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続編

VOL.14

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ルビーが無事に出産をしたことで、従業員には全員に数の関係もあるが一般餌のルビーの卵1パックとミルク、小麦や野菜、肉、シイタケがセットになった「お祝いパック」が配られた。

「どうしよう。ウチの子、卵が食べられないの」

「ならヤギのミルクで作ったチーズかバターどちらかと交換ですね。どっちにします?選べますよ」

「ヤギのバター?そんな高級品を?!」

「なので少ないんですけどね。チーズなら350gですがバターは35gです」

「ならチーズにするわ!」


ごった返す社屋だが、人数分は確保してあるので順番に渡していくだけ。

このチャンスを逃してはならないと販促部や興行部は人の列をどう捌くかの実践でもある。

勿論市場調査部やプライムやヘデスの抱える研究棟の研究者もリサーチ調査を兼ねてこの場に入っている。


既に雇っている7万人とその家族。
卵のアレルギーや牛から搾ったミルク、小麦などのアレルギーを持つものがどれくらいいるのかは実際未知数だった。

こんな調査もしますよと告知しての「お祝いパック」

効果はあった。

「ご家族に卵、ミルク、小麦など籠にある食品で発疹や喘息に似た症状が出る方はこっちへ!!」

係員が声をあげると公言をしているものは堂々と並ぶし、言われて「そういえば!」と気が付いて並ぶ者、これまで隠してきたけどどうしようと悩む者と様々。


アレルギーはなかなか他人には理解をしてもらえず「好き嫌い」や「食わず嫌い」そして「我儘」と思っている人もいて、そういう人たちにはこんな症状が出ると話をしても理解してもらえないのである。

発疹が出たり呼吸困難になったり、命の危険もあるのに自分が苦しんだことがないと平気で食べさせたりもする。

「贅沢病だって言われて…恥ずかしくて」

「贅沢病なんかじゃありません。よく勇気を出してくれましたね。アレルギー反応の出る食品を口にする前で良かった。代替品もありますよ。この中から食べられるものと交換できます。どれが大丈夫ですか?」

理解のない人が家の中で実権を握っている配偶者の両親だったり、良かれと勧めて来る時はなかなか断れない。断る事で場の空気を悪くするし、中には「病気自慢?」など言ってくる者だっている。

何時だって無知のままに思い込みを押し付けてくるのは罪なのだ。

研究棟の研究者が複数のアレルギーを持つ者や深刻な状況に悩む者からも聞き取りや診察も出来る。

医者になろう、看護師になろうとする者にも実際に眼で見て症状が確認できる経験が出来るので座学だけの頭でっかちとなって隣国に留学させることもない。



配り終えた後は報告会を兼ねた反省会。

「一番多かったのは小麦かな。その次が卵、ミルクだな。ピーナッツもいるぞ」

「兄上、隣国から技術者を招かないか?川に近い箇所は大麦をやめて隣国で7期目を迎えた稲作をしてみようよ。米を粉末にした粉なら食べられるという研究結果も出ているんだ」

「そんな事をルビーが言ってたな。やってみてもいいんだが確か水田だったな。土をどうするかも問題だな」

小麦を米粉に変える。
ヘデスにもアレルゲン除去の卵の開発は研究費を増やして更に取り組んでもらう事になった。


「並んでもらう時にもプラカードはもう少し大きめがいいかも」

「今回は一気にだったけど従業員相手とか対象が解っているなら日数で分散させるのも混雑解消になる」

「人が一番並んでいるところに一番並びやすいよね。空いてるところは中身が良くないって思っちゃうらしい」

「数が減ると焦りも出るみたい。在庫の見せ方も工夫した方がいいね」


卵を市井でアピールする際にも不要な混雑、最悪のドミノ倒し状態にならないように工夫する方法も話し合われる。



万全とはならないが、従業員に「お祝いパック」を配った経験から改善点を見出し、1か月後。
サーディスとルビーの第1子ジェードの生まれて100日目。

王都でも先着限定だが、お祝いパックが配られることになった。


こちらは想像以上の大混雑。
無料で食品が配られると人伝に聞いた者たちがまだ設営をしている最中なのにゆうに500人は並んでいる。

「これは…間違いなく足らなくなるぞ」

「食べ物だからな。暴動になっても困るよな」

「注意をしてみたらどうでしょう。喧嘩など騒ぎが起きた場合は中止、以後の開催も王都ではしませんとか」

「だが王都は従業員と違って読み書きが出来ないものが多いから声を張り上げることになる。最後尾まで声が届くかどうか」

「炊き出しは比較的スムーズだと聞いたのに」

「ホームレス相手だからでしょう?炊き出しに並ぶってことはホームレスであることを認めることになるから、空腹より見栄を取って並ばない人もいるわよ」


従業員たちは仕方なく並べた中から好きなものを1つだけ持って行ってもらう事にした。そうすれば6品目あるので6万人に行き渡る。

すると「もう1つ貰えないか?」と言う者も当然出て来た。
対策は「並びなおしてもらって、次の順番が来た時に余っていれば」と答えると後ろから「早くしろよ!」怒号も飛ぶので仕方なく諦めてくれる。

真っ先に無くなったのが肉、次にシイタケ、卵、野菜。ミルク。需要が一番あるかと思った小麦は人気がなかった。

「小麦だけ貰ってもね。せめてミルクと一緒なら」

「川の水で溶いても窯がないから焼くことが出来ないよ」

肉は焚火の火で焼くことが出来ても、小麦はフライパンなどが必要なのでやはり人気がなかった。

「シイタケが2番人気だなんて…信じられない」

「人によっては焚火の火で焼いて目を閉じると肉厚があるから肉と思って食べるらしいよ」

「エルヴィーさんのシイタケにそんな需要があるとは…」


お祝いパックは従業員たちに大きな学びの実体験を与えて終了したのだった。

が…その夜、王都の一画では揉め事が起きていた。
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