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第23話 洗濯のお悩み解決になるか?
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ジョニスが数枚の絵を差し出しながら話に割り込んできた。
「この絵は?」
「これは先代シャウテン子爵殿が取り入れようとしたんですけども、地形的に無理だったので見送った案です。私なりに調べてみましたら、王都の貧民窟は川の水面よりも地盤が低いのでぬかるんでいるとの事なので」
確かに王都の貧民窟は川から少し離れてはいるものの少し掘れこんだ部分にある。
その為、雨が降るとなかなか水がはけない上に、堤防が決壊すればあっという間に水に飲まれてしまう。
「これは海の向こうにある北の国で利用されている ”バルトリ” というんです。川で人間が洗濯をしなくても洗濯物を放り込むだけで勝手に洗濯をしてくれる便利な機能なんですよ」
絵に描かれているのは水を引き込む導水路の出口にあるのは人間も数人入れそうな大きな桶。桶の中心ではなく端に水を流す事で桶の中には渦が巻く。溢れ出た水はすぐ下の桶にまた中心ではなく端に流れ込むので階段状にする事でかなりの数の洗濯物が放り込むだけで終わる。
「これは便利そうですわね」
「問題は最後だな。川の水面よりも低い位置だから流れ出る先が無い」
「そうなんです。副王都は川よりも高い位置にあるので先ず水車で水を汲み上げる事を考えたようですが利用者の数が多く追いつかないのでボツになったんです」
「水車で汲み上げる??じゃぁ最後も汲み上げればいいんじゃないかしら。水車が回る動きに合わせて臼も挽けるようにすれば洗濯と粉挽きの労力が不要になるわ。経路はL型に設置すれば川に水が戻って行くんじゃない?」
利用を貧民窟の人間に限れば人数も知れている。最終地には元々地面にも流れ込んだり沁みだしてくる水も集水するようにすればいいだけだ。
「洗濯って本当に時間がかかるのよ。でも洗濯物を放り込んでムクロジや木灰を放り込むだけで綺麗になるならその時間は…」
<< 勉強に充てられる! >>
「問題は業者だな。低い位置に土地があると言っても掘ったりも必要だろう」
「それなら友人に頼んでみるわ。造成商会を営んでいるの。ちゃんと料金も払うし…あの貧民窟をどうにかしなきゃと思って手紙も書いたのよ」
「手紙を?返事は貰ったのか?」
「えぇ。全部無償で‥とは出来ないけれどなるべく勉強価格にしてくれるって。持つべきものは友達だわ」
単純にはいかないかも知れないが、ヴェッセルとコルネリアはジョニスから差し出された絵を何度も紙を重ね合わせて複写した。王都に持ち帰り早速設置を検討しなければならない。
「副王都に来て良かったわ」
「そうだな。だけど…」
「だけど?何?」
「あの日、財布を拾って伯爵を追いかけて良かったよ」
「そうよね~お父様ってそういうドジな所があるのよ」
今一つ伝わっていない。ヴェッセルは「聞いてくれる?お父様はね」と父の愚痴を言い始めるコルネリアを見て優しく目を細めた。
王都に戻ったら早いところ結婚の日取りを決めないと、下手すれば高位貴族の子息に目をつけられてしまいそうな気がしたのだった。
「この絵は?」
「これは先代シャウテン子爵殿が取り入れようとしたんですけども、地形的に無理だったので見送った案です。私なりに調べてみましたら、王都の貧民窟は川の水面よりも地盤が低いのでぬかるんでいるとの事なので」
確かに王都の貧民窟は川から少し離れてはいるものの少し掘れこんだ部分にある。
その為、雨が降るとなかなか水がはけない上に、堤防が決壊すればあっという間に水に飲まれてしまう。
「これは海の向こうにある北の国で利用されている ”バルトリ” というんです。川で人間が洗濯をしなくても洗濯物を放り込むだけで勝手に洗濯をしてくれる便利な機能なんですよ」
絵に描かれているのは水を引き込む導水路の出口にあるのは人間も数人入れそうな大きな桶。桶の中心ではなく端に水を流す事で桶の中には渦が巻く。溢れ出た水はすぐ下の桶にまた中心ではなく端に流れ込むので階段状にする事でかなりの数の洗濯物が放り込むだけで終わる。
「これは便利そうですわね」
「問題は最後だな。川の水面よりも低い位置だから流れ出る先が無い」
「そうなんです。副王都は川よりも高い位置にあるので先ず水車で水を汲み上げる事を考えたようですが利用者の数が多く追いつかないのでボツになったんです」
「水車で汲み上げる??じゃぁ最後も汲み上げればいいんじゃないかしら。水車が回る動きに合わせて臼も挽けるようにすれば洗濯と粉挽きの労力が不要になるわ。経路はL型に設置すれば川に水が戻って行くんじゃない?」
利用を貧民窟の人間に限れば人数も知れている。最終地には元々地面にも流れ込んだり沁みだしてくる水も集水するようにすればいいだけだ。
「洗濯って本当に時間がかかるのよ。でも洗濯物を放り込んでムクロジや木灰を放り込むだけで綺麗になるならその時間は…」
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「問題は業者だな。低い位置に土地があると言っても掘ったりも必要だろう」
「それなら友人に頼んでみるわ。造成商会を営んでいるの。ちゃんと料金も払うし…あの貧民窟をどうにかしなきゃと思って手紙も書いたのよ」
「手紙を?返事は貰ったのか?」
「えぇ。全部無償で‥とは出来ないけれどなるべく勉強価格にしてくれるって。持つべきものは友達だわ」
単純にはいかないかも知れないが、ヴェッセルとコルネリアはジョニスから差し出された絵を何度も紙を重ね合わせて複写した。王都に持ち帰り早速設置を検討しなければならない。
「副王都に来て良かったわ」
「そうだな。だけど…」
「だけど?何?」
「あの日、財布を拾って伯爵を追いかけて良かったよ」
「そうよね~お父様ってそういうドジな所があるのよ」
今一つ伝わっていない。ヴェッセルは「聞いてくれる?お父様はね」と父の愚痴を言い始めるコルネリアを見て優しく目を細めた。
王都に戻ったら早いところ結婚の日取りを決めないと、下手すれば高位貴族の子息に目をつけられてしまいそうな気がしたのだった。
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