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甘えん坊な亭主関白
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アルベルト様は亭主関白なのだそうです。
ご自身で仰られておりましたので間違い御座いません。
変態の香りもかなり強いのですが、意外と甘えん坊な所も御座います。
わたくしの姿が見えないと直ぐに探し回るのです。まるで幼子のようでございます。
本日のお昼はもうすぐ騎士団のお仕事に復帰されますので先に書類関係を済ませておくと、執務室で朝から書類を片付けておられた時です。
何故かわたくしを膝に抱いて、執務をされるのです。
慣れたとはいえ、通いの家令さんや執事さんのわたくしを哀れむような視線は辛いです。
1行の文字を書くごとに、わたくしの匂いを嗅がれます。
正直、そんな時間も無駄ですし、何より膝の上にわたくしがいないほうが捗ると思うのです。
「アル様、お仕事の間だけでもわたくしを下ろしてくださいませ」
「嫌だ。無理」
「でも騎士団に行かれたら、わたくしはお留守番なのですよ?」
「‥…騎士団やめる…」
「はっ?」
「もう余生を遊んで暮らせるだけは稼いである」
間違いではございません。若干22歳とは言え、腕一つで報奨金を頂いているアルベルト様は毎月のお給料は利息よりも少ないのです。預金残高を見せられた日、0の多さに吐きそうになりました。
しかし、この先生まれる子供を考えると、働きもせず家にいつもいる父を見せる事は出来ません。
「アル様、子供が出来たら大変なのですよ?」
「子供…大丈夫だ。妄想計画の中ではエトランゼは24歳で初出産だ」
「では‥‥4年後?でも避妊はされてないと思いますが」
「当たり前だ。避妊薬混じりの紛い物など注げる筈がない」
――それは妄想計画の中でも、無謀な家族計画になるのでは?――
「とにかく執務を終わらせて早くいちゃいちゃしたい」
――今、誰が見てもその状況だと思いますが――
「あ、アル様、わたくしちょっとお花を摘みに行きたいのですが」
「‥‥ココですればいい」
今何と・・・ココですればいい…と聞こえた気がします。ここはトイレでは御座いません。
えっ?まさかと思いますがこのお尻に当たる感触…勃っていらっしゃる??
「大丈夫だ。家令にも執事にも見せたりはしない」
――当たり前ですよ?というか、あなたにも見せるものではありません――
「さぁ、机の上で僕に見せてくれ」
――どうされましたの?お顔が…破顔されておられますが――
思わず、わたくし…アルベルト様の頬を【ぺちり】とひっぱたいてしまいました。
すると腕の力が弱まりましたので、執務室を出たのです。
サロンに戻ったわたくしは、とんでもない事をしてしまったと後悔をしたのですが後の祭り。
夫の言葉が理解を超えたとはいえ、王太子殿下から受け継いだ最後の防壁のお役目は終わるかも知れません。きっとこんな手が出てしまうような妻は追い出されるでしょう。
「エトランゼ!どこだ!」
あぁ‥‥アルベルト様が呼びながら探しております。
これはもう覚悟を決めるしか御座いません。
「アル様、サロンにおります」
カツカツと歩いてくる音がします。あぁ、もう終わり…と思いましたら満面の笑み。
アルベルト様が幾ら変態領域に片足を突っ込んでいると言ってももう…。
「エトランゼ。素晴らしかった。僕は今喜びの歌が頭に鳴り響いている」
「えっ…喜びの歌?讃美歌でございますか」
「そうだ!この可愛い手が僕を打った。どうして今日が祭日ではないんだ!」
――いえ、頬を打ったのは先ほどですし、祭日?なんと名を付けるのです?――
「お願いだ。僕をもっと打ってくれないか。あぁでもエトランゼの手が痛くなってしまう」
なんと仰いました?もっと打ってくれ?
「アル様‥‥その…被虐趣味がおありなの?」
「いや、エトランゼにされる事なら何でもご褒美なんだ。罵ってくれてもいいぞ」
「いえ、申し訳ございません。痛かったですか?」
「いや?(ぺろり)」
何故かわたくしの手のひらをペロペロと舐めておられます。
時折、チュッチュと吸い始めておりますが、それは指ではなく手のひらですよ?
「エトランゼにはいつも新しい僕を見つける扉を開かされてばかりだ」
――わたくし、国家的犯罪者になったのでしょうか――
そんな昼間を過ごした日の夜。寝室での事。
「エトランゼ。こんな事を結婚した後に言うのは後出しで悪いと思うんだが聞いてくれ」
えぇ。肯定しても否定しても何も言わなくてもアルベルト様は何が何でも話し始めますのでお聞きします。
あ、こう言うと何てやつなんだと思われるかも知れませんが、肯定の場合は別として否定をすると「お願いだ。聞いて欲しいんだ」と懇願をされますので否定すると睡眠時間が短くなるのです。
何も言わない時は、「どうしたんだ?魂が僕を欲しているのか」と言い出しますので面倒です。
「何でございましょう?」
「僕はね。間違いなく亭主関白なんだ。そうありたいと妄想をして生きてきた」
「どのような妄想なのでしょう」
「それはもう一言では言い表す事が出来ない。何度も何度も頭の中でシミュレーションしてきた」
――かなり壮大なスペクタクルな人生だったようですね――
「僕より先に起床する事は許さない」
「朝は寝坊をしろと仰るの?」
「当然だ。エトランゼの瞼がひらく瞬間は至福の時なんだ」
――良かったですわ…卵から産まれなくて、あれは一度切りですし――
「そして僕より後に就寝する事もダメだ」
「夜は早めに寝ろと?」
「そうだ。睡眠不足はお肌に大敵なんだ。こればかりは僕もどうしようもない」
――なら毎晩、執拗な子作りを朝までするのは、お控えくださいませ――
「それから、炊事、掃除などの家事は一切するな」
「何故で御座います?アル様にお弁当も作りたいし、お部屋を整えたいです」
「もう十分に妄想の中で飯も食ったし、部屋も片付けてもらった」
「それは妄想ですよね?」
「でも!苦労をかけたくないんだ!」
――もう十分に苦労をしておりますが――
「公爵家の事は一切気にしなくていい。特に母上や兄嫁は」
「皆さんよくしてくださいますよ?優しいですし」
「ダメだ。特に父上や兄上は男なんだ。煽情的なエトランゼを弄ぶに決まっている」
――わたくしは毎晩あなたに弄ばれている気がします――
「でもこれだけは‥‥」
「何でございましょう」
「僕を看取って欲しい。エトランゼの腕の中で逝きたい」
まぁ!アル様、そこは妄想が出来なかったのですね。
お任せくださいませ。女性は男性よりも長生き、そしてわたくしは年下。
このエトランゼ。しっかりとそのお役目果たさせて頂きますわ!
ご自身で仰られておりましたので間違い御座いません。
変態の香りもかなり強いのですが、意外と甘えん坊な所も御座います。
わたくしの姿が見えないと直ぐに探し回るのです。まるで幼子のようでございます。
本日のお昼はもうすぐ騎士団のお仕事に復帰されますので先に書類関係を済ませておくと、執務室で朝から書類を片付けておられた時です。
何故かわたくしを膝に抱いて、執務をされるのです。
慣れたとはいえ、通いの家令さんや執事さんのわたくしを哀れむような視線は辛いです。
1行の文字を書くごとに、わたくしの匂いを嗅がれます。
正直、そんな時間も無駄ですし、何より膝の上にわたくしがいないほうが捗ると思うのです。
「アル様、お仕事の間だけでもわたくしを下ろしてくださいませ」
「嫌だ。無理」
「でも騎士団に行かれたら、わたくしはお留守番なのですよ?」
「‥…騎士団やめる…」
「はっ?」
「もう余生を遊んで暮らせるだけは稼いである」
間違いではございません。若干22歳とは言え、腕一つで報奨金を頂いているアルベルト様は毎月のお給料は利息よりも少ないのです。預金残高を見せられた日、0の多さに吐きそうになりました。
しかし、この先生まれる子供を考えると、働きもせず家にいつもいる父を見せる事は出来ません。
「アル様、子供が出来たら大変なのですよ?」
「子供…大丈夫だ。妄想計画の中ではエトランゼは24歳で初出産だ」
「では‥‥4年後?でも避妊はされてないと思いますが」
「当たり前だ。避妊薬混じりの紛い物など注げる筈がない」
――それは妄想計画の中でも、無謀な家族計画になるのでは?――
「とにかく執務を終わらせて早くいちゃいちゃしたい」
――今、誰が見てもその状況だと思いますが――
「あ、アル様、わたくしちょっとお花を摘みに行きたいのですが」
「‥‥ココですればいい」
今何と・・・ココですればいい…と聞こえた気がします。ここはトイレでは御座いません。
えっ?まさかと思いますがこのお尻に当たる感触…勃っていらっしゃる??
「大丈夫だ。家令にも執事にも見せたりはしない」
――当たり前ですよ?というか、あなたにも見せるものではありません――
「さぁ、机の上で僕に見せてくれ」
――どうされましたの?お顔が…破顔されておられますが――
思わず、わたくし…アルベルト様の頬を【ぺちり】とひっぱたいてしまいました。
すると腕の力が弱まりましたので、執務室を出たのです。
サロンに戻ったわたくしは、とんでもない事をしてしまったと後悔をしたのですが後の祭り。
夫の言葉が理解を超えたとはいえ、王太子殿下から受け継いだ最後の防壁のお役目は終わるかも知れません。きっとこんな手が出てしまうような妻は追い出されるでしょう。
「エトランゼ!どこだ!」
あぁ‥‥アルベルト様が呼びながら探しております。
これはもう覚悟を決めるしか御座いません。
「アル様、サロンにおります」
カツカツと歩いてくる音がします。あぁ、もう終わり…と思いましたら満面の笑み。
アルベルト様が幾ら変態領域に片足を突っ込んでいると言ってももう…。
「エトランゼ。素晴らしかった。僕は今喜びの歌が頭に鳴り響いている」
「えっ…喜びの歌?讃美歌でございますか」
「そうだ!この可愛い手が僕を打った。どうして今日が祭日ではないんだ!」
――いえ、頬を打ったのは先ほどですし、祭日?なんと名を付けるのです?――
「お願いだ。僕をもっと打ってくれないか。あぁでもエトランゼの手が痛くなってしまう」
なんと仰いました?もっと打ってくれ?
「アル様‥‥その…被虐趣味がおありなの?」
「いや、エトランゼにされる事なら何でもご褒美なんだ。罵ってくれてもいいぞ」
「いえ、申し訳ございません。痛かったですか?」
「いや?(ぺろり)」
何故かわたくしの手のひらをペロペロと舐めておられます。
時折、チュッチュと吸い始めておりますが、それは指ではなく手のひらですよ?
「エトランゼにはいつも新しい僕を見つける扉を開かされてばかりだ」
――わたくし、国家的犯罪者になったのでしょうか――
そんな昼間を過ごした日の夜。寝室での事。
「エトランゼ。こんな事を結婚した後に言うのは後出しで悪いと思うんだが聞いてくれ」
えぇ。肯定しても否定しても何も言わなくてもアルベルト様は何が何でも話し始めますのでお聞きします。
あ、こう言うと何てやつなんだと思われるかも知れませんが、肯定の場合は別として否定をすると「お願いだ。聞いて欲しいんだ」と懇願をされますので否定すると睡眠時間が短くなるのです。
何も言わない時は、「どうしたんだ?魂が僕を欲しているのか」と言い出しますので面倒です。
「何でございましょう?」
「僕はね。間違いなく亭主関白なんだ。そうありたいと妄想をして生きてきた」
「どのような妄想なのでしょう」
「それはもう一言では言い表す事が出来ない。何度も何度も頭の中でシミュレーションしてきた」
――かなり壮大なスペクタクルな人生だったようですね――
「僕より先に起床する事は許さない」
「朝は寝坊をしろと仰るの?」
「当然だ。エトランゼの瞼がひらく瞬間は至福の時なんだ」
――良かったですわ…卵から産まれなくて、あれは一度切りですし――
「そして僕より後に就寝する事もダメだ」
「夜は早めに寝ろと?」
「そうだ。睡眠不足はお肌に大敵なんだ。こればかりは僕もどうしようもない」
――なら毎晩、執拗な子作りを朝までするのは、お控えくださいませ――
「それから、炊事、掃除などの家事は一切するな」
「何故で御座います?アル様にお弁当も作りたいし、お部屋を整えたいです」
「もう十分に妄想の中で飯も食ったし、部屋も片付けてもらった」
「それは妄想ですよね?」
「でも!苦労をかけたくないんだ!」
――もう十分に苦労をしておりますが――
「公爵家の事は一切気にしなくていい。特に母上や兄嫁は」
「皆さんよくしてくださいますよ?優しいですし」
「ダメだ。特に父上や兄上は男なんだ。煽情的なエトランゼを弄ぶに決まっている」
――わたくしは毎晩あなたに弄ばれている気がします――
「でもこれだけは‥‥」
「何でございましょう」
「僕を看取って欲しい。エトランゼの腕の中で逝きたい」
まぁ!アル様、そこは妄想が出来なかったのですね。
お任せくださいませ。女性は男性よりも長生き、そしてわたくしは年下。
このエトランゼ。しっかりとそのお役目果たさせて頂きますわ!
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