15 / 31
第15話 タビュレン子爵領萌え計画
しおりを挟む
冷たい風が山から吹き下ろす中、羊に跨ったベールジアンとウェルシェスは領民たちと竈の灰を撒いた畑にやって来ていた。
「来年は領地の東半分にカーンザの種を蒔きます。ゾルタンは現状のままで構いませんが種を取る時は出来るだけ拾い残しの無いようにしてくださいね。西半分は2年かけて土を培養しますのでさっき混ぜて頂いた灰。そしてこれから皆さんの家庭で出る残飯と落ち葉を混ぜた腐葉土を春になったら梳き込みます。土が出来たらカーンザを西に移し替え、それまでカーンザを植えていたほうで豆類や白菜などの野菜を育てます」
「小麦も碌に育たないのにカーンザ??その植物が育つのかねぇ」
「ゾルタンが育っているなら大丈夫です。あとは冬の間に使っていない石造りの農機具小屋を片付けてマイタケなどの栽培をします」
「あの石の家を使うのかい?暫く使ってないからネズミやモグラの住処になってるさね」
「ではネズミやモグラに返して頂きましょう。賃料を払って貰ってないのですから追い出してもネズミやモグラは文句を言いませんわ」
ウェルシェスはこれからは季節問わず何らかの収入源を領民に持たせることにした。
春になれば山菜という野草を採取。これは薬草でもあるものがほとんど。
カーンザは毎日手入れをしなくてもいいし、水撒きも毎日でなくてもいい。
つまり手が空く。
その間に薬草である山菜を採取して、洗って干して煎じたりする。
手順を覚えればいいのだから土を作る2年なら2回。1回目は恐る恐るでも2回目は1回目の問題点を改善してもっとスムーズに作業を行える。
同時進行で行うのが残飯を利用した堆肥作り。
夏になれば薬草を売りにハネース王国に行き、ついでに秋の収穫で得られるカーンザの売り込みをする。
秋はカーンザを収穫し、粒の状態でハネース王国に行き予約してくれた家に代金と引き換えに配って来る。
そして雪に閉ざされる冬は領民全員でキノコの栽培。
初回となる今回は栽培までは持って行けないだろうが、マイタケを栽培する培土作りを行う。
冬を超えるための薪を拾って来たり、幹などは薪割りをして薪を作るが面倒でもそれを石の家と呼ばれる家で行う。目的は薪割りなどをする時に発生する木くずや、幹をのこぎりで切断する時に出るおがくず。
これを今年ゾルダンが育っている部分の土と水を混ぜ込んで蒸すのだ。
その土は小麦を育てていて、菌が繁殖している土も同時に使う。
木の家だと家そのものが燃えてしまう可能性があるので石の家は非常に都合がいい。
石の家の竈は追い炊き式の風呂で火を起こすように外側に作る。中は熱せられて100度ほどになるので人間はとてもいられるはずがないが、これでいい。
「そんなに家の中を熱くしてどうするんだい?土も燃えてしまうよ」
「燃えません。萌えるのは心です」
「心の萌え…って!!そこは良いけど、なんでそんな事を!?」
「悪い菌を殺すのです。内部の温度を100度ほどにあげます。おそらく籠る熱の温度は110度を超えるでしょう。冬になるとここは雪が積もりますよね。つまり外気はかなり冷え込む。石は温度を伝えにくい物質なのですが、中と外で120度以上の差が出来ると、火を消した後、内部の温度は下がっていきます。でもそこまで高温になった内部は完全に外部の温度とは一緒になりません。多分、10ないし15度前後で冬を越す感じになると思います。春になればキノコを栽培する土になりますので、麻袋に入れてキノコ菌を付けて袋でキノコを作るんです」
「キノコを袋で?!そんな事が出来るのか」
「出来ます。ガラス瓶でも出来ますよ。シイタケのように原木に菌を付けて栽培する方法もありますが、ここではマイタケを栽培し、乾燥させて出荷します。手順を覚えて2年目、3年目の冬には各家庭の納屋などで栽培できるように家も改良しましょう」
「乾燥…そうか、それだと日持ちするから運べるんだ!」
「家も手を入れてくれるなら冬でも仕事が出来る。春になれば売りに行って金になる」
「そうです。名付けて!!」
<< 名付けて? >>
「タビュレン子爵領、燃えて冷え、財布は萌え計画!コホン。計画はわたくしですが名づけはルジーこと、ベールジアン様で御座います」
ウェルシェスの話に顔も紅潮させて鼻息もフンフンと荒く聞き入った領民たちはベールジアンの命名に心が冷えた。
「来年は領地の東半分にカーンザの種を蒔きます。ゾルタンは現状のままで構いませんが種を取る時は出来るだけ拾い残しの無いようにしてくださいね。西半分は2年かけて土を培養しますのでさっき混ぜて頂いた灰。そしてこれから皆さんの家庭で出る残飯と落ち葉を混ぜた腐葉土を春になったら梳き込みます。土が出来たらカーンザを西に移し替え、それまでカーンザを植えていたほうで豆類や白菜などの野菜を育てます」
「小麦も碌に育たないのにカーンザ??その植物が育つのかねぇ」
「ゾルタンが育っているなら大丈夫です。あとは冬の間に使っていない石造りの農機具小屋を片付けてマイタケなどの栽培をします」
「あの石の家を使うのかい?暫く使ってないからネズミやモグラの住処になってるさね」
「ではネズミやモグラに返して頂きましょう。賃料を払って貰ってないのですから追い出してもネズミやモグラは文句を言いませんわ」
ウェルシェスはこれからは季節問わず何らかの収入源を領民に持たせることにした。
春になれば山菜という野草を採取。これは薬草でもあるものがほとんど。
カーンザは毎日手入れをしなくてもいいし、水撒きも毎日でなくてもいい。
つまり手が空く。
その間に薬草である山菜を採取して、洗って干して煎じたりする。
手順を覚えればいいのだから土を作る2年なら2回。1回目は恐る恐るでも2回目は1回目の問題点を改善してもっとスムーズに作業を行える。
同時進行で行うのが残飯を利用した堆肥作り。
夏になれば薬草を売りにハネース王国に行き、ついでに秋の収穫で得られるカーンザの売り込みをする。
秋はカーンザを収穫し、粒の状態でハネース王国に行き予約してくれた家に代金と引き換えに配って来る。
そして雪に閉ざされる冬は領民全員でキノコの栽培。
初回となる今回は栽培までは持って行けないだろうが、マイタケを栽培する培土作りを行う。
冬を超えるための薪を拾って来たり、幹などは薪割りをして薪を作るが面倒でもそれを石の家と呼ばれる家で行う。目的は薪割りなどをする時に発生する木くずや、幹をのこぎりで切断する時に出るおがくず。
これを今年ゾルダンが育っている部分の土と水を混ぜ込んで蒸すのだ。
その土は小麦を育てていて、菌が繁殖している土も同時に使う。
木の家だと家そのものが燃えてしまう可能性があるので石の家は非常に都合がいい。
石の家の竈は追い炊き式の風呂で火を起こすように外側に作る。中は熱せられて100度ほどになるので人間はとてもいられるはずがないが、これでいい。
「そんなに家の中を熱くしてどうするんだい?土も燃えてしまうよ」
「燃えません。萌えるのは心です」
「心の萌え…って!!そこは良いけど、なんでそんな事を!?」
「悪い菌を殺すのです。内部の温度を100度ほどにあげます。おそらく籠る熱の温度は110度を超えるでしょう。冬になるとここは雪が積もりますよね。つまり外気はかなり冷え込む。石は温度を伝えにくい物質なのですが、中と外で120度以上の差が出来ると、火を消した後、内部の温度は下がっていきます。でもそこまで高温になった内部は完全に外部の温度とは一緒になりません。多分、10ないし15度前後で冬を越す感じになると思います。春になればキノコを栽培する土になりますので、麻袋に入れてキノコ菌を付けて袋でキノコを作るんです」
「キノコを袋で?!そんな事が出来るのか」
「出来ます。ガラス瓶でも出来ますよ。シイタケのように原木に菌を付けて栽培する方法もありますが、ここではマイタケを栽培し、乾燥させて出荷します。手順を覚えて2年目、3年目の冬には各家庭の納屋などで栽培できるように家も改良しましょう」
「乾燥…そうか、それだと日持ちするから運べるんだ!」
「家も手を入れてくれるなら冬でも仕事が出来る。春になれば売りに行って金になる」
「そうです。名付けて!!」
<< 名付けて? >>
「タビュレン子爵領、燃えて冷え、財布は萌え計画!コホン。計画はわたくしですが名づけはルジーこと、ベールジアン様で御座います」
ウェルシェスの話に顔も紅潮させて鼻息もフンフンと荒く聞き入った領民たちはベールジアンの命名に心が冷えた。
1,304
お気に入りに追加
1,959
あなたにおすすめの小説
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

元婚約者に未練タラタラな旦那様、もういらないんだけど?
しゃーりん
恋愛
結婚して3年、今日も旦那様が離婚してほしいと言い、ロザリアは断る。
いつもそれで終わるのに、今日の旦那様は違いました。
どうやら元婚約者と再会したらしく、彼女と再婚したいらしいそうです。
そうなの?でもそれを義両親が認めてくれると思います?
旦那様が出て行ってくれるのであれば離婚しますよ?というお話です。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。
金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。
前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう?
私の願い通り滅びたのだろうか?
前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。
緩い世界観の緩いお話しです。
ご都合主義です。
*タイトル変更しました。すみません。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

婚約者を交換しましょう!
しゃーりん
恋愛
公爵令息ランディの婚約者ローズはまだ14歳。
友人たちにローズの幼さを語って貶すところを聞いてしまった。
ならば婚約解消しましょう?
一緒に話を聞いていた姉と姉の婚約者、そして父の協力で婚約解消するお話です。

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる