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第15話 タビュレン子爵領萌え計画
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冷たい風が山から吹き下ろす中、羊に跨ったベールジアンとウェルシェスは領民たちと竈の灰を撒いた畑にやって来ていた。
「来年は領地の東半分にカーンザの種を蒔きます。ゾルタンは現状のままで構いませんが種を取る時は出来るだけ拾い残しの無いようにしてくださいね。西半分は2年かけて土を培養しますのでさっき混ぜて頂いた灰。そしてこれから皆さんの家庭で出る残飯と落ち葉を混ぜた腐葉土を春になったら梳き込みます。土が出来たらカーンザを西に移し替え、それまでカーンザを植えていたほうで豆類や白菜などの野菜を育てます」
「小麦も碌に育たないのにカーンザ??その植物が育つのかねぇ」
「ゾルタンが育っているなら大丈夫です。あとは冬の間に使っていない石造りの農機具小屋を片付けてマイタケなどの栽培をします」
「あの石の家を使うのかい?暫く使ってないからネズミやモグラの住処になってるさね」
「ではネズミやモグラに返して頂きましょう。賃料を払って貰ってないのですから追い出してもネズミやモグラは文句を言いませんわ」
ウェルシェスはこれからは季節問わず何らかの収入源を領民に持たせることにした。
春になれば山菜という野草を採取。これは薬草でもあるものがほとんど。
カーンザは毎日手入れをしなくてもいいし、水撒きも毎日でなくてもいい。
つまり手が空く。
その間に薬草である山菜を採取して、洗って干して煎じたりする。
手順を覚えればいいのだから土を作る2年なら2回。1回目は恐る恐るでも2回目は1回目の問題点を改善してもっとスムーズに作業を行える。
同時進行で行うのが残飯を利用した堆肥作り。
夏になれば薬草を売りにハネース王国に行き、ついでに秋の収穫で得られるカーンザの売り込みをする。
秋はカーンザを収穫し、粒の状態でハネース王国に行き予約してくれた家に代金と引き換えに配って来る。
そして雪に閉ざされる冬は領民全員でキノコの栽培。
初回となる今回は栽培までは持って行けないだろうが、マイタケを栽培する培土作りを行う。
冬を超えるための薪を拾って来たり、幹などは薪割りをして薪を作るが面倒でもそれを石の家と呼ばれる家で行う。目的は薪割りなどをする時に発生する木くずや、幹をのこぎりで切断する時に出るおがくず。
これを今年ゾルダンが育っている部分の土と水を混ぜ込んで蒸すのだ。
その土は小麦を育てていて、菌が繁殖している土も同時に使う。
木の家だと家そのものが燃えてしまう可能性があるので石の家は非常に都合がいい。
石の家の竈は追い炊き式の風呂で火を起こすように外側に作る。中は熱せられて100度ほどになるので人間はとてもいられるはずがないが、これでいい。
「そんなに家の中を熱くしてどうするんだい?土も燃えてしまうよ」
「燃えません。萌えるのは心です」
「心の萌え…って!!そこは良いけど、なんでそんな事を!?」
「悪い菌を殺すのです。内部の温度を100度ほどにあげます。おそらく籠る熱の温度は110度を超えるでしょう。冬になるとここは雪が積もりますよね。つまり外気はかなり冷え込む。石は温度を伝えにくい物質なのですが、中と外で120度以上の差が出来ると、火を消した後、内部の温度は下がっていきます。でもそこまで高温になった内部は完全に外部の温度とは一緒になりません。多分、10ないし15度前後で冬を越す感じになると思います。春になればキノコを栽培する土になりますので、麻袋に入れてキノコ菌を付けて袋でキノコを作るんです」
「キノコを袋で?!そんな事が出来るのか」
「出来ます。ガラス瓶でも出来ますよ。シイタケのように原木に菌を付けて栽培する方法もありますが、ここではマイタケを栽培し、乾燥させて出荷します。手順を覚えて2年目、3年目の冬には各家庭の納屋などで栽培できるように家も改良しましょう」
「乾燥…そうか、それだと日持ちするから運べるんだ!」
「家も手を入れてくれるなら冬でも仕事が出来る。春になれば売りに行って金になる」
「そうです。名付けて!!」
<< 名付けて? >>
「タビュレン子爵領、燃えて冷え、財布は萌え計画!コホン。計画はわたくしですが名づけはルジーこと、ベールジアン様で御座います」
ウェルシェスの話に顔も紅潮させて鼻息もフンフンと荒く聞き入った領民たちはベールジアンの命名に心が冷えた。
「来年は領地の東半分にカーンザの種を蒔きます。ゾルタンは現状のままで構いませんが種を取る時は出来るだけ拾い残しの無いようにしてくださいね。西半分は2年かけて土を培養しますのでさっき混ぜて頂いた灰。そしてこれから皆さんの家庭で出る残飯と落ち葉を混ぜた腐葉土を春になったら梳き込みます。土が出来たらカーンザを西に移し替え、それまでカーンザを植えていたほうで豆類や白菜などの野菜を育てます」
「小麦も碌に育たないのにカーンザ??その植物が育つのかねぇ」
「ゾルタンが育っているなら大丈夫です。あとは冬の間に使っていない石造りの農機具小屋を片付けてマイタケなどの栽培をします」
「あの石の家を使うのかい?暫く使ってないからネズミやモグラの住処になってるさね」
「ではネズミやモグラに返して頂きましょう。賃料を払って貰ってないのですから追い出してもネズミやモグラは文句を言いませんわ」
ウェルシェスはこれからは季節問わず何らかの収入源を領民に持たせることにした。
春になれば山菜という野草を採取。これは薬草でもあるものがほとんど。
カーンザは毎日手入れをしなくてもいいし、水撒きも毎日でなくてもいい。
つまり手が空く。
その間に薬草である山菜を採取して、洗って干して煎じたりする。
手順を覚えればいいのだから土を作る2年なら2回。1回目は恐る恐るでも2回目は1回目の問題点を改善してもっとスムーズに作業を行える。
同時進行で行うのが残飯を利用した堆肥作り。
夏になれば薬草を売りにハネース王国に行き、ついでに秋の収穫で得られるカーンザの売り込みをする。
秋はカーンザを収穫し、粒の状態でハネース王国に行き予約してくれた家に代金と引き換えに配って来る。
そして雪に閉ざされる冬は領民全員でキノコの栽培。
初回となる今回は栽培までは持って行けないだろうが、マイタケを栽培する培土作りを行う。
冬を超えるための薪を拾って来たり、幹などは薪割りをして薪を作るが面倒でもそれを石の家と呼ばれる家で行う。目的は薪割りなどをする時に発生する木くずや、幹をのこぎりで切断する時に出るおがくず。
これを今年ゾルダンが育っている部分の土と水を混ぜ込んで蒸すのだ。
その土は小麦を育てていて、菌が繁殖している土も同時に使う。
木の家だと家そのものが燃えてしまう可能性があるので石の家は非常に都合がいい。
石の家の竈は追い炊き式の風呂で火を起こすように外側に作る。中は熱せられて100度ほどになるので人間はとてもいられるはずがないが、これでいい。
「そんなに家の中を熱くしてどうするんだい?土も燃えてしまうよ」
「燃えません。萌えるのは心です」
「心の萌え…って!!そこは良いけど、なんでそんな事を!?」
「悪い菌を殺すのです。内部の温度を100度ほどにあげます。おそらく籠る熱の温度は110度を超えるでしょう。冬になるとここは雪が積もりますよね。つまり外気はかなり冷え込む。石は温度を伝えにくい物質なのですが、中と外で120度以上の差が出来ると、火を消した後、内部の温度は下がっていきます。でもそこまで高温になった内部は完全に外部の温度とは一緒になりません。多分、10ないし15度前後で冬を越す感じになると思います。春になればキノコを栽培する土になりますので、麻袋に入れてキノコ菌を付けて袋でキノコを作るんです」
「キノコを袋で?!そんな事が出来るのか」
「出来ます。ガラス瓶でも出来ますよ。シイタケのように原木に菌を付けて栽培する方法もありますが、ここではマイタケを栽培し、乾燥させて出荷します。手順を覚えて2年目、3年目の冬には各家庭の納屋などで栽培できるように家も改良しましょう」
「乾燥…そうか、それだと日持ちするから運べるんだ!」
「家も手を入れてくれるなら冬でも仕事が出来る。春になれば売りに行って金になる」
「そうです。名付けて!!」
<< 名付けて? >>
「タビュレン子爵領、燃えて冷え、財布は萌え計画!コホン。計画はわたくしですが名づけはルジーこと、ベールジアン様で御座います」
ウェルシェスの話に顔も紅潮させて鼻息もフンフンと荒く聞き入った領民たちはベールジアンの命名に心が冷えた。
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