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シリウスの愚行
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太陽が昇ると同時に誰かが階段を上がってくる音がする。
誰かなど考えるまでもない事であるが、折角ミルクティーで良くなった気分が一気に下がる。
バタンと扉を開けるが、扉の前に置いた書類に引っ掛かり半分しか扉は開かない。
アナスタシアはそれも想定済みである。
足元に散らばる書類を見て、途端に顔を真っ赤にするシリウスはそのまま奥に進んでくる。アナスタシアは小さなテーブルにカップを置いて椅子から立ち上がった。
「なんだあれは!」
扉の前で散らばった書類を指さし、怒気を含んだ声でアナスタシアに迫る。
「昨日、シリウス・マウレイ・シュバイツ王太子殿下がお持ちくださった書類ですわ」
「み、見ればわかるっ」
「なら、お聞きにならずともよろしいかと」
「ぐっ…ま、まぁいい。で?まとめた書類は何処だ」
「御座いませんわ」
「はぁっ?」
即答で応えるアナスタシアに、まさかと何故だという入り混じった声をあげた。
しかし、なければ今日まさに行き詰ってしまう。シリウスは焦った。
もしや、昨夜は食事の配給はしなくていいと止めた事に腹をたてたかとアナスタシアの表情を読むが全く判らない。だが、考えている時間はない。
「何を拗ねているんだ。早く出せ。直ぐに食事は用意しよう」
「出すも何も、お渡しする物など御座いません。あの書類を持ってお帰り下さいませ」
「何っ?まさかと思うが何もしなかったという訳ではないだろうが!」
「何もしておりません。あぁ、書類はテーブルから其方に移しましたが」
「なっ何を‥‥甘やかしていれば付け上がりおって!」
振り上げた手が、アナスタシアの頬を思い切り張り飛ばした。
思わず衝撃に倒れそうになるも、必死で足を踏ん張りアナスタシアは耐えた。
だが、またもシリウスは振りかぶり、手で覆った頬をそのまま張り、振り切った手を元に戻すついでだというように手の甲でアナスタシアの逆の頬を張り飛ばした。
騎士ではないと言っても男に思い切り頬を3度も張られればアナスタシアも無事では済まない。
口角からは口の中を切ったのか血が滲み、鼻血もたれてしまった。
しかしシリウスは止まらなかった。
片手で胸ぐらを掴み、片手で額から上の髪を鷲掴みにすると引き倒し、馬乗りになった。
「もう一度聞くぞ。あの書類は今日、どうしても必要なんだ。何もされないうちに渡せ」
「渡すも何も…御座いません」
バシッバシッ!ゴッ!!
頬をまた張り、掴んだ胸ぐらを思い切り床に向けて叩きつける。
肩と頭が床に打ち付けられ、アナスタシアは目が火花を散らしたかと思う衝撃を受ける。
「このっ!役立たずっ!誰のおかげで生き永らえていると思ってるんだッ!」
「頼んで…ハァハァ…おりませんっ」
「なんだって?!このぉぉ!!」
ガッ!!ゴツッ!!ガシッ!!
シリウスは力任せに馬乗りになりアナスタシアを殴る。
抵抗をしようにも両腕はシリウスの膝が上に乗り押さえられていてただ暴力に身を投げ出すしかなかった。
「くそっ!僕が叱られるじゃないか!どうしてくれる!どうしてくれるんだッ!」
「わたく…‥知るところ……座いま‥せん‥」
「まだ言うか!チッ、覚悟をしておけ。処刑だ。会合が終わり次第処刑してやるッ」
立ち上がり、踵でアナスタシアの手のひらを踏みつけ、脇腹を蹴り上げるとやっと離れていく。扉の前に散乱した書類を「くそぉぉ!」と叫びながら踏みにじるとやっと扉が閉じた。
痛む体と顔。きっと今、鏡を見たら儚くなってしまうかも知れないと這うように壁に背を預ける。
肩で息をしながら、ポトポトとドレスに落ちるのは頬が切れたのか、鼻血ならいいのだけどと思い体を休める。
王妃教育中にも何度も殴られた。大抵は見えないような場所だったが、頬を張られて鼻血でドレスを汚したとさらに殴った講師もいた。
――このくらい…経験済みだわ――
はぁと息を一つ吐くと、扉が開いた。いつもは外にいる護衛の騎士だった。
「妃殿下…大丈夫ですか?すみません。お助けできずに…」
騎士は濡れたタオルをだらりとなった手に1つ置くと、アナスタシアの顔を手にした綺麗なタオルを優しく押すように傷口に当てていく。
熱を持った頬に冷たい感触をありがたいと感じてしまった。
「このような…事をすれば、貴方も‥処罰されます。おやめ‥なさい」
「妃殿下。逃げましょう?今日は帝国の会合。貴女一人です。何とでも致します」
「いいえ、逃げる事は…出来ません」
「もういいでしょう?1年半も貴女はここで耐えたではありませんか」
「ありがとう。ですが‥‥ここを出る時は…全てが終わってからと…決めているのです」
「妃殿下っ!気持ちは判ります!判りますが!バカは死んでも治らないんですっ!あの殿下は死んだって何がいけなかったのかなんて分かりっこない」
「貴方‥‥名前はなんというのかしら」
「わたくしは…クレイズライドルと申します。以前は他国の侯爵家に籍がありましたが訳あって現在は家名は御座いません」
「そう、クレイズライドルというのね。手を貸して頂ける?」
「はい。では‥‥塔から?」
「いいえ。ここから出るのは全てが詳らかになった時です」
ゆっくりと立ちあがったアナスタシアは椅子に腰を下ろした。
先に顔に当てられたタオルは元の色は何色だったのか。赤く染まっている。
「私は…褒められた人間ではなく屑と言ってもいい人間ですが、それでも殿下は酷すぎる」
「自分の事を蔑んではいけない。騎士として矜持を持ちなさい」
「矜持など持って良い人間ではないのです。まだ反省中なので」
「ふふっ…痛っ…フフフ…みんな似たようなものよ」
「それでも―――」
クレイズライドルが言いかけた時、目の前に男女が突然現れた。
ファーフィーとグラディアスだった。
何かの時のためにと風切羽を置いたグラディアスだったが、女性の部屋だからと道化師の人形に置き換えた。対になった人形は異変があれば遠く離れた帝国でも目が光り教えてくれる。
ファーフィーの侍女が人形の目に気が付き、急ぎグラディアスの元に走った。
2人は転移魔法で飛んできたのだった。
「えっ??えっ??うわ…」
「お黙りっ!」
「はいっ!」
ファーフィーに一喝され、クレイズライドルは自分の口を手で押さえる。
グラディアスはアナスタシアの手を取り、膝に額を擦りつける。
「すまなかった。今朝の事で浮かれていた…遅くなってすまなかった」
「いいえ、政務も執務も御座いましょう。お見苦しい姿で申し訳ございません」
「アナスタシア!ダメよ。もう我慢できない。女を殴るなんて最ッ低ッ」
「そうだ。もうここにはおいて行けない。頼むから帝国に来てくれ」
「そうですよっ!妃殿下。ここは何とでもなりますから!」
「言ったはずです。出ていく時は堂々と扉から出ると。その時は全てが詳らかになった時だと」
「意地を張るなと言いたいが…判った。扉から堂々とそなたの手を取りに来る。帝国で長期戦を覚悟せねばならんがアウェイよりは有利だからな。だが少々腹が立った。やりたいようにさせてもらうぞ。ファーフィー、ディレイドを連れて来てくれ」
「人使い荒~い。嫌われるわよ?」
「嫌われても俺が惚れてるから問題ない」
「粘着男、怖~い。でもディレイドを呼ぶ前に…女の子だもの。このままはちょっとね」
ファーフィーは白魔法の中でも高度な治癒魔法をアナスタシアに施していく。
痛みが引き、血が止まるだけなく傷口も塞がっていく。
「スタンフォレイリナー並ですね…凄いな」
「あら?あなたドヴォルザー家の子息を知っているの?」
「ま、まぁ…向こうには黒歴史でしょうけど‥」
「これでいいわ。貴方はいつも通りに扉の外で護衛をなさいな。えっと…名前は?」
「クレイズライドルと申します」
「片付いたら帝国にいらっしゃい。貴方のような鉄砲玉に使えそうなのフローラが探してたわ」
「鉄砲玉‥‥って…まさかと思いますが」
「ここより給料いいわよ?危険手当もつけるわ。はい!内定っ!」
「あ、ざっす…でいいのか‥」
「さて、お姫様のキスが欲しい所だが、今はまだ我慢をしておこう」
「当たり前ですわ。このエロガラス」
「エロガラス?なんです?」
「はいはい、貴方はちゃんと護衛っ!GO!!」
「行くぞ、ファーフィー」
「えぇ。お・に・い・さ・まっ」
誰かなど考えるまでもない事であるが、折角ミルクティーで良くなった気分が一気に下がる。
バタンと扉を開けるが、扉の前に置いた書類に引っ掛かり半分しか扉は開かない。
アナスタシアはそれも想定済みである。
足元に散らばる書類を見て、途端に顔を真っ赤にするシリウスはそのまま奥に進んでくる。アナスタシアは小さなテーブルにカップを置いて椅子から立ち上がった。
「なんだあれは!」
扉の前で散らばった書類を指さし、怒気を含んだ声でアナスタシアに迫る。
「昨日、シリウス・マウレイ・シュバイツ王太子殿下がお持ちくださった書類ですわ」
「み、見ればわかるっ」
「なら、お聞きにならずともよろしいかと」
「ぐっ…ま、まぁいい。で?まとめた書類は何処だ」
「御座いませんわ」
「はぁっ?」
即答で応えるアナスタシアに、まさかと何故だという入り混じった声をあげた。
しかし、なければ今日まさに行き詰ってしまう。シリウスは焦った。
もしや、昨夜は食事の配給はしなくていいと止めた事に腹をたてたかとアナスタシアの表情を読むが全く判らない。だが、考えている時間はない。
「何を拗ねているんだ。早く出せ。直ぐに食事は用意しよう」
「出すも何も、お渡しする物など御座いません。あの書類を持ってお帰り下さいませ」
「何っ?まさかと思うが何もしなかったという訳ではないだろうが!」
「何もしておりません。あぁ、書類はテーブルから其方に移しましたが」
「なっ何を‥‥甘やかしていれば付け上がりおって!」
振り上げた手が、アナスタシアの頬を思い切り張り飛ばした。
思わず衝撃に倒れそうになるも、必死で足を踏ん張りアナスタシアは耐えた。
だが、またもシリウスは振りかぶり、手で覆った頬をそのまま張り、振り切った手を元に戻すついでだというように手の甲でアナスタシアの逆の頬を張り飛ばした。
騎士ではないと言っても男に思い切り頬を3度も張られればアナスタシアも無事では済まない。
口角からは口の中を切ったのか血が滲み、鼻血もたれてしまった。
しかしシリウスは止まらなかった。
片手で胸ぐらを掴み、片手で額から上の髪を鷲掴みにすると引き倒し、馬乗りになった。
「もう一度聞くぞ。あの書類は今日、どうしても必要なんだ。何もされないうちに渡せ」
「渡すも何も…御座いません」
バシッバシッ!ゴッ!!
頬をまた張り、掴んだ胸ぐらを思い切り床に向けて叩きつける。
肩と頭が床に打ち付けられ、アナスタシアは目が火花を散らしたかと思う衝撃を受ける。
「このっ!役立たずっ!誰のおかげで生き永らえていると思ってるんだッ!」
「頼んで…ハァハァ…おりませんっ」
「なんだって?!このぉぉ!!」
ガッ!!ゴツッ!!ガシッ!!
シリウスは力任せに馬乗りになりアナスタシアを殴る。
抵抗をしようにも両腕はシリウスの膝が上に乗り押さえられていてただ暴力に身を投げ出すしかなかった。
「くそっ!僕が叱られるじゃないか!どうしてくれる!どうしてくれるんだッ!」
「わたく…‥知るところ……座いま‥せん‥」
「まだ言うか!チッ、覚悟をしておけ。処刑だ。会合が終わり次第処刑してやるッ」
立ち上がり、踵でアナスタシアの手のひらを踏みつけ、脇腹を蹴り上げるとやっと離れていく。扉の前に散乱した書類を「くそぉぉ!」と叫びながら踏みにじるとやっと扉が閉じた。
痛む体と顔。きっと今、鏡を見たら儚くなってしまうかも知れないと這うように壁に背を預ける。
肩で息をしながら、ポトポトとドレスに落ちるのは頬が切れたのか、鼻血ならいいのだけどと思い体を休める。
王妃教育中にも何度も殴られた。大抵は見えないような場所だったが、頬を張られて鼻血でドレスを汚したとさらに殴った講師もいた。
――このくらい…経験済みだわ――
はぁと息を一つ吐くと、扉が開いた。いつもは外にいる護衛の騎士だった。
「妃殿下…大丈夫ですか?すみません。お助けできずに…」
騎士は濡れたタオルをだらりとなった手に1つ置くと、アナスタシアの顔を手にした綺麗なタオルを優しく押すように傷口に当てていく。
熱を持った頬に冷たい感触をありがたいと感じてしまった。
「このような…事をすれば、貴方も‥処罰されます。おやめ‥なさい」
「妃殿下。逃げましょう?今日は帝国の会合。貴女一人です。何とでも致します」
「いいえ、逃げる事は…出来ません」
「もういいでしょう?1年半も貴女はここで耐えたではありませんか」
「ありがとう。ですが‥‥ここを出る時は…全てが終わってからと…決めているのです」
「妃殿下っ!気持ちは判ります!判りますが!バカは死んでも治らないんですっ!あの殿下は死んだって何がいけなかったのかなんて分かりっこない」
「貴方‥‥名前はなんというのかしら」
「わたくしは…クレイズライドルと申します。以前は他国の侯爵家に籍がありましたが訳あって現在は家名は御座いません」
「そう、クレイズライドルというのね。手を貸して頂ける?」
「はい。では‥‥塔から?」
「いいえ。ここから出るのは全てが詳らかになった時です」
ゆっくりと立ちあがったアナスタシアは椅子に腰を下ろした。
先に顔に当てられたタオルは元の色は何色だったのか。赤く染まっている。
「私は…褒められた人間ではなく屑と言ってもいい人間ですが、それでも殿下は酷すぎる」
「自分の事を蔑んではいけない。騎士として矜持を持ちなさい」
「矜持など持って良い人間ではないのです。まだ反省中なので」
「ふふっ…痛っ…フフフ…みんな似たようなものよ」
「それでも―――」
クレイズライドルが言いかけた時、目の前に男女が突然現れた。
ファーフィーとグラディアスだった。
何かの時のためにと風切羽を置いたグラディアスだったが、女性の部屋だからと道化師の人形に置き換えた。対になった人形は異変があれば遠く離れた帝国でも目が光り教えてくれる。
ファーフィーの侍女が人形の目に気が付き、急ぎグラディアスの元に走った。
2人は転移魔法で飛んできたのだった。
「えっ??えっ??うわ…」
「お黙りっ!」
「はいっ!」
ファーフィーに一喝され、クレイズライドルは自分の口を手で押さえる。
グラディアスはアナスタシアの手を取り、膝に額を擦りつける。
「すまなかった。今朝の事で浮かれていた…遅くなってすまなかった」
「いいえ、政務も執務も御座いましょう。お見苦しい姿で申し訳ございません」
「アナスタシア!ダメよ。もう我慢できない。女を殴るなんて最ッ低ッ」
「そうだ。もうここにはおいて行けない。頼むから帝国に来てくれ」
「そうですよっ!妃殿下。ここは何とでもなりますから!」
「言ったはずです。出ていく時は堂々と扉から出ると。その時は全てが詳らかになった時だと」
「意地を張るなと言いたいが…判った。扉から堂々とそなたの手を取りに来る。帝国で長期戦を覚悟せねばならんがアウェイよりは有利だからな。だが少々腹が立った。やりたいようにさせてもらうぞ。ファーフィー、ディレイドを連れて来てくれ」
「人使い荒~い。嫌われるわよ?」
「嫌われても俺が惚れてるから問題ない」
「粘着男、怖~い。でもディレイドを呼ぶ前に…女の子だもの。このままはちょっとね」
ファーフィーは白魔法の中でも高度な治癒魔法をアナスタシアに施していく。
痛みが引き、血が止まるだけなく傷口も塞がっていく。
「スタンフォレイリナー並ですね…凄いな」
「あら?あなたドヴォルザー家の子息を知っているの?」
「ま、まぁ…向こうには黒歴史でしょうけど‥」
「これでいいわ。貴方はいつも通りに扉の外で護衛をなさいな。えっと…名前は?」
「クレイズライドルと申します」
「片付いたら帝国にいらっしゃい。貴方のような鉄砲玉に使えそうなのフローラが探してたわ」
「鉄砲玉‥‥って…まさかと思いますが」
「ここより給料いいわよ?危険手当もつけるわ。はい!内定っ!」
「あ、ざっす…でいいのか‥」
「さて、お姫様のキスが欲しい所だが、今はまだ我慢をしておこう」
「当たり前ですわ。このエロガラス」
「エロガラス?なんです?」
「はいはい、貴方はちゃんと護衛っ!GO!!」
「行くぞ、ファーフィー」
「えぇ。お・に・い・さ・まっ」
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