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第19話♡その前にする事がある
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「いいですか?俺たち、この4、5カ月毎日団長のキモいデレを見せられているんですよ?判ります?」
「それは…すまなかった。だが…」
「だいたいですよ?陛下公認で一緒に住んでいるって状況をどう考えてるんです?」
「どうって…」
「普通はね?団長が手を出していれば別ですが!こんな側妃の選定会に呼ばれ、1人で参加する時点で秘書官が最有力候補だと誰でも考えますよ」
「なんでだ」
「団長が秘書官の身の上を終日護衛していると考えるからですよ。御身に何かあれば大変だって」
「そんなつもりは…」
「周囲に団長の心のうちなんて判りません。陛下が団長に預けた。そう考えを紐づけるものが多いです。でもね?他の男と並んだり、手を繋いだり、指を恋人繋ぎさせたり、食い物を食べさせ合いしたり、腰に手を回してたり、首筋の香りをクンカクンカしたり――」
「言うな!もう言うな!苛立って仕方がない…フゥーフゥー…胸糞悪い」
既婚者の余裕。イグナシオは人差し指でガウルテリオの鼻の頭をツンと突いた。
「その日は団長も秘書官も休日。がっつりと周りに見せつけてやればいいんです」
「ゆっ指を絡ませたり・・・首筋の…フォォォウッ!!」
「そうしたいのなら、やる事が先にありますよね?」
「お、押し倒すのか…」
「その前に!です。いきなり押し倒したら問題しかないでしょうに!」
手間のかかる年下の弟でもあり、上司のガウルテリオ。
それなりにイグナシオも副団長の2人も心配はしている。
恋のレクチャーを説いたイグナシオは団長室に戻ると、マリーの元にガウルテリオを誘った。
背中をポン!と押されたガウルテリオ。
デスクに戻ったマリーの前に立つのだが。
「ヒュウゥゥー。ヒュウゥゥー」
緊張し過ぎて息を吸い込む事しか出来ず、吐き方を忘れた。
「団長様、席にお戻りになって朝礼及び鍛錬の支度。終わり次第可及的速やかに決済をお願いいたします」
「はぃ…」
<< 弱っ!! >>
憐みの目がガウルテリオの背中にグッサグッサと突き刺さる。
肩を落とし、項垂れるガウルテリオだがこればかりは周りがどこかの女将のように耳打ちをするわけにもいかない。経験不足のガウルテリオは言われたままを口にする可能性が高い。
間違いなく、炎上の原因だ。
その日の昼食は珍しく弁当派のラウールも食堂に出掛けた。
団長室の扉も何故か閉じられている。
部屋の中にはガウルテリオとマリーの2人きり。
モグモグと静かに口を動かして屋敷の調理長ポーリンに渡されたお揃いだが大きさが倍半分の弁当を食べている。
ポーリンお手製のウィンナー。食紅でガウルテリオだけ色付けをされている。
勿論片側だけに切れ込みが入ったタコさんウィンナー。
黒ゴマで目と口の装飾がされているのだが、ガウルテリオは見た目を愉しむ前に口に放り込んだ。
「秘書官‥」
「なんでしょう?」
「けっ今朝の件だが…俺も一緒に行く事にする。その日は半休ではなく全休に」
「団長様も招待状が?」
「いや…俺には来てないが‥その…」
「招待状も無しに参加をすると問題になるのでは御座いませんか?」
ガタっと音を立ててガウルテリオは立ち上がった。
フォークにはブロッコリーが刺さっている。
「この頃…流れている噂を知っているか?」
「噂?‥‥はい。存じております」
「ならば尚の事だ。その‥かりっ…仮…」
「団長様、無理です」
「えっ?無理?」
マリーは空になったガウルテリオの半分ほどの弁当箱を見せた。
ガウルテリオは何故弁当箱を見せられるのかが判らない。
「団長様にはブロッコリー。わたくしにはカリフラワー。ポーリン様がそれぞれに必要な栄養源を考えて考案されているのです」
「へっ?それが何か関係あるのか?」
「フォークに刺さっているブロッコリーとわたくしのカリフラワーを交換で御座いましょう?確かにカリフラワーはブロッコリーのアルビノ種とも言われておりますが、栄養が少し異なる言わば兄弟姉妹のようなもの。もう食べてしまいましたので交換は出来ません」
ハッと気が付くガウルテリオ。モジモジしてしまった事で「かりっ」と口走り、勘違いをされたのだ。それを誇張するかのように手にしたフォークに刺さるブロッコリー。
――原因はお前か!――
そもそもでガウルテリオの言動がおかしいだけなのだが、ガウルテリオはフォークに刺さったブロッコリーをパクリと口の中に放り込む。
「(もぐもぐ)その夜会なのだが(モグモグ)」
「団長様、飲み込んでからお話しください」
「ぁぃ…」
だが、ブロッコリーは強敵。ワサワサした部分は噛み砕くと口の中いっぱいに広がり細かくなった花弁は粒になり飲み込むのにも苦労をする。
――よし!飲み込んだ!――
「それでだな――」
言いかけた所でガチャリと扉が開き、ラウールとファルコンが入ってきた。
団長室の空気が張り詰める。
明らかに【やっちまった感】を滲ませる2人。
ガウルテリオの目が泳ぐ。
無かった事にしてしまって扉を閉じれば、敢えて2人だけの空間を演出した事がバレバレになってしまう。ラウールの握るドアノブが冷や汗で滑るのは気のせいだろうか。
均衡を打ち破ったのは愛想無し令嬢のマリー。
「ラウール副団長。先月の遠征報告書。誤りが御座いますので訂正をお願いします」
「先に備品補充の確認をしようかと」
さりげなくもうすぐ終わる昼休み。場を外す事で2人の空間を延長しようとしたのだが一刀両断されてしまう。
「それをする前に、して頂かねば困るのは皆さんです」
「は、はい‥‥」
今、この時に扉を開けてしまった事が大きな誤り。
――なんで昼休みにキメとかないんですか!!――
ラウールの心の叫びは聞こえない。
「それは…すまなかった。だが…」
「だいたいですよ?陛下公認で一緒に住んでいるって状況をどう考えてるんです?」
「どうって…」
「普通はね?団長が手を出していれば別ですが!こんな側妃の選定会に呼ばれ、1人で参加する時点で秘書官が最有力候補だと誰でも考えますよ」
「なんでだ」
「団長が秘書官の身の上を終日護衛していると考えるからですよ。御身に何かあれば大変だって」
「そんなつもりは…」
「周囲に団長の心のうちなんて判りません。陛下が団長に預けた。そう考えを紐づけるものが多いです。でもね?他の男と並んだり、手を繋いだり、指を恋人繋ぎさせたり、食い物を食べさせ合いしたり、腰に手を回してたり、首筋の香りをクンカクンカしたり――」
「言うな!もう言うな!苛立って仕方がない…フゥーフゥー…胸糞悪い」
既婚者の余裕。イグナシオは人差し指でガウルテリオの鼻の頭をツンと突いた。
「その日は団長も秘書官も休日。がっつりと周りに見せつけてやればいいんです」
「ゆっ指を絡ませたり・・・首筋の…フォォォウッ!!」
「そうしたいのなら、やる事が先にありますよね?」
「お、押し倒すのか…」
「その前に!です。いきなり押し倒したら問題しかないでしょうに!」
手間のかかる年下の弟でもあり、上司のガウルテリオ。
それなりにイグナシオも副団長の2人も心配はしている。
恋のレクチャーを説いたイグナシオは団長室に戻ると、マリーの元にガウルテリオを誘った。
背中をポン!と押されたガウルテリオ。
デスクに戻ったマリーの前に立つのだが。
「ヒュウゥゥー。ヒュウゥゥー」
緊張し過ぎて息を吸い込む事しか出来ず、吐き方を忘れた。
「団長様、席にお戻りになって朝礼及び鍛錬の支度。終わり次第可及的速やかに決済をお願いいたします」
「はぃ…」
<< 弱っ!! >>
憐みの目がガウルテリオの背中にグッサグッサと突き刺さる。
肩を落とし、項垂れるガウルテリオだがこればかりは周りがどこかの女将のように耳打ちをするわけにもいかない。経験不足のガウルテリオは言われたままを口にする可能性が高い。
間違いなく、炎上の原因だ。
その日の昼食は珍しく弁当派のラウールも食堂に出掛けた。
団長室の扉も何故か閉じられている。
部屋の中にはガウルテリオとマリーの2人きり。
モグモグと静かに口を動かして屋敷の調理長ポーリンに渡されたお揃いだが大きさが倍半分の弁当を食べている。
ポーリンお手製のウィンナー。食紅でガウルテリオだけ色付けをされている。
勿論片側だけに切れ込みが入ったタコさんウィンナー。
黒ゴマで目と口の装飾がされているのだが、ガウルテリオは見た目を愉しむ前に口に放り込んだ。
「秘書官‥」
「なんでしょう?」
「けっ今朝の件だが…俺も一緒に行く事にする。その日は半休ではなく全休に」
「団長様も招待状が?」
「いや…俺には来てないが‥その…」
「招待状も無しに参加をすると問題になるのでは御座いませんか?」
ガタっと音を立ててガウルテリオは立ち上がった。
フォークにはブロッコリーが刺さっている。
「この頃…流れている噂を知っているか?」
「噂?‥‥はい。存じております」
「ならば尚の事だ。その‥かりっ…仮…」
「団長様、無理です」
「えっ?無理?」
マリーは空になったガウルテリオの半分ほどの弁当箱を見せた。
ガウルテリオは何故弁当箱を見せられるのかが判らない。
「団長様にはブロッコリー。わたくしにはカリフラワー。ポーリン様がそれぞれに必要な栄養源を考えて考案されているのです」
「へっ?それが何か関係あるのか?」
「フォークに刺さっているブロッコリーとわたくしのカリフラワーを交換で御座いましょう?確かにカリフラワーはブロッコリーのアルビノ種とも言われておりますが、栄養が少し異なる言わば兄弟姉妹のようなもの。もう食べてしまいましたので交換は出来ません」
ハッと気が付くガウルテリオ。モジモジしてしまった事で「かりっ」と口走り、勘違いをされたのだ。それを誇張するかのように手にしたフォークに刺さるブロッコリー。
――原因はお前か!――
そもそもでガウルテリオの言動がおかしいだけなのだが、ガウルテリオはフォークに刺さったブロッコリーをパクリと口の中に放り込む。
「(もぐもぐ)その夜会なのだが(モグモグ)」
「団長様、飲み込んでからお話しください」
「ぁぃ…」
だが、ブロッコリーは強敵。ワサワサした部分は噛み砕くと口の中いっぱいに広がり細かくなった花弁は粒になり飲み込むのにも苦労をする。
――よし!飲み込んだ!――
「それでだな――」
言いかけた所でガチャリと扉が開き、ラウールとファルコンが入ってきた。
団長室の空気が張り詰める。
明らかに【やっちまった感】を滲ませる2人。
ガウルテリオの目が泳ぐ。
無かった事にしてしまって扉を閉じれば、敢えて2人だけの空間を演出した事がバレバレになってしまう。ラウールの握るドアノブが冷や汗で滑るのは気のせいだろうか。
均衡を打ち破ったのは愛想無し令嬢のマリー。
「ラウール副団長。先月の遠征報告書。誤りが御座いますので訂正をお願いします」
「先に備品補充の確認をしようかと」
さりげなくもうすぐ終わる昼休み。場を外す事で2人の空間を延長しようとしたのだが一刀両断されてしまう。
「それをする前に、して頂かねば困るのは皆さんです」
「は、はい‥‥」
今、この時に扉を開けてしまった事が大きな誤り。
――なんで昼休みにキメとかないんですか!!――
ラウールの心の叫びは聞こえない。
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