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第31話 小さな違和感
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テオドールはチャミングが怪しいと睨んだが、チャミングに怪しい動きは見られなかった。
王宮のチャミングの執務室などには各家の使用人が派遣されているが、集めた情報によると怠慢な執務はするけれど、宮を持つ前に使っていた部屋にも、執務室にも、チャミングが自由に出来り出来る部屋にもシャルロットはいなかったとある。
ここ最近よりもガラス宮に戻る頻度は増えたが、サンドリヨンとの関係が良くなったかと言えば否。ガラス宮で寝泊まりする時もチャミングはサンドリヨンとは別室で過ごす。
チャミングの私室や寝室に清掃で入る使用人からもシャルロット発見の報告はなかった。
「だけど・・・変なんです」
「何が変なんだ?」
「いえ、チャミング殿下ではないんですけど、ガラス宮って消耗品とかの購入がピッタリ止まったんですけどね」
それはテオドールも知っている。サンドリヨンが買い物はしないと言い出したからである。その後「消耗品」の項目の数字には頭に「△」が付いた。
この「△」は本来なら出費となるはずの項目が出費ではなく収入になった事を示す。
サンドリヨンの為に買ったものを返品や買い取りに出したので金が宮に戻って来た、そこもテオドールは把握をしていた。
「それがですね、先週なんですけども食器を発注してるんです。発注を受けて昨日納品した食器が5組です」
従者の言葉が気になったテオドールは報告書を手に取ってみたが、発注した食器は貴族が使うような高価なモノではなく、使用人の賄に使ったり、部屋に食事を運ぶ際には振動で皿などがカチャカチャとぶつかり、欠ける事もあるので高価な食器で無く簡素な汎用品になるのだがその類だった。
サンドリヨンとは食事室で食事を共にせず、宮に来た時は部屋で食事を済ませるチャミングなので簡素な食器を発注するのも取り分けておかしいわけではない。しかし何か引っかかる。
「そういえば・・・」
「なんだ?何かあるのか?」
「いえ、何かってほどではないんですけど…どの報告書だったかな」
ごそごそと従者が積み重なった報告書から目当ての束を探す。
「ありました。これです」
パラパラとページを捲る従者が開いたページは食事の報告書だった。
チャミングは毎晩ガラス宮に来ている訳ではない。来た時は部屋で食事をするのだが先程食器の報告を聞いた従者は「食事の量」が増えたことを思い出した。
「3食ほどですけど、頼む時に増えてるんです。食器を発注したのと何か関係があるんでしょうか」
これが毎食であったりすれば「誰かの分」とチャミング以外の分量だなと思うのだが、宮に来た時の1食分だけを3食頼んでいる。
夜に小腹がすく、その日は腹が減っていた。何とでも言い訳は出来るし、チャミングは毎晩ガラス宮で寝泊まりをする訳ではないので、間に1日あいていたりもする。
シャルロットを監禁しているのなら多い時で1日1食。少ない時で2日に1食しか食事をさせていない事になる。しかし、ガラス宮のチャミングの部屋は王宮と同じように使用人達から報告があって誰かを隠すような、隠せるような場所には何もなかったのだ。
清掃はチャミングの不在時に行われるので少々物を動かして探すことは出来るのに、なにもなかった。
テオドールの疑問は、あの日シャルロットを麻袋に入れて戻って来たチャミングに声を掛けた従者が手の者であればもっと早くに気がつけたかもしれないが、他家の、しかも懇意でない家からの従者だったためシャルロットが連れ込まれた日、夜の記録が無かった事で捜索は難航していた。
しかしテオドールは食器と食事。この2点に小さな違和感を感じたのだった。
王宮のチャミングの執務室などには各家の使用人が派遣されているが、集めた情報によると怠慢な執務はするけれど、宮を持つ前に使っていた部屋にも、執務室にも、チャミングが自由に出来り出来る部屋にもシャルロットはいなかったとある。
ここ最近よりもガラス宮に戻る頻度は増えたが、サンドリヨンとの関係が良くなったかと言えば否。ガラス宮で寝泊まりする時もチャミングはサンドリヨンとは別室で過ごす。
チャミングの私室や寝室に清掃で入る使用人からもシャルロット発見の報告はなかった。
「だけど・・・変なんです」
「何が変なんだ?」
「いえ、チャミング殿下ではないんですけど、ガラス宮って消耗品とかの購入がピッタリ止まったんですけどね」
それはテオドールも知っている。サンドリヨンが買い物はしないと言い出したからである。その後「消耗品」の項目の数字には頭に「△」が付いた。
この「△」は本来なら出費となるはずの項目が出費ではなく収入になった事を示す。
サンドリヨンの為に買ったものを返品や買い取りに出したので金が宮に戻って来た、そこもテオドールは把握をしていた。
「それがですね、先週なんですけども食器を発注してるんです。発注を受けて昨日納品した食器が5組です」
従者の言葉が気になったテオドールは報告書を手に取ってみたが、発注した食器は貴族が使うような高価なモノではなく、使用人の賄に使ったり、部屋に食事を運ぶ際には振動で皿などがカチャカチャとぶつかり、欠ける事もあるので高価な食器で無く簡素な汎用品になるのだがその類だった。
サンドリヨンとは食事室で食事を共にせず、宮に来た時は部屋で食事を済ませるチャミングなので簡素な食器を発注するのも取り分けておかしいわけではない。しかし何か引っかかる。
「そういえば・・・」
「なんだ?何かあるのか?」
「いえ、何かってほどではないんですけど…どの報告書だったかな」
ごそごそと従者が積み重なった報告書から目当ての束を探す。
「ありました。これです」
パラパラとページを捲る従者が開いたページは食事の報告書だった。
チャミングは毎晩ガラス宮に来ている訳ではない。来た時は部屋で食事をするのだが先程食器の報告を聞いた従者は「食事の量」が増えたことを思い出した。
「3食ほどですけど、頼む時に増えてるんです。食器を発注したのと何か関係があるんでしょうか」
これが毎食であったりすれば「誰かの分」とチャミング以外の分量だなと思うのだが、宮に来た時の1食分だけを3食頼んでいる。
夜に小腹がすく、その日は腹が減っていた。何とでも言い訳は出来るし、チャミングは毎晩ガラス宮で寝泊まりをする訳ではないので、間に1日あいていたりもする。
シャルロットを監禁しているのなら多い時で1日1食。少ない時で2日に1食しか食事をさせていない事になる。しかし、ガラス宮のチャミングの部屋は王宮と同じように使用人達から報告があって誰かを隠すような、隠せるような場所には何もなかったのだ。
清掃はチャミングの不在時に行われるので少々物を動かして探すことは出来るのに、なにもなかった。
テオドールの疑問は、あの日シャルロットを麻袋に入れて戻って来たチャミングに声を掛けた従者が手の者であればもっと早くに気がつけたかもしれないが、他家の、しかも懇意でない家からの従者だったためシャルロットが連れ込まれた日、夜の記録が無かった事で捜索は難航していた。
しかしテオドールは食器と食事。この2点に小さな違和感を感じたのだった。
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