35 / 42
閑話♡煩悩
しおりを挟む
「最近、笑うようになったわね」
「そうで御座いますね。2人で何か秘密があるようですよ」
「まぁ♡恋する2人の秘密ね。知りたいけど…あぁ~疼くわぁ♡」
「お嬢様はまだですよ。蕾にもなってないかも知れません」
「あら?では栄養剤を…」
「ダメですよ、奥様。こういうのはゆっくり、じっくりと温めるのが良いんです」
今日も日課の散歩に行くカーメリアとアルマンをサロンで見送る夫人。
お邪魔虫になりたくはないけれど、進行状況が気になるお年頃である。
「明日はこちらの小道に行ってみましょうか」
「何があるのかしら」
「スイレンがそろそろだと聞いております」
「スイレンね…そう言えばこの頃はお花はくださらないのね」
「欲しいですか?うーん…私は意地悪なので一緒に咲いている花が見たいなーなんて思いますので」
「そうね。一緒に見れば沢山見られるものね。今日はもうちょっと見ていたいわ」
――うっ。一緒にいる時間が長くなるのが嬉しい…とは言えないっ――
歩く練習も順調でまだ介助は必要だが10歩まではもうすぐである。
アルマンとしては車椅子まで戻る距離が長くなるのが嬉しい限りである。
しかし、時として神様は悪戯を仕掛けるのだ。
「アルマンは好きな女性はいないの?」
――貴女ですっ!――
「えぇっと…そうですね…」
「アルマンはカッコいいし背も高いから人気者ね」
「そんな事はないですよ。女性にはモテませんから」
「そうかしら。メイドさんもアルマンは良い人ですねって言ってたんだけど」
――あのメイドか!見えない所で煽るなっ!!――
「そうですかね。良い人…まぁ誉め言葉として受け取っておきます」
カラカラと軽快な車輪の音が聞こえる小道。
途中に咲く花に立ち止まって、カーメリアは花に手を伸ばし花びらに触れる。
「もっと歩けるようになったら…」
「どこか行きたいところがありますか?お連れしますよ」
「んんん…無理かしら」
「そんなに遠いんですか?」
「いいえ、距離じゃないの。歩けるようになるって事は筋力もついてるでしょう?」
「そうですね。と、言う事は走れるような場所ですか?」
「違うの。木に登りたいの」
「木っ!木登りですか?」
「そう。ずっとずっと前は登れたの。だから…アルマンに手伝ってもらうのは流石に無理よね」
想像をしてしまった。踏み台になるのは構わないが絶対に地面から目線を外してはならない。
枝に座っているカーメリアを見上げる事も厳禁である。
脚なんかプラプラさせてた時は、悶絶することしかできない自信がある。
やはり神様は意地悪なのだ。
「で、ですが流石にワンピースというのは…まずいかな」
「え?木登りの時はボトムスに決まってるでしょ?」
アルマンは煩悩だらけの自分に東の国の座禅を取り入れて心を清めようと思った。
「そうで御座いますね。2人で何か秘密があるようですよ」
「まぁ♡恋する2人の秘密ね。知りたいけど…あぁ~疼くわぁ♡」
「お嬢様はまだですよ。蕾にもなってないかも知れません」
「あら?では栄養剤を…」
「ダメですよ、奥様。こういうのはゆっくり、じっくりと温めるのが良いんです」
今日も日課の散歩に行くカーメリアとアルマンをサロンで見送る夫人。
お邪魔虫になりたくはないけれど、進行状況が気になるお年頃である。
「明日はこちらの小道に行ってみましょうか」
「何があるのかしら」
「スイレンがそろそろだと聞いております」
「スイレンね…そう言えばこの頃はお花はくださらないのね」
「欲しいですか?うーん…私は意地悪なので一緒に咲いている花が見たいなーなんて思いますので」
「そうね。一緒に見れば沢山見られるものね。今日はもうちょっと見ていたいわ」
――うっ。一緒にいる時間が長くなるのが嬉しい…とは言えないっ――
歩く練習も順調でまだ介助は必要だが10歩まではもうすぐである。
アルマンとしては車椅子まで戻る距離が長くなるのが嬉しい限りである。
しかし、時として神様は悪戯を仕掛けるのだ。
「アルマンは好きな女性はいないの?」
――貴女ですっ!――
「えぇっと…そうですね…」
「アルマンはカッコいいし背も高いから人気者ね」
「そんな事はないですよ。女性にはモテませんから」
「そうかしら。メイドさんもアルマンは良い人ですねって言ってたんだけど」
――あのメイドか!見えない所で煽るなっ!!――
「そうですかね。良い人…まぁ誉め言葉として受け取っておきます」
カラカラと軽快な車輪の音が聞こえる小道。
途中に咲く花に立ち止まって、カーメリアは花に手を伸ばし花びらに触れる。
「もっと歩けるようになったら…」
「どこか行きたいところがありますか?お連れしますよ」
「んんん…無理かしら」
「そんなに遠いんですか?」
「いいえ、距離じゃないの。歩けるようになるって事は筋力もついてるでしょう?」
「そうですね。と、言う事は走れるような場所ですか?」
「違うの。木に登りたいの」
「木っ!木登りですか?」
「そう。ずっとずっと前は登れたの。だから…アルマンに手伝ってもらうのは流石に無理よね」
想像をしてしまった。踏み台になるのは構わないが絶対に地面から目線を外してはならない。
枝に座っているカーメリアを見上げる事も厳禁である。
脚なんかプラプラさせてた時は、悶絶することしかできない自信がある。
やはり神様は意地悪なのだ。
「で、ですが流石にワンピースというのは…まずいかな」
「え?木登りの時はボトムスに決まってるでしょ?」
アルマンは煩悩だらけの自分に東の国の座禅を取り入れて心を清めようと思った。
278
お気に入りに追加
6,761
あなたにおすすめの小説
あなたへの想いを終わりにします
四折 柊
恋愛
シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)
優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔
しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。
彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。
そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。
なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。
その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。
アリシアの恋は終わったのです。
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる