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第15話 先手、テオドール
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テオドールとのお見合い。
初見の2人ではない。
シャルロットとしては会っているけれど会っていないという微妙な立場。
テオドールも特に印象に残る事もない影の薄い令嬢でこれと言った情報もない。
テオドールは冷静沈着な上に冷酷な側近とも言われただけあって表情から何を考えているか判らないだろう。シャルロットとしては、ここで一発カマしておいて取引に於いては優位な立場に立ちたい・・・ところだがテオドールいやボードリエ公爵家が何故婚約を持ち込んできたのかを探りたいところ。
言い方はおかしいが、5カ月もシャルロットしていればこの世界の理くらいはおおよそ理解出来た。
――神様、臨機応変もバッチリよ!――
復習は今夜行うとして、予習はバッチリ。メイドに支度をしてもらっている時だが、頭の中で何度も繰り返しイメージもしたし「あぁいえばこう言う作戦」で先ずは相手の出方を見る。
最終的な目標は「こいつ、危ない」と危険認定をしてもらい婚約破棄をしてもらう事だ。
玄関に到着したと聞き、そっとサロンへの控室から聞き耳を立てて様子を伺う。
「ボードリエ公、そしてご子息。ようこそお越しくださいました」
「いや、こちらこそ突然の申し入れにも関わらずこうやって場を設けてくださり感謝いたします」
「立ち話もなんですから、さ、さ、こちらへ」
少し遅れてシャルロットは控室からサロンに移動をするのだ。
その合図は父のクロードが「娘を紹介しましょう」と言えば従者が控室に来る手筈だ。
「何故当家の娘を?こう言っては何ですが…娘は諸々の事情が御座いますが」
――お父様、ナイスですわ――
単に外出するのに「こんなに護衛が?!」と思い面倒になったので出掛けなかっただけだが、世間は勝手な憶測で噂を流してくれる。世間では傷物とも呼ばれているのだ。なのにわざわざ申し込んできたという事は、ボードリエ公爵家にも退引きならぬ事情があると見える。
貴族の婚約は同等ではない。少しでも優位に立ったほうが後々進めやすいのだ。
父親のクロードはこれまで公爵家でありながらもシャルロットの嫁ぎ先を探すのに頭を下げ捲って来た。相手から申し込んでくるなんて考えられなかっただけに異常なハリキリ具合だ。
しかし、クロードの予想の斜め上を行く答えがテオドールから発射された。
「ご息女の事を以前から慕っていたからです。殿下との関係が無くなった時にすぐにでもと思いましたが、あの事件が御座いましたので傷も癒える頃と思い、今日になった次第です」
「え?・・・えぇっと…事業絡みとかではナク・・・」
――おーい!お父様!声小さくなってるよー!――
「事業絡みではありません。私の個人的感情です。父も納得をしてくれました。ですよね!父上」
「フェッ?!あ、あぁ…そんな事もアッタヨウナ・・・」
――おーい!パパさん!貴方も声小さくなってるよー!――
「私はシャルロット嬢以外は考えられないのです。是非婚約、そして結婚の許可を頂きたい」
「・・・・」
――お父様!!固まってる場合じゃないでしょ!――
シャルロットの気合が通じたのかクロードは再起動したのだが、優位に立とうとかそんな考えは吹き飛んでしまった。予想を全くしていなかった返しに頭の中が真っ白になったのだろう。
てっきりボードリエ公爵家が主導で間もなく開始される隣国との農作物の共同栽培事業や、ピッタン湖とペッタン湖を結ぶ運河工事を絡めた件で婚約を申し込んできたとばかり思っていたのである。
そこに婚約を申し込んできたという事は融資も絡んでいるだろうから、これはオイシイ話?と思っていたのだ。
「えぇっと…再度確認なのですが事業絡みではなく・・・?」
「はい。私はシャルロット嬢を妻に迎えたい。それだけです」
「妻に‥‥はぁ…妻に・・・まぁ、取り敢えず娘を紹介致しましょう?」
――お父様!なんで疑問符なの!!――
クロードの不甲斐なさにガッカリもするが、シャルロットも「どういうこと?」と驚きはある。
――見初められるほど接点はなかったと思うんだけど――
シャルロットも薄い取ってつけた記憶の中でテオドールと顔を合わせたのは数えるほど。その多くは王太子とどこかに移動中にすれ違ったりしたもので、挨拶は数回交わしたが会話と言えるようなものはした記憶がない。
従者が呼びに控室にやって来たので、「変だな?」と思いつつシャルロットはサロンに入室した。
満面の笑みなのはテオドールのみ。
神妙な顔つきはアベルジェ公爵のクロードとテオドールの父であるボードリエ公爵。
――くわっ!!めっちゃイケメンじゃないの!――
シャルロットの取ってつけた記憶のテオドールはモザイクがあるわけではないがここまでのイケメンではなかった。
――二度見、三度見するって言ってたけど本当だわ――
入室したのはいいけれど、クロードはカチコチになって右手と右足が一緒に出るナンバ歩きになっている。シャルロットと目が合うと「どうしよう?」と訴えかけているよう。
「むっ娘のっ…シャルロットでッス」
ちらりとクロードを見るがテンパっているので何を言っても無駄だろう。
シャルロットはカーテシーを取り、ボードリエ公爵とテオドールに挨拶をした。
「紹介にあずかりました、シャルロットで御座います。本日はようこそ当家にお越しくださいました」
カーテシーを解き、テオドールと視線が合った。
テオドールは笑顔だが目は笑っていなかった。
――やっぱり。堂々と嘘を吐けるなんて上等じゃないの――
シャルロットはテオドールから視線を外すとクロードを誘ってボードリエ公爵たちの腰掛ける向かいのソファに腰を下ろした。
初見の2人ではない。
シャルロットとしては会っているけれど会っていないという微妙な立場。
テオドールも特に印象に残る事もない影の薄い令嬢でこれと言った情報もない。
テオドールは冷静沈着な上に冷酷な側近とも言われただけあって表情から何を考えているか判らないだろう。シャルロットとしては、ここで一発カマしておいて取引に於いては優位な立場に立ちたい・・・ところだがテオドールいやボードリエ公爵家が何故婚約を持ち込んできたのかを探りたいところ。
言い方はおかしいが、5カ月もシャルロットしていればこの世界の理くらいはおおよそ理解出来た。
――神様、臨機応変もバッチリよ!――
復習は今夜行うとして、予習はバッチリ。メイドに支度をしてもらっている時だが、頭の中で何度も繰り返しイメージもしたし「あぁいえばこう言う作戦」で先ずは相手の出方を見る。
最終的な目標は「こいつ、危ない」と危険認定をしてもらい婚約破棄をしてもらう事だ。
玄関に到着したと聞き、そっとサロンへの控室から聞き耳を立てて様子を伺う。
「ボードリエ公、そしてご子息。ようこそお越しくださいました」
「いや、こちらこそ突然の申し入れにも関わらずこうやって場を設けてくださり感謝いたします」
「立ち話もなんですから、さ、さ、こちらへ」
少し遅れてシャルロットは控室からサロンに移動をするのだ。
その合図は父のクロードが「娘を紹介しましょう」と言えば従者が控室に来る手筈だ。
「何故当家の娘を?こう言っては何ですが…娘は諸々の事情が御座いますが」
――お父様、ナイスですわ――
単に外出するのに「こんなに護衛が?!」と思い面倒になったので出掛けなかっただけだが、世間は勝手な憶測で噂を流してくれる。世間では傷物とも呼ばれているのだ。なのにわざわざ申し込んできたという事は、ボードリエ公爵家にも退引きならぬ事情があると見える。
貴族の婚約は同等ではない。少しでも優位に立ったほうが後々進めやすいのだ。
父親のクロードはこれまで公爵家でありながらもシャルロットの嫁ぎ先を探すのに頭を下げ捲って来た。相手から申し込んでくるなんて考えられなかっただけに異常なハリキリ具合だ。
しかし、クロードの予想の斜め上を行く答えがテオドールから発射された。
「ご息女の事を以前から慕っていたからです。殿下との関係が無くなった時にすぐにでもと思いましたが、あの事件が御座いましたので傷も癒える頃と思い、今日になった次第です」
「え?・・・えぇっと…事業絡みとかではナク・・・」
――おーい!お父様!声小さくなってるよー!――
「事業絡みではありません。私の個人的感情です。父も納得をしてくれました。ですよね!父上」
「フェッ?!あ、あぁ…そんな事もアッタヨウナ・・・」
――おーい!パパさん!貴方も声小さくなってるよー!――
「私はシャルロット嬢以外は考えられないのです。是非婚約、そして結婚の許可を頂きたい」
「・・・・」
――お父様!!固まってる場合じゃないでしょ!――
シャルロットの気合が通じたのかクロードは再起動したのだが、優位に立とうとかそんな考えは吹き飛んでしまった。予想を全くしていなかった返しに頭の中が真っ白になったのだろう。
てっきりボードリエ公爵家が主導で間もなく開始される隣国との農作物の共同栽培事業や、ピッタン湖とペッタン湖を結ぶ運河工事を絡めた件で婚約を申し込んできたとばかり思っていたのである。
そこに婚約を申し込んできたという事は融資も絡んでいるだろうから、これはオイシイ話?と思っていたのだ。
「えぇっと…再度確認なのですが事業絡みではなく・・・?」
「はい。私はシャルロット嬢を妻に迎えたい。それだけです」
「妻に‥‥はぁ…妻に・・・まぁ、取り敢えず娘を紹介致しましょう?」
――お父様!なんで疑問符なの!!――
クロードの不甲斐なさにガッカリもするが、シャルロットも「どういうこと?」と驚きはある。
――見初められるほど接点はなかったと思うんだけど――
シャルロットも薄い取ってつけた記憶の中でテオドールと顔を合わせたのは数えるほど。その多くは王太子とどこかに移動中にすれ違ったりしたもので、挨拶は数回交わしたが会話と言えるようなものはした記憶がない。
従者が呼びに控室にやって来たので、「変だな?」と思いつつシャルロットはサロンに入室した。
満面の笑みなのはテオドールのみ。
神妙な顔つきはアベルジェ公爵のクロードとテオドールの父であるボードリエ公爵。
――くわっ!!めっちゃイケメンじゃないの!――
シャルロットの取ってつけた記憶のテオドールはモザイクがあるわけではないがここまでのイケメンではなかった。
――二度見、三度見するって言ってたけど本当だわ――
入室したのはいいけれど、クロードはカチコチになって右手と右足が一緒に出るナンバ歩きになっている。シャルロットと目が合うと「どうしよう?」と訴えかけているよう。
「むっ娘のっ…シャルロットでッス」
ちらりとクロードを見るがテンパっているので何を言っても無駄だろう。
シャルロットはカーテシーを取り、ボードリエ公爵とテオドールに挨拶をした。
「紹介にあずかりました、シャルロットで御座います。本日はようこそ当家にお越しくださいました」
カーテシーを解き、テオドールと視線が合った。
テオドールは笑顔だが目は笑っていなかった。
――やっぱり。堂々と嘘を吐けるなんて上等じゃないの――
シャルロットはテオドールから視線を外すとクロードを誘ってボードリエ公爵たちの腰掛ける向かいのソファに腰を下ろした。
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