好きなのはあなただけじゃない

cyaru

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危険な番外編   ★君の♡にジェネレーション★

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「辰様……」
「陽葉瑠、探しました。無事でよかった……。でも、どうしてここへ……?」
 辰様のほうへ行こうとしたが、風名に腕を掴まれてしまい、あと数歩のところで立ち止まった。
 緑の瞳を見上げる。
「教えてください。青帝が風名さんを愛しているのであって、辰様が彼女を愛しているわけじゃない。そうですよね?」
「え、ええ……そうですが……?」
 辰様は戸惑うように、眉をひそめた。
 
 胸がどきどきしている。息が苦しくて、浅い呼吸を素早く繰り返す。

 辰様と風名が天界に還れば、この世界から夜魔はいなくなる。辰様も毎年別の神様を食べるという罪をおかさずにすむ。
 でも、風名は辰様を愛しているわけじゃない。死んでも構わないとさえ思っている。辰様は風名を愛しているわけじゃない。私を愛してくれている。

 いいやもうそんな理屈なんてどうでもよかった。
 そばにいたい。離れたくない。もうほかの女性なんて抱かないでほしい。風名と寄り添うところなんて二度と見たくない。風名の嫉妬で光の雨を使わされて、死んでいくところなんか見たくない。

 だから私は罪をおかす。
 あなたを苦しめることになるかもしれないとわかっていても。
 衝動が私を突き動かす。いま手を伸ばさないと永久に失われてしまうものが目の前にあって、私は何よりそれが欲しい。迷いはまだある。そのくせ自分を止められない。

「私は辰様に命令します」
 辰様が驚愕に目を見開く。
 あなたに捧げた私の血が、きちんとあなたを縛りますように。強く強く念じながら、言葉を発する。
「風名さんを愛さないでください。風名さんと天界に還らないでください」
「陽葉瑠……っ!」
「これは命令です。私だけを、愛してください」
 
 これは世界を滅ぼす呪いの言葉となるのかもしれない。

「辰様、私はあなたが思うほど優しくもなければ、正しくもありませんでした。私も……醜い」
 もう既に後悔で胸が苦しい。言わなければ良かった、でも言わずにいられなかった。目が熱い。苦しい。心がぐちゃぐちゃだ。

「はは……は……」

 辰様は目を真っ赤にして泣きながら笑っていた。胸を押さえて、大声で叫ぶように笑う。時折痙攣したように肩を震わせ、喘いだ。口から唾液を垂らし、手の甲で口元をぬぐった。

「は……はは……あはは! 私の気持ちがわかりますか。ふふ、自分が壊れてしまいそうなほど嬉しくて、……っふ、自分が壊れそうなそうなほど絶望しています。ああでも、いいのです、全ての罪は私が背負いましょう。陽葉瑠が私の愛を欲しがってくれた、それだけで私は幸せすぎて死んでしまいそうです。永遠にそばにいます、陽葉瑠!」
 碧の目は異様にぎらつき、ひきつった笑みを浮かべる口元はこれから起こる凶事を予感させた。風名は異様なものでも見るような目つきで私と辰様を見た。
「嘘でしょう、私と天界に戻ってくれるわよね? ねえ!」
 風名の叫びに辰様は冷笑を返した。
「私はもう天界には還りません」
「そんな、どうして……だって、あなたは青帝なのだから……神の血の制約なんて無視できるはずでしょう?」
「いいえ。青帝と私では私のほうが優位なんです。ですので私が縛られるものは何であれ青帝も縛られます。残念ですが諦めてください。私も青帝も、あなたを愛することを禁じられてしまいました。もう風名に心動かされることはない」
「そんな……」
 風名はがっくりと頭を垂れた。
「痛っ……」
 私の腕を掴んだ爪が肉に食い込んでいる。離そうとしたが、力が強い。この小さな手の一体どこからそんな力が湧くのか。
 ゆらり、顔を上げた。美しく整った童顔であるがゆえに、怒りや嫉妬といった感情が不釣り合いで、まるで別人のように人相が変わってしまっていた。
「許さない、こんなの……絶対に許さないわ……!」
「……っく!」
 腕を引っ張られて、地面にたたきつけられた。とても人間の力とは思えない怪力だ。腰を打ったけれど、でも爪が食い込む痛みから解放されてほっとする。
 彼女は一歩、一歩、大地に呪いをかけながら歩くかのようにじわじわと進んだ。
「風名、どこに行く気ですか」
 辰様は立ちふさがり、両手を伸ばして、行く手を遮った。
「行かせるわけにはいきません。あなたがやろうとしていることが私にはわかります。それだけはいけません」
 しかし、風名は目にもとまらぬ早さで身をひるがえし、手を広げた辰様の横をすり抜けた。
「私を裏切ったあなたたち二人が幸せになることだけは、許さない!」
 振り返りざまにそう吐き捨てると、広場のほうへ駆けていった。

 辰様は追いかけようと数歩駆け出したものの、すぐ引き返してきて、私の肩を掴んだ。
「あまり時間がありません。これから言うことをよく聞いてください。風名はおそらく神産みの箱に入る気です。でも天界に戻るためじゃない。強力な夜魔を産むために入るのです」
「どういうことですか……」
「相手を乗っ取って自分のものとする夜魔の力を使い、神産みの箱を乗っ取る気なのです。あの箱は夜魔を生む装置に変えられてしまう。それもただの夜魔ではなく、箱の中で眠っている次なる神々と合体させた夜魔、つまり私のような者を産む気なのです」
「辰様と同じ者ならば、心配はいらないのでは……」
 辰様はかぶりを振った。
「夜魔は風名の支配下にあります。半分が神であっても、風名が命じるままに人々を殺そうとするでしょう。ああ、安心してください、私は支配を受けません。私は特殊なのです。青帝と一体化しているから風名の力は及びません。でも、ほかの神たちはそうはいかない……私たちは天女より格下ですから」
「夜魔に侵された神様が、これから人を襲うと……」
「ええ。神の喜びごとが、凶事に変じ、人々に災いが降りかかるのです」
 ことの重大さが飲み込めてきた。
 あの緑色の神秘の箱が、恐ろしい災いの元にされてしまう。
 それと同時に、これか、と思った。以前、紅飛斗長が予感していた、神産みの箱に迫る危機。

 紅飛斗長が感じた不吉な予言は……おそらく現実になる。

「陽葉瑠。これから話すことをよく聞いてください」
 嫌な予感がした。
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感想 38

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みんなの感想(38件)

まち
2024.04.02 まち

完結おめでとうございます。
番外編までしっかり堪能しました。

タイトル、途中からどっちの意味かな~って思ってたけど、両方でした。
グーさん、いいですね~。
良き夫、良きパパで、ついでに良き娘婿(年上だけど)。
年の差カップルって、何だかいいなって思っちゃいました。
グーさんの包容力、半端ないですね。

楽しく最後まで読ませて頂きました。
次作も楽しみにしております。

cyaru
2024.04.03 cyaru

コメントありがとうございます。<(_ _)>

番外編まで!ありがとうございます(*´▽`*人)

タイトルはどっちかな~こっちかな?と思わせておいて両方だった!という(笑)
さらにもう1つ…もしファウスティーナがオズヴァルドの愛人になりつつグレイクともお付き合いをしていたのなら、「男はあなただけじゃないのよ」っていう悪女発言も飛び出したかも知れません(;^_^A

まぁ、そこまで男性とのお付き合いがあるファウスティーナじゃないのでベアトリスのようにちやほやしてくれる男性に囲まれて周囲の令嬢に見せつける事もないでしょうけども(;^_^A

グレイクは諜報員という仕事なので家族を持つならそれなりの覚悟も必要。その上で家族に嘘をついて「家庭」を築かなきゃいけないので、自分には無理って諦めてたかな。
1人で生きていくために家事スキルもかなり磨き上げております(笑)

娘ほどの年齢差はありますけども、最初は潜伏先に利用するだけだった気持ちが、下心も何もなくただ新設にしてくれる父子に対し段々と変わって来て心配までしちゃう(笑)

父親のように守ってあげなきゃと変わって1人の大事な女性として自分の気持ちの中に住み着いたファウスティーナを妻として守ろうとします。

オズヴァルドは自分が楽をするため、グレイクはファウスティーナに幸せになって欲しいからと真逆の気持ち。そりゃファウスティーナがどちらを選ぶか(そもそもオズヴァルドは終わった人だし)判り切っておりました(*^-^*)

年齢差があるので色々と感覚も違ってジェネレーションギャップもある2人ですけども、新しい家族が増える喜びとお互いを思い合う気持ちにはギャップなんて存在しないので、これからも仲良くやってくかな。

楽しんで頂けて良かったです♡
ラストまでお付き合いいただきありがとうございました<(_ _)>

★~★欄を拝借★~★

今回も39件(非承認1件。k様誤字報告ありがとうです♡)もコメントを頂きありがとうございます。

辛抱が出来ない外道なワシなので危険な香りのする閑話を放り込んでしまいましたが、面白かったといって頂ける声も多くとても嬉しかったです(*^-^*)

次回への励みになりました♡

読んで頂いてありがとうございました<(_ _)>

解除
みゃん
2024.04.01 みゃん

番外編発見。
うちの娘。特に上の子。
紙オムツが肌にあわなくて布オムツでした。
出てすぐ替えたと思われるのに肌が赤くなる。
時代に逆行していましたね。
おちびの時はオムツが進化したのか肌が丈夫なのか紙オムツ一択でした。
今は超便利で濡れたら線が出てくるからめくらなくてもわかる。

おちびはあんパンとわんわんがお気に入りでした。

cyaru
2024.04.03 cyaru

コメントありがとうございます。<(_ _)>

高分子ポリマーとか不織布に肌が負けちゃうのかも知れないですな。
少し前のコロロンが吹き荒れていた時にマスクをしちゃうと肌が荒れるとかカブレるって方がいたんですけども、同じような感じかも。

女の子だとお年頃になってのケア用品は気を付けてあげないとお月様の時は要注意ですよ。
成長と共に肌も耐性ができる??かも知れないけれど体調が悪い時とか、あとはこの先更年期とかの年代になってくると「そう言えば赤ちゃんの時に‥」って同じ状態になっちゃうかも。

世の中、多様化、多様化と言いますが、かつて昭和、平成の時代にアトピーとか花粉症が贅沢病とか根も葉もない根拠で叩かれたりしましたけども、大多数には問題なくてもトラブルが出ちゃう場合もあるので、少数とは言え紙おむつでもカブレる(長時間交換しないとか、ギャザーの部分がきついとかは別ですが)のもあり得る話、そう言う事もあるとみんなが知ってくれるといいかも(*^-^*)

しかし、今の紙おむつは進化してますよねぇ。
交換するのが触らなくても目視で判る!「しちゃった?」って臭いも軽減されてますし科学と化学は凄いなと思います。

布おむつは濡れたって感じが解るのでオムツ離れが早いといいますけども、洗濯が追いつかない(笑)
大量のバ●ビ絵柄のオムツ。ワシも使用はしましたが布おむつ1本のママさん。尊敬です。
もうね、体力が追いつかない(笑)

出産は交通事故に匹敵するダメージと言いますけども、自分の体より子供の世話が最優先なので全く休めない24時間戦えますかの世界ですからねぇ‥。ホントに凄いなぁと尊敬。
だからと言って紙おむつが楽かと言えばNO!育児は大変なのですニャ♡

あんぱんとワンワン!不動の人気ですよね。テレビの影響もあるんでしょうけども、特にわんわんは放送時間になると子供が食いつく、食い付く!
あんぱんもワシはもう…どこかの坂道の女の子達も覚えられませんが、子供はほぼALLでキャラを知ってましたよ(笑)●ールパンナちゃんの事をメ●ンパンナちゃんのお姉ちゃんだからと「メロール●ンナちゃん」と間違った時は子供にジト目を向けられました(笑)

楽しんで頂けて良かったです♡
ラストまでお付き合いいただきありがとうございました<(_ _)>

解除
蘭丸
2024.04.01 蘭丸

今朝、番外編まで読ませて頂き
ました♪

今作も「何!?コイツ!!」
「胸糞悪い!!」と思いながらも
楽しく読ませて頂きました💕

年の差婚でも幸せそうで何より✨

cyaru
2024.04.03 cyaru

コメントありがとうございます。<(_ _)>

番外編まで!ありがとうございます~ヾ(@⌒ー⌒@)ノ

あと22分…と2時22分を狙っておりましたけども、お風呂にしよう!と思いまして22分じゃ間に合わないかも??と真夜中の2時に公開!!

おそらく人類の3%の方は「ミ●」の丸くて瓶の色は茶色、緑のパッケージと何の変哲もないのに微妙に開け閉めするのにコツの必要な瓶を知っているだろう思いましてね(笑)

「ミ●!おぉ懐かしい!そう言えば暫く飲んでなかった~」と翌日売り場に行き「マジか…ホントにジッパートップやんけ」と時代を感じられるかな~っとか(爆)

思えば瓶を栓抜きで開けていた時代に缶ジュースが登場した時、プルタブは取り外し式で御座いました。飲んでいる間もそこらへんに捨てる事も出来ず、指に引っかけて飲み終わった缶にIN。
今は缶についたままなので便利になったし、開封する時にカシュっと開けた後に回転させると中央部だけに穴が開くんですよ。ストロー用らしいですけどね。

回す手間すら惜しいワシ(単に早く飲ませろ状態なだけ)


きっとオズヴァルドやラーベ子爵、ベアトリスが失敗をしたのはそのひと手間を惜しんだから…いやアップデート出来ないまま今の状態を温存しようとしたからでしょうかね。

27歳差の夫婦ですけども約30年も違うと知ってるものも全く違う!!
今の10歳に「栓抜き、缶切り、ダイヤル電話」は認知度ないでしょうしね…。使える子こそ全人類の3%かも知れません(笑)

2人の子供はまた新しい世代ですからファウスティーナもグレイクのような「え?知らないの?」状態になっちゃうでしょう(笑)

身分でもなく年齢差でもなく、お互いの思いを汲み取る2人なのでこれからも「え?なにこれ?」なグッズでひと悶着ありそうですが仲良くやっていくでしょう(*^-^*)

閑話や番外編も楽しんで頂けて良かったです♡
ラストまでお付き合いいただきありがとうございました<(_ _)>

解除

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