上 下
31 / 32

伯爵位をもらうまでが大変

しおりを挟む
本日はいつもよりも念を入れてのお化粧をして頂きます。
この日の為にアルベルト様がドレスを作ってくださいました。勿論宝石もです。
無駄使いですのであるもので構いませんと言ったのですが、不貞腐れて仕舞われたのでわたくしが折れるしかなかったのですけれども。

「まぁ!旦那様の瞳の色と全く同じですわ。こんな綺麗な青は見た事が御座いません」

――いえ、旦那様の目を見ていますよね――

耳にはアクアマリンの耳飾り。髪飾りも髪に編み込んだタンザナイト。
指にはでっかいブルーサファイヤ。

ドレスは当然青で、アクセントにアルベルト様の髪の色の金で刺繍が入っております。
心なしか青系統は涼しく感じますので体温も下がった気がします。

アルベルト様は受勲などの時に着用する黒地に金刺繍の隊服を着られております。
階級章もそれまで頂いた勲章も付けるので、さながらピンバッジだらけのような…。
ですが勲章の数だけアルベルト様が活躍なさったと言う事です。

「アル様、カッコイイですわ」
「・・・・・」
「アル様?どうなされました?」
「・・・・・」

口を少し開けられて、心なしか瞳孔が開いているのではないですか?
いつの間にかフェニレフリン塩酸塩やトロピカミドなどを点眼されたのかしら?

「おーい!アル様~。どうちまちたかぁ?」

敢えて赤ちゃん言葉で呼びかけてみますが反応がありません。

――まさか!出かけるまであと数分なのに妄想中?――

「ハッ!エトランゼがこんなに光り輝いているとは!」

――えっ?まだ光を反射するほど剥げていませんけど?――

「美しい。この世の美を終結した美しさ‥‥死んでもいい」

――いやいや、これから大事な用があるんです!死なないで――

「頼む!これが嘘ではない事を誰か証明してくれ!」

――証明も何も、今のところ嘘はないですね。誇大表現はありましたが――

「旦那様、奥様、お時間でございます。馬車にお乗りくださいませ」
「アル様、参りましょう?」
「いいのか…手を取ってもいいのか…イキそうなん…だが…」

えっ?まるで吐きそうな酔っ払いに洗面器を大急ぎで構えねばならないような事を言わないでくださいませ。アルベルト様の誤射の速さは冗談になりません。
どうして内またになって和服の芸者さんのように小股で歩くのですか。

「す、すまない‥‥先に行っててくれないか」
「どうされましたの?」
「エトランゼの美しさに我慢できないと思って貞操帯を付けていたんだがタンクがいっぱいになった」
「えっ?貞操帯…なんですの?」
「大丈夫。子種しか出していない。ただもう容量いっぱいなんだ…」

――容量いっぱいって…たった数秒で何回誤射したんですか――

ですが、まぁ…隊服を汚さなかったのはよしとせねばならないでしょう。
黒は意外と染みが目立つんですよね。大事な部分が染みのままで陛下の前には行けません。

先に馬車で待っていると、時期外れのロングコートを纏って何故か手に隊服のズボンをもっていらっしゃるアルベルト様が走ってきます。

「替えのズボンですの?」
「いや、ズボンは1本しかないんだ。穢すわけにはいかないからね」
「汚すって…」
「ふふっ…穢す‥‥自分で言って何だが‥良い響きだ」

――どこがですか!――

「ですがどうしてロングコートなど?」
「笑わないでくれるか?」

時期外れだからと笑いはしませんが、明らかに不審者です。
馬車内なのでまだ良いですが、王宮についたらそれは明らかに止められてしまいます。
頬をポっと染めながらアルベルト様はコートをゆっくりと開きます。

「ご開帳~♡」
「ファァァァッ!」
「アァァッ。ダメだ。エトランゼッ見ないでくれ…恥ずかしいんだ」

――ならお閉じなさいませぇぇ!!――

いつもと奇声を発するのが逆になりましたが、奇声はわたくしで御座います。
だって‥‥だって…

潜望鏡にビニール被せてるんです!
しかもビニールの中には既に誤射の痕跡があるんです!

「エトランゼのおかげで萎えないから、紐も抜けない…ハァハァ」

――紐って…その根元でビニールが抜けないように縛ってる紐?――

「アル様!それではトレンチコートガバってする人より変態です」
「変態‥‥アァァ…ダメだって…そんなに詰らな…い…ウゥッ」

また出しやがりました…あ、言葉が。これは失礼を。また誤射されました。

「と、とにかくコートを閉じてくださいませ」
「声が…アァァ…もう精巣も精管も全開なんだ」

――そんな事まで判るの?どこまで敏感になってるんですか――

換気をしたいのですが、外に声が漏れるほうが問題ありと判断しましたので空ける事が出来ません。
独特な香りに包まれて王宮に到着するとわたくしをじぃぃっと見ております。
これはきっと‥‥

「舐めませんよ。そのチャポチャポになったビニールもきちんと処分です」
「フォアッ!ここにきてお預けなんて…どこまで僕を試すんだ」
「ここに来てって…もう王宮なのですよ」
「もっと強く…詰ってくれ…」

仕方が御座いません。天狗様のお面のような貞操帯をアルベルト様のお顔の前に突き出します。

「付けなさいッ!屋敷に戻るまでに汚したらご褒美はありませんよ!」
「はいっ!女王様…仰せのままにッ」

あっという間に装着して隊服のズボンを履かれます。やれば出来るではありませんか。
陛下の爵位授与式も問題なく終わり、帰りの馬車では縋る様にわたくしを見つめるアルベルト様。

ちゃんと装着しているようで、その目はまるでご褒美を待つ子犬のよう。
なんて可愛いのとふと思ってしまったわたくし。

お屋敷についても【まだですッ】と強めに言えば【キュゥゥン】と啼くのです。
ついついそれで夕食後の湯あみまで放置しておりました。
わたくしの着替えをじぃぃっとご褒美待ちをされておりましたので、汗を少し拭いたハンカチを差し上げると急いで自室に戻られました。

その後…

「エトランゼ!きてきて!」

全裸でわたくしを呼ぶためにやってきたアルベルト様。
(18時以降のなので使用人さんいません)

得意気に洗面器を見せてくれます。既視感のあるこの液体は・・・。

「エトランゼ!貞操帯を外してハンカチを嗅いだら1分くらい出っ放しだった」

――1分って‥‥壊れたホースですか!――


すごく満面の笑みで自慢げに語るアルベルト様。

「ちゃんとトイレに流しましょうね?」
「えっ?捨てるの?」

――捨てずにどうしろと?――


シュンとなるアルベルト様も可愛いと思ってしまうわたくし。
遂に禁断の領域に慣れ親しんでしまったのでしょうか。


☆~☆~☆

次回 最終回です。
ド変態夫婦。真人間になれるのか?(えっ?)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

運命の番なのに、炎帝陛下に全力で避けられています

四馬㋟
恋愛
美麗(みれい)は疲れていた。貧乏子沢山、六人姉弟の長女として生まれた美麗は、飲んだくれの父親に代わって必死に働き、五人の弟達を立派に育て上げたものの、気づけば29歳。結婚適齢期を過ぎたおばさんになっていた。長年片思いをしていた幼馴染の結婚を機に、田舎に引っ込もうとしたところ、宮城から迎えが来る。貴女は桃源国を治める朱雀―ー炎帝陛下の番(つがい)だと言われ、のこのこ使者について行った美麗だったが、炎帝陛下本人は「番なんて必要ない」と全力で拒否。その上、「痩せっぽっちで色気がない」「チビで子どもみたい」と美麗の外見を酷評する始末。それでも長女気質で頑張り屋の美麗は、彼の理想の女――番になるため、懸命に努力するのだが、「化粧濃すぎ」「太り過ぎ」と尽く失敗してしまい……

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

双子の姉妹の聖女じゃない方、そして彼女を取り巻く人々

神田柊子
恋愛
【2024/3/10:完結しました】 「双子の聖女」だと思われてきた姉妹だけれど、十二歳のときの聖女認定会で妹だけが聖女だとわかり、姉のステラは家の中で居場所を失う。 たくさんの人が気にかけてくれた結果、隣国に嫁いだ伯母の養子になり……。 ヒロインが出て行ったあとの生家や祖国は危機に見舞われないし、ヒロインも聖女の力に目覚めない話。 ----- 西洋風異世界。転移・転生なし。 三人称。視点は予告なく変わります。 ヒロイン以外の視点も多いです。 ----- ※R15は念のためです。 ※小説家になろう様にも掲載中。 【2024/3/6:HOTランキング女性向け1位にランクインしました!ありがとうございます】

なりゆきで、君の体を調教中

星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。

王子に嫌われたい!

ひとみん
恋愛
風呂場で滑って転んだと思ったら・・・そこは異世界でした。 自立を目指す彼女と、何としても彼女を捕まえたい少し残念な王子との恋物語。 設定はかなりゆるゆるご都合主義です。 なろう様では完結済みの外部リンクしていますが、大幅加筆修正しております。

王太子から婚約破棄され、嫌がらせのようにオジサンと結婚させられました 結婚したオジサンがカッコいいので満足です!

榎夜
恋愛
王太子からの婚約破棄。 理由は私が男爵令嬢を虐めたからですって。 そんなことはしていませんし、大体その令嬢は色んな男性と恋仲になっていると噂ですわよ? まぁ、辺境に送られて無理やり結婚させられることになりましたが、とってもカッコいい人だったので感謝しますわね

教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

海空里和
恋愛
王都にある果実店の果実飴は、連日行列の人気店。 そこで働く孤児院出身のエレノアは、聖女として教会からやりがい搾取されたあげく、あっさり捨てられた。大切な人を失い、働くことへの意義を失ったエレノア。しかし、果実飴の成功により、働き方改革に成功して、穏やかな日常を取り戻していた。 そこにやって来たのは、場違いなイケメン騎士。 「エレノア殿、迎えに来ました」 「はあ?」 それから毎日果実飴を買いにやって来る騎士。 果実飴が気に入ったのかと思ったその騎士、イザークは、実はエレノアとの結婚が目的で?! これは、エレノアにだけ距離感がおかしいイザークと、失意にいながらも大切な物を取り返していくエレノアが、次第に心を通わせていくラブストーリー。

処理中です...