追放されましたが、私は幸せなのでご心配なく。

cyaru

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第18話  急がば回れDE経由しよう

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この状態が不味いと感じているのはカーティスだけではなかった。

カーティスに退位を申し渡した大臣たちも頭を抱えていたのだ。
残っている2人の側妃に頼もうにもその側妃も自身が受け持つ国との関係が拗れないように何時寝ているのかも不明なほどに奔走している。

レブレス王国から国交断絶を申し渡されている事は既に他国にも通達されていて、残るライフラインとなる他の国との交易を現状維持しなければ、この冬には食糧難が訪れてしまう。

ウェルシェスがレブレス王国との対話の窓口だったように2人の側妃も担当の国の窓口になっている。大臣たちも2人の側妃に「頼む」とは言えなかった。


「プリンガ―家に動きはないのか」

「ありません」

「そうか」


ウェルシェスがタビュレン子爵領から王都にいる父親に言伝を頼んだ御者は王都には向かっているが急いで片道1か月かかる道のりでまだ王都には到着をしていないので動きなどあるはずもない。

ウェルシェスが出立をする前にハネース王国にいるプリンガ―伯爵の妹の元に手紙はもう届いているだろうが、その返事すらまだ届いてはいないのだ。

プリンガ―伯爵家も動くに動けない状態なので、今は待つ時。
動かない者の動向など解るはずもなかった。


★~★

そんなプリンガ―伯爵家にウェルシェスが王都に戻らせた御者がやっと到着をしたのはウェルシェスが出立をして62日目の事だった。

馬車の出入りは監視をしていても、伯爵家なので私兵の出入りは当たり前にある。馬車で戻る訳でもなく騎乗した御者が戻った事は大臣たちが遣わせた兵士も見落としていて気が付かなかった。


「タビュレン子爵領に?」

「はい。馬車の車軸が折れてしまい進もうにも進めなくなりました。お嬢様はタビュレン子爵の屋敷…と申しますか…家に滞在をされておられます。修理をしない事にはどうにもなりませんので」


プリンガ―伯爵もタビュレン子爵領の事を知らない訳ではない。
今から使いをやる、馬車を送るにしても気候的に雪で動けなくなる。農機具を主に開発、販売などをしているので、プリンガ―伯爵の代になってからは取引はないが、過去に曾祖父だったか高祖父だったか。取引をしていた帳簿を見たことがあった。

覚えていたのは、雪に閉ざされる期間が長いので納品をするにも時期が指定をされていて「何故だ?」と疑問を持ったので調べたことがあったからである。

商売をしていると、今、取引をしている貴族や商会の事を知るのは当たり前だが取引が無くなった貴族や商会。どうして取引をやめたのかその原因を知れば同じ失敗をしなくて済むからである。

タビュレン子爵領との取引が出来なくなったのはタビュレン子爵家の収益が落ち込み、新規購入が出来なくなったのと販売した農機具の保証期間が終了したことによるもの。


だとしても、大事な娘を保護してくれているのに何もしないという訳には行かない。
ウェルシェスからは滞在中の費用は勿論だが、恩を返したいとの思いがくみ取れる。

直ぐ折り返しかかった費用などを持たせようかと考えたが、監視もされている上に動けばウェルシェスの居場所を知られる危険性もあった。

プリンガ―伯爵は考えた挙句、手紙を2通書いた。
1通はウェルシェスに、もう1通はハネース王国にいる妹に。

「今、直接タビュレン子爵領に向かっても山を越える前に足止めになる。申し訳ないがポメニラアン王国を経由し先にハネース王国へ、そこからならタビュレン子爵領にも雪道にはなるがソリで行けるはずだ。頼まれてくれるか」

海沿いにあるポメニラアン王国は雪に閉ざされることはない。海沿いの街を通るので日数はかかるが、ハネース王国の妹の所に行けばタビュレン子爵領まで犬ソリを出してくれる。

プリンガ―伯爵は直行ではなく農機具などもポメニラアン王国には販売をしているので販路は持っている。ポメニラアン王国の取引先に納品すると見せかけてハネース王国経由でウェルシェスの希望の品を届ける事にした。

後を付けて来る監視兵たちもポメニラアン王国に入国しさらに端の村への納品だと諦める筈。

ウェルシェスへの手紙は犬ソリを使うとしてもポメニラアン王国経由でハネース王国に持ち込んだ農機具などは春を待ってタビュレン子爵領にハネース王国側から持ち込めばいいだけだ。

「バハニーズならこの意味を解って農機具を一時保管してくれるはずだ」

まだ来ないハネース王国に嫁いだ妹ハバニーズからの返事。
大きく動くことは出来ないし、期待値の方が大きいけれど「今、出来る事をするだけだ」プリンガ―伯爵はもしもを考え、先に農機具を、遅れてウェルシェスの兄ベルドーマンをポメニラアン王国経由でハネース王国に向かわせることにした。

「急がば回れだ。元気だと解ればそれだけで儲けものだからな」

プリンガ―伯爵はウェルシェスからの手紙をもう一度読み返し、必要なものを紙に書き留めると名残惜しさも感じつつ、手紙を暖炉にくべて灰にした。
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