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12:解体と買取、そして突入の決意
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「奥様、家屋ではなく厩舎などの解体をしている従兄弟なんですけども…大丈夫ですかね?」
従者が連れてきたのは、如何にも「親方!」と言う感じの屈強な男性。
無精髭もだが、袖を捲り上げた腕には力を入れずとも筋肉の形が浮き上がっている。
「俺に何をして欲しいんだ」
ティディはそんな屈強な男にも屈しない。
子爵領では荷馬車に揺られて隣の領地まで行き、乾燥させた木材の樹皮を剥ぐ仕事や、煙突掃除、繁華街で破落戸が暴れて壊した店内の清掃など色々としていたのだ。
――真面目に働いている人だもの。見た目で判断しちゃいけないわ――
「貴方に頼みたい事は、この侯爵家の部分解体、それから教えて頂きたい事があるの」
「俺に?お貴族様に教える事なんてないと思うが…」
「貴族だの関係ないわ。教えて頂きたいのは解体した家屋の廃材はどうされているのかという事が知りたいの」
「廃材の?そんなの簡単だ。使えるものは選り分けて使えない物は燃やしてるがな」
「なるほど。ちなみにその使えるモノというのは具体的にどのような?」
「柱とか梁。大きな部材はシロアリなんかにやられてなければ綺麗に表面を削ったりして売ってるし、レンガや石は運ぶのには重いがほとんど買い取られていく。ま、綺麗に選り分ける事が出来ればクズになったモノはブロックにして竈に火を入れる時の着火剤に出来るんだがな。汚くてやってねぇが――」
「なるほど。それで…紙は?」
「紙っ?!そんな高価なモンがあるわけがないだろう」
「あるない、ではなく紙はどうされます?」
「ま、まぁ…稀にあるからな。その時は買い取り業者に買い取って貰うよ。1枚でもパン1個くらいの値が付く。そんなお宝がそうそうあるわけがないがな」
そのお宝がこんもりと、大量にあるのだ。ちなみに向かいの部屋である。
それだけではなく、離れも書類で埋もれていると使用人は言っている。
「では、布は?麻とか綿、絹など」
「麻は時々あるな。綺麗なら洗って保護材に使ったりもするが、汚いのは集められるだけ集めて貧民窟の奴らに持ってってもらってるけどな。綿や絹は俺たちには縁がない」
「貧民窟の…持って行ってどうしているのかしら」
「どぶ川とか、雨水でせっせと洗って買い取って貰ってるそうだがな」
「なるほど…。判りましたわ。貴方にお願いしたい解体は、先ず!この屋敷の東半分ですの。使える木材やレンガ、石は平屋を建てるのに残しておいてほしいの」
東半分は、1階から3階まで吹き抜けとなっているであろう当主の部屋がほとんどである。ティディの使う夫人の間も含まれる。
「あの…奥様、いったい何をされようと?」
「何って。壊すのよ」
「壊すって…まさか屋敷を?」
「そうよ。好きにしていいっておっしゃったもの」
「いやいや、いくら好きにしていいと言っても!」
慌てるブライアンにティディはにっこりと微笑んだ。
「当主が仰ったのよ?間違いないわ。当面一番近い空いている離れで生活をしましょう。その間にアノ部屋を片付けて解体。出た廃材を綺麗にしてもらって足らない分は新規で買うしかないけど、紙を売ればなんとかなりそうね。調度品や家具で搬出出来るものは離れに移して頂戴」
「この侯爵家を?!いやいや。俺、まだ死にたくないっ?!」
「何を仰ってますの?全責任は私が取りますわ。ご心配なく。で、早速見積もりをして頂ける?先ずは東半分、廃材の選別と洗浄、それから西半分の解体と同じく廃材の選別と洗浄」
「ほ、本当にいいのか?捕まるなんて嫌だからな?」
「捕まりませんって。なんならここで誓約書でも書きましてよ?」
その後やってきた紙の買い取り業者は部分的な紙の量を窓の外から見て「ウチだけじゃ無理!」と紙を扱う組合に加盟している商人を呼び、買い取り額の概算が出る。
しかし、問題があった。
「運べる大きさに縛って頂く事が前提です。私達はこの状態で手を付ける事は出来ないのです」
「ここに荷馬車をつけて、引き取るのは無理なんですの?」
「えぇ。紙にも種類があるんです。色インクで書いてる物や紙質でも分けて頂かないと。藁半紙のようなモノ、上質紙、それに黒インク、黒炭、他の色のインクや色炭という区分けをして頂かないと、何もかもごちゃ混ぜですとそれぞれが扱う紙が違うので引き取れないんですよ」
1階から3階まで床すら重みに耐えきれず落ちた書類の山。
――放っておいたら、虫とマウスゥ屋敷になっちゃうわ――
ティディはブライアンとミーニャに人員を選別してもらい、リャネンさんが持って来てくれるであろう試作品の袋を持ってアノ部屋に突入する事を決断した。
従者が連れてきたのは、如何にも「親方!」と言う感じの屈強な男性。
無精髭もだが、袖を捲り上げた腕には力を入れずとも筋肉の形が浮き上がっている。
「俺に何をして欲しいんだ」
ティディはそんな屈強な男にも屈しない。
子爵領では荷馬車に揺られて隣の領地まで行き、乾燥させた木材の樹皮を剥ぐ仕事や、煙突掃除、繁華街で破落戸が暴れて壊した店内の清掃など色々としていたのだ。
――真面目に働いている人だもの。見た目で判断しちゃいけないわ――
「貴方に頼みたい事は、この侯爵家の部分解体、それから教えて頂きたい事があるの」
「俺に?お貴族様に教える事なんてないと思うが…」
「貴族だの関係ないわ。教えて頂きたいのは解体した家屋の廃材はどうされているのかという事が知りたいの」
「廃材の?そんなの簡単だ。使えるものは選り分けて使えない物は燃やしてるがな」
「なるほど。ちなみにその使えるモノというのは具体的にどのような?」
「柱とか梁。大きな部材はシロアリなんかにやられてなければ綺麗に表面を削ったりして売ってるし、レンガや石は運ぶのには重いがほとんど買い取られていく。ま、綺麗に選り分ける事が出来ればクズになったモノはブロックにして竈に火を入れる時の着火剤に出来るんだがな。汚くてやってねぇが――」
「なるほど。それで…紙は?」
「紙っ?!そんな高価なモンがあるわけがないだろう」
「あるない、ではなく紙はどうされます?」
「ま、まぁ…稀にあるからな。その時は買い取り業者に買い取って貰うよ。1枚でもパン1個くらいの値が付く。そんなお宝がそうそうあるわけがないがな」
そのお宝がこんもりと、大量にあるのだ。ちなみに向かいの部屋である。
それだけではなく、離れも書類で埋もれていると使用人は言っている。
「では、布は?麻とか綿、絹など」
「麻は時々あるな。綺麗なら洗って保護材に使ったりもするが、汚いのは集められるだけ集めて貧民窟の奴らに持ってってもらってるけどな。綿や絹は俺たちには縁がない」
「貧民窟の…持って行ってどうしているのかしら」
「どぶ川とか、雨水でせっせと洗って買い取って貰ってるそうだがな」
「なるほど…。判りましたわ。貴方にお願いしたい解体は、先ず!この屋敷の東半分ですの。使える木材やレンガ、石は平屋を建てるのに残しておいてほしいの」
東半分は、1階から3階まで吹き抜けとなっているであろう当主の部屋がほとんどである。ティディの使う夫人の間も含まれる。
「あの…奥様、いったい何をされようと?」
「何って。壊すのよ」
「壊すって…まさか屋敷を?」
「そうよ。好きにしていいっておっしゃったもの」
「いやいや、いくら好きにしていいと言っても!」
慌てるブライアンにティディはにっこりと微笑んだ。
「当主が仰ったのよ?間違いないわ。当面一番近い空いている離れで生活をしましょう。その間にアノ部屋を片付けて解体。出た廃材を綺麗にしてもらって足らない分は新規で買うしかないけど、紙を売ればなんとかなりそうね。調度品や家具で搬出出来るものは離れに移して頂戴」
「この侯爵家を?!いやいや。俺、まだ死にたくないっ?!」
「何を仰ってますの?全責任は私が取りますわ。ご心配なく。で、早速見積もりをして頂ける?先ずは東半分、廃材の選別と洗浄、それから西半分の解体と同じく廃材の選別と洗浄」
「ほ、本当にいいのか?捕まるなんて嫌だからな?」
「捕まりませんって。なんならここで誓約書でも書きましてよ?」
その後やってきた紙の買い取り業者は部分的な紙の量を窓の外から見て「ウチだけじゃ無理!」と紙を扱う組合に加盟している商人を呼び、買い取り額の概算が出る。
しかし、問題があった。
「運べる大きさに縛って頂く事が前提です。私達はこの状態で手を付ける事は出来ないのです」
「ここに荷馬車をつけて、引き取るのは無理なんですの?」
「えぇ。紙にも種類があるんです。色インクで書いてる物や紙質でも分けて頂かないと。藁半紙のようなモノ、上質紙、それに黒インク、黒炭、他の色のインクや色炭という区分けをして頂かないと、何もかもごちゃ混ぜですとそれぞれが扱う紙が違うので引き取れないんですよ」
1階から3階まで床すら重みに耐えきれず落ちた書類の山。
――放っておいたら、虫とマウスゥ屋敷になっちゃうわ――
ティディはブライアンとミーニャに人員を選別してもらい、リャネンさんが持って来てくれるであろう試作品の袋を持ってアノ部屋に突入する事を決断した。
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