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第17話 冗談にならない冗談
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雑貨店の向かいにあるカフェに出向いたのオズヴァルドだが、カフェの向かいにあるはずの物がないことに驚いた。
あるにはあるのだが形を変えた無残な姿で、店主が手配をしたのか焼けて煤けた残骸を荷馬車で乗り付けた屈強な男達が片付け始めている場だったのだ。
この区画で火事があったのは報告で知っていたが雑貨店だとは思わなかった。
出火は深夜との事なのでファウスティーナが怪我をしている心配はないが、職を失った事でこれから先ファウスティーナがどうするのか。オズヴァルドの心配はまた新たなステージに入った。
「こんな時こそ俺が側にいてやらないと」
家を継ぐまでオズヴァルドには自由にできる金は多くあるわけではないが、2、3か月生活の面倒を見るくらいは何とかなる。
今まではファウスティーナに危害を加えられてはかなわないと住み家となっている部屋までは近くまでしか行った事はなかったが、母親名義の別荘もある事だし、この機会に生活の場を別荘に移させようと考えた。
本来の予定まで早めるつもりもなかったが、別荘に住まうようにしておいてベアトリスと結婚し家督を継ぐ。そうすればその後のファウスティーナの生活もずっと見てやれる。
オズヴァルドは自分の事を天才じゃないかなと疑った。
余りにも全てにおいて問題がない、非の打ち所がない案じゃないかと自画自賛した。
だとすればあとは行動あるのみ!
オズヴァルドは勇んでファウスティーナの住まうアパートメントの部屋に向かった。
★~★
雑貨店が燃えてしまった事で収入の要となる仕事を全て失ってしまったルフィード伯爵とファウスティーナは仕事の斡旋所に通うのだが、なんだかんで全く仕事にはありつけなかった。
年齢がネック、職歴がない、家が遠い、資格がないなど断る理由は幾らでもあって、やる気と誠意があってもどうにもならなかった。
今日は時給が通常で980ニャウなのに600ニャウ。それでも食べなければ生きていけないので商会に対し斡旋所の職員に問い合わせて貰ったのだが、お断りという返事を貰ってしまった。
「どこも雇ってくれないの。確かに!!確かに私には職歴とかないけど…ミルクを配達するのに文官の職歴が必要だなんて…」
「ミルクの配達に文官の職歴?無茶苦茶だな」
グレイクは驚くが、驚きはルフィード伯爵からも飛び出した。
「下水清掃員の仕事を申し込んだんだが…騎士団長の経験がないと無理と言われたよ」
「騎士団長?!そんな経歴がある人に応募させる方が無理だ!」
断わる理由など幾つでも内容問わず後付けは幾らでも出来る。
誰かが意図的に仕事を与えないように操作しているとしか思えなかった。
実入りが無ければ生きている日数分だけ僅かな貯えも消えていく。
住む場所もタダではなく、もうすぐ引っ越しをせねばならず1世帯、2世帯と空き室も多くなっていくアパートメントでも家賃は払わねばならない。
グレイクは「気落ちするな」とファウスティーナの肩に手を置いた。
その肩は考えていた以上に細くて小さく、グレイクは更に小さく震える動きも感じてしまった。
――父親なら守ってやりたいと思うだろうな――
そんな事を思いつつも、かの日の思いが胸を過る。
――妻としてなら大義名分もあり守れるのに――
そんなグレイクの思いを感じているのかいないのか。
ファウスティーナは肩に置かれたグレイクの手に手を乗せた。
グレイクは手から電撃が走ったような衝撃を感じた。
コテンとその手の上に頭を乗せるように傾けたファウスティーナは「ありがとう」と言う。
グレイクは不謹慎にも胸がドキドキしてしまった。
「はぁ~。私にもグレイクさんのような家事スキルがあればなぁ…高齢の先代さんとかに後妻なら介護要員として迎えて貰えるかも知れないのに」
「ははは。可愛いお前をそんなところにやりはしないよ」とルフィード伯爵が言えば、グレイクも思わず言葉が口から飛び出してしまった。
「そんな事をさせるくらいなら、嫁さんにして国に連れて帰るよ!」
<< ふぇっ? >>
ファウスティーナとルフィード伯爵がキョトンとした間抜け顔でグレイクを見る。言ってしまった物は引っ込みもつかない。グレイクは慌てて「1つの方法として・・・だけで他意はないっていうか…」もごもごとその場に小さくなった。
場は静まり返ってしまう。グレイクは居た堪れない。
「そうね、それもいいかも!グレイクさんのような夫だったら人生が楽しそう!美味しいごはんも食べられるし」
「ファティ、まさかグレイク君に胃袋を掴まれたのか?」
「ガッツリ掴まれちゃった♡」
「奇遇だな、父さんもだよ」
しかし、この父娘は何処までもお人好しであり、冗談もジョークで受け流してくれる。
「いや、冗談だから!冗談!…その…年齢差もあるし最後の保険っていうのかな?そんなカンジデ…」
「ふふっ。ありがとう。解ってますわ。グレイクさんも心配してくれてるのよね」
「あはっあはは。そうだよね。まさか、まさかのそのまさか!と思っちゃったよ。娘婿が年上って。あははは。グレイク君は場を和ませる達人だなぁ」
「本当ね。グレイクさんと結婚する女性が羨ましいわ。私もあと20歳年上だったらグレイクさんに自分を売り込むんだけど」
グレイクには冗談のつもりが冗談でもなく、本気にしそうな言葉だった。
あるにはあるのだが形を変えた無残な姿で、店主が手配をしたのか焼けて煤けた残骸を荷馬車で乗り付けた屈強な男達が片付け始めている場だったのだ。
この区画で火事があったのは報告で知っていたが雑貨店だとは思わなかった。
出火は深夜との事なのでファウスティーナが怪我をしている心配はないが、職を失った事でこれから先ファウスティーナがどうするのか。オズヴァルドの心配はまた新たなステージに入った。
「こんな時こそ俺が側にいてやらないと」
家を継ぐまでオズヴァルドには自由にできる金は多くあるわけではないが、2、3か月生活の面倒を見るくらいは何とかなる。
今まではファウスティーナに危害を加えられてはかなわないと住み家となっている部屋までは近くまでしか行った事はなかったが、母親名義の別荘もある事だし、この機会に生活の場を別荘に移させようと考えた。
本来の予定まで早めるつもりもなかったが、別荘に住まうようにしておいてベアトリスと結婚し家督を継ぐ。そうすればその後のファウスティーナの生活もずっと見てやれる。
オズヴァルドは自分の事を天才じゃないかなと疑った。
余りにも全てにおいて問題がない、非の打ち所がない案じゃないかと自画自賛した。
だとすればあとは行動あるのみ!
オズヴァルドは勇んでファウスティーナの住まうアパートメントの部屋に向かった。
★~★
雑貨店が燃えてしまった事で収入の要となる仕事を全て失ってしまったルフィード伯爵とファウスティーナは仕事の斡旋所に通うのだが、なんだかんで全く仕事にはありつけなかった。
年齢がネック、職歴がない、家が遠い、資格がないなど断る理由は幾らでもあって、やる気と誠意があってもどうにもならなかった。
今日は時給が通常で980ニャウなのに600ニャウ。それでも食べなければ生きていけないので商会に対し斡旋所の職員に問い合わせて貰ったのだが、お断りという返事を貰ってしまった。
「どこも雇ってくれないの。確かに!!確かに私には職歴とかないけど…ミルクを配達するのに文官の職歴が必要だなんて…」
「ミルクの配達に文官の職歴?無茶苦茶だな」
グレイクは驚くが、驚きはルフィード伯爵からも飛び出した。
「下水清掃員の仕事を申し込んだんだが…騎士団長の経験がないと無理と言われたよ」
「騎士団長?!そんな経歴がある人に応募させる方が無理だ!」
断わる理由など幾つでも内容問わず後付けは幾らでも出来る。
誰かが意図的に仕事を与えないように操作しているとしか思えなかった。
実入りが無ければ生きている日数分だけ僅かな貯えも消えていく。
住む場所もタダではなく、もうすぐ引っ越しをせねばならず1世帯、2世帯と空き室も多くなっていくアパートメントでも家賃は払わねばならない。
グレイクは「気落ちするな」とファウスティーナの肩に手を置いた。
その肩は考えていた以上に細くて小さく、グレイクは更に小さく震える動きも感じてしまった。
――父親なら守ってやりたいと思うだろうな――
そんな事を思いつつも、かの日の思いが胸を過る。
――妻としてなら大義名分もあり守れるのに――
そんなグレイクの思いを感じているのかいないのか。
ファウスティーナは肩に置かれたグレイクの手に手を乗せた。
グレイクは手から電撃が走ったような衝撃を感じた。
コテンとその手の上に頭を乗せるように傾けたファウスティーナは「ありがとう」と言う。
グレイクは不謹慎にも胸がドキドキしてしまった。
「はぁ~。私にもグレイクさんのような家事スキルがあればなぁ…高齢の先代さんとかに後妻なら介護要員として迎えて貰えるかも知れないのに」
「ははは。可愛いお前をそんなところにやりはしないよ」とルフィード伯爵が言えば、グレイクも思わず言葉が口から飛び出してしまった。
「そんな事をさせるくらいなら、嫁さんにして国に連れて帰るよ!」
<< ふぇっ? >>
ファウスティーナとルフィード伯爵がキョトンとした間抜け顔でグレイクを見る。言ってしまった物は引っ込みもつかない。グレイクは慌てて「1つの方法として・・・だけで他意はないっていうか…」もごもごとその場に小さくなった。
場は静まり返ってしまう。グレイクは居た堪れない。
「そうね、それもいいかも!グレイクさんのような夫だったら人生が楽しそう!美味しいごはんも食べられるし」
「ファティ、まさかグレイク君に胃袋を掴まれたのか?」
「ガッツリ掴まれちゃった♡」
「奇遇だな、父さんもだよ」
しかし、この父娘は何処までもお人好しであり、冗談もジョークで受け流してくれる。
「いや、冗談だから!冗談!…その…年齢差もあるし最後の保険っていうのかな?そんなカンジデ…」
「ふふっ。ありがとう。解ってますわ。グレイクさんも心配してくれてるのよね」
「あはっあはは。そうだよね。まさか、まさかのそのまさか!と思っちゃったよ。娘婿が年上って。あははは。グレイク君は場を和ませる達人だなぁ」
「本当ね。グレイクさんと結婚する女性が羨ましいわ。私もあと20歳年上だったらグレイクさんに自分を売り込むんだけど」
グレイクには冗談のつもりが冗談でもなく、本気にしそうな言葉だった。
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