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第16話 ミレリーの出産
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「うぁぁぁ!痛いっ!何とかっ!しなざいぎょ―ッ!!」
過期産となったミレリーの出産が始まった。
予定日をとうに過ぎても全く兆候が見られなかったのに破水から始まった出産は40時間を超えてミレリーは痛みから叫び、陣痛と陣痛の間では侍女やメイドの態度が気に入らないと手当たり次第に手に触れるものを投げつけ、陣痛の痛みの最中は暴言を吐きまくり、握りしめるはずのバーまで引き千切って壊してしまう怪力を見せつける。
「殿下ぁ来てくれたんですかぁ」
痛みの間に訪れたジェルマノに甘えた声を出して直ぐ、また痛みに襲われたミレリーは思い切り腕を振り回し、その手がジェルマノに直撃。ジェルマノは見える世界に火花が飛び散った。
「言葉が汚くなったりするのは仕方ありません。それだけ妃殿下も命を懸けているんです」
産婆の言葉は慰めにもならず、ジェルマノは遠慮も無く頬に叩きこまれた拳の痛みに「後は任せた」と言い残しミレリーが叫び始めた部屋を出て行った。
やっと赤子が産声を上げたのだが、子供を見た侍女たちは「ヒィッ!」小さく声をあげて後ずさった。
産婆だけが「産湯!用意出来てるのっ!」ゲキを飛ばす。
侍女たちは恐ろしいものを見たとばかりに我先に部屋を出ようと産湯を用意する部屋に逃げ込んだ。
「見た?」
「見た、見た!あれ、何なの…」
「子供だけど子供じゃないわ・・・」
侍女たちも王族や高位貴族の出産に立ち会うのは侍女になるためのカリキュラムに取り入れられているため初めてではなかったが、これが初めての出産の場に立ち合いとなった侍女見習いは泣き出してしまい、何かに怯えて蹲って使い物にはならなかった。
週数を大幅に超えて生まれてしまう胎児は胎内で羊水という水に包まれて成長するため大きさはあるのに皮膚は高齢者のように弛んで痩せているのか太っているのかよく判らないように見える。
そして手や足の指の爪はしっかり伸びてしまっていたり、その爪が緑色になってしまう事があった。
産婆は「何をしているの!」と何時まで経っても産湯を用意しない侍女に向かって声をあげる。
「お腹の中に居過ぎただけ!ちゃんと覚えなさい!」
そうは言っても、場数を踏んだ産婆だから言えることであって、数例しか立ち会った事のない侍女たちは足が震えて湯を入れた桶を何度も落とし、床は水浸しになった。
産婆なら慣れていても当然国王や王妃は産湯で洗った赤子を見て侍女と同じ反応をする。ジェルマノに至っては出産を終えて息も絶え絶えのミレリーに会う事もしなかった。
国王に呼ばれた産婆は緑色の爪や皮膚の状態は腹の中に居過ぎたことが原因なので日が経てば他の赤子のように成長し、爪の色も元に戻ると説明をするのだが、見たことも無い国王たちは「それは明日か?明後日か?」と期日を迫る。
「陛下!そんな事よりも!」
「そんな事だと?あんな・・・あんな・・・何と悍ましいッ」
「悍ましくなど御座いません。見た目はごく普通になると申し上げておりますっ」
「何時だと言う事も言えぬくせに何故言い切れる」
「そうよ。あれじゃ・・・1カ月目のお披露目なんかすればどうなるか!」
「赤子は赤子です!陛下、王妃殿下、見た目ではなく腹の中に居過ぎた子供は当面様子をしっかり看ることが必要なのです。胸が呼吸をする度に必要以上に凹凸します。喘息のような症状を出す場合も御座います。今後のケアを侍医としっかりと――」
「もうよい。この話は打ち切りだ」
産婆の必死の訴えも見た目で「人とは思えない」と感じた国王たちには受け入れては貰えなかった。
いつもの倍以上の給金を支払うという約束で金に釣られた侍女やメイドしかミレリーの部屋には訪れない。乳母を選ぼうにも事実に虚偽が加わり、悪魔のような角が頭にある、尻尾がある、全身が鱗に覆われていると悪意しかない噂が広がりなり手がいない。
「もう!痛いって言ってるでしょ?解らないの?」
「ですが、マッサージはしておかないと乳腺が張って熱も出てしまいます」
「放っておいて!私の胸を揉んでいいのは殿下だけよ!殿下を呼んで」
「殿下は公務中です」
「公務と私とどっちが大事なのよ!公務なんてどうでもいいでしょう!」
ミレリーはジェルマノが来ない事に腹を立て、ギリッと爪を噛んだ。
★~★
(ΦωΦ)フフフ…この後、ミレリーの続きがあります。
22時22分同時公開でぇす♡
過期産となったミレリーの出産が始まった。
予定日をとうに過ぎても全く兆候が見られなかったのに破水から始まった出産は40時間を超えてミレリーは痛みから叫び、陣痛と陣痛の間では侍女やメイドの態度が気に入らないと手当たり次第に手に触れるものを投げつけ、陣痛の痛みの最中は暴言を吐きまくり、握りしめるはずのバーまで引き千切って壊してしまう怪力を見せつける。
「殿下ぁ来てくれたんですかぁ」
痛みの間に訪れたジェルマノに甘えた声を出して直ぐ、また痛みに襲われたミレリーは思い切り腕を振り回し、その手がジェルマノに直撃。ジェルマノは見える世界に火花が飛び散った。
「言葉が汚くなったりするのは仕方ありません。それだけ妃殿下も命を懸けているんです」
産婆の言葉は慰めにもならず、ジェルマノは遠慮も無く頬に叩きこまれた拳の痛みに「後は任せた」と言い残しミレリーが叫び始めた部屋を出て行った。
やっと赤子が産声を上げたのだが、子供を見た侍女たちは「ヒィッ!」小さく声をあげて後ずさった。
産婆だけが「産湯!用意出来てるのっ!」ゲキを飛ばす。
侍女たちは恐ろしいものを見たとばかりに我先に部屋を出ようと産湯を用意する部屋に逃げ込んだ。
「見た?」
「見た、見た!あれ、何なの…」
「子供だけど子供じゃないわ・・・」
侍女たちも王族や高位貴族の出産に立ち会うのは侍女になるためのカリキュラムに取り入れられているため初めてではなかったが、これが初めての出産の場に立ち合いとなった侍女見習いは泣き出してしまい、何かに怯えて蹲って使い物にはならなかった。
週数を大幅に超えて生まれてしまう胎児は胎内で羊水という水に包まれて成長するため大きさはあるのに皮膚は高齢者のように弛んで痩せているのか太っているのかよく判らないように見える。
そして手や足の指の爪はしっかり伸びてしまっていたり、その爪が緑色になってしまう事があった。
産婆は「何をしているの!」と何時まで経っても産湯を用意しない侍女に向かって声をあげる。
「お腹の中に居過ぎただけ!ちゃんと覚えなさい!」
そうは言っても、場数を踏んだ産婆だから言えることであって、数例しか立ち会った事のない侍女たちは足が震えて湯を入れた桶を何度も落とし、床は水浸しになった。
産婆なら慣れていても当然国王や王妃は産湯で洗った赤子を見て侍女と同じ反応をする。ジェルマノに至っては出産を終えて息も絶え絶えのミレリーに会う事もしなかった。
国王に呼ばれた産婆は緑色の爪や皮膚の状態は腹の中に居過ぎたことが原因なので日が経てば他の赤子のように成長し、爪の色も元に戻ると説明をするのだが、見たことも無い国王たちは「それは明日か?明後日か?」と期日を迫る。
「陛下!そんな事よりも!」
「そんな事だと?あんな・・・あんな・・・何と悍ましいッ」
「悍ましくなど御座いません。見た目はごく普通になると申し上げておりますっ」
「何時だと言う事も言えぬくせに何故言い切れる」
「そうよ。あれじゃ・・・1カ月目のお披露目なんかすればどうなるか!」
「赤子は赤子です!陛下、王妃殿下、見た目ではなく腹の中に居過ぎた子供は当面様子をしっかり看ることが必要なのです。胸が呼吸をする度に必要以上に凹凸します。喘息のような症状を出す場合も御座います。今後のケアを侍医としっかりと――」
「もうよい。この話は打ち切りだ」
産婆の必死の訴えも見た目で「人とは思えない」と感じた国王たちには受け入れては貰えなかった。
いつもの倍以上の給金を支払うという約束で金に釣られた侍女やメイドしかミレリーの部屋には訪れない。乳母を選ぼうにも事実に虚偽が加わり、悪魔のような角が頭にある、尻尾がある、全身が鱗に覆われていると悪意しかない噂が広がりなり手がいない。
「もう!痛いって言ってるでしょ?解らないの?」
「ですが、マッサージはしておかないと乳腺が張って熱も出てしまいます」
「放っておいて!私の胸を揉んでいいのは殿下だけよ!殿下を呼んで」
「殿下は公務中です」
「公務と私とどっちが大事なのよ!公務なんてどうでもいいでしょう!」
ミレリーはジェルマノが来ない事に腹を立て、ギリッと爪を噛んだ。
★~★
(ΦωΦ)フフフ…この後、ミレリーの続きがあります。
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