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第20話 オズヴァルドのお悩み解決
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オズヴァルドは一旦はドアをノックしルフィード家となった部屋を訪れようとした。しかし部屋から聞こえてくる声に息は荒くなり、本当に扉の向こうにいるのはファウスティーナなのだろうかと思うと自信が持てなくなった。
暫く会えてもいないのに弾んだ声を出すファウスティーナが信じられなかった。
――俺はこんなに苦しいのに何故笑っていられるんだ?――
だから一旦引いて、出直したのだ。
夕食が終わった後なら元婚約者でもあるし、少しくらいなら2人きりで話がしたいと言えば出て来てくれるだろうと考えた。
手土産はあった方が良かっただろうかと思いながらファウスティーナの住まう部屋があるアパートメントの前まで来て部屋を見上げた時、目的の部屋の前に信じられないものを見た。
5人の男と思われる人間。手には鞘から抜いた短剣。目元だけを残し頭部をすっぽりと隠した姿で1人は廊下を走って階段に逃げ、4人は3階という高さから柵を飛び越えて階下に飛び降りた。
あっという間に近所の住民が扉を開けて様子を伺い騒ぎだす。
柵を超えて飛び降りた事で足を挫いたのか、前転をして植え込みに転がり込んだ者がいた。
植え込みから出てきたのは男で「なんだ?なんだ?何かあったのか?」まるで知らぬふりをして声をあげ、少し足を引きながらオズヴァルドから少し離れた場所を去って行った。
オズヴァルドはその男を知っていた。
屋敷で厩舎の清掃を担当している男だ。
家を継ぐ事は決まっていても「まだその時期じゃない」と教えてもらえなかったが友人達からは「家の為に汚い仕事をする使用人」を抱えている家が存在する事は聞かされていた。
汚い仕事とはどぶを掃除したり、汚物層を洗ったりと言う物理で汚いものではなく発覚すれば犯罪。そんな仕事を家の為に行う人間の事でオズヴァルドはたかが子爵家に過ぎないラーベ家にそんな人間がいたとは思わなかった。
住民の「強盗が押し入ろうとしたみたい」「怖いわ。誰か憲兵を呼んでよ」そんな会話に怖くなってその場を逃げ出してしまった。
屋敷に戻り、自室で寝台の掛布に包まって目の前で起こった事を思い出すと体の震えが止まらない。練習生として騎士団には入団はしたけれど実際の凶悪犯を見てオズヴァルドは恐怖に慄いた。
「あんなの無理、無理、無理。絶対無理」
男達が踏み込む前に訪れなくて良かったと掛布に包まって手を祈りの形に組み合わせ、神に心からの感謝を捧げた。
そして押し入った男達がラーベ子爵家の使用人で、偶然とはいえその場で憲兵に身柄を拘束されれば仲間だと思われてしまう。実際に憲兵を呼んだかどうかは解らないが、憲兵が来る前に屋敷に戻れた事にも感謝した。
やっと体の震えも止まり、気持ちも落ち着いてくると今度は父への怒りがこみ上げる。
「ファティをくれるんじゃなかったのか?あれじゃ殺してしまったかも知れないじゃないか。いや、殺すつもりだったのか?ならあの言葉は何だったんだ!」
沸々と胸の底から沸き上がる父への怒りにオズヴァルドは一睡も出来なかった。
そして早朝、念のためにと散歩の振りをして厩舎に行くと昨日の男が足を庇うような歩き方で馬の敷藁を集めていた。
――やっぱり、こいつだったんだ――
ここで男を問い詰めようかと思ったが止めた。逃げた男は全部で5人。残りの4人は屋敷の中にいるどの使用人なのか判らない。うっかり口にしてしまって自分も口封じをされてはたまらない。
父親のラーベ子爵は「後継はお前だ」とオズヴァルドには告げているが、その代わりにベアトリスを妻としファウスティーナを「愛人として囲っても構わない」と条件を付けるような事を言った。
オズヴァルドが気に入らないのはファウスティーナを愛人とすれば良いという人として扱わないような発言ではなく、まるで玩具を与えれば言う事を聞く駄々っ子のように自分を扱った事だ。
家の事や自分の立場しか考えていない父親は、間者のような仕事をする人間の事をオズヴァルドが知っている、しかもその場を見てしまったと知れば息子であろうと消すだろうと考えた。
――どうすればいいんだ――
このままでは父に愛しいファウスティーナが殺められてしまう。
が、言い方1つでこちらにも矛先が向く。
部屋に戻り、混乱する頭でオズヴァルドは懸命に考えた。
「そうか!ベアトリスと結婚すればいいんだ」
簡単な事じゃないかとオズヴァルドは父親に怯えてしまった自分を笑い飛ばした。
ベアトリスと結婚をし、家督を継ぐ。
両親を追い出し、実権を握る。同居となれば父の事だから何時までも実権を手放さないのは目に見えている。完全に引退したのだと隠居させる必要があるが近くにいれば口を出す。なので子爵領に住まいを移して貰えばいいのだと結論を出した。
家督を継げばあの間者たちを使うのは自分。恐れる事など何もない。
1つ悩みが解決をすると、どんどんオズヴァルドには良案が思い浮かぶ。
ベアトリスは結婚をすれば不貞行為は許さないと言ったが、自分は好き勝手に今まで遊んでいるのだ。こちらまで強制される謂れはないが、受け入れたふりをするのも面白い。
よくよく考えればレンダール家も利用すればいいのだ。
持参金で終わりなどと言わずに金は引っ張れるだけ引っ張りたい。
娘が嫁いできたのだから、出せるものは出して貰う。その為にはベアトリスは子供が産めないと諦めている風でもあるので妊娠しやすいといわれる民間療法をふんだんに取り入れて、抱いてやればいい。
子供が出来ればそちらにかかりきりになるだろうし、適度な回数の夫婦関係を持てば文句を言う事もない。
そしてファウスティーナの事はコソコソせずにベアトリスにも認めさせる。
「魔法使い」として側に置けばいいのだ。
「ファティはどうするかな。泣いて懇願するかな…フフッ。ファティがいけないんだ。こんなに離れて会えない期間が長いのに楽しそうにするから。可愛さ余って憎さ100倍だよ。厳しい愛の躾が必要だよね」
オズヴァルドは目を閉じ、自分の手により躾と言う名の調教を受けるファウスティーナを思い浮かべる。
事務的な言葉しか掛けず、常に側に置く。しかし触れる事もない。
そうすればベアトリスも文句を言えるはずもない。
不安で泣き出しそうなファウスティーナを想像するとオズヴァルドはゾクゾクした。
「愛の形と言うのは必ずしも喜びだけで現わされるものじゃないんだ。ファティ。究極の愛の形は純愛。それも手を伸ばせばそこにいるのに触れる事すら出来ない本物の純愛だ。心と心で1つになるんだよ…クックック…アッハッハ」
★~★
この後10分後に公開時間のお知らせとしてイリュージョンコーナーが出現しまぁす。\(^▽^)/
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手土産はあった方が良かっただろうかと思いながらファウスティーナの住まう部屋があるアパートメントの前まで来て部屋を見上げた時、目的の部屋の前に信じられないものを見た。
5人の男と思われる人間。手には鞘から抜いた短剣。目元だけを残し頭部をすっぽりと隠した姿で1人は廊下を走って階段に逃げ、4人は3階という高さから柵を飛び越えて階下に飛び降りた。
あっという間に近所の住民が扉を開けて様子を伺い騒ぎだす。
柵を超えて飛び降りた事で足を挫いたのか、前転をして植え込みに転がり込んだ者がいた。
植え込みから出てきたのは男で「なんだ?なんだ?何かあったのか?」まるで知らぬふりをして声をあげ、少し足を引きながらオズヴァルドから少し離れた場所を去って行った。
オズヴァルドはその男を知っていた。
屋敷で厩舎の清掃を担当している男だ。
家を継ぐ事は決まっていても「まだその時期じゃない」と教えてもらえなかったが友人達からは「家の為に汚い仕事をする使用人」を抱えている家が存在する事は聞かされていた。
汚い仕事とはどぶを掃除したり、汚物層を洗ったりと言う物理で汚いものではなく発覚すれば犯罪。そんな仕事を家の為に行う人間の事でオズヴァルドはたかが子爵家に過ぎないラーベ家にそんな人間がいたとは思わなかった。
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男達が踏み込む前に訪れなくて良かったと掛布に包まって手を祈りの形に組み合わせ、神に心からの感謝を捧げた。
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やっと体の震えも止まり、気持ちも落ち着いてくると今度は父への怒りがこみ上げる。
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――やっぱり、こいつだったんだ――
ここで男を問い詰めようかと思ったが止めた。逃げた男は全部で5人。残りの4人は屋敷の中にいるどの使用人なのか判らない。うっかり口にしてしまって自分も口封じをされてはたまらない。
父親のラーベ子爵は「後継はお前だ」とオズヴァルドには告げているが、その代わりにベアトリスを妻としファウスティーナを「愛人として囲っても構わない」と条件を付けるような事を言った。
オズヴァルドが気に入らないのはファウスティーナを愛人とすれば良いという人として扱わないような発言ではなく、まるで玩具を与えれば言う事を聞く駄々っ子のように自分を扱った事だ。
家の事や自分の立場しか考えていない父親は、間者のような仕事をする人間の事をオズヴァルドが知っている、しかもその場を見てしまったと知れば息子であろうと消すだろうと考えた。
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家督を継げばあの間者たちを使うのは自分。恐れる事など何もない。
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不安で泣き出しそうなファウスティーナを想像するとオズヴァルドはゾクゾクした。
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