4 / 40
第4話♡副団長の悲痛な叫び
しおりを挟む
「団長~。休暇届を出してたんですけど取り下げたいんです」
「はっ?取り下げたいってお前、婆さんの容態が芳しくないと言ってただろう」
「そうなんですけど、ほら?」
「ほらとは何だ?」
「お見合い夜会があるのを忘れてたんですよ~」
両手の指をクネクネと絡ませる騎士。
「ジベリスの提出した休暇届けはもう総務課に回ってるんじゃないかな?」
「そこを何とかお願いしますよ~。可愛い部下が可愛い恋人が出来るかどうかの瀬戸際なんですよぅ」
「ジベリス副班長の休暇届は不備が御座いますので、下から2番目の書類棚に御座います」
書類にペンを走らせながらマリーは声だけの返事を返す。
ムゥ…とガウルテリオは騎士が取り下げにきた休暇届を棚から取り出すとビリリ。
ジベリスの目の前で破ってしまった。
「だが、婆さんは良いのか?お前今生の別れになると言ってただろう」
「あ、本当は王都の外れにある男爵家でもお見合いパーティだったんですけど王都の方を優先しただけッス」
「お見合い夜会?お前‥‥」
メラメラ。ガウルテリオの拳が固く握られて震えだすと騎士ジベリスは「あざっしたー」っと部屋を跳び出て行った。
ジベリスの背中が見えなくなるとガウルテリオは椅子から浮いた腰を下ろした。
のだが、同時にマリーが立ち上がった。
――なっ?なに?俺、なんかした??――
数歩の距離しかないデスク間。
「団長様、休暇届。破られては困ります」
「えっ?えっ?」
慌てて「破って丸めてゴミ箱ポン」した休暇届を拾い上げ、机の上に置き、小指球で皺を懸命に伸ばす。皺くちゃになった用紙の端をマリーがビシッ!!指差した。
「えぇっと…ここが何か?」
怯える子ヤギのようにマリーを見上げるガウルテリオ。
ギロリ!マリーの可愛い目がガウルテリオを睨む。
「通し番号が御座います。公文書になりますのでこのような場合は、こちら!」
またもやビシィ!っと目の前に差し出された用紙。
「休暇申請取下届を出して頂く必要があります。2つを合わせて総務課に提出しこの通し番号は欠番とする必要があるのです」
「そ、そうなのか…」
「そうなのか?では御座いません。同様の行為が行われていたのが多々あると注意勧告もされております。その為の始末書。副隊長様も合わせて提出をお願いいたします」
「えぇっ?!俺も?!」
ラウールが慌てて立ち上がる。それもそのはず。始末書は5枚貯まると管理職は給料の3%をカットされるのだ。既婚者で奥様に財布の紐をがっちり握られているラウール副隊長にとって3%は痛い。減給分が真っ先に割を食うのは毎月の小遣い。ラウールには死活問題である。
「ラウールとファルコンの分は俺が引き受けよう」
「団長ぉぉ~神ですかぁ♡」
だが、ラウールの甘い声もマリーによって一刀両断。
「無駄です。管理職3人の始末書が1セットです。その為に管理職手当が付いております」
「ニャァァーッ!!おぅおぅ・・・」
ラウールの悲痛な叫び声が響いた団長室だった。
「はっ?取り下げたいってお前、婆さんの容態が芳しくないと言ってただろう」
「そうなんですけど、ほら?」
「ほらとは何だ?」
「お見合い夜会があるのを忘れてたんですよ~」
両手の指をクネクネと絡ませる騎士。
「ジベリスの提出した休暇届けはもう総務課に回ってるんじゃないかな?」
「そこを何とかお願いしますよ~。可愛い部下が可愛い恋人が出来るかどうかの瀬戸際なんですよぅ」
「ジベリス副班長の休暇届は不備が御座いますので、下から2番目の書類棚に御座います」
書類にペンを走らせながらマリーは声だけの返事を返す。
ムゥ…とガウルテリオは騎士が取り下げにきた休暇届を棚から取り出すとビリリ。
ジベリスの目の前で破ってしまった。
「だが、婆さんは良いのか?お前今生の別れになると言ってただろう」
「あ、本当は王都の外れにある男爵家でもお見合いパーティだったんですけど王都の方を優先しただけッス」
「お見合い夜会?お前‥‥」
メラメラ。ガウルテリオの拳が固く握られて震えだすと騎士ジベリスは「あざっしたー」っと部屋を跳び出て行った。
ジベリスの背中が見えなくなるとガウルテリオは椅子から浮いた腰を下ろした。
のだが、同時にマリーが立ち上がった。
――なっ?なに?俺、なんかした??――
数歩の距離しかないデスク間。
「団長様、休暇届。破られては困ります」
「えっ?えっ?」
慌てて「破って丸めてゴミ箱ポン」した休暇届を拾い上げ、机の上に置き、小指球で皺を懸命に伸ばす。皺くちゃになった用紙の端をマリーがビシッ!!指差した。
「えぇっと…ここが何か?」
怯える子ヤギのようにマリーを見上げるガウルテリオ。
ギロリ!マリーの可愛い目がガウルテリオを睨む。
「通し番号が御座います。公文書になりますのでこのような場合は、こちら!」
またもやビシィ!っと目の前に差し出された用紙。
「休暇申請取下届を出して頂く必要があります。2つを合わせて総務課に提出しこの通し番号は欠番とする必要があるのです」
「そ、そうなのか…」
「そうなのか?では御座いません。同様の行為が行われていたのが多々あると注意勧告もされております。その為の始末書。副隊長様も合わせて提出をお願いいたします」
「えぇっ?!俺も?!」
ラウールが慌てて立ち上がる。それもそのはず。始末書は5枚貯まると管理職は給料の3%をカットされるのだ。既婚者で奥様に財布の紐をがっちり握られているラウール副隊長にとって3%は痛い。減給分が真っ先に割を食うのは毎月の小遣い。ラウールには死活問題である。
「ラウールとファルコンの分は俺が引き受けよう」
「団長ぉぉ~神ですかぁ♡」
だが、ラウールの甘い声もマリーによって一刀両断。
「無駄です。管理職3人の始末書が1セットです。その為に管理職手当が付いております」
「ニャァァーッ!!おぅおぅ・・・」
ラウールの悲痛な叫び声が響いた団長室だった。
35
お気に入りに追加
2,023
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました
鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と
王女殿下の騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、3話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません
黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。
でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。
知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。
学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。
いったい、何を考えているの?!
仕方ない。現実を見せてあげましょう。
と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。
「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」
突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。
普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。
※わりと見切り発車です。すみません。
※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる