8 / 28
ロザリアと侍女たち。それぞれの思惑
しおりを挟む
閉じていたはずの雨除けの木戸が開かれて高く昇った陽の光りが差し込む。
目を覚ましたアナスタシアは部屋を見回した。
物音ひとつしない静かな部屋。自身が捲り上げたシーツの音も小窓からの風に消える。
そっと寝台から足を下ろし再度周りをゆっくりと見回す。
「誰も…いない」
昨夜配給された食事のスープはもう冷え切っていてパンもさらに固くなっている。
食事をしようと小さなテーブルに置き、椅子に腰かけるが食欲がない。
ふと吹いてくる風に目をやれば抜けおちたのだろうか、風切羽が落ちていた。
白くしっかりとした羽柄と羽軸。羽軸の両側にはあのカラスと同じ漆黒で艶のある羽弁が広がっていた。
風切羽を拾い上げて、小窓から空にかざしてみる。
羽柄が透けて透明にも似た白に輝く。
「忘れ物よ?…今日は来ないのかしら」
そう思いつつも固くなりすぎたパンをあげるのもどうかと思いつつ、羽柄を指でクルクルと回す。
「どこかで聞いた事のある声だった気がするんだけど」
クルルと回る風切羽を見ながら思い出そうとするが1年半にも及ぶ天国のような生活。
思い出したくない、いや、思い出してそれが何になるのだろうと頭が拒否をする。
小さくため息を吐いて冷え切ったスープに固いパンを千切り浸して口に入れる。
温かいだけが唯一の取り柄であるこのスープは冷えれば最下層の者ですら敬遠をする味だろう。
しかし、アナスタシアはそれでも胃の中に流し込んでいく。
少々残すのは問題がないが、ほとんど手つかずでトレーを戻すとシリウスの使いがやってくる。
飢え死にされては困るのだろう。
「窓から捨てようなどと思わない下さい。捨てた事が判れば領地に戻した貴女の元使用人達にも命を捨ててもらう事になると思いますから」
シリウスよりもずっと王となる非情な心を持っている執事スラッグはアナスタシアをシリウス以上に知っている。民を引きあいに出せばアナスタシアが自死しない事を知っている。
そしてヘビのようにチロチロと舌を出すように淫靡な視線をアナスタシアに向けた後、口角をあげてニヤリと笑う。
「最も、世話を焼かせてくれた方が貴女に逢えるので私には好都合ですがね」
名の通り、なめくじのように粘液を残して全身を這いまわるような視線は気持ちの良いものではない。アナスタシアはスラッグに冷ややかな視線を送りつつも会う機会を減らすべく、具合が悪くても食事を手付かずで戻す事はしないのだった。
食事が終われば椅子を窓の元に運んで空を眺めた。
王宮内のシリウスの執務室。
明日に迫った帝国との会合を控え、全員が慌ただしく動く中ロザリアがやってくる。
昼休憩もなく書類を精査していくシリウスは視界の端にロザリアを捕らえたが無視して書類から目を離すことはない。
「殿下は明日の会合に向けてお時間が取れません。お引き取りくださいますよう」
「執事の分際で!わたくしに命令をしようと言うのですか」
「いえ、ですが殿下だけでなく両陛下も明日の会合だけは――」
「お黙りなさい!数分で良い。殿下に差し入れを渡すだけです」
扉を挟んでロザリアと執事が少しばかりの小競り合いをする様子を周りの文官は呆れた様子でちらりと見るのみ。直ぐに今やるべき書類に向き合ってしまう。
ポツリと次官が呟く声がロザリアの耳に入る。
「アナスタシア様が居ればこんな事もなかったのに」
「側妃らしく部屋で待ってればいいものを」
ギロっと睨みつければ、それがどうしたと言わんばかりに鼻を鳴らす次官たち。
彼らもアナスタシアが幽閉をされる前は、ここまで忙しい仕事はなかった。
量的にはさほどに変わらないが、アナスタシアは最適と思える者に案件ごと仕事を割り振り、それをうまく補佐する者まで手配した上に、問題が出れば順序をつけて問題点を潰していった。
二度手間になる事がないように、1つ解決すれば2つ、3つと連動して答えが出る様に決して己の手柄とするわけではなく、導く事によって使用人達に達成感を与えながら育てていく王太子妃だった。
1年半もの間、国が倒れずになんとか回してこられたのはそれがあったからだろう。
そうでなければ半年も持たないと働いている者自身が感じている。
だが、彼らもまだ師の手を借りる発展の途中。
導く者がいない中、手探りで公務をするのはそろそろ限界に近かった。
王妃はそれなりに優秀だが、アナスタシアが抜けた後は明らかにキャパオーバー。
国王とシリウスは出来なくはないが、結果に至るまでの過程についてはお手上げに近い。
嫁いでくる者に対しての負担の割合が大きい王国の弊害でもあった。
「ご用件は判りました。では殿下に渡しておきますのでお引き取りを」
「ちゃんと渡してくれるかどうかも判らぬのに渡せるはずがないでしょう?」
未だに続く小競り合いにシリウスは「バンッ」と机を大きく叩いた。
その音に全員が顔を上げてシリウスを見る。ロザリアも執事も言葉を飲み込みシリウスを見る。
扉の方に怒気を含んだ空気を纏って歩いていく。
「シリウス様っ。お疲れで御座いましょう?これはわたくしが――」
バシンと差し出された籠を手の甲で弾き、籠の中身が床に広がった。
何故手を叩かれたのか意味が解らないのはロザリアだけである。
「シリウス様、どうして…」
「見て判らないのか?この状況を見て何を暢気な事を!」
「わ、わたくしは何か手助けになればと」
「側妃如きの手助けなど足を引っ張るだけだ。無能が来る場所ではない。失せろ」
持ってきた軽食の籠を蹴り飛ばし、落ちた食材を踏みつけて元居た場所に戻ろうとするシリウスをロザリアは黙って見ているしかなかった。
拾い集められ無造作に籠に入れられていく。
――これでも令嬢の中では優秀と言われたこのわたくしを!――
悔しさで手を握るが、何事もなかったかのように執事が目の前に籠を突き出す。
「お引き取りくださいませ」
唇を噛み、籠をひったくるように手に取るとロザリアは侍女に促され退室をする。
「きっとお忙しくて切羽詰まられているだけです」
「そうですよ。ロザリア様はお美しいですもの、明日の会合が終われば殿下も御渡りを再開してくださいますよ」
「そうかしら」
「そうですとも。アナスタシア様もおられない今、殿下にはロザリア様だけですわ」
「側妃の召し上げも殿下は断っていると言います。ロザリア様は愛されているのです」
侍女達も必死なのだ。シリウスが嫌がった所であらたな側妃の召し上げは検討されている。
だが、かの日アナスタシアではなくロザリアに付くと希望し配属された。
アナスタシアは厳しい王太子妃だったため、怠ける事を許してくれない。
ロザリアはそんな気持ちのある侍女たちの格好の受け皿にもなった。
なので侍女たちにすればロザリアには何としてもまた子を身籠ってもらわねばならない。
侍女達はシリウスのアナスタシアへの思いを知っている。無二と思われたアナスタシアとの間に子が出来ず、今のところ唯一お手付きとなった令嬢がロザリア。
実際のところ、侍女も従者も大変な思いだったのだ。とにかく渡りを増やすために不敬を承知でアナスタシアに似た女性の裸婦画でシリウスを勃たせロザリアの元に送っていた。
アナスタシア以外に欲情しないシリウスは王子。
媚薬を盛る事は出来ないため苦肉の策だった。
王母となる側妃につくことは侍女たちにとっても生活を左右する事である。
一旦側妃に付けば他の側妃の元に配属されることはない。
アナスタシア以上いや、同等の者がいない以上この国は王妃不在の国となる。女性の中で次に力があるのはシリウスの治世となった時は王母である。
流れたとはいえ、ロザリアには懐妊したという【実績】がある。
新たに迎えられる側妃が来る日までにロザリアには種をもらってもらわねばならない。
焦っているのはロザリアだけはなかった。
目を覚ましたアナスタシアは部屋を見回した。
物音ひとつしない静かな部屋。自身が捲り上げたシーツの音も小窓からの風に消える。
そっと寝台から足を下ろし再度周りをゆっくりと見回す。
「誰も…いない」
昨夜配給された食事のスープはもう冷え切っていてパンもさらに固くなっている。
食事をしようと小さなテーブルに置き、椅子に腰かけるが食欲がない。
ふと吹いてくる風に目をやれば抜けおちたのだろうか、風切羽が落ちていた。
白くしっかりとした羽柄と羽軸。羽軸の両側にはあのカラスと同じ漆黒で艶のある羽弁が広がっていた。
風切羽を拾い上げて、小窓から空にかざしてみる。
羽柄が透けて透明にも似た白に輝く。
「忘れ物よ?…今日は来ないのかしら」
そう思いつつも固くなりすぎたパンをあげるのもどうかと思いつつ、羽柄を指でクルクルと回す。
「どこかで聞いた事のある声だった気がするんだけど」
クルルと回る風切羽を見ながら思い出そうとするが1年半にも及ぶ天国のような生活。
思い出したくない、いや、思い出してそれが何になるのだろうと頭が拒否をする。
小さくため息を吐いて冷え切ったスープに固いパンを千切り浸して口に入れる。
温かいだけが唯一の取り柄であるこのスープは冷えれば最下層の者ですら敬遠をする味だろう。
しかし、アナスタシアはそれでも胃の中に流し込んでいく。
少々残すのは問題がないが、ほとんど手つかずでトレーを戻すとシリウスの使いがやってくる。
飢え死にされては困るのだろう。
「窓から捨てようなどと思わない下さい。捨てた事が判れば領地に戻した貴女の元使用人達にも命を捨ててもらう事になると思いますから」
シリウスよりもずっと王となる非情な心を持っている執事スラッグはアナスタシアをシリウス以上に知っている。民を引きあいに出せばアナスタシアが自死しない事を知っている。
そしてヘビのようにチロチロと舌を出すように淫靡な視線をアナスタシアに向けた後、口角をあげてニヤリと笑う。
「最も、世話を焼かせてくれた方が貴女に逢えるので私には好都合ですがね」
名の通り、なめくじのように粘液を残して全身を這いまわるような視線は気持ちの良いものではない。アナスタシアはスラッグに冷ややかな視線を送りつつも会う機会を減らすべく、具合が悪くても食事を手付かずで戻す事はしないのだった。
食事が終われば椅子を窓の元に運んで空を眺めた。
王宮内のシリウスの執務室。
明日に迫った帝国との会合を控え、全員が慌ただしく動く中ロザリアがやってくる。
昼休憩もなく書類を精査していくシリウスは視界の端にロザリアを捕らえたが無視して書類から目を離すことはない。
「殿下は明日の会合に向けてお時間が取れません。お引き取りくださいますよう」
「執事の分際で!わたくしに命令をしようと言うのですか」
「いえ、ですが殿下だけでなく両陛下も明日の会合だけは――」
「お黙りなさい!数分で良い。殿下に差し入れを渡すだけです」
扉を挟んでロザリアと執事が少しばかりの小競り合いをする様子を周りの文官は呆れた様子でちらりと見るのみ。直ぐに今やるべき書類に向き合ってしまう。
ポツリと次官が呟く声がロザリアの耳に入る。
「アナスタシア様が居ればこんな事もなかったのに」
「側妃らしく部屋で待ってればいいものを」
ギロっと睨みつければ、それがどうしたと言わんばかりに鼻を鳴らす次官たち。
彼らもアナスタシアが幽閉をされる前は、ここまで忙しい仕事はなかった。
量的にはさほどに変わらないが、アナスタシアは最適と思える者に案件ごと仕事を割り振り、それをうまく補佐する者まで手配した上に、問題が出れば順序をつけて問題点を潰していった。
二度手間になる事がないように、1つ解決すれば2つ、3つと連動して答えが出る様に決して己の手柄とするわけではなく、導く事によって使用人達に達成感を与えながら育てていく王太子妃だった。
1年半もの間、国が倒れずになんとか回してこられたのはそれがあったからだろう。
そうでなければ半年も持たないと働いている者自身が感じている。
だが、彼らもまだ師の手を借りる発展の途中。
導く者がいない中、手探りで公務をするのはそろそろ限界に近かった。
王妃はそれなりに優秀だが、アナスタシアが抜けた後は明らかにキャパオーバー。
国王とシリウスは出来なくはないが、結果に至るまでの過程についてはお手上げに近い。
嫁いでくる者に対しての負担の割合が大きい王国の弊害でもあった。
「ご用件は判りました。では殿下に渡しておきますのでお引き取りを」
「ちゃんと渡してくれるかどうかも判らぬのに渡せるはずがないでしょう?」
未だに続く小競り合いにシリウスは「バンッ」と机を大きく叩いた。
その音に全員が顔を上げてシリウスを見る。ロザリアも執事も言葉を飲み込みシリウスを見る。
扉の方に怒気を含んだ空気を纏って歩いていく。
「シリウス様っ。お疲れで御座いましょう?これはわたくしが――」
バシンと差し出された籠を手の甲で弾き、籠の中身が床に広がった。
何故手を叩かれたのか意味が解らないのはロザリアだけである。
「シリウス様、どうして…」
「見て判らないのか?この状況を見て何を暢気な事を!」
「わ、わたくしは何か手助けになればと」
「側妃如きの手助けなど足を引っ張るだけだ。無能が来る場所ではない。失せろ」
持ってきた軽食の籠を蹴り飛ばし、落ちた食材を踏みつけて元居た場所に戻ろうとするシリウスをロザリアは黙って見ているしかなかった。
拾い集められ無造作に籠に入れられていく。
――これでも令嬢の中では優秀と言われたこのわたくしを!――
悔しさで手を握るが、何事もなかったかのように執事が目の前に籠を突き出す。
「お引き取りくださいませ」
唇を噛み、籠をひったくるように手に取るとロザリアは侍女に促され退室をする。
「きっとお忙しくて切羽詰まられているだけです」
「そうですよ。ロザリア様はお美しいですもの、明日の会合が終われば殿下も御渡りを再開してくださいますよ」
「そうかしら」
「そうですとも。アナスタシア様もおられない今、殿下にはロザリア様だけですわ」
「側妃の召し上げも殿下は断っていると言います。ロザリア様は愛されているのです」
侍女達も必死なのだ。シリウスが嫌がった所であらたな側妃の召し上げは検討されている。
だが、かの日アナスタシアではなくロザリアに付くと希望し配属された。
アナスタシアは厳しい王太子妃だったため、怠ける事を許してくれない。
ロザリアはそんな気持ちのある侍女たちの格好の受け皿にもなった。
なので侍女たちにすればロザリアには何としてもまた子を身籠ってもらわねばならない。
侍女達はシリウスのアナスタシアへの思いを知っている。無二と思われたアナスタシアとの間に子が出来ず、今のところ唯一お手付きとなった令嬢がロザリア。
実際のところ、侍女も従者も大変な思いだったのだ。とにかく渡りを増やすために不敬を承知でアナスタシアに似た女性の裸婦画でシリウスを勃たせロザリアの元に送っていた。
アナスタシア以外に欲情しないシリウスは王子。
媚薬を盛る事は出来ないため苦肉の策だった。
王母となる側妃につくことは侍女たちにとっても生活を左右する事である。
一旦側妃に付けば他の側妃の元に配属されることはない。
アナスタシア以上いや、同等の者がいない以上この国は王妃不在の国となる。女性の中で次に力があるのはシリウスの治世となった時は王母である。
流れたとはいえ、ロザリアには懐妊したという【実績】がある。
新たに迎えられる側妃が来る日までにロザリアには種をもらってもらわねばならない。
焦っているのはロザリアだけはなかった。
97
お気に入りに追加
5,848
あなたにおすすめの小説

【書籍化・取り下げ予定】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った
冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。
※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる