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閑話♡煩悩
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「最近、笑うようになったわね」
「そうで御座いますね。2人で何か秘密があるようですよ」
「まぁ♡恋する2人の秘密ね。知りたいけど…あぁ~疼くわぁ♡」
「お嬢様はまだですよ。蕾にもなってないかも知れません」
「あら?では栄養剤を…」
「ダメですよ、奥様。こういうのはゆっくり、じっくりと温めるのが良いんです」
今日も日課の散歩に行くカーメリアとアルマンをサロンで見送る夫人。
お邪魔虫になりたくはないけれど、進行状況が気になるお年頃である。
「明日はこちらの小道に行ってみましょうか」
「何があるのかしら」
「スイレンがそろそろだと聞いております」
「スイレンね…そう言えばこの頃はお花はくださらないのね」
「欲しいですか?うーん…私は意地悪なので一緒に咲いている花が見たいなーなんて思いますので」
「そうね。一緒に見れば沢山見られるものね。今日はもうちょっと見ていたいわ」
――うっ。一緒にいる時間が長くなるのが嬉しい…とは言えないっ――
歩く練習も順調でまだ介助は必要だが10歩まではもうすぐである。
アルマンとしては車椅子まで戻る距離が長くなるのが嬉しい限りである。
しかし、時として神様は悪戯を仕掛けるのだ。
「アルマンは好きな女性はいないの?」
――貴女ですっ!――
「えぇっと…そうですね…」
「アルマンはカッコいいし背も高いから人気者ね」
「そんな事はないですよ。女性にはモテませんから」
「そうかしら。メイドさんもアルマンは良い人ですねって言ってたんだけど」
――あのメイドか!見えない所で煽るなっ!!――
「そうですかね。良い人…まぁ誉め言葉として受け取っておきます」
カラカラと軽快な車輪の音が聞こえる小道。
途中に咲く花に立ち止まって、カーメリアは花に手を伸ばし花びらに触れる。
「もっと歩けるようになったら…」
「どこか行きたいところがありますか?お連れしますよ」
「んんん…無理かしら」
「そんなに遠いんですか?」
「いいえ、距離じゃないの。歩けるようになるって事は筋力もついてるでしょう?」
「そうですね。と、言う事は走れるような場所ですか?」
「違うの。木に登りたいの」
「木っ!木登りですか?」
「そう。ずっとずっと前は登れたの。だから…アルマンに手伝ってもらうのは流石に無理よね」
想像をしてしまった。踏み台になるのは構わないが絶対に地面から目線を外してはならない。
枝に座っているカーメリアを見上げる事も厳禁である。
脚なんかプラプラさせてた時は、悶絶することしかできない自信がある。
やはり神様は意地悪なのだ。
「で、ですが流石にワンピースというのは…まずいかな」
「え?木登りの時はボトムスに決まってるでしょ?」
アルマンは煩悩だらけの自分に東の国の座禅を取り入れて心を清めようと思った。
「そうで御座いますね。2人で何か秘密があるようですよ」
「まぁ♡恋する2人の秘密ね。知りたいけど…あぁ~疼くわぁ♡」
「お嬢様はまだですよ。蕾にもなってないかも知れません」
「あら?では栄養剤を…」
「ダメですよ、奥様。こういうのはゆっくり、じっくりと温めるのが良いんです」
今日も日課の散歩に行くカーメリアとアルマンをサロンで見送る夫人。
お邪魔虫になりたくはないけれど、進行状況が気になるお年頃である。
「明日はこちらの小道に行ってみましょうか」
「何があるのかしら」
「スイレンがそろそろだと聞いております」
「スイレンね…そう言えばこの頃はお花はくださらないのね」
「欲しいですか?うーん…私は意地悪なので一緒に咲いている花が見たいなーなんて思いますので」
「そうね。一緒に見れば沢山見られるものね。今日はもうちょっと見ていたいわ」
――うっ。一緒にいる時間が長くなるのが嬉しい…とは言えないっ――
歩く練習も順調でまだ介助は必要だが10歩まではもうすぐである。
アルマンとしては車椅子まで戻る距離が長くなるのが嬉しい限りである。
しかし、時として神様は悪戯を仕掛けるのだ。
「アルマンは好きな女性はいないの?」
――貴女ですっ!――
「えぇっと…そうですね…」
「アルマンはカッコいいし背も高いから人気者ね」
「そんな事はないですよ。女性にはモテませんから」
「そうかしら。メイドさんもアルマンは良い人ですねって言ってたんだけど」
――あのメイドか!見えない所で煽るなっ!!――
「そうですかね。良い人…まぁ誉め言葉として受け取っておきます」
カラカラと軽快な車輪の音が聞こえる小道。
途中に咲く花に立ち止まって、カーメリアは花に手を伸ばし花びらに触れる。
「もっと歩けるようになったら…」
「どこか行きたいところがありますか?お連れしますよ」
「んんん…無理かしら」
「そんなに遠いんですか?」
「いいえ、距離じゃないの。歩けるようになるって事は筋力もついてるでしょう?」
「そうですね。と、言う事は走れるような場所ですか?」
「違うの。木に登りたいの」
「木っ!木登りですか?」
「そう。ずっとずっと前は登れたの。だから…アルマンに手伝ってもらうのは流石に無理よね」
想像をしてしまった。踏み台になるのは構わないが絶対に地面から目線を外してはならない。
枝に座っているカーメリアを見上げる事も厳禁である。
脚なんかプラプラさせてた時は、悶絶することしかできない自信がある。
やはり神様は意地悪なのだ。
「で、ですが流石にワンピースというのは…まずいかな」
「え?木登りの時はボトムスに決まってるでしょ?」
アルマンは煩悩だらけの自分に東の国の座禅を取り入れて心を清めようと思った。
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