冷血皇帝陛下は廃妃をお望みです

cyaru

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ディレイドの趣味と実益

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帝国に連行されたロザリアは戸惑っていた。

てっきり拷問などの酷い仕打ちを受けるのではないかと思っていたが通された部屋は豪華な調度品が幾つもある部屋で大きな窓からはカラフルな魚が泳ぐ池が見える上に、手入れのよく行き届いた庭園。

出された茶は警戒をしたのを気付かれたのか、5杯ほどカップに入れたものをロザリアが自分の飲む分と、毒味の侍女2人が飲む分をロザリアが選ぶ。
何の抵抗もなく、ロザリアが指定したカップを持ち茶を飲み干す。

「気にし過ぎなんだわ」

そう思ったロザリアは一口茶を飲み、王国では味わう事の出来ない芳醇な香りを堪能する。
「待たせてしまいました」と部屋に入って来た男性は、男性と言うよりは少年から青年へと脱皮するかのような見目麗しい男性だった。
ブロンドの髪、細くて切れ長の目。顔を構成するパーツは美を追求し過ぎていないかと二度見するほど整った顔で、甘い声で話をされるだけで眩暈を起こしそうになる。

シリウスもなかなかの美丈夫であるが、目の前の少年が20代となればシリウスの事など思い出す事もないのではと想像をさせるほどだった。

「お嬢さんのお名前は?」
「ロ、ロザリアと申します、シュバイツ王国の――」
「あっと、家名なんかはいらない。ここは王国じゃなく帝国だからね」
「これは失礼を致しました…」
「ロザリア様って言うんだ…こんな事をいったら叱られるかな」
「何を…でございましょう」
「可愛いね。僕、ロザリア様のような女性は結構タイプなんだ」

面と向かって微笑みながら言われてしまうとロザリアも思わず頬が熱くなる。
触れるか触れないかまで手を伸ばしてくるディレイドに思わず緊張してしまいながらも和やかに茶を楽しむ。

「この後、良かったら僕の部屋でゆっくり話をしたいな」
「えっ?」
「あ、ごめんなさい。ロザリア様があんまり魅力的だからつい…忘れてくれると嬉しいな」
「いえ、わたくしで良ければ…是非」
「いいの?本当に。僕年下だよ?」

久しぶりに疼いてしまう下腹部の痛みが刺激を欲してさらに疼く。
このまま立ち上がれば、座面に染みがあるのではと思うほど、とろりとした液が秘められた部分にもう溢れ出ている感触にも頬を染めてしまう。

「ロザリア様の事…全部知りたい。良いかな?」
「も、勿論‥…でも、あの‥」
「何?何でも言って。ロザリア様の声が聞きたいんだ」
「わ、わたくし…初めてではなくて…それでもいいのかしら」
「経験者なんだ…良かった。経験は気にしないよ。だって僕とは初めてでしょう?」
「えぇ、そうよ。そうね」

ふいにディレイドのトラウザーズに目がいってしまう。
前の膨らみもこれで膨張していればさぞかし苦しいだろうと思うほど。これからだとすれば如何ほどだと思わず期待をしてしまう。
前を歩くディレイドの尻も男性らしい尻だが、細く締まっていて鍛え上げているのが判る。

――期待をするなというほうが無理よね――

扉の前立ち止まったディレイドはロザリアを振り返った。
サラサラの髪が揺れて思わずうっとりとしてしまう。

「中に入ったら…僕はもう抑えきれないと思うんだ。やめるなら今しかない」
「わたくしは覚悟は出来ているわ。はいりましょう」
「良いんだね?後でなかった事になんてのは無しだよ」
「そんな事言わないわ。最後まで‥‥言わせないで」

部屋の中に入ると、意外と薄暗いと感じた。「ねぇ」と女の声を出し振り返ろうとした時、背中に衝撃を受け前のめりになって転んでしまうっ!と手を伸ばした。
しかし、手は床につかずに体がグルっと回転をしてしまう。

瞬間でまさかあの塔で見たような魔法かと全身が強張った。

「ちょっ!止めてっ!」

声を出すと真下に急降下して心臓がドクンと跳ねた気がする。
何処まで落ちるのかという不安と、吹きあげてくるような風に髪が全て巻き上げられていくが、何故か椅子に座っていた。落ちていたのではなかったのか?混乱に拍車がかかる。

プスッ! 「ギャァウッ!」

指先に走る激痛に思わず声が出てしまった。そして目の前にディレイドの顔。
薄く口元に笑いを浮かべている。ブルブルと全身が震えるが手足が動かない。

「さてと、お喋りをしようか」
「なっなんのっ?…」
「ロザリア様ってさ、男はシリウスさんだけなのかな?」
「そ、そうよ…」
「判った。後で嘘だったら…今度は親指の関節全部逆折りするよ。訂正は3秒。1、2」
「違うわっ!ふっ二人っ!殿下とっ妹の夫っ」

「ふふっ。ご褒美欲しい?」
「ご褒美?‥‥これ外してくれるの?」
「外す?何を?」
「だって…手足が動かない…拘束してるんでしょう?外してっ」
「失礼だなぁ。自分で見てごらんよ。拘束なんてするわけがない」
「えっ‥でも」

恐る恐る手足を見るが何も手足には巻きついたりしていない。袖の長いドレスだが布地も引っ張られている形にはなっていない。動かしていないのは自分。少し安堵をした。

「疑ったよね?僕は何もしてないのに。お仕置きが必要だな」
「ヒィッ!!ごめっごめんなさいっ!違うの、疑ったわけじゃ‥」

プスッ! 「ギャァッ!」

また指先に激痛が走る。同時に手の甲側の手首に自分の指が付いている感触がある。
悪魔のような声がまた聞える

「ねぇ。子供なんだけどさぁ」
「言うわ!誰の子か判らなかったから流したの!そのままだと放り出されるからっ!アナスタシアがやった事にしたのっ!手紙も自分で文字を真似たっ毒も自分で仕込んで自分で食べたっ!でもっその時はアナスタシアが幽閉されるなんて思わなかった!本当よ!」

固く目を閉じ、全てを吐き出すように言い切ると目を開けた。

「ヒィィッ!!」

目の前。至近距離のディレイドの顔があった。

「酷いな。そんなに驚かなくても。経験者って言ってたじゃないか」
「それは…こんな事だとは思っていなくてっ!」
「えっ?どんなことを想像してたのかな?教えてよ」
「それはっ…その…あなたと…」
「僕と?どうしたって?」
「体の関係になるのか…なと…思って」
「ブブッ…冗談キツイ。ついでにアンタの体臭もキっツイ。お仕置きだね」

そして目の前には細長い針が何本もはいったケースをこれ見よがしに置かれる。
1本を手に取り、先端をロザリアにゆっくりと近づけていく。

「なっ何を…」
「知ってる?眼ってね。閉じてても動くんだ。ギリギリまで恐怖を感じるんだよ」
「イギャァァァァ!!!」

「あれ?…おぉい!あれ?あっちゃぁ口から泡拭いてんだけど。汚いなぁ」

「刺すわけないじゃん。特注なのに勿体ない」と言いながらロザリアの肩や二の腕、手の甲、指先に詠唱を唱えながら別のケースにある短い針を差し込んでいく。
中心部がズルズルと体内に引き込まれていく針を満足そうに見ているディレイド。破顔している。
筒状になった針を引き抜き、嬉しそうに鼻歌を歌いながら片付けていく。


「あら?終わったの?」
「うん。耐性ない子だね。経験者なんて大嘘だしさ。指2本でぺら子だよ」
「人体に回虫植え付けるのが趣味なんて…悪趣味ねぇ」
「まさか!これは研究だよ?上手くいけば回虫は救世主になるんだからさ」
「役に立った回虫はいたかしら」
「いなくてもいいよ。回虫植え付けたって知った時のあの顔が見たいだけって感じだし。でもそれで新薬が出来たら儲けもんでしょ?あ、これ領収書」

ピロっと小さい紙をフィーフェに差し出す。
領収書の文字を読んだフィーフェはグラディアスのように優しくはない。

「グラディアスに回しなさい」
「はぁい」
「さりげなく水増し請求はダメよ?」
「はぁい。新製品の針だったのになぁ…貰えるかなぁ」
「経費では落ちないけどグラディアスの小遣いからなら落ちるわ」

フィーフェと話をしながらもディレイドはロザリアの腕を掴んで細く這うように動く部分を嬉しそうに見ている。

「見て。魔法回虫入れちゃった」
「今度は何を食べるのよ」
「髄液。できればがん細胞食べて欲しいんだけどねぇ。変異を期待してんだけど」

フィーフェに回虫の可愛らしさを説くディレイドだがおそらく誰も理解はできない。
うっすらと意識を取り戻したロザリアの耳元で囁く。

「僕は薬は使わないから大事に飼ってね。経験者なら判るよね」
「な…んなの…」
「宿主は大変なんだよ?妊娠の経験あれば判るよね?出す時の痛みは」
「宿主って…いやっ…嫌よ…」

「これはわかり易く言えば解毒剤?みたいな感じ。虫殺しとも言うけどね」
「何をしたの・・・いやぁ‥何をしたのぉぉ」
「いい子にしてればコレあげるよ。出来るかなぁ」
「するわ!だから!薬をっ薬を頂戴ッ!」

「まだだよ。ちゃんとみんなの前でごめんなさいが出来た子だけが貰えるんだ。僕が行くまで誰にも秘密だよ?それまでに誰かに言っちゃったりすると‥‥尻の穴まで検査されるよ?恥ずかしいでしょう?」

「言わないっ。いつ来るの?明日?あ、一緒に行くの?」
「さぁ?いい子にしてれば早いと思うけどね」

ニヤッと笑って虫を下す薬を目の前でちらつかせる。
ロザリアはフィーフェによって王宮内の自室に転移をされる。

皮膚に強い痒みがあるが、かゆみ止めを試しに塗っても全く効果がない。
羞恥に誰にも言えず、自室に籠るロザリア。

シリウスの渡りがない事が救いだった。
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