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第26話 愉しくて仕方がない
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ベアトリスは心地よい疲れを感じながら馬車に揺られた。
久しぶりに感じた女性としての喜びは、新しい発見の連続だった。
過去の恋人としか達する事は出来ないと思っていたが、オズヴァルドは終始ベアトリスの体を芯から喜ばせた。
「体の相性は彼が最高だと思っていたけど、違ったわ。別れて正解だったって事ね」
これでオズヴァルドの全てを手に入れたと馬車の座席に横になると足をばたつかせ、これから先「美男美女」で社交界の注目を浴びる姿を瞼の裏に思い描き悶えた。
ラーベ子爵家に嫁げばベアトリスに帰る家は無くなる。
男遊びをするのなら金で済む男娼にしておくのが無難だと考えた。金で動く男娼と違い素人の場合は恋愛に気持ちが変わった時に面倒事しか起こらない。
「本気になる男はもうオズヴァルドで最後」そう思いながらも見た目の良さでオズヴァルドを超えるような男はそうそういない。爵位が子爵家で無ければ高みを望めた悲運の美丈夫。
これから先は誰もがうらやむオズヴァルドが夫なのだ。
ベアトリスはその美しさで数々の子息の心を虜にしてきた。
本命がいたからこそ、数回の体の関係は持ったけれど心は動かなかった。
だから自分が浮気でもなく、単に処理係だったと知った時はこの世の全てが色も音も香りも失ってしまったように思えた。
「だけど、案外諦めも早かったのね。ふふっ」
オズヴァルドはファウスティーナの事を愛している。それは同年代の貴族なら男女問わず既出である公然の秘密だった。婚約は白紙になってからも冷たい態度をとり続けたオズヴァルドの心の中には未だにファウスティーナが住み着いているのだと思っていた。
少しだけ意地悪をしたくなったのだ。
そこまで思い続ける気持ちとはどんなものだろうと。
ファウスティーナが困窮した生活になっている事は知っていた。
だから、第一弾として、さらに困窮を極めたらオズヴァルドがどうするのか見てみたかった。
その為に父親言っても動いてはくれないので、祖父に頼み込み父親の職場とファウスティーナの働き口に圧力をかけた。直接圧力をかけたのは木材加工場と雑貨店、そして仕立て屋だった。
商会を通じて取引停止をチラ浮かせたのは市場と青果店。
雑貨店の店主だけは「誰を雇うかは私が決める」と言い張った。取引を停止しようにも扱っている品が外に働きに出る事が出来ない者達のハンドメイド品で全てに手を回すのは難しかったし、商会も売れ残りや倉庫の肥やしを引き取ってもらっているので店が無くなるのは困ると手を回してくれない。
店も現金一括払いで購入した土地と建物だったため、抵当権を持っている金融業者から債権を買い取る事も出来ない。仕方ないので過去に何度か遊んでやった破落戸に放火をさせた。
下らない意地を張ってファウスティーナの味方をした雑貨店の店主が燃えカスとなった店の残骸を見た時の顔は今でも忘れられない。あの茫然自失とした顔をサカナにワインなら5本は空けられる。
そして解雇を告げられた伯爵やファウスティーナの落ち込んだ顔。10年分は笑った。
「結局オズヴァルドもどん底の貧乏人は要らないって訳ね」
第二弾としてオズヴァルドがまだ諦めず、冷たい態度をとり続けるなら20人ほどの破落戸にファウスティーナを慰み者にしてもらい、その後は変態が集まる娼館に売り飛ばしてやろうかと思っていたが手間が省けた。
「加虐娼館は気絶させて運ぶから泣き喚く様も見られないのよね」
正直に言えば魔法使いだからと側に置くのは許しがたい。
しかし、同時に楽しみが出来たとほくそ笑んだ。
近くに居て、所詮は使用人。
事あるごとに虐め倒せばよいだけだ。長く楽しめる玩具があると思えばいい。
オズヴァルドの気持ちはもうファウスティーナにないのだから、この際夫婦の仲睦まじい姿をファウスティーナに見せつけてやってもいい。
「選ばれなかった女って本当に惨め。あぁはなりたくないわ。金もない、男もない、運もない。ナイナイナイ。アハハハハ。ざまぁだわ。私以外の女なんか、みぃんな不幸のどん底に堕ちちゃえぇぇ。キャーハハハ」
馬車の中はレンダール家の門をくぐってもベアトリスの高笑いが続いていた。
久しぶりに感じた女性としての喜びは、新しい発見の連続だった。
過去の恋人としか達する事は出来ないと思っていたが、オズヴァルドは終始ベアトリスの体を芯から喜ばせた。
「体の相性は彼が最高だと思っていたけど、違ったわ。別れて正解だったって事ね」
これでオズヴァルドの全てを手に入れたと馬車の座席に横になると足をばたつかせ、これから先「美男美女」で社交界の注目を浴びる姿を瞼の裏に思い描き悶えた。
ラーベ子爵家に嫁げばベアトリスに帰る家は無くなる。
男遊びをするのなら金で済む男娼にしておくのが無難だと考えた。金で動く男娼と違い素人の場合は恋愛に気持ちが変わった時に面倒事しか起こらない。
「本気になる男はもうオズヴァルドで最後」そう思いながらも見た目の良さでオズヴァルドを超えるような男はそうそういない。爵位が子爵家で無ければ高みを望めた悲運の美丈夫。
これから先は誰もがうらやむオズヴァルドが夫なのだ。
ベアトリスはその美しさで数々の子息の心を虜にしてきた。
本命がいたからこそ、数回の体の関係は持ったけれど心は動かなかった。
だから自分が浮気でもなく、単に処理係だったと知った時はこの世の全てが色も音も香りも失ってしまったように思えた。
「だけど、案外諦めも早かったのね。ふふっ」
オズヴァルドはファウスティーナの事を愛している。それは同年代の貴族なら男女問わず既出である公然の秘密だった。婚約は白紙になってからも冷たい態度をとり続けたオズヴァルドの心の中には未だにファウスティーナが住み着いているのだと思っていた。
少しだけ意地悪をしたくなったのだ。
そこまで思い続ける気持ちとはどんなものだろうと。
ファウスティーナが困窮した生活になっている事は知っていた。
だから、第一弾として、さらに困窮を極めたらオズヴァルドがどうするのか見てみたかった。
その為に父親言っても動いてはくれないので、祖父に頼み込み父親の職場とファウスティーナの働き口に圧力をかけた。直接圧力をかけたのは木材加工場と雑貨店、そして仕立て屋だった。
商会を通じて取引停止をチラ浮かせたのは市場と青果店。
雑貨店の店主だけは「誰を雇うかは私が決める」と言い張った。取引を停止しようにも扱っている品が外に働きに出る事が出来ない者達のハンドメイド品で全てに手を回すのは難しかったし、商会も売れ残りや倉庫の肥やしを引き取ってもらっているので店が無くなるのは困ると手を回してくれない。
店も現金一括払いで購入した土地と建物だったため、抵当権を持っている金融業者から債権を買い取る事も出来ない。仕方ないので過去に何度か遊んでやった破落戸に放火をさせた。
下らない意地を張ってファウスティーナの味方をした雑貨店の店主が燃えカスとなった店の残骸を見た時の顔は今でも忘れられない。あの茫然自失とした顔をサカナにワインなら5本は空けられる。
そして解雇を告げられた伯爵やファウスティーナの落ち込んだ顔。10年分は笑った。
「結局オズヴァルドもどん底の貧乏人は要らないって訳ね」
第二弾としてオズヴァルドがまだ諦めず、冷たい態度をとり続けるなら20人ほどの破落戸にファウスティーナを慰み者にしてもらい、その後は変態が集まる娼館に売り飛ばしてやろうかと思っていたが手間が省けた。
「加虐娼館は気絶させて運ぶから泣き喚く様も見られないのよね」
正直に言えば魔法使いだからと側に置くのは許しがたい。
しかし、同時に楽しみが出来たとほくそ笑んだ。
近くに居て、所詮は使用人。
事あるごとに虐め倒せばよいだけだ。長く楽しめる玩具があると思えばいい。
オズヴァルドの気持ちはもうファウスティーナにないのだから、この際夫婦の仲睦まじい姿をファウスティーナに見せつけてやってもいい。
「選ばれなかった女って本当に惨め。あぁはなりたくないわ。金もない、男もない、運もない。ナイナイナイ。アハハハハ。ざまぁだわ。私以外の女なんか、みぃんな不幸のどん底に堕ちちゃえぇぇ。キャーハハハ」
馬車の中はレンダール家の門をくぐってもベアトリスの高笑いが続いていた。
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