいる家庭には不向きな保険で、支給されることはジョゼフ君の年齢を考えると【ない】と申し上げます」
「待って、待って、そりゃ何もないのが一番だけど!」
「その通りでございます」
「でも、これじゃ子供3人で旦那は肉体労働だし役に立たないじゃない」
「はい、ですので…コホン、糞くらえ。と、申しました」
先日のハワードと同様エレンも崩れ落ちるように椅子にへたり込む。
毎月3万5千ベルの掛け金を払って使えない保険だとはっきり言われたのだ。
インシュアはそんな2人の前にパンフレットをグイっと差し出した。
「これは?」
「共済保険でございます」
<< はっ?? >>
「こちらはですね――」
「ちょっと待って!貴女ユズリッハ保険商会の販売員でしょう?」
「はい。ユズリッハ保険商会の王都西南支店で販売員をしております」
「どうして?これユズリッハ保険商会全然関係ないじゃない」
「はい、ユズリッハ保険商会は一切関係が御座いません」
ハワードも適切な提案をするとは言われたが、まさか自社とは関係ないものだとは全く考えてもおらず、余りの驚きに茶器を傾けたままで飲んでいた茶がそのままドバーっと下に落ちていった。
しかしインシュアはさもありなんと説明を続けた。
「こちらの商品はそれそれが加入となります。ハワードさんは月額2千ベルで死亡時100万、入院は日額5千ベル、こちらは日帰り入院から対応です。退院見舞金も日帰り入院対応で3万ベル、手術給付金は医療点数に応じて5万、10万、20万ベル。ガンの時は別途入院日額5千ベル、先進医療は2千万ベル、ケガの通院は入院若しくは手術をした場合対象ですが手術は日帰り手術も対象です、その場合日額2千ベル。水害などで家屋が被害を受けた時程度により5万ベルと50万ベルとなっております。
続きまして奥様のエレンさん、アンナちゃん、コリンちゃんは女性ですのでこちらの医療共済で月額お1人3千ベルとなります。ほぼハワードさんの内容と同じですが、少しお高いのは女性疾病については入院の日額は1万ベルとなります。ガンも同様に1万ベルとなりますので、例えば乳がんの場合は日額2万ベルが給付となります。
最後にジョゼフ君ですが、別の共済になります」
「えぇぇっ?これとはまた違う商会なのっ?!」
「はい、掛け金に対し条件の良いものをご提案させて頂いております。掛け金は月額2千ベル。こちらは入院が日帰り対応で日額1万ベル。ケガについては擦り傷、切り傷でも通院をすれば日額2千ベル、骨折や腱の断裂などを含む手術は一律お見舞金で10万ベルとなっております。小さいお子様は中耳炎などになりやすいものです。こちらはそういう中耳炎の切開についても保障の対象となっております。お子様が入院をしますとどうしてもエレンさんが付添となりますので外食も増えると思います。そういう出費を考えた提案です。
皆様に共通するのは入院は年間200日対応、通院は180日対応となっており、共済ですので給付金を請求した、しないに関わらず年に1回割戻金があります」
「なんだか‥‥夢を見ているのかしら…」
「現実で御座います。それでですね――」
「まだあるの!?」
「はい、申し訳ございません。現在の掛け金が5名様で1万3千ベルなのですがこちらをご覧ください」
サッとパンフレットの上下を入れ替えて次に見せたのは・・・。
「こちらはストゥロヴェリ互助会のパンフレットです。冠婚葬祭を扱っているのですが月額千ベルの50回払い。つまり5万ベルで葬儀の際は棺、祭壇、花、搬送などが受けられるというものです。計算しましたところ共済の割戻金が5名様で1万5千ベルほど御座います。この互助会の支払いを年払いにして割戻金をあてれば葬儀の際の費用が格安で済みます。概算ですが標準で47万ベルですが、この互助会会員システムを使いますと神父さんへの寄付、お返しを含んで15万ベルほどの持ち出しで済むと思います。あぁですが搬送の馬車を金張りにしたり、花をどんどん追加したり、弔問の方が200名を超えますと50万ベルほどの持ち出しになります。あ、冠婚葬祭なので結婚式にも使えますよ。なのでお葬式用と結婚式用で3口をお勧めしますがその場合2口分月額2千ベル必要ですね」
じぃぃっとパンフレットを見つめるハワードとエレン。
そうなのだ。死亡保険金は有難いが葬儀は恐ろしいほど金がかかるものなのだ。
結婚式だってなんだかんだと金がかかる。頭が痛くなりそうである。
「そしてこちら。やっと当社の商品になりますが家族型ではなく個人型になりますが死亡保障のみに特化した保険です。自死以外の理由でお亡くなりになった場合に200万ベルをお支払いするのですが、終身タイプでハワードさんが月額2400ベル、エレンさんが2千ベル、お子様は300ベル。ジョセフ君だけは7歳以上の制約があるので加入できませんが、5年以上掛け金をお支払いいただければ解約金が出ます」
「って事は共済が1万3千、互助会が3口として3千ベル、それがジョゼフ以外で5千ベル…てことは2万1千ベル?今より安いじゃない!」
「いえ、正確には共済の割戻がありますので月額千ベルを引いて2万ベルですね。今回共済に致しましたのは、掛け金が年齢問わず一律ですし金額も変わりません。更新なども自動ですので手間がありません」
「いやいや…ちょっと待って…」
「そして最後なのですが、これも当社の商品でして現在3万5千ベルを掛け金で払って頂いております。もしよろしければこちらの積み立てをご利用頂けませんでしょうか。御貯金と考えて頂いて良いのですが月額1万ベルで20年払い。ハワードさんが55歳で満期を迎えた時に240万ベルを掛け金で払って頂くのですが10年目まで固定金利、11年目からは変動金利ですので概算ですが今の金利ですと300万ベルになると思いますし共済のほうが55歳までの保障なのです。ですのでこの満期金をご利用いただき以降は入院特約を死亡保障に特化した保険に付帯して頂ければよろしいかと。ご検討頂けませんでしょうか?」
「考えるまでもないわ!そうよね?あなたっ!」
「あぁ、勿論だ」
「えーっと…ご検討・・頂ける?」
「検討の余地なし!!全部加入よ!」
「ありがとうございます。不明な点は――」
「今はない!思いついたら聞いてもいいんでしょ?」
「構いませんが、出来れば加入前にご理解頂きたいと思います」
その後、ガンの入院、手術については60日の免責期間がある事を伝え、提案した全ての契約書を持ってハワードとエレン、ジョゼフとそれぞれの商会に行く。
「では、こちらに御署名をお願いいたします」
無事に手続きを済ませ効力を確認したあと、最後にユズリッハ商会でそれまでの保険を解約したのだった。
「最善の提案は出来ないと言っていたが、最善だよ。ありがとう」
「いえ、今できる提案をさせて頂いただけです」
「でも、貴女の売り上げにならないでしょう?なんだか悪いわ」
「いえ、ご契約者様の備えですからお気になさらず」
そう言うものの当然他の商会や互助会からも歩合は出るのだ。
インシュアはちゃっかりしているのである。
ただ、それを言ってしまうと「へっ?」となるので言わないだけなのだ。
歩合を当てにしていたサマンサが喚いたのは言うまでもない。
第一章 終わり
◇~◇~◇
4日後
前日の帰宅時に朝は顧客の元に直行すると伝えてあったインシュアは伯爵家から直接ハワードの家に向かった。
その前日、インシュアは幾つかの商会を訪問していた。
恐らくは契約になるだろうからと、掛け金払い込み確認で契約成立となるか、免責があるかを確認し、重要だと思われる事項をかきだすと書面を出した。
「では、こちらに署名を」
契約書ではない。しかし確認事項はこれからハワード一家にとっては大事なことだ。
手抜かりは許されない。
「インシュアさんには敵わないね。どう?ウチに来ない?」
「ユズリッハ保険商会さんには育てて頂いた恩があるので遠慮しますわ」
「そういう律儀な所もイイねぇ。また頼むよ」
「まだ頼むと決まっておりません。決まればよろしくお願いします」
そしてハワード家にやってきたのだ。
「ふぅ~」インシュアでも契約がどうなるか。緊張をするものである。
息を整えると、インシュアはドアをノックした。
「はーい」
声と同時にドアを開けてくれたのはハワードの妻エレンである。
「ユズリッハ保険商会、王都西南支店のインシュア・ランスと申します。この度は当社のサマンサ・ビーン販売員との契約でご迷惑をおかけいたしました。お詫び申し上げます。申し訳ございませんでした」
玄関先で深々と頭をさげるインシュアにエレンは早く話が聞きたいと家に入れてくれた。
女の子のアンナとコリンは教会にいっているという事で部屋の中にはハワードとエレン、ジョセフである。
インシュアは早速パンフレットを幾つかテーブルに広げた。
「ねぇ、どうしてあの保険がダメだって言ったの?」
エレンはパンフレットを並べるインシュアに問うた。
並べる手を止めてエレンを真っ直ぐにみてインシュアは答える。
「ご説明いたしましょう。判らない点は言葉を遮って構いませんので聞いてください」
インシュアの向かいにハワードとエレンが座るとパンフレットを2人の方向に向ける。
そしてユズリッハ保険商会で現在契約となっている書面を広げた。
「現在ハワードさんご一家は家族型の保険に定期保険で加入頂いております。内容はハワードさんが亡くなった時500万ベル、他の方は100万ベル。それに医療保障がついております。こちらは入院6日目から日額ハワードさんは3千ベル、他の方は千ベル。60日型となっております」
「待って、60日型って何?」
「一定期間、当社では1年間ですがその間に60日の入院分は給付金をお支払いするという事です。家族型ですのでお一人当たり年間12日が均等割りな日数です。ですが例えばハワードさんが年間30日、エレンさんが年間27日でも足して60日に達していませんので合計57日分の入院給付金をお支払いを致します」
「えっ?待って、じゃぁ、じゃぁなんだけどもしもよ?子供3人が20日づつ入院したらどうなるの?」
「それぞれ20日で3人分。合計60日ですから合計6万ベルの入院給付金をお支払いします」
「じゃ、もしもよ?その後旦那が4日入院したら?」
「年間使用分は既に使われていますのでお支払いの対象にはなりません。契約日を過ぎるのをお待ちください。1年間でリセットされますので」
「うっ嘘でしょ?」
「いえ、本当です。大げさな例になりますが、長期入院となった場合も5日目を経過した6日目から数えて61日目からは出ません。あと、手術ですが、規約をサマンサ・ビーンがお渡ししたと思うのですが入院給付金の支払い対象になる入院中の手術についてですが手術が入院の対象となる5日以前の場合は対象外になります。日帰り手術についても対象外です。入院給付金の出ない入院中の手術も対象外になります」
「えっ?じゃぁ腹切ったり、頭きったりする手術はその60日の中に入ってないとダメって事か?」
「そうです。この保険についてはそうなっております。そしてこの保険には入院御見舞金は付帯されておりません。その他、ケガについての入院は対象外となっております。大腿骨骨折、腱の切断、アキレス腱などですね。そう言うので入院をしても病気ではないので対象外です」
「何にもついてないじゃない。それでどうしてこんなに掛け金が高いの?」
「生存給付金が付いているからです。5年間保険を使う事無く皆さまご健康でしたら15万ベルが給付される、非常~にわかりやすく言うと、健康ご褒美金です。ですが小さなお子様のいる家庭には不向きな保険で、支給されることはジョゼフ君の年齢を考えると【ない】と申し上げます」
「待って、待って、そりゃ何もないのが一番だけど!」
「その通りでございます」
「でも、これじゃ子供3人で旦那は肉体労働だし役に立たないじゃない」
「はい、ですので…コホン、糞くらえ。と、申しました」
先日のハワードと同様エレンも崩れ落ちるように椅子にへたり込む。
毎月3万5千ベルの掛け金を払って使えない保険だとはっきり言われたのだ。
インシュアはそんな2人の前にパンフレットをグイっと差し出した。
「これは?」
「共済保険でございます」
<< はっ?? >>
「こちらはですね――」
「ちょっと待って!貴女ユズリッハ保険商会の販売員でしょう?」
「はい。ユズリッハ保険商会の王都西南支店で販売員をしております」
「どうして?これユズリッハ保険商会全然関係ないじゃない」
「はい、ユズリッハ保険商会は一切関係が御座いません」
ハワードも適切な提案をするとは言われたが、まさか自社とは関係ないものだとは全く考えてもおらず、余りの驚きに茶器を傾けたままで飲んでいた茶がそのままドバーっと下に落ちていった。
しかしインシュアはさもありなんと説明を続けた。
「こちらの商品はそれそれが加入となります。ハワードさんは月額2千ベルで死亡時100万、入院は日額5千ベル、こちらは日帰り入院から対応です。退院見舞金も日帰り入院対応で3万ベル、手術給付金は医療点数に応じて5万、10万、20万ベル。ガンの時は別途入院日額5千ベル、先進医療は2千万ベル、ケガの通院は入院若しくは手術をした場合対象ですが手術は日帰り手術も対象です、その場合日額2千ベル。水害などで家屋が被害を受けた時程度により5万ベルと50万ベルとなっております。
続きまして奥様のエレンさん、アンナちゃん、コリンちゃんは女性ですのでこちらの医療共済で月額お1人3千ベルとなります。ほぼハワードさんの内容と同じですが、少しお高いのは女性疾病については入院の日額は1万ベルとなります。ガンも同様に1万ベルとなりますので、例えば乳がんの場合は日額2万ベルが給付となります。
最後にジョゼフ君ですが、別の共済になります」
「えぇぇっ?これとはまた違う商会なのっ?!」
「はい、掛け金に対し条件の良いものをご提案させて頂いております。掛け金は月額2千ベル。こちらは入院が日帰り対応で日額1万ベル。ケガについては擦り傷、切り傷でも通院をすれば日額2千ベル、骨折や腱の断裂などを含む手術は一律お見舞金で10万ベルとなっております。小さいお子様は中耳炎などになりやすいものです。こちらはそういう中耳炎の切開についても保障の対象となっております。お子様が入院をしますとどうしてもエレンさんが付添となりますので外食も増えると思います。そういう出費を考えた提案です。
皆様に共通するのは入院は年間200日対応、通院は180日対応となっており、共済ですので給付金を請求した、しないに関わらず年に1回割戻金があります」
「なんだか‥‥夢を見ているのかしら…」
「現実で御座います。それでですね――」
「まだあるの!?」
「はい、申し訳ございません。現在の掛け金が5名様で1万3千ベルなのですがこちらをご覧ください」
サッとパンフレットの上下を入れ替えて次に見せたのは・・・。
「こちらはストゥロヴェリ互助会のパンフレットです。冠婚葬祭を扱っているのですが月額千ベルの50回払い。つまり5万ベルで葬儀の際は棺、祭壇、花、搬送などが受けられるというものです。計算しましたところ共済の割戻金が5名様で1万5千ベルほど御座います。この互助会の支払いを年払いにして割戻金をあてれば葬儀の際の費用が格安で済みます。概算ですが標準で47万ベルですが、この互助会会員システムを使いますと神父さんへの寄付、お返しを含んで15万ベルほどの持ち出しで済むと思います。あぁですが搬送の馬車を金張りにしたり、花をどんどん追加したり、弔問の方が200名を超えますと50万ベルほどの持ち出しになります。あ、冠婚葬祭なので結婚式にも使えますよ。なのでお葬式用と結婚式用で3口をお勧めしますがその場合2口分月額2千ベル必要ですね」
じぃぃっとパンフレットを見つめるハワードとエレン。
そうなのだ。死亡保険金は有難いが葬儀は恐ろしいほど金がかかるものなのだ。
結婚式だってなんだかんだと金がかかる。頭が痛くなりそうである。
「そしてこちら。やっと当社の商品になりますが家族型ではなく個人型になりますが死亡保障のみに特化した保険です。自死以外の理由でお亡くなりになった場合に200万ベルをお支払いするのですが、終身タイプでハワードさんが月額2400ベル、エレンさんが2千ベル、お子様は300ベル。ジョセフ君だけは7歳以上の制約があるので加入できませんが、5年以上掛け金をお支払いいただければ解約金が出ます」
「って事は共済が1万3千、互助会が3口として3千ベル、それがジョゼフ以外で5千ベル…てことは2万1千ベル?今より安いじゃない!」
「いえ、正確には共済の割戻がありますので月額千ベルを引いて2万ベルですね。今回共済に致しましたのは、掛け金が年齢問わず一律ですし金額も変わりません。更新なども自動ですので手間がありません」
「いやいや…ちょっと待って…」
「そして最後なのですが、これも当社の商品でして現在3万5千ベルを掛け金で払って頂いております。もしよろしければこちらの積み立てをご利用頂けませんでしょうか。御貯金と考えて頂いて良いのですが月額1万ベルで20年払い。ハワードさんが55歳で満期を迎えた時に240万ベルを掛け金で払って頂くのですが10年目まで固定金利、11年目からは変動金利ですので概算ですが今の金利ですと300万ベルになると思いますし共済のほうが55歳までの保障なのです。ですのでこの満期金をご利用いただき以降は入院特約を死亡保障に特化した保険に付帯して頂ければよろしいかと。ご検討頂けませんでしょうか?」
「考えるまでもないわ!そうよね?あなたっ!」
「あぁ、勿論だ」
「えーっと…ご検討・・頂ける?」
「検討の余地なし!!全部加入よ!」
「ありがとうございます。不明な点は――」
「今はない!思いついたら聞いてもいいんでしょ?」
「構いませんが、出来れば加入前にご理解頂きたいと思います」
その後、ガンの入院、手術については60日の免責期間がある事を伝え、提案した全ての契約書を持ってハワードとエレン、ジョゼフとそれぞれの商会に行く。
「では、こちらに御署名をお願いいたします」
無事に手続きを済ませ効力を確認したあと、最後にユズリッハ商会でそれまでの保険を解約したのだった。
「最善の提案は出来ないと言っていたが、最善だよ。ありがとう」
「いえ、今できる提案をさせて頂いただけです」
「でも、貴女の売り上げにならないでしょう?なんだか悪いわ」
「いえ、ご契約者様の備えですからお気になさらず」
そう言うものの当然他の商会や互助会からも歩合は出るのだ。
インシュアはちゃっかりしているのである。
ただ、それを言ってしまうと「へっ?」となるので言わないだけなのだ。
歩合を当てにしていたサマンサが喚いたのは言うまでもない。
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