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第03話 純白のドレス
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この回は王太子ジェルマノの視点です。
★~★
「どうして?!どうしてお義姉様は出席してくださらないの?!」
国王との話の後、ルドヴィカは馬車に乗り込み早々に王宮を後にした。引き留めようとしたのだが何故か兵士が僕の行く手を遮った。やっと兵士が持ち場に戻った時にはもうルドヴィカは姿が見えなくなっていた。
ルドヴィカは参列しないと告げるとミレリーは僕のシャツを掴んでさめざめと泣く。
「昔からそうだったの。お義姉様はわたくしの事が嫌いなのです」
「好きとか嫌いとかそんな問題ではないんだ」
「どうしてですの?それ以外に理由などないでしょう?」
「王太子である僕の成婚の儀だ。好きだのとくだらない感情よりも優先されるんだ。出席しない事を父上が認めたんだ。その意味くらい解るだろう」
「そんな!なら陛下にもう一度頼んでください!」
何故こんな女を一時でも可愛いと思ってしまったのか。
相手をするのも面倒になり、ミレリーを置いてまた部屋を出るがこの王城の何処にも僕が1人になれる場所などないと気が付く。
今なら判る。ミレリーは嘘を吐いている。
こんな事は考えるまでもなく分かった事だ。
ヴィーは公爵家の者とは家族でありながらも他人。
ミレリーの事を好きか嫌いか、それ以前にヴィーはミレリーの事には関心も無ければ興味もない。
『異母妹が出来たんだって?』
『そのようですわね』
『そのようって…他人事だな』
『他人ですもの』
そもそもで突然「異母妹です」と父親の不貞を目の前にして平常でいられる人間などいない。ヴィーがミレリーに対し何の思いもないのは異母妹である事を認めたのは両親であり自分ではない。
社交界でこの手の噂を他の誰かに「ここだけの話」と広めたり、何の話だろうと聞き耳を立てるのは自分のことではないから出来る事。つまりヴィーにとっても他人事なのだ。
だから僕はヴィーの家族になろうとヴィーに誓った。
なのに・・・。
病床は寂しい場だった。
見舞いに来てくれる者がいなかった訳ではないが、お決まりの言葉を吐いて帰っていく、その繰り返し。
寝ていても執務は出来るのに大事を取って執務も出来ない。
体を動かす事も出来ず、フラストレーションは溜まる一方だった
そんな見舞客の中にキュレック公爵がいた。
ヴィーの近況報告なら従者が都度早馬で知らせてくれる。
キュレック公爵もまたお決まりの言葉を吐いたのだが、1人違った者がいた。それがミレリーだ。
定型文だけを聞かされる毎日に辟易としていれば、どんなつまらない話でも新鮮に思える。ただそれだけだった。
ヴィーの異母妹。それだけでどうしてあんなに足繁く通ってくることが出来たのか。
内通者がいたのだろうがそれも今更の話だ。
あの店がどうの、この菓子がどうの。どこぞの令嬢があぁだこぅだと正直中身のないつまらない話に相槌を打つのも疲れてしまい、少し脅かせばもう来なくなる。そう思って手を出したのだが間違いだった。
つかの間の快楽を吐き出したあと、僕は激しい後悔に見舞われたのだが、知られてはならないという秘匿感は更に強い快楽で僕を支配した。
何より相手がはミレリーだ。そこそこの金を握らせれば身を引く。その程度はヴィーの異母妹なのだから弁えているだろうと思ったのだが、とんだ策士だった。
思うように動けない僕に跨って腰を振るミレリー。
その場を事もあろうか父上と母上に見つかってしまった。
本来なら来るはずのない時間。ミレリーが2人が来るように仕向けた事を知った時は・・・。
その後、ミレリーの懐妊が判った。
良いように扱っているつもりでミレリーは僕を嵌めたのだ。
母上の絶望したような顔は今でも忘れられない。
母上はミレリーのような女を毛嫌いしているのだ。
中身のない、売りが若さだけの女を。
――もう折衝は始まっている頃だろうか――
僕が行けなかったためにヴィーが無理矢理に選ばれて隣国に行って半年。
その頃にはもうミレリーが婚約者となっていて、ヴィーは伯爵家に養女に出された。
本人がいない間にどんどん物事が進んでいく。
嬉々としているのはミレリーだけで使用人も僕を見る目は冷たくまるで木彫り人形に囲まれているようだった。
「ねぇ。結婚式にはこんなドレスがいいんですぅ」
甘えてくるミレリーの腹がどんどん大きくなって嫌悪感を覚えた。
申し訳ないのだが、「子供が動く」と腹に手をあてさせられた時は悍ましい感触に僕は吐き気を覚えた。
僕が距離を置けば置くほどにミレリーは近づいてくる。
執務を行うのに支障が出始めてやっとミレリーの出入りを禁止する事も出来たが、夜は苦痛の日々。
真っ白い純白のウェディングドレスの試着をしたミレリーからは目を背けてしまった。
これがヴィーなら。
飾られたドレスにヴィーを重ねて僕は嗚咽を漏らした。
★~★
2日目は2時間に1話のペースです。
なので次は12時台、そして14時台・・・って感じです。
慌てな~い♪慌てない♪っとルドヴィカが仲間を増やしていく日になります(*^-^*)
なので、起伏は午後に登場するクズがヒートアップ!していくくらいでしょうか(;^_^A
★~★
「どうして?!どうしてお義姉様は出席してくださらないの?!」
国王との話の後、ルドヴィカは馬車に乗り込み早々に王宮を後にした。引き留めようとしたのだが何故か兵士が僕の行く手を遮った。やっと兵士が持ち場に戻った時にはもうルドヴィカは姿が見えなくなっていた。
ルドヴィカは参列しないと告げるとミレリーは僕のシャツを掴んでさめざめと泣く。
「昔からそうだったの。お義姉様はわたくしの事が嫌いなのです」
「好きとか嫌いとかそんな問題ではないんだ」
「どうしてですの?それ以外に理由などないでしょう?」
「王太子である僕の成婚の儀だ。好きだのとくだらない感情よりも優先されるんだ。出席しない事を父上が認めたんだ。その意味くらい解るだろう」
「そんな!なら陛下にもう一度頼んでください!」
何故こんな女を一時でも可愛いと思ってしまったのか。
相手をするのも面倒になり、ミレリーを置いてまた部屋を出るがこの王城の何処にも僕が1人になれる場所などないと気が付く。
今なら判る。ミレリーは嘘を吐いている。
こんな事は考えるまでもなく分かった事だ。
ヴィーは公爵家の者とは家族でありながらも他人。
ミレリーの事を好きか嫌いか、それ以前にヴィーはミレリーの事には関心も無ければ興味もない。
『異母妹が出来たんだって?』
『そのようですわね』
『そのようって…他人事だな』
『他人ですもの』
そもそもで突然「異母妹です」と父親の不貞を目の前にして平常でいられる人間などいない。ヴィーがミレリーに対し何の思いもないのは異母妹である事を認めたのは両親であり自分ではない。
社交界でこの手の噂を他の誰かに「ここだけの話」と広めたり、何の話だろうと聞き耳を立てるのは自分のことではないから出来る事。つまりヴィーにとっても他人事なのだ。
だから僕はヴィーの家族になろうとヴィーに誓った。
なのに・・・。
病床は寂しい場だった。
見舞いに来てくれる者がいなかった訳ではないが、お決まりの言葉を吐いて帰っていく、その繰り返し。
寝ていても執務は出来るのに大事を取って執務も出来ない。
体を動かす事も出来ず、フラストレーションは溜まる一方だった
そんな見舞客の中にキュレック公爵がいた。
ヴィーの近況報告なら従者が都度早馬で知らせてくれる。
キュレック公爵もまたお決まりの言葉を吐いたのだが、1人違った者がいた。それがミレリーだ。
定型文だけを聞かされる毎日に辟易としていれば、どんなつまらない話でも新鮮に思える。ただそれだけだった。
ヴィーの異母妹。それだけでどうしてあんなに足繁く通ってくることが出来たのか。
内通者がいたのだろうがそれも今更の話だ。
あの店がどうの、この菓子がどうの。どこぞの令嬢があぁだこぅだと正直中身のないつまらない話に相槌を打つのも疲れてしまい、少し脅かせばもう来なくなる。そう思って手を出したのだが間違いだった。
つかの間の快楽を吐き出したあと、僕は激しい後悔に見舞われたのだが、知られてはならないという秘匿感は更に強い快楽で僕を支配した。
何より相手がはミレリーだ。そこそこの金を握らせれば身を引く。その程度はヴィーの異母妹なのだから弁えているだろうと思ったのだが、とんだ策士だった。
思うように動けない僕に跨って腰を振るミレリー。
その場を事もあろうか父上と母上に見つかってしまった。
本来なら来るはずのない時間。ミレリーが2人が来るように仕向けた事を知った時は・・・。
その後、ミレリーの懐妊が判った。
良いように扱っているつもりでミレリーは僕を嵌めたのだ。
母上の絶望したような顔は今でも忘れられない。
母上はミレリーのような女を毛嫌いしているのだ。
中身のない、売りが若さだけの女を。
――もう折衝は始まっている頃だろうか――
僕が行けなかったためにヴィーが無理矢理に選ばれて隣国に行って半年。
その頃にはもうミレリーが婚約者となっていて、ヴィーは伯爵家に養女に出された。
本人がいない間にどんどん物事が進んでいく。
嬉々としているのはミレリーだけで使用人も僕を見る目は冷たくまるで木彫り人形に囲まれているようだった。
「ねぇ。結婚式にはこんなドレスがいいんですぅ」
甘えてくるミレリーの腹がどんどん大きくなって嫌悪感を覚えた。
申し訳ないのだが、「子供が動く」と腹に手をあてさせられた時は悍ましい感触に僕は吐き気を覚えた。
僕が距離を置けば置くほどにミレリーは近づいてくる。
執務を行うのに支障が出始めてやっとミレリーの出入りを禁止する事も出来たが、夜は苦痛の日々。
真っ白い純白のウェディングドレスの試着をしたミレリーからは目を背けてしまった。
これがヴィーなら。
飾られたドレスにヴィーを重ねて僕は嗚咽を漏らした。
★~★
2日目は2時間に1話のペースです。
なので次は12時台、そして14時台・・・って感じです。
慌てな~い♪慌てない♪っとルドヴィカが仲間を増やしていく日になります(*^-^*)
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