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22話理由①
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妃教育で1人爵位の低かった伯爵令嬢(現王妃)が選ばれた理由はダイヤモンド鉱山だった。
王家は伯爵令嬢を婚約者として選定し、その持参金にダイヤモンド鉱山を要求したのだ。当然反発は大きかった。この件で貴族の半分は王家に対しての忠誠心を捨てた。
ダイヤモンドが見つかったのは偶然だった。
元々ダイヤモンドが発見された山は国有地で近隣の山から少量の石炭が出ていた事から20を超える貴族が共同で試験採掘をしてみてはどうかと議会に予算をと提案したのだった。
しかし・・・。
【出るかどうかの博打に金は出せない】
と、当時は議会も国王のYESマンが集まり形骸化していたものだったため、国からの予算は下りなかった。
それを王妃の実家である伯爵家が借金をして山を買い取った。
他の貴族は、金を出し合い試験採掘をしたのだ。
1年目、2年目、どこを掘っても岩石ばかりで諦めようかとした時、メングローザ公爵家とポイフル公爵家が金を融資し、採掘方法を変更した。この時メングローザ公爵家は他家が負担をせずに済むよう私財の全てを投資した。伯爵家もその事からこの山の事をメングローザ連峰と名付けている。
その時、単に試験採掘をするのではなく、それまでに試験採掘をした箇所で掘り進め易い場所に山の向こう側までトンネルを抜く事にしたのだ。
国有地であったため手が出せなかったが、山の所有は既に伯爵家になっている。
個人の所有物には王家も手出しは出来ない。更に多くの貴族が参加をする事になり、メングローザ公爵は借金をしてその資金を用立てた。
巨額な予算を貴族たちはダメ元でまた議会に提案書を出したのだが、却下したのは王太子(現国王)だった。
隣国に繋がるトンネルは開通すれば海に面し港を持つ隣国だけでなく、海の向こうの国と交易が出来ると貴族たちは進言したのだが、国防の面で危険性が高い事、工事費が巨額である事、交易での利益が不確定というのが理由だった。
海に面した隣国は既に海の向こうに意識は向いていて国防には問題もなく、実際に商品を売買をしている貴族たちは利益は工事費を工面してもお釣りがくるとして、一笑に付す王家を横目にトンネルを抜いた。
その工事をするにあたり、メングローザ公爵は先進国であるリアーノに留学し教えを乞うた。レセプションで訪れた会場で夫人と出会い一目惚れしたメングローザ公爵はその場で求婚して断られてしまった。だが半年に及ぶ留学で時間を捻出して口説き落とし今に至る。
トンネルが開通し交易が始まると、それまで迂回していた商人たちも利用するようになりその利益は右肩上がりになった。そんな時にダイヤモンドが発見されたのだ。
王家の反応は早かった。
直ぐに民に対し、早くから目を付けていた山を採掘させてダイヤモンドを発見させた。
交易のために危険を顧みずトンネルを抜く事を押し進めたのは王家だと発表したのだ。
貴族たちは、議案も通さず、金も出さなかった王家に反発した。ダイヤモンドが出て、交易で利益も大きいと判れば自分の功績とするばかりか伯爵家に持参金として山を寄越せと言い出した王家に一触即発状態となった。
伯爵家は山は渡さず持参金として、当時の国家予算の半分に当たる額を娘に持たせた。先に金額を公表してしまったため、王家はさらに山も寄越せとは言えず一旦はそこで終わった。
しかし、スミルナ侯爵令嬢に思いを寄せる王太子(現国王)は3年の間、世継ぎを作る事をせず王妃は成婚から3年の間は石女と呼ばれてきた。
本当の事など言えるはずがない王太子(現国王)は【王太子妃は不妊治療中】としてしまった。
伯爵家は第一子イデオットが生まれたにも関わらず冷遇される娘への待遇改善するよう何度も要求した。それらも突っぱねてきた王家。
そして、貴族たちをさらに怒らせたのは王家が【国境税】を課した事だった。
山が手に入らないとなれば、国境を超える際に課税という法案を可決したのだ。
可決と言っても流石にこの法案には賛同する貴族は少なく議会の承認は得られない筈だったが、王家は審議されてもいない法案を賛成多数として施行しようとした。
議会の意味がないとこの時3公爵はあわや3家とも公爵権限を使うかと思われたが、事業に参加した多くの貴族が3公爵を何とか宥めた。3公爵なくしてこの事業は成し得なかったからである。
メングローザ公爵家のある限り【国境税】は施行しないと王家が確約するに至った。
クーデターが起こってもおかしくない状況だったが、水面下でガゼット侯爵は騎士団や貴族たちを押さえた。それは王家の為ではなく仲違いしている隣国ブルーメ王国が原因だった。
内乱となれば、外から攻め込まれても対応が出来ない。当時のブルーメ王国は軍部が実権を握っていて恐怖政治をしており、王族はお飾りだったのだから。
民を守るために貴族たちは辛酸を舐め【王家の存続】という苦渋の決断をした。
今も尚、燻り続ける王家への不満。
メングローザ公爵家のリアーノ国への移住は同時に【国境税】の施行を意味する。
国王もそれはよく判っている。
貴族たちも【国境税】は反対だろう。
ならばメングローザ公爵を処罰する事は出来なくなり公爵権限は妥当だと認められ制度の大幅改革が成される。
長期間貴族は王家に対し不満を燻らせていることから王政の廃止を求めてくるだろう。
公爵権限を却下すれば規定に従いメングローザ公爵は絞首刑。メングローザ公爵家は取り潰しとなり【国境税】の課税が発動する。貴族だけでなく庶民も暴動を起こし始め、国中で内乱が勃発する。
今の王家にそれを押さえる力はない。騎士団から厚い信頼を寄せられていたガゼット侯爵の団長辞任をイデオットの愚行で引き起こしているからだ。
こうなった理由は王太子時代に先王が欲を掻いた事が発端なのだが、国王自身も大概だっただけである。
王家は伯爵令嬢を婚約者として選定し、その持参金にダイヤモンド鉱山を要求したのだ。当然反発は大きかった。この件で貴族の半分は王家に対しての忠誠心を捨てた。
ダイヤモンドが見つかったのは偶然だった。
元々ダイヤモンドが発見された山は国有地で近隣の山から少量の石炭が出ていた事から20を超える貴族が共同で試験採掘をしてみてはどうかと議会に予算をと提案したのだった。
しかし・・・。
【出るかどうかの博打に金は出せない】
と、当時は議会も国王のYESマンが集まり形骸化していたものだったため、国からの予算は下りなかった。
それを王妃の実家である伯爵家が借金をして山を買い取った。
他の貴族は、金を出し合い試験採掘をしたのだ。
1年目、2年目、どこを掘っても岩石ばかりで諦めようかとした時、メングローザ公爵家とポイフル公爵家が金を融資し、採掘方法を変更した。この時メングローザ公爵家は他家が負担をせずに済むよう私財の全てを投資した。伯爵家もその事からこの山の事をメングローザ連峰と名付けている。
その時、単に試験採掘をするのではなく、それまでに試験採掘をした箇所で掘り進め易い場所に山の向こう側までトンネルを抜く事にしたのだ。
国有地であったため手が出せなかったが、山の所有は既に伯爵家になっている。
個人の所有物には王家も手出しは出来ない。更に多くの貴族が参加をする事になり、メングローザ公爵は借金をしてその資金を用立てた。
巨額な予算を貴族たちはダメ元でまた議会に提案書を出したのだが、却下したのは王太子(現国王)だった。
隣国に繋がるトンネルは開通すれば海に面し港を持つ隣国だけでなく、海の向こうの国と交易が出来ると貴族たちは進言したのだが、国防の面で危険性が高い事、工事費が巨額である事、交易での利益が不確定というのが理由だった。
海に面した隣国は既に海の向こうに意識は向いていて国防には問題もなく、実際に商品を売買をしている貴族たちは利益は工事費を工面してもお釣りがくるとして、一笑に付す王家を横目にトンネルを抜いた。
その工事をするにあたり、メングローザ公爵は先進国であるリアーノに留学し教えを乞うた。レセプションで訪れた会場で夫人と出会い一目惚れしたメングローザ公爵はその場で求婚して断られてしまった。だが半年に及ぶ留学で時間を捻出して口説き落とし今に至る。
トンネルが開通し交易が始まると、それまで迂回していた商人たちも利用するようになりその利益は右肩上がりになった。そんな時にダイヤモンドが発見されたのだ。
王家の反応は早かった。
直ぐに民に対し、早くから目を付けていた山を採掘させてダイヤモンドを発見させた。
交易のために危険を顧みずトンネルを抜く事を押し進めたのは王家だと発表したのだ。
貴族たちは、議案も通さず、金も出さなかった王家に反発した。ダイヤモンドが出て、交易で利益も大きいと判れば自分の功績とするばかりか伯爵家に持参金として山を寄越せと言い出した王家に一触即発状態となった。
伯爵家は山は渡さず持参金として、当時の国家予算の半分に当たる額を娘に持たせた。先に金額を公表してしまったため、王家はさらに山も寄越せとは言えず一旦はそこで終わった。
しかし、スミルナ侯爵令嬢に思いを寄せる王太子(現国王)は3年の間、世継ぎを作る事をせず王妃は成婚から3年の間は石女と呼ばれてきた。
本当の事など言えるはずがない王太子(現国王)は【王太子妃は不妊治療中】としてしまった。
伯爵家は第一子イデオットが生まれたにも関わらず冷遇される娘への待遇改善するよう何度も要求した。それらも突っぱねてきた王家。
そして、貴族たちをさらに怒らせたのは王家が【国境税】を課した事だった。
山が手に入らないとなれば、国境を超える際に課税という法案を可決したのだ。
可決と言っても流石にこの法案には賛同する貴族は少なく議会の承認は得られない筈だったが、王家は審議されてもいない法案を賛成多数として施行しようとした。
議会の意味がないとこの時3公爵はあわや3家とも公爵権限を使うかと思われたが、事業に参加した多くの貴族が3公爵を何とか宥めた。3公爵なくしてこの事業は成し得なかったからである。
メングローザ公爵家のある限り【国境税】は施行しないと王家が確約するに至った。
クーデターが起こってもおかしくない状況だったが、水面下でガゼット侯爵は騎士団や貴族たちを押さえた。それは王家の為ではなく仲違いしている隣国ブルーメ王国が原因だった。
内乱となれば、外から攻め込まれても対応が出来ない。当時のブルーメ王国は軍部が実権を握っていて恐怖政治をしており、王族はお飾りだったのだから。
民を守るために貴族たちは辛酸を舐め【王家の存続】という苦渋の決断をした。
今も尚、燻り続ける王家への不満。
メングローザ公爵家のリアーノ国への移住は同時に【国境税】の施行を意味する。
国王もそれはよく判っている。
貴族たちも【国境税】は反対だろう。
ならばメングローザ公爵を処罰する事は出来なくなり公爵権限は妥当だと認められ制度の大幅改革が成される。
長期間貴族は王家に対し不満を燻らせていることから王政の廃止を求めてくるだろう。
公爵権限を却下すれば規定に従いメングローザ公爵は絞首刑。メングローザ公爵家は取り潰しとなり【国境税】の課税が発動する。貴族だけでなく庶民も暴動を起こし始め、国中で内乱が勃発する。
今の王家にそれを押さえる力はない。騎士団から厚い信頼を寄せられていたガゼット侯爵の団長辞任をイデオットの愚行で引き起こしているからだ。
こうなった理由は王太子時代に先王が欲を掻いた事が発端なのだが、国王自身も大概だっただけである。
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