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最終話☆王妃?そんなものは微塵も望んでおりません。
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夜会の前に到着した帝国の皇太子夫妻を出迎えたのは3公爵と5侯爵。
そして覇気のない国王と、何かに吹っ切れたような王妃。
それぞれは会議用のテーブルについているが、床に転がっているのはディートリヒとアンネマリーだった。
ブレンデル国には3つの公爵家と5つの侯爵家がある。
ゼルガー公爵家、アンロドシュ公爵家、ヒルシェ公爵家。
3家に共通しているのは3、4代おきに王女が降家する建国以来の名家である。
リリエンタル侯爵家、キデルレン侯爵家、ツヴァート侯爵家、ヘル侯爵家、パプストン侯爵家も同じく数代おきに王女や王子が降家した名家であり、一番若いヘル侯爵家でも250年は続いている。
血が濃くなるのを避けるため、2、3家は時折伯爵家との婚姻を結びその子供たちが残りの公爵家、侯爵家と婚姻をする。公爵家、侯爵家同士が婚姻をする事もあり、コンスタンツェとジギスヴァルトもそれにあたる。
血の継承だけで言えば、現在の王家よりも余程由緒正しいと言えるだろう。
全てが親類縁者とも言える各家同士はいがみ合う事もなく比較的交流のある8家ではあるが、当然秘密もある。共通しているのは全てが【王家の番人】だと言う事でもあり【スペア】でもある。
既に2代続いて不評を持っている王家に次の代ではテコ入れをする為にリリエンタル侯爵家のアリーエとの婚約が結ばれていたが、ディートリヒの愚行により婚約が破棄となった。
続いてゼルガー公爵家のコンスタンツェとの婚約となり今に至るが、これも風前の灯火。
8家の当主、および夫人と嫡男が一堂に会するのは滅多にないが今回は帝国の皇太子夫妻を出迎えた。
「物々しいね。おおよその察しはつくが聞くだけ聞こうか」
皇太子妃の椅子を引き、さりげなくエスコートを忘れない紳士でもある皇太子は椅子に座ると先程までの紳士な態度は何処へやら長い脚と腕を組んでディートリヒとアンネマリーを見据えた。
年齢は少し皇太子の方が高いが、ディートリヒは格の違いだけでは済まないほどに貧相だった。
「帝国皇太子殿下に申し上げる。この度ブレンデル国では国王が退位し新国王の即位と相成りましたことを報告申し上げる」
「では!僕が!僕が国王になったのですか!」
アンロドシュ公爵の言葉に、ディートリヒの顔が途端に華やいだ。後ろ手に縛られ、転がったまま海老反りになっている今の状況を考えればそれが自分ではない事くらい理解出来そうなものだが?と皇太子はディートリヒを見て笑い出してしまった。
「プックックック…失礼。いや承知した。で?あちらの男が何かを期待しているようだが?」
「何がおかしい!やった!僕が‥ついに僕が…」
頭と足を動かし、喜びに震えるディートリヒだったが席を立ったコンスタンツェはゆっくりと近寄り、ディートリヒの顔に熱い茶が入ったカップを高さを持ったまま傾けた。
「熱っ!!うぷっ!あぶっ!!何をっごふっ!!」
「お黙り。コクゾウムシ」
「コっ、コクゾウムシだとっ?僕が国王になったから王妃になれたんだぞ?!僕を敬え!なんて浅ましい女なんだ!」
コンスタンツェは薄く笑った。見上げたその微笑が余りにも淫靡でディートリヒの心臓がドクンと高鳴った。
「王妃?そんなものは微塵も望んでおりません。わたくしが望んだは女王。何より貴方は王になどなっていないの」
「そんなバカな!王族でもないのに出来るはずがないだろう!」
「黙れ小童!」
叫んだのは退位した国王だった。国王時代にここまで圧を放ったことがあっただろうか。
いや、私怨も含めて今に至るのかも知れない。隣に座る前王妃は目を閉じ口を固く結んでいる。
「皇太子殿下、妃殿下、愚息が申し訳ない。…ディートリヒ、今日に至るまで何度も言ったはずだ。民のために生きよと。それが出来ないものが継承する事は出来ない。私も本来ならしてはならなかった。王族であったのなら覚悟を決めよ」
「父上…そんな…民は…我らのために尽力すべきでしょう!王族とはそう言――」
ドゴッ!! 「ヒィッ!!」
ディートリヒの鼻先をかすめてジギスヴァルトの剣が床に刺さる。
少し動けば鼻を削いでしまっていたかも知れないと思うとディートリヒは動く事も声を出す事も出来なかった。
「王族でなければ王になれぬ?戯言は大概にされたほうが宜しくてよ。3公5侯に生まれた者はいつその時が来るやも知れぬと、その時のために学ぶ。王命が出された時より我らは王家に引導を渡すべく動いた。それすら読めない愚か者を玉座に据える事は出来ませんわ」
「あ…あぅ…」
「大丈夫よ。貴方には平民として深い仲のアンネマリーと生きてもらう道を用意しているわ。戦が終わりまだ1年だと言う事に感謝なさい。本来ならば国金の私的流用は絞首刑なのだから」
「いやっ!私は嫌っ!平民なんてどうやって生きて行けばいいの!」
「物乞いでもなさったら如何?」
「ツ…ツェ…謝る。もう浮気はしないし真面目に取り組む。助けてくれ」
「何を仰るかと思えば。浮気?友人で御座いましょう?仲が宜しくて何よりですわ」
衛兵に連れ出される2人を誰も見向きもしなかった。
前国王は顔を背けたが、前王妃は腹を痛めた子だとはいえ閉じた目を開ける事も無かった。
帝国の皇太子夫妻に向き合ったコンスタンツェは淑女の礼ではなく、胸に手を当てる国王としての礼をする。一斉に公爵、侯爵の当主夫妻も立ち上がり臣下の礼を取った。
「ギラティナ帝国ラスムス皇太子殿下、ペトロネラ皇太子妃殿下。余興の非礼をここにお詫び申し上げます。本日即位となったコンスタンツェ・ゼルガー・シュタインで御座います。両国の変わらぬ友好と発展を願います」
「ブレンデル国女王コンスタンツェ殿、我が帝国は貴女の即位に合わせ誓おう。これまで我がギラティナ帝国はブレンデル王国に対しては懐疑的な面があった事は認めるが、先の戦で1公2侯の人的支援並びに2公3侯の物資援助、幾多の家門による金銭援助には皇帝陛下からも謝意を伝えるようにと言付かっている。以後は全てを取り払い対等の立場での付き合いを望む」
「良かったですわ。これで心置きなく次代に王位を譲る事が出来ますわ」
<<はっ?>>
「国を統治するにブレンデルはまだ発展途上の国。女王が立つことに嫌悪する民も多いのです。意識改革まではまだ時間もかかるでしょう。目立った政策もなかったとはいえ民の信頼は厚かった前国王の弔いの鐘が鳴ればそれはそれでまた問題も御座います。ですが広い見識を持つヒルシェ公爵家の嫡男であれば前国王夫妻の使い道も見出す事が出来ましょう」
ラスムス皇太子は腹を抱えて目から涙を流して大笑いをした。
「1日女王か。考えたな。同日国王が2人は民が混乱するがワンクッション置く事でその責も被るとなれば民の溜飲も下がり、本物の新国王はマッサラな状態で舵を取れるからな。尤も真意は別にありそうな気もするが」
「ふふっ。わたくし、王妃も女王も望んでおりませんもの」
♡☆♡☆♡
夜会の軽やかな音楽が流れる。
バルコニーで涼をとるコンスタンツェの足からヒールを脱がすとジギスヴァルトが踵と足の指をマッサージする。
主役とも言える場でほんの一時の休息。
明日からはヒルシェ公爵家の嫡男が国王となる事に誰も反対はなかった。
3公5侯の子女であれば、元々がスペアなのだから問題がある方がおかしいのだ。
ただそれも王族という立場となり数代すれば胡坐を掻く者が出て来てしまう。そのために存在する高位貴族であり続けるのは王族であるよりも過酷と言える。
「良かったのか?」
「何がですの?」
「女王となり俺が盾になっても良かったんだぞ」
「わかってないわねぇ…ヴァルはそういうところが鈍いんだから」
「俺の何が鈍いと言うんだ」
右足が終われば次は左足だと腰を下ろしたままでフイっと足を上げるとジギスヴァルトは【はいはい】と言いながらもマッサージを続けてくれる。
「女王になれば世継ぎ問題が出るでしょう?わたくしに問題があっても無くても数年子が出来なければ王配はすげ替えられる。わたくしはヴァル以外とはしたくないの。ヴァルと街で果実水もゆっくり飲めない生活は嫌だし、ちゃんと働いたお金で生活をしたいの。なにより…ヴァルの妻として生きていきたいの」
「お前…滅茶苦茶俺を煽ってるだろう」
「煽ってはないけれど…ねぇヴァル」
「どうした」
「友人って女性‥‥何人いる?」
「お前な、ズルくないか?俺だって――」
「俺だって…なぁに?」
「あぁっ!くそっ!初夜、覚悟しておけよ!絶対寝かさねぇからな!」
意外に嫉妬心の強いコンスタンツェだが、本当はジギスヴァルトが側にいるだけで良いと護衛を願い出てくれた事で思いの深さを知り、揺るがない気持ちで今日までやって来れた原動力だったのは言うまでもない。
「痛いっ!もう!ヴァルの下手っぴ!」
「優しくしてるだろうが」
「まぁ…優しいけどね」
「くっ!!お前…ホントにズルいぞ!!」
5日後には結婚式を挙げ、新居で仲良く暮らした2人は3人(2男1女)の子供に恵まれて、コンスタンツェは王宮内の女性次官の登用に、ジギスヴァルトは女性騎士の育成に尽力した。
前国王は西の塔へ。前王妃は東の塔へそれぞれ幽閉となり福祉的な慰問の時だけ塔の外に出る生活となった。前国王は新しいペンで毎日前王妃に手紙を書くのが日課となり、前王妃は開封しない手紙の置き場所に困る日々が始まった。
市井では2カ月ほど王都にかかる橋の途中に【上から目線の夫婦物乞い】がいると噂が立ったが、見物客だけが溢れパンすら恵んで貰えなかったのか夫婦ともに教会の世話になり女性は教会で孤児たちに文字を教え、数年後に教会で孤児の生活の世話をしている男の妻となった。男性はそうそうに教会を逃げ出し口先の上手さで暫く路上販売をしていたが被害者数が数十人の結婚詐欺で逮捕された後は刑期が累計で80年と言い渡され、出所できたか知る者はいない。
Fin
☆彡☆彡☆彡
読んで頂きありがとうございました。<(_ _)>
そして覇気のない国王と、何かに吹っ切れたような王妃。
それぞれは会議用のテーブルについているが、床に転がっているのはディートリヒとアンネマリーだった。
ブレンデル国には3つの公爵家と5つの侯爵家がある。
ゼルガー公爵家、アンロドシュ公爵家、ヒルシェ公爵家。
3家に共通しているのは3、4代おきに王女が降家する建国以来の名家である。
リリエンタル侯爵家、キデルレン侯爵家、ツヴァート侯爵家、ヘル侯爵家、パプストン侯爵家も同じく数代おきに王女や王子が降家した名家であり、一番若いヘル侯爵家でも250年は続いている。
血が濃くなるのを避けるため、2、3家は時折伯爵家との婚姻を結びその子供たちが残りの公爵家、侯爵家と婚姻をする。公爵家、侯爵家同士が婚姻をする事もあり、コンスタンツェとジギスヴァルトもそれにあたる。
血の継承だけで言えば、現在の王家よりも余程由緒正しいと言えるだろう。
全てが親類縁者とも言える各家同士はいがみ合う事もなく比較的交流のある8家ではあるが、当然秘密もある。共通しているのは全てが【王家の番人】だと言う事でもあり【スペア】でもある。
既に2代続いて不評を持っている王家に次の代ではテコ入れをする為にリリエンタル侯爵家のアリーエとの婚約が結ばれていたが、ディートリヒの愚行により婚約が破棄となった。
続いてゼルガー公爵家のコンスタンツェとの婚約となり今に至るが、これも風前の灯火。
8家の当主、および夫人と嫡男が一堂に会するのは滅多にないが今回は帝国の皇太子夫妻を出迎えた。
「物々しいね。おおよその察しはつくが聞くだけ聞こうか」
皇太子妃の椅子を引き、さりげなくエスコートを忘れない紳士でもある皇太子は椅子に座ると先程までの紳士な態度は何処へやら長い脚と腕を組んでディートリヒとアンネマリーを見据えた。
年齢は少し皇太子の方が高いが、ディートリヒは格の違いだけでは済まないほどに貧相だった。
「帝国皇太子殿下に申し上げる。この度ブレンデル国では国王が退位し新国王の即位と相成りましたことを報告申し上げる」
「では!僕が!僕が国王になったのですか!」
アンロドシュ公爵の言葉に、ディートリヒの顔が途端に華やいだ。後ろ手に縛られ、転がったまま海老反りになっている今の状況を考えればそれが自分ではない事くらい理解出来そうなものだが?と皇太子はディートリヒを見て笑い出してしまった。
「プックックック…失礼。いや承知した。で?あちらの男が何かを期待しているようだが?」
「何がおかしい!やった!僕が‥ついに僕が…」
頭と足を動かし、喜びに震えるディートリヒだったが席を立ったコンスタンツェはゆっくりと近寄り、ディートリヒの顔に熱い茶が入ったカップを高さを持ったまま傾けた。
「熱っ!!うぷっ!あぶっ!!何をっごふっ!!」
「お黙り。コクゾウムシ」
「コっ、コクゾウムシだとっ?僕が国王になったから王妃になれたんだぞ?!僕を敬え!なんて浅ましい女なんだ!」
コンスタンツェは薄く笑った。見上げたその微笑が余りにも淫靡でディートリヒの心臓がドクンと高鳴った。
「王妃?そんなものは微塵も望んでおりません。わたくしが望んだは女王。何より貴方は王になどなっていないの」
「そんなバカな!王族でもないのに出来るはずがないだろう!」
「黙れ小童!」
叫んだのは退位した国王だった。国王時代にここまで圧を放ったことがあっただろうか。
いや、私怨も含めて今に至るのかも知れない。隣に座る前王妃は目を閉じ口を固く結んでいる。
「皇太子殿下、妃殿下、愚息が申し訳ない。…ディートリヒ、今日に至るまで何度も言ったはずだ。民のために生きよと。それが出来ないものが継承する事は出来ない。私も本来ならしてはならなかった。王族であったのなら覚悟を決めよ」
「父上…そんな…民は…我らのために尽力すべきでしょう!王族とはそう言――」
ドゴッ!! 「ヒィッ!!」
ディートリヒの鼻先をかすめてジギスヴァルトの剣が床に刺さる。
少し動けば鼻を削いでしまっていたかも知れないと思うとディートリヒは動く事も声を出す事も出来なかった。
「王族でなければ王になれぬ?戯言は大概にされたほうが宜しくてよ。3公5侯に生まれた者はいつその時が来るやも知れぬと、その時のために学ぶ。王命が出された時より我らは王家に引導を渡すべく動いた。それすら読めない愚か者を玉座に据える事は出来ませんわ」
「あ…あぅ…」
「大丈夫よ。貴方には平民として深い仲のアンネマリーと生きてもらう道を用意しているわ。戦が終わりまだ1年だと言う事に感謝なさい。本来ならば国金の私的流用は絞首刑なのだから」
「いやっ!私は嫌っ!平民なんてどうやって生きて行けばいいの!」
「物乞いでもなさったら如何?」
「ツ…ツェ…謝る。もう浮気はしないし真面目に取り組む。助けてくれ」
「何を仰るかと思えば。浮気?友人で御座いましょう?仲が宜しくて何よりですわ」
衛兵に連れ出される2人を誰も見向きもしなかった。
前国王は顔を背けたが、前王妃は腹を痛めた子だとはいえ閉じた目を開ける事も無かった。
帝国の皇太子夫妻に向き合ったコンスタンツェは淑女の礼ではなく、胸に手を当てる国王としての礼をする。一斉に公爵、侯爵の当主夫妻も立ち上がり臣下の礼を取った。
「ギラティナ帝国ラスムス皇太子殿下、ペトロネラ皇太子妃殿下。余興の非礼をここにお詫び申し上げます。本日即位となったコンスタンツェ・ゼルガー・シュタインで御座います。両国の変わらぬ友好と発展を願います」
「ブレンデル国女王コンスタンツェ殿、我が帝国は貴女の即位に合わせ誓おう。これまで我がギラティナ帝国はブレンデル王国に対しては懐疑的な面があった事は認めるが、先の戦で1公2侯の人的支援並びに2公3侯の物資援助、幾多の家門による金銭援助には皇帝陛下からも謝意を伝えるようにと言付かっている。以後は全てを取り払い対等の立場での付き合いを望む」
「良かったですわ。これで心置きなく次代に王位を譲る事が出来ますわ」
<<はっ?>>
「国を統治するにブレンデルはまだ発展途上の国。女王が立つことに嫌悪する民も多いのです。意識改革まではまだ時間もかかるでしょう。目立った政策もなかったとはいえ民の信頼は厚かった前国王の弔いの鐘が鳴ればそれはそれでまた問題も御座います。ですが広い見識を持つヒルシェ公爵家の嫡男であれば前国王夫妻の使い道も見出す事が出来ましょう」
ラスムス皇太子は腹を抱えて目から涙を流して大笑いをした。
「1日女王か。考えたな。同日国王が2人は民が混乱するがワンクッション置く事でその責も被るとなれば民の溜飲も下がり、本物の新国王はマッサラな状態で舵を取れるからな。尤も真意は別にありそうな気もするが」
「ふふっ。わたくし、王妃も女王も望んでおりませんもの」
♡☆♡☆♡
夜会の軽やかな音楽が流れる。
バルコニーで涼をとるコンスタンツェの足からヒールを脱がすとジギスヴァルトが踵と足の指をマッサージする。
主役とも言える場でほんの一時の休息。
明日からはヒルシェ公爵家の嫡男が国王となる事に誰も反対はなかった。
3公5侯の子女であれば、元々がスペアなのだから問題がある方がおかしいのだ。
ただそれも王族という立場となり数代すれば胡坐を掻く者が出て来てしまう。そのために存在する高位貴族であり続けるのは王族であるよりも過酷と言える。
「良かったのか?」
「何がですの?」
「女王となり俺が盾になっても良かったんだぞ」
「わかってないわねぇ…ヴァルはそういうところが鈍いんだから」
「俺の何が鈍いと言うんだ」
右足が終われば次は左足だと腰を下ろしたままでフイっと足を上げるとジギスヴァルトは【はいはい】と言いながらもマッサージを続けてくれる。
「女王になれば世継ぎ問題が出るでしょう?わたくしに問題があっても無くても数年子が出来なければ王配はすげ替えられる。わたくしはヴァル以外とはしたくないの。ヴァルと街で果実水もゆっくり飲めない生活は嫌だし、ちゃんと働いたお金で生活をしたいの。なにより…ヴァルの妻として生きていきたいの」
「お前…滅茶苦茶俺を煽ってるだろう」
「煽ってはないけれど…ねぇヴァル」
「どうした」
「友人って女性‥‥何人いる?」
「お前な、ズルくないか?俺だって――」
「俺だって…なぁに?」
「あぁっ!くそっ!初夜、覚悟しておけよ!絶対寝かさねぇからな!」
意外に嫉妬心の強いコンスタンツェだが、本当はジギスヴァルトが側にいるだけで良いと護衛を願い出てくれた事で思いの深さを知り、揺るがない気持ちで今日までやって来れた原動力だったのは言うまでもない。
「痛いっ!もう!ヴァルの下手っぴ!」
「優しくしてるだろうが」
「まぁ…優しいけどね」
「くっ!!お前…ホントにズルいぞ!!」
5日後には結婚式を挙げ、新居で仲良く暮らした2人は3人(2男1女)の子供に恵まれて、コンスタンツェは王宮内の女性次官の登用に、ジギスヴァルトは女性騎士の育成に尽力した。
前国王は西の塔へ。前王妃は東の塔へそれぞれ幽閉となり福祉的な慰問の時だけ塔の外に出る生活となった。前国王は新しいペンで毎日前王妃に手紙を書くのが日課となり、前王妃は開封しない手紙の置き場所に困る日々が始まった。
市井では2カ月ほど王都にかかる橋の途中に【上から目線の夫婦物乞い】がいると噂が立ったが、見物客だけが溢れパンすら恵んで貰えなかったのか夫婦ともに教会の世話になり女性は教会で孤児たちに文字を教え、数年後に教会で孤児の生活の世話をしている男の妻となった。男性はそうそうに教会を逃げ出し口先の上手さで暫く路上販売をしていたが被害者数が数十人の結婚詐欺で逮捕された後は刑期が累計で80年と言い渡され、出所できたか知る者はいない。
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☆彡☆彡☆彡
読んで頂きありがとうございました。<(_ _)>
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