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第15話 言いたいことはなんですか
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会いたくないのに会わねばならないとなるとこんなに足が重いものだと1歩前に出る事を体が全力拒否する抵抗を感じつつアリスティアは応接室に向かった。
念のために私兵を3人付けて、ソファの左右と後ろに配置。
扉も開放状態で使用人も5人。ここまですれば「歓迎はされてない」という事が解るだろうと思い挑んだ。
のだが、応接室に入り目を疑った。
ふんぞり返り、テーブルの上で脚を組んでいる。
――これが王子様かいっ!――
手に辞書でも持っていれば背表紙の隅っこを向う脛に落としてやるのに!!
イラっとするアリスティアにふんぞり返ったままエルドールはぼやいた。
「待ちかねたぞ。フェルマン伯爵家は王族に対しこんな扱いをするのか。茶の1つも出ていないなんてな」
――飲みたきゃ路地裏のドブに溜まってる水で喉を潤してくればいいのに――
面倒だなと思いつつもそんなに飲みたければ…
アリスティアはポケットをごそごそと探った。
――あった!――
「失礼を致しましたわ。こちらでなんでもご自由にお飲みください」
エルドールはてっきり金を渡してくるのかと思えば…。
「なんだこれは?!」
「葦です。内部は空洞になっていますのでストローとしてお使い頂けますわ。注意点はアルコールの類はストローで飲むと酔いの回りが早いのでほどほどに」
ポケットの中にあったのでちょっと折れ目があるのはご愛敬だ。
こちとら商売道具を渡しているのだ。満足しやがれ!アリスティアは不敵に笑った。
「ではご用件は終わりましたわね」
「何を言ってる!」
「あら?喉が渇いたので立ち寄られたのでは?」
「違う!お前に言いたいことがあったんだ」
――面倒くさいわね。さっさと言ってお帰りあそばせ――
何を言いたいことがあるのかは知らないが、早く帰ってもらうには言ってもらうしかない。
「どうぞ、なんでしょう」
「えっと…その手の傷、どうしたんだ?」
――え?想定の範囲外!文句じゃなくて気遣い?何処で覚えてきたの?――
不意を突かれたアリスティアはちょっと焦ってしまった。
婚約をして結構な月日、いや年数になるけれど気遣われたなんて何年振り?
つい指を折って年数を数えたくなるが我慢我慢。
「お心遣いは不要です。言いたいことはそれだけですか?お心遣い痛み入ります。傷の内に入りませんのでご心配なく。お帰りはあちらです」
「違うと言ってるだろう?」
――あぁん?何が?ならさっさと言いなさいよ――
こんな男でもまだ婚約者。婚約破棄は成立間近でもまだ成立はしていない。迂闊な一言で揚げ足を取られては敵わないのでやり過ごすに限る。
ダラダラとくだらない時間を過ごすよりそろそろ傷口の薬を洗いがなして状態を確かめたいのに。
イライラとする気持ちは表情に出てしまったのだろうか。
「そんなに苛つくな」
――貴方が言う?!――
「父上が妙な事を企んでいる。私とエミリアが結婚するなどとありもしない噂に惑わされないようにな。妃となるのはアリスティア、お前だ」
全力で否定をしたいが、令嬢と言う立場は非常に面倒くさい。
正式に破棄が成立をしていないのでここで否定をすると「知っていたのか」となって余計に面倒なことになる。
かと言って「そんな噂が。困りましたわね。オホホ」なんて流してしまえばエルドールの事だ。自分に惚れているとか、婚約者の立場に固執しているとか、これまた面倒くさい解釈をし兼ねない。
「エミリア様?あぁいつぞやの。そうで御座いましたか。陛下の御考えについて私がとやかく申し上げる事は御座いません。その件をお伝えに?それはご足労をお掛けいたしましたわね。お帰りはあちらです」
「どうあっても私を帰したいみたいだな!」
――YES!――
「だが、言いたいことはまだある!」
――嘘やぁん。まだあるの?――
「最近登城してないそうだな」
「登城する用事がありません」
「お前に頼んだ執務も全くしていないそうじゃないか」
「殿下の執務で御座いましたら陛下に都度委託するための許可を取ってくださいますよう。婚約者に過ぎない私が代行するのは聊か問題も御座います。登城に関しても先ずは父に御一報を。こう見えても伯爵家の娘ですから父の許可なく何処周り出かけるのも不用心ですので」
「そんなの今まで無かっただろうが!」
「はい。ですから次からは陛下に都度委託するための許可を取ってくださいますよう。執務も登城も父を経由するのであれば検討いたします」
「なっ!!検討って。お前は婚約者なんだぞ?」
「そうですね。なら言わせて頂きますが殿下は婚約者の私に何をしてくださいますの?」
突然質問を振られたエルドールは狼狽し答えられなかった。
「もういい。帰る」
「左様で御座いますか。お帰りは再再度の再度になりますが、あちらで御座います。お見送りは出来ませんがお気をつけて」
「見送りもしないと言うのか!」
「先触れもないのにこうやって時間を割いているのです。十分だと考えます」
ガッと立ち上がったエルドールだったが、同時にアリスティアを守るように3人の兵士も動く。
「お前、いい加減にしとけよ」
エルドールは舌打ちを残し、部屋を出て行った。
アリスティアが父のフェルマン伯爵から今後のエルドールの行く末を聞いた時、可哀想かもと思った自分を「ぺちっ」と叩いてやりたい心境になったのは言うまでもない。
念のために私兵を3人付けて、ソファの左右と後ろに配置。
扉も開放状態で使用人も5人。ここまですれば「歓迎はされてない」という事が解るだろうと思い挑んだ。
のだが、応接室に入り目を疑った。
ふんぞり返り、テーブルの上で脚を組んでいる。
――これが王子様かいっ!――
手に辞書でも持っていれば背表紙の隅っこを向う脛に落としてやるのに!!
イラっとするアリスティアにふんぞり返ったままエルドールはぼやいた。
「待ちかねたぞ。フェルマン伯爵家は王族に対しこんな扱いをするのか。茶の1つも出ていないなんてな」
――飲みたきゃ路地裏のドブに溜まってる水で喉を潤してくればいいのに――
面倒だなと思いつつもそんなに飲みたければ…
アリスティアはポケットをごそごそと探った。
――あった!――
「失礼を致しましたわ。こちらでなんでもご自由にお飲みください」
エルドールはてっきり金を渡してくるのかと思えば…。
「なんだこれは?!」
「葦です。内部は空洞になっていますのでストローとしてお使い頂けますわ。注意点はアルコールの類はストローで飲むと酔いの回りが早いのでほどほどに」
ポケットの中にあったのでちょっと折れ目があるのはご愛敬だ。
こちとら商売道具を渡しているのだ。満足しやがれ!アリスティアは不敵に笑った。
「ではご用件は終わりましたわね」
「何を言ってる!」
「あら?喉が渇いたので立ち寄られたのでは?」
「違う!お前に言いたいことがあったんだ」
――面倒くさいわね。さっさと言ってお帰りあそばせ――
何を言いたいことがあるのかは知らないが、早く帰ってもらうには言ってもらうしかない。
「どうぞ、なんでしょう」
「えっと…その手の傷、どうしたんだ?」
――え?想定の範囲外!文句じゃなくて気遣い?何処で覚えてきたの?――
不意を突かれたアリスティアはちょっと焦ってしまった。
婚約をして結構な月日、いや年数になるけれど気遣われたなんて何年振り?
つい指を折って年数を数えたくなるが我慢我慢。
「お心遣いは不要です。言いたいことはそれだけですか?お心遣い痛み入ります。傷の内に入りませんのでご心配なく。お帰りはあちらです」
「違うと言ってるだろう?」
――あぁん?何が?ならさっさと言いなさいよ――
こんな男でもまだ婚約者。婚約破棄は成立間近でもまだ成立はしていない。迂闊な一言で揚げ足を取られては敵わないのでやり過ごすに限る。
ダラダラとくだらない時間を過ごすよりそろそろ傷口の薬を洗いがなして状態を確かめたいのに。
イライラとする気持ちは表情に出てしまったのだろうか。
「そんなに苛つくな」
――貴方が言う?!――
「父上が妙な事を企んでいる。私とエミリアが結婚するなどとありもしない噂に惑わされないようにな。妃となるのはアリスティア、お前だ」
全力で否定をしたいが、令嬢と言う立場は非常に面倒くさい。
正式に破棄が成立をしていないのでここで否定をすると「知っていたのか」となって余計に面倒なことになる。
かと言って「そんな噂が。困りましたわね。オホホ」なんて流してしまえばエルドールの事だ。自分に惚れているとか、婚約者の立場に固執しているとか、これまた面倒くさい解釈をし兼ねない。
「エミリア様?あぁいつぞやの。そうで御座いましたか。陛下の御考えについて私がとやかく申し上げる事は御座いません。その件をお伝えに?それはご足労をお掛けいたしましたわね。お帰りはあちらです」
「どうあっても私を帰したいみたいだな!」
――YES!――
「だが、言いたいことはまだある!」
――嘘やぁん。まだあるの?――
「最近登城してないそうだな」
「登城する用事がありません」
「お前に頼んだ執務も全くしていないそうじゃないか」
「殿下の執務で御座いましたら陛下に都度委託するための許可を取ってくださいますよう。婚約者に過ぎない私が代行するのは聊か問題も御座います。登城に関しても先ずは父に御一報を。こう見えても伯爵家の娘ですから父の許可なく何処周り出かけるのも不用心ですので」
「そんなの今まで無かっただろうが!」
「はい。ですから次からは陛下に都度委託するための許可を取ってくださいますよう。執務も登城も父を経由するのであれば検討いたします」
「なっ!!検討って。お前は婚約者なんだぞ?」
「そうですね。なら言わせて頂きますが殿下は婚約者の私に何をしてくださいますの?」
突然質問を振られたエルドールは狼狽し答えられなかった。
「もういい。帰る」
「左様で御座いますか。お帰りは再再度の再度になりますが、あちらで御座います。お見送りは出来ませんがお気をつけて」
「見送りもしないと言うのか!」
「先触れもないのにこうやって時間を割いているのです。十分だと考えます」
ガッと立ち上がったエルドールだったが、同時にアリスティアを守るように3人の兵士も動く。
「お前、いい加減にしとけよ」
エルドールは舌打ちを残し、部屋を出て行った。
アリスティアが父のフェルマン伯爵から今後のエルドールの行く末を聞いた時、可哀想かもと思った自分を「ぺちっ」と叩いてやりたい心境になったのは言うまでもない。
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