婚約も二度目なら

cyaru

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第22話  介護のお悩み解決になるか?

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ジャニスは身分制度が形骸化したことで起きる弊害を語った。

「犯罪の偏りが出るんですよ」
「偏り?」

身分で明確に差があった頃は同じ階級同士での喧嘩などが多かったが、豊かになってくると詐欺の割合が増えたと言った。

「これまでは騙したところで幾らもしぼり取れないので平民や貧民窟の者達は相手にされていなかったんですけども、賃金も同じとなれば詐欺師も出てくるんです。あとは酒や博打の依存症でしょうか。それまで出来なかった嗜好が出来るようになると嵌ってしまう者が一定数います。そして基礎学力をつける際に流れについて行けない者は学び舎に来なくなり、悪い仲間と付き合うようになるんです」

副王都の目下の悩みは犯罪の低年齢化。

ヴェッセルの元に保護されている女の子も周囲の学力について行けず、遊んでいるうちに妊娠。そして相手に逃げられた。


「いい事もあるけど悪い事もある。当然と言えば当然よね」
「皮肉なものだな。身分を気にせず実力の社会になれば食い物にする奴も増えるなんてな」
「性善説だけでは世界は成り立たないって事よね」

ヴェッセルとコルネリアはジョニスに頼んで副王都の職種に従事する人間の数の推移が解る資料を頼み、自分たちが事業をするにはどうすればよいかを話し合った。

「先ずは選民思想。これは一朝一夕ではどうにもならないわね」
「そうだな。副王都に大鉈を振るった時のようにはいかないだろう」
「だけど悔しいわ。レース編みも刺繍もだけど王都で生活する者の根幹をなしているのに」
「こればっかりはなぁ。国がどれだけ動いてくれるかになるしな」

コルネリアは持参してきたカバンから書類を取り出した。
ジェッタ伯爵家が所有する領地で受け入れ可能な労働力の数が職種ごとに分けてあった。

「凄いな。作って来たのか?」
「そりゃそうでしょ。副王都まで来て手ぶらでは帰れないもの」

副王都でも昨今の悩みは介護職の人数が圧倒的に足らない事だった。人間は嫌でも年に1歳年を取る。老いは誰にでも訪れる。副王都の場合は身分制度が無いようなものなので、体力的にも精神的にも疲弊しやすい介護職は就業率が悪かった。

「思うんだけど、今は専属で雇い入れて全てを負担させているでしょう?分けたらどうかと思うの」

「分けるとはどうやって?」

「高齢の方のお世話をした事があるんだけど、何でもやってしまうとどんどん衰えていくと言うか…本当に体が動かなくなっちゃうの。だから椅子に座って自分で食べられるとか指先がまだ動くとか、加齢による体力っていうのかな。衰えなんかを遅らせるよう自分でやらせるの。排泄なんかも最後まで恥ずかしいって…思ってる人は多いんじゃないかと思うのね。本当に動けなくなれば仕方ないんだけど」

ハーベ伯爵家で先代夫人の面倒を看ていたが、介護など初めてて全てが手探り。調べていると家族が面倒がって専属の使用人を雇い入れているが、介護される側にも要望があった。

「話し相手になってくれるだけでいい」
「食事だけ作って欲しい」
「湯殿を利用するのだけは手伝ってほしい」

贅沢だ!と一蹴されそうだが、自分で動けるうちは動く事で何もかもお任せ!っとなる時期は遅らせる事が出来るように感じたのだ。


「状態によって受けられるサービスというかケアを変えるって事か。だとするとより専門的に学ぶ必要があるな。だけど面白いよ。必要な分だけとなれば料金だって安く済むんじゃないかな」

「だからね、そこは副王都を見習って夜とか朝の1時間。学習をする時間を決めてみたらどうかしら。文字が読めない、書けないって諦めてる人も多いと思うわ。だから今の仕事をするしかない。その仕事がダメって訳じゃないのよ?でも可能なら副王都のように付きたい職にチャレンジする機会がある!ってなれば意欲も変わると思うのよ」

「むぅ…時間を取りやすいと言うか融通が効きやすいのは…内職をしている者達だな」

「そうね。読み書きが出来るようになるだけで作業効率も上がるはず。今は絵や口頭だけで判断してるから、再確認で手間になったり行き違いもあるでしょう?より要望も受け入れやすくなるし…最終的には ”この人じゃないとだめ” と思えるくらいになれば貧民窟の出自だからとその事が足を引っ張る事も少なくなると思うの」


「割入ってしまって申し訳ないんですが…」ジョニスが数枚の絵を差し出しながら話に割り込んできた。
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