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22話理由②

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当時王太子には思い人がいた。

現在【被害妄想の鬼女】と呼ばれているスミルナ侯爵令嬢(エンヴィーの母)だった。
若い頃は性格を表に出す事はなく、容姿端麗で大人しい令嬢だと言われており王太子は密かに慕っていた。婚約者候補にも挙がっていたスミルナ侯爵令嬢(エンヴィーの母)が残れば良かったかも知れないが娘同様早々に脱落したのだ。


婚約者として選ばれたと伯爵家にはもう通達が行っており引き返せなかったが、スミルナ侯爵令嬢(エンヴィーの母)を思うあまり現国王(当時王太子)は婚姻後3年間子作りを一切しなかった。


イデオットを懐妊したのは、その前の年、スミルナ侯爵令嬢(エンヴィーの母)が結婚をしたからである。諦めが付いたのかやっと世継ぎを作る事を始めたがイデオットとエンヴィーが2週間違いで生まれたのも今となっては原因の一つである。


思いに諦めはついたと言っても過去に憧れた女性である。
事もあろうか国王(当時王太子)はスミルナ侯爵夫人(エンヴィーの母)を乳母に望んだ。しかし当のスミルナ侯爵夫人(エンヴィーの母)が産褥で無理だと判り代わりにつけたのがその妹だった。

乳母にと付けたスミルナ侯爵夫人(エンヴィーの母)の妹は王妃を【鉱山で王妃の座を買い取った卑しい伯爵家の女】だと事あるごとに罵った。


王妃や側付き侍女から乳母交代を要請されたが、即位したばかりで忙しかった国王は【それだけの事で文句を言うな】と一蹴したのだった。


イデオットに講師をつける際も国王が乳母交代を一蹴した事から乳母であるスミルナ侯爵夫人(エンヴィーの母)の妹の発言力は大きく、王妃側の要求は何一つくみ取られなかった。
そればかりか、生母であるにも関わらず王子宮への出入りすら禁止されてしまった。


王宮での発言力が増したスミルナ侯爵夫人(エンヴィーの母)の妹はそこで躓いた。イデオットに支給される予算使い込みが発覚したのだ。
姉のスミルナ侯爵夫人(エンヴィーの母)と共に豪遊をしていた事で、取り調べを受けたがそこで本性を知った国王の初恋は砕け散った。


使い込みはスミルナ侯爵家が弁済をしたが、スミルナ侯爵家は社交界からはつま弾きにされた。
スミルナ侯爵夫人(エンヴィーの母)妊娠中から疑い深い性格が表に出始め、毎日のように夫を罵倒するようになっていた。入り婿である夫は妻の使い込みを処理したのだが、他の女に貢いでいると被害妄想を拗らせた妻は毎日その妄想を発展させて、夫に当たり散らし入り婿の夫はエンヴィーが9歳の時に心労で亡くなった。
スミルナ侯爵夫人(エンヴィーの母)はその後男爵家の男と再婚をしている。



第二子以降は乳母や講師の選定は王妃が行い、イデオットは兄弟姉妹では異質な存在になってしまった。

なんとか矯正をしようと試みたが、王子宮にはスミルナ侯爵夫人(エンヴィーの母)の妹は罷免され追放されても雇われた者はその息がかかった者ばかりでエンヴィーの王子宮への出入りを許可してしまうのだ。
エンヴィーの出入り以外は真面目な仕事ぶりの為、解雇も出来ない。
やっとそのような使用人を排除出来た時、イデオットとエンヴィーは15歳になって学園入学の年を迎えてしまったのだった。結果としてイデオットの教育に失敗したとしか言えない。

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