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VOL:12 ミリア喜んでサインする
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「やったぁ!!ねぇっ。アタシって凄ぉぉい!侯爵夫人だなんてぇ!」
その場にいる者全てが、「は?」っとなる。
書記官ですらミリアの言葉に速記をするペンを止めた。
父がミリアに「婿養子だから侯爵夫人じゃなくペル伯爵夫人だ」と諭す前にモネス伯爵夫人はミリアにサインを求めた。
ミリアはもう15歳になった。仮成人なので婚姻は親の承諾があれば婚姻は可能だ。
「わぁ!これが婚姻届なのね。あっ!レオン様のサインがあるっ。きゃっ♡」
「待て、ミリア、これは最後に。な?」
「もう!五月蠅いなぁ。お父様は黙ってて。ここは今のペルでいいんですかぁ?」
「そうよ。届けを出したら片方の姓が変わるから」
きゃっきゃと1人燥ぎながらサインを済ませたミリア。
まだ両親の記入欄が残るのだが、モネス伯爵夫人はそこで一旦ミリアのサインした婚姻届けを手元に下げた。
「ミリア…どういう事なんだ?俺たちは婚約――」
キール様がミリアに向かい涙目になりながら問いかけたが、もうミリアにとって「昔の男」となった。ミリアがそんな男に対しての態度など推して知るべし。
「もう人妻なんでぇ。気安く名前を呼ばないでくださるぅ?」
「人妻って!!」
「見てなかったんですかぁ?あぁいつもアタシの胸ばっかり見てたしねー」
「ばっ!バカにするなっ!」
「バカになんかしてませんよ?バカだなぁって思ってたけど、アタシは空気読んでそんな事言わなかったでしょ?思った事を何でも言葉にしちゃうとぉ…えへっ♡周りに嫌われちゃいますよぉ?」
暢気なミリアの両隣に座っている両親の顔色は青くなっている。
なんなら母は痙攣を起こす寸前だろうか。手がガタガタと震えている。
モネス伯爵夫人の顔は「狩り」を愉しむ顔になっている。
「異論無く署名を頂けましたので、もうお判りですわよね?ペル伯爵」
「え…えぇ…」
「はぃ…」
「良かったわ。わたくしもね?まさか、まさかとは思ったけれど限られた時間で調べて良かったわ。最初はキールと言う婚約者がいるのに他家の子息と口に出すのもどうかと思うような時間宿でいろいろとなんてねぇ。でもね?よ~く考えてみましたの。婚約が有責で破棄。これは当家も経験がありますが家と家の関係に限りお金で済むんですから安いものですわよね。愛はお金では買えませんもの。オホホ」
「待ってください。こんな話は今日、この場で初めて聞いたんですっ」
「だから?当家も同じでしたわよ?1度しかない経験なので参考になるかは判りませんが、来てくれと言うので行ってみればこの愚息とご息女が全裸で。あれは膣痙攣というのかしら?抜けなくて困ってましたものね。禁忌を破ってでも叶えたかった愛だと慰謝料、お支払いしましたわよね?」
モネス伯爵家から慰謝料を貰ったのはわたくしだけではない。
関係が発覚し直ぐだったため、モネス伯爵家は懐妊の可能性も考えて「妊婦かもしれない」ミリアに対して穏かに過ごせるよう半年ほど生活費を出していた。
妊娠はしていなかったが、その金は使ってしまい返せるはずが無い。
「い、慰謝料はお支払い致します。ですが直ぐとなると現金が用意出来なくて」
「現金?あぁ大丈夫ですわ。相当額として領地を頂ければ。屋敷まで頂こうと言う訳ではありません。年に1回視察に行くかどうかの遠い領地でご両親に対してこちらは溜飲を下げますわ。お互いこれで無関係。スッキリ致しますでしょう?」
チラリと父がわたくしの方を見た。わたくしは薄い微笑だけを返した。
そこに思わぬ援護射撃。ミリアだ。
「お父様、あんな海しかない田舎の領地だもん。管理するのも大変でしょうぉ?欲しいって言うならあげちゃえば?海って風とかベトベトするしなんか匂うからアタシ好きじゃないしぃ、新婚旅行でレオン様と行きたいところは他にあるしぃ、アタシたちに引継ぎされても面倒なのよねぇ」
ミリアが声を出すとキール様がギッと睨むのだが見ないふりをしよう。
「わ、判りました。領地で済むのなら…慰謝料として差し出します」
「あら?慰謝料よ?現金の代わりにだからこちらも現金化して考えて頂きたいの。売買ですわよ」
「あ、そうですね」
父の言葉にモネス伯爵夫人は用意をしていたようで、土地の売買についての書面を差し出した。
「売買に関わる書面ですわ。お読みになったらサインを」
「は、はい」
執務をきちんとやっていれば父も気が付いただろう。
譲渡に際して登記変更なども必要になる。つまり手数料がかかる。
それだけではない「差し出すのだ」と「譲渡」で譲らなければ土地を売る「売買」ではないので「売り上げ」は発生しない。
愚鈍な父はそこに気が付かず、書面には金額が評価額で書かれていても実質金の動かない売買。
その評価額に対しての税金をペル伯爵家が払えるかどうか。手数料も全て負担すると書面には書かれているのに父が見ているのは自身がサインをする場所のみ。
全ての書面に記載を終えるとペンを置いた父は「これで抜かりはないなっ…と」長い息を吐きながら、力なく背凭れに背を預けた。
その場にいる者全てが、「は?」っとなる。
書記官ですらミリアの言葉に速記をするペンを止めた。
父がミリアに「婿養子だから侯爵夫人じゃなくペル伯爵夫人だ」と諭す前にモネス伯爵夫人はミリアにサインを求めた。
ミリアはもう15歳になった。仮成人なので婚姻は親の承諾があれば婚姻は可能だ。
「わぁ!これが婚姻届なのね。あっ!レオン様のサインがあるっ。きゃっ♡」
「待て、ミリア、これは最後に。な?」
「もう!五月蠅いなぁ。お父様は黙ってて。ここは今のペルでいいんですかぁ?」
「そうよ。届けを出したら片方の姓が変わるから」
きゃっきゃと1人燥ぎながらサインを済ませたミリア。
まだ両親の記入欄が残るのだが、モネス伯爵夫人はそこで一旦ミリアのサインした婚姻届けを手元に下げた。
「ミリア…どういう事なんだ?俺たちは婚約――」
キール様がミリアに向かい涙目になりながら問いかけたが、もうミリアにとって「昔の男」となった。ミリアがそんな男に対しての態度など推して知るべし。
「もう人妻なんでぇ。気安く名前を呼ばないでくださるぅ?」
「人妻って!!」
「見てなかったんですかぁ?あぁいつもアタシの胸ばっかり見てたしねー」
「ばっ!バカにするなっ!」
「バカになんかしてませんよ?バカだなぁって思ってたけど、アタシは空気読んでそんな事言わなかったでしょ?思った事を何でも言葉にしちゃうとぉ…えへっ♡周りに嫌われちゃいますよぉ?」
暢気なミリアの両隣に座っている両親の顔色は青くなっている。
なんなら母は痙攣を起こす寸前だろうか。手がガタガタと震えている。
モネス伯爵夫人の顔は「狩り」を愉しむ顔になっている。
「異論無く署名を頂けましたので、もうお判りですわよね?ペル伯爵」
「え…えぇ…」
「はぃ…」
「良かったわ。わたくしもね?まさか、まさかとは思ったけれど限られた時間で調べて良かったわ。最初はキールと言う婚約者がいるのに他家の子息と口に出すのもどうかと思うような時間宿でいろいろとなんてねぇ。でもね?よ~く考えてみましたの。婚約が有責で破棄。これは当家も経験がありますが家と家の関係に限りお金で済むんですから安いものですわよね。愛はお金では買えませんもの。オホホ」
「待ってください。こんな話は今日、この場で初めて聞いたんですっ」
「だから?当家も同じでしたわよ?1度しかない経験なので参考になるかは判りませんが、来てくれと言うので行ってみればこの愚息とご息女が全裸で。あれは膣痙攣というのかしら?抜けなくて困ってましたものね。禁忌を破ってでも叶えたかった愛だと慰謝料、お支払いしましたわよね?」
モネス伯爵家から慰謝料を貰ったのはわたくしだけではない。
関係が発覚し直ぐだったため、モネス伯爵家は懐妊の可能性も考えて「妊婦かもしれない」ミリアに対して穏かに過ごせるよう半年ほど生活費を出していた。
妊娠はしていなかったが、その金は使ってしまい返せるはずが無い。
「い、慰謝料はお支払い致します。ですが直ぐとなると現金が用意出来なくて」
「現金?あぁ大丈夫ですわ。相当額として領地を頂ければ。屋敷まで頂こうと言う訳ではありません。年に1回視察に行くかどうかの遠い領地でご両親に対してこちらは溜飲を下げますわ。お互いこれで無関係。スッキリ致しますでしょう?」
チラリと父がわたくしの方を見た。わたくしは薄い微笑だけを返した。
そこに思わぬ援護射撃。ミリアだ。
「お父様、あんな海しかない田舎の領地だもん。管理するのも大変でしょうぉ?欲しいって言うならあげちゃえば?海って風とかベトベトするしなんか匂うからアタシ好きじゃないしぃ、新婚旅行でレオン様と行きたいところは他にあるしぃ、アタシたちに引継ぎされても面倒なのよねぇ」
ミリアが声を出すとキール様がギッと睨むのだが見ないふりをしよう。
「わ、判りました。領地で済むのなら…慰謝料として差し出します」
「あら?慰謝料よ?現金の代わりにだからこちらも現金化して考えて頂きたいの。売買ですわよ」
「あ、そうですね」
父の言葉にモネス伯爵夫人は用意をしていたようで、土地の売買についての書面を差し出した。
「売買に関わる書面ですわ。お読みになったらサインを」
「は、はい」
執務をきちんとやっていれば父も気が付いただろう。
譲渡に際して登記変更なども必要になる。つまり手数料がかかる。
それだけではない「差し出すのだ」と「譲渡」で譲らなければ土地を売る「売買」ではないので「売り上げ」は発生しない。
愚鈍な父はそこに気が付かず、書面には金額が評価額で書かれていても実質金の動かない売買。
その評価額に対しての税金をペル伯爵家が払えるかどうか。手数料も全て負担すると書面には書かれているのに父が見ているのは自身がサインをする場所のみ。
全ての書面に記載を終えるとペンを置いた父は「これで抜かりはないなっ…と」長い息を吐きながら、力なく背凭れに背を預けた。
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