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第10話 小麦からの転換
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先ずはこのタビュレン子爵領には何があるのか。
書類では読んだことはあっても、それだけの知識で話をすれば机上の空論になり兼ねない。
一番はこの領地を良く知るタビュレン子爵の話と知識を擦り合わせる事が大事だ。
「ルジー。タビュレン子爵領では何が特産品なの?」
「・・・・」
「ルジー?どうしたの?」
「‥‥(ハッ!)え?何?何か言った?」
「だから、この領の特産品。どうしたの?どこか具合が…もしや!昨夜私と御者が寝台を使ってしまったから風邪を引いたの?顔が赤いわ。熱があるんじゃ?」
――うん。熱はあると思う。医者でも治せない熱だけど――
「気にしないでくれ。基本、赤ら顔だと思ってくれればいい」
「そうなの?でも…」
「体温も至って平常だ。心拍数が爆上がりすることもあるが理性でなんとかなる」
「理性で…何とかなるものなの?」
「何とかするのが本能を抑え込む理性だ」
よく判らないが、ベールジアンがそう言うのならそんなものだろうとウェルシェスは首をコテンと傾げながらも半分納得した。何故半分かと言えば、更にベールジアンの様子がおかしくなったからである。
首コテンの破壊力を知らないウェルシェスは更に逆に首を傾げる。
――自分の可愛さを知らないというのは脅威だな――
そんな事を思いながらベールジアンは激しく脈打つ心臓への負荷を感じながら「資料がある」と家の中にウェルシェスを呼んだ。
「これは半年前…8か月前だったかな。小麦の作付けをしようと支援金を要請した時の書類だ。祖父の代から小麦を植え始めたようなんだが、耕作面積の割には収穫量も無くてね。折角収穫した小麦も何故かB級判定ばかりなんだ」
「読んだわ…ごめんなさい。この資料を読んでここに視察に行きたかったけれど行くことが出来なかったの。B級ばかりと言うのが気になったのよね。あとはルジーの言うように面積に対しての収穫が少ないと思ったの」
「不正はしていないよ。商会に買い取ってもらった量だし」
「そうなのよね。でもどうして量が少なくてB級なのかしら。商会も折角の小麦なのに人間用じゃなくて飼料にしてるわよね‥‥もしかして…」
「何かわかったのか?」
「まだわからないけど、ここは雪が積もるのよね?」
「そうだな。暖冬の年でも4か月は雪が積もっているよ」
「雪腐病かも知れないわ。秋になると白いキノコが生えたりしない?」
「よく知ってるな。そうなんだよ。毒キノコだから食べられないんだけどな」
「だったらおそらく原因は雪腐病ね。土の中に悪い菌が繁殖してしまうの。茎とか腐ってしまうから作付けの量に対して収穫が見込めないの。で、収穫できても質の悪い小麦になってしまうのよ」
「そうだったのか…。親父もここは小麦には向いてないとは言ってたんだけどな。一番金になるのは小麦だし隣の領まで山を越えなきゃならないから日持ちしない葉物野菜とかは植えても金にならないんだよ」
「だったら、思い切って転換しましょう。そうね…カーンザが良いと思うわ」
「カーンザ?なんだそれは?」
向かおうとしていたハネース王国では小麦よりもカーンザの方が主食として取り扱われている。
小麦よりも育ちやすい上に、一番のメリットは放っておいてもいいところ。
そして多年草なのでまた翌年には実をつける。完全に放置していい訳ではないが、カーンザは地中深くに根を張るので土壌の改良にも向いているし、小麦などのように頻繁に水撒きをしなくていいのも特徴である。
ハネース王国で取引をされているくらいなので、小麦の代替品にもなるし何より小麦の方がメジャーなのでカーンザを作る農地は少なく、実は小麦よりも高値で取引をされている。
「そんな植物があったなんて知らなかったよ」
「私も知ったのは最近。実績と言えるほどではないけどワチワ伯爵領で育てて貰っていたの。豆類の連作で土地が痩せてしまってどうにもならないのと、トウモロコシも育てていたんだけどここと同じで雪腐病ではないけど土壌が菌に汚染されてしまったのよ。トウモロコシや小麦のように1年で収穫をして根っこなどが枯れるのを待つような植物は菌が繁殖しやすいのよ」
「作っても買ってくれるのかな。聞いたことのない物は買ってくれないかも知れない」
「大丈夫。さっきも言ったでしょう?ハネース王国では小麦よりカーンザの方が有名なの。国内ではなくハネース王国に売ればいいわ。販路については叔母様に問い合わせてみるわね」
「助かるよ。今なら王都は手紙が着く頃にはこっちに来ようと思っても来られないけど、隣国なら片道1週間で行ける。雪に閉ざされる前に返事も貰ってこられると思う」
「じゃぁ早速手紙を書くわね。ルジーはそうね…領民の皆さんを集めてくださる?農地について雪が降り始める前にしておいて欲しい事もあるの。他には特産品とかないかしら。王宮に報告するほどじゃない、領地で消費するようなものでもいいんだけど」
ふむと考えたベールジアンは稗や粟などと一緒で領民の主食となっている、とある穀物の入った壺を持ってきた。
「嘘でしょ…ここで収穫できてるなんて!!」
ウェルシェスはその穀物を見るなり、目をキラ☆彡っと輝かせた。
書類では読んだことはあっても、それだけの知識で話をすれば机上の空論になり兼ねない。
一番はこの領地を良く知るタビュレン子爵の話と知識を擦り合わせる事が大事だ。
「ルジー。タビュレン子爵領では何が特産品なの?」
「・・・・」
「ルジー?どうしたの?」
「‥‥(ハッ!)え?何?何か言った?」
「だから、この領の特産品。どうしたの?どこか具合が…もしや!昨夜私と御者が寝台を使ってしまったから風邪を引いたの?顔が赤いわ。熱があるんじゃ?」
――うん。熱はあると思う。医者でも治せない熱だけど――
「気にしないでくれ。基本、赤ら顔だと思ってくれればいい」
「そうなの?でも…」
「体温も至って平常だ。心拍数が爆上がりすることもあるが理性でなんとかなる」
「理性で…何とかなるものなの?」
「何とかするのが本能を抑え込む理性だ」
よく判らないが、ベールジアンがそう言うのならそんなものだろうとウェルシェスは首をコテンと傾げながらも半分納得した。何故半分かと言えば、更にベールジアンの様子がおかしくなったからである。
首コテンの破壊力を知らないウェルシェスは更に逆に首を傾げる。
――自分の可愛さを知らないというのは脅威だな――
そんな事を思いながらベールジアンは激しく脈打つ心臓への負荷を感じながら「資料がある」と家の中にウェルシェスを呼んだ。
「これは半年前…8か月前だったかな。小麦の作付けをしようと支援金を要請した時の書類だ。祖父の代から小麦を植え始めたようなんだが、耕作面積の割には収穫量も無くてね。折角収穫した小麦も何故かB級判定ばかりなんだ」
「読んだわ…ごめんなさい。この資料を読んでここに視察に行きたかったけれど行くことが出来なかったの。B級ばかりと言うのが気になったのよね。あとはルジーの言うように面積に対しての収穫が少ないと思ったの」
「不正はしていないよ。商会に買い取ってもらった量だし」
「そうなのよね。でもどうして量が少なくてB級なのかしら。商会も折角の小麦なのに人間用じゃなくて飼料にしてるわよね‥‥もしかして…」
「何かわかったのか?」
「まだわからないけど、ここは雪が積もるのよね?」
「そうだな。暖冬の年でも4か月は雪が積もっているよ」
「雪腐病かも知れないわ。秋になると白いキノコが生えたりしない?」
「よく知ってるな。そうなんだよ。毒キノコだから食べられないんだけどな」
「だったらおそらく原因は雪腐病ね。土の中に悪い菌が繁殖してしまうの。茎とか腐ってしまうから作付けの量に対して収穫が見込めないの。で、収穫できても質の悪い小麦になってしまうのよ」
「そうだったのか…。親父もここは小麦には向いてないとは言ってたんだけどな。一番金になるのは小麦だし隣の領まで山を越えなきゃならないから日持ちしない葉物野菜とかは植えても金にならないんだよ」
「だったら、思い切って転換しましょう。そうね…カーンザが良いと思うわ」
「カーンザ?なんだそれは?」
向かおうとしていたハネース王国では小麦よりもカーンザの方が主食として取り扱われている。
小麦よりも育ちやすい上に、一番のメリットは放っておいてもいいところ。
そして多年草なのでまた翌年には実をつける。完全に放置していい訳ではないが、カーンザは地中深くに根を張るので土壌の改良にも向いているし、小麦などのように頻繁に水撒きをしなくていいのも特徴である。
ハネース王国で取引をされているくらいなので、小麦の代替品にもなるし何より小麦の方がメジャーなのでカーンザを作る農地は少なく、実は小麦よりも高値で取引をされている。
「そんな植物があったなんて知らなかったよ」
「私も知ったのは最近。実績と言えるほどではないけどワチワ伯爵領で育てて貰っていたの。豆類の連作で土地が痩せてしまってどうにもならないのと、トウモロコシも育てていたんだけどここと同じで雪腐病ではないけど土壌が菌に汚染されてしまったのよ。トウモロコシや小麦のように1年で収穫をして根っこなどが枯れるのを待つような植物は菌が繁殖しやすいのよ」
「作っても買ってくれるのかな。聞いたことのない物は買ってくれないかも知れない」
「大丈夫。さっきも言ったでしょう?ハネース王国では小麦よりカーンザの方が有名なの。国内ではなくハネース王国に売ればいいわ。販路については叔母様に問い合わせてみるわね」
「助かるよ。今なら王都は手紙が着く頃にはこっちに来ようと思っても来られないけど、隣国なら片道1週間で行ける。雪に閉ざされる前に返事も貰ってこられると思う」
「じゃぁ早速手紙を書くわね。ルジーはそうね…領民の皆さんを集めてくださる?農地について雪が降り始める前にしておいて欲しい事もあるの。他には特産品とかないかしら。王宮に報告するほどじゃない、領地で消費するようなものでもいいんだけど」
ふむと考えたベールジアンは稗や粟などと一緒で領民の主食となっている、とある穀物の入った壺を持ってきた。
「嘘でしょ…ここで収穫できてるなんて!!」
ウェルシェスはその穀物を見るなり、目をキラ☆彡っと輝かせた。
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