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第05話 もう家族じゃない
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幾つ目かの札束を数え終わった父のイーカイズは満面の笑み。
「これでアジメストを研修旅行に行かせてやれるな」
「そうね。良かったわ」
――研修旅行?あぁ、あれね――
先月だったか学問所から希望する学生は魔法大国のマジルカ王国に2週間実践魔法を試すための研修が受けられるとあった。
ただ、旅費や滞在費は自費。
申し込みの締め切りはまだ3か月もあとの事だがアジメストは「行きたい」と連絡をしてきたのだろう。
――良かったぁ。この話がなかったらまた貸してって言われるところだった――
卵を売って稼いだ金のほとんどを両親に貸している。
実に4年分の授業料を貸していて、その額は文官なら初級文官の年間所得約300万ピピに匹敵する。
卵はそこそこの値で売れるけれど餌代も鶏舎の修繕なども金がかかるので全てを自由に出来るわけではないがルビーは目標があるのでコツコツと貯めていた。。
両親がルビーの小銭稼ぎを黙ってみていたのは金を借りる目的もあったからなのだが、王都に行くならもう両親にも会う事はないだろうとルビーはイーカイズに話しかけた。
「お父様、いえノユビワ子爵。貸したお金を返してください」
「は?こっちが今日まで育ててやった養育費を払ってもらいたいくらいだ」
「そうよ。なんてあさましい子なのかしらね。小銭を貯め込んですっかり守銭奴に育って。恥ずかしいわ」
――その守銭奴から借りた金を踏み倒すアナタたちはなんなの?!――
短い会話だがこれ以上食い下がっても無意味。
コハマ侯爵も驚きを通り越して口が空いたままになってる。
――貴方が代官を任せた男はこんな男なんですよ?――
許されるならコハマ侯爵の肩を叩いてダメ押しでこれまでの所業を教えてあげたいくらい。
ルビーは両親が返す気がないのなら手切れ金としてくれてやろう。そう考えた。
コハマ侯爵に向かってにっこりと微笑む。
「侯爵様。証人になって頂けません?」
「証人?」
「はい。私はコハマ侯爵家の養女になるんですよね。その後はルワード公爵家に嫁ぐ。だったら子爵家にはもう戻らないと腹を括らねばなりません。今後一切ノユビワ子爵家とは接点を持たない。それは弔事であってもです。それくらいの気持ちで臨みたいので、縁切りをしたいと思います。証人になって頂けますか?」
「な、何を言うんだルビー!!」
途端に慌て始めたイーカイズ。
ルビーはコハマ侯爵にコテンと首を傾げて見せた。
余程の馬鹿でなければこれ以上明確に言葉にしなくても意味は判るだろう?と仕草で問う。
コハマ侯爵もルビーの言いたいことは理解できた。
娘とは言え、手元には1千万近い現金があって幾ら借りているのかは判らないが返そうともしない。尤もその金は娘を売買したに等しい金でコハマ侯爵も格好をつけたところで褒められたものではない事は解っている。
それでも「娘を預けた」など言い出されてこの先に金の無心をされても困る。
「コハマ侯爵。娘は娘で良いんですよね?いえ、ほら、王都なんてめったに行く場所でもありませんし、娘の結婚式――」
「式はしないから王都に来る必要はない。ルワード家も”自分たちが親です”と突然もう1組親が出てきても困惑するだろうしな」
「だ、だとしてもですよ?そう!そうです。あと2年でルビーの妹のアジメストが卒業なんです。その時は家族で祝いたいじゃないですか。卒業祝いと言う事でルビーの嫁ぎ先にも挨拶は――」
「不要だと言ってるが?何故卒業祝いを他家の人間が祝わねばならんのだ?何よりルワード公爵家に嫁いだら先触れを出しても会えるとは限らないんだぞ?」
「そ、そんな…」
「なら取りやめるか?こちらは養女になってくれる令嬢をまた探さねばならないが、遺恨を残すようなやり方は後々に面倒が起こるからな」
イーカイズは数え終わった札の束に視線が流れる。
ルビーの養女話が無くなれば当然返さねばならない。
「養女の件は良いんですが…」
「なら話は終わりだ。今日を限りで家族ではなくなるがルビーの事はコハマ家で責任を持つから安心してくれ」
「はい…いや、でも‥‥はい…」
イーカイズはルビーを養女に出しても娘は娘。
これまで同様、いや高位貴族の養女になり、さらに爵位が上の公爵家に嫁ぐのだからこれまで以上に金銭的な援助をしてもらおうと考えていた。
――甘いのよ。ほんと…クズな親って最低ね――
ルビーは淡々と「今後は関りを一切持たない」と認めた書面にサインをした。
イーカイズは「そこまでしなくても」と渋ってはいたが渡された札束を返す気はないらしく、諦めを付けたのかやっとサインをした。
「これでアジメストを研修旅行に行かせてやれるな」
「そうね。良かったわ」
――研修旅行?あぁ、あれね――
先月だったか学問所から希望する学生は魔法大国のマジルカ王国に2週間実践魔法を試すための研修が受けられるとあった。
ただ、旅費や滞在費は自費。
申し込みの締め切りはまだ3か月もあとの事だがアジメストは「行きたい」と連絡をしてきたのだろう。
――良かったぁ。この話がなかったらまた貸してって言われるところだった――
卵を売って稼いだ金のほとんどを両親に貸している。
実に4年分の授業料を貸していて、その額は文官なら初級文官の年間所得約300万ピピに匹敵する。
卵はそこそこの値で売れるけれど餌代も鶏舎の修繕なども金がかかるので全てを自由に出来るわけではないがルビーは目標があるのでコツコツと貯めていた。。
両親がルビーの小銭稼ぎを黙ってみていたのは金を借りる目的もあったからなのだが、王都に行くならもう両親にも会う事はないだろうとルビーはイーカイズに話しかけた。
「お父様、いえノユビワ子爵。貸したお金を返してください」
「は?こっちが今日まで育ててやった養育費を払ってもらいたいくらいだ」
「そうよ。なんてあさましい子なのかしらね。小銭を貯め込んですっかり守銭奴に育って。恥ずかしいわ」
――その守銭奴から借りた金を踏み倒すアナタたちはなんなの?!――
短い会話だがこれ以上食い下がっても無意味。
コハマ侯爵も驚きを通り越して口が空いたままになってる。
――貴方が代官を任せた男はこんな男なんですよ?――
許されるならコハマ侯爵の肩を叩いてダメ押しでこれまでの所業を教えてあげたいくらい。
ルビーは両親が返す気がないのなら手切れ金としてくれてやろう。そう考えた。
コハマ侯爵に向かってにっこりと微笑む。
「侯爵様。証人になって頂けません?」
「証人?」
「はい。私はコハマ侯爵家の養女になるんですよね。その後はルワード公爵家に嫁ぐ。だったら子爵家にはもう戻らないと腹を括らねばなりません。今後一切ノユビワ子爵家とは接点を持たない。それは弔事であってもです。それくらいの気持ちで臨みたいので、縁切りをしたいと思います。証人になって頂けますか?」
「な、何を言うんだルビー!!」
途端に慌て始めたイーカイズ。
ルビーはコハマ侯爵にコテンと首を傾げて見せた。
余程の馬鹿でなければこれ以上明確に言葉にしなくても意味は判るだろう?と仕草で問う。
コハマ侯爵もルビーの言いたいことは理解できた。
娘とは言え、手元には1千万近い現金があって幾ら借りているのかは判らないが返そうともしない。尤もその金は娘を売買したに等しい金でコハマ侯爵も格好をつけたところで褒められたものではない事は解っている。
それでも「娘を預けた」など言い出されてこの先に金の無心をされても困る。
「コハマ侯爵。娘は娘で良いんですよね?いえ、ほら、王都なんてめったに行く場所でもありませんし、娘の結婚式――」
「式はしないから王都に来る必要はない。ルワード家も”自分たちが親です”と突然もう1組親が出てきても困惑するだろうしな」
「だ、だとしてもですよ?そう!そうです。あと2年でルビーの妹のアジメストが卒業なんです。その時は家族で祝いたいじゃないですか。卒業祝いと言う事でルビーの嫁ぎ先にも挨拶は――」
「不要だと言ってるが?何故卒業祝いを他家の人間が祝わねばならんのだ?何よりルワード公爵家に嫁いだら先触れを出しても会えるとは限らないんだぞ?」
「そ、そんな…」
「なら取りやめるか?こちらは養女になってくれる令嬢をまた探さねばならないが、遺恨を残すようなやり方は後々に面倒が起こるからな」
イーカイズは数え終わった札の束に視線が流れる。
ルビーの養女話が無くなれば当然返さねばならない。
「養女の件は良いんですが…」
「なら話は終わりだ。今日を限りで家族ではなくなるがルビーの事はコハマ家で責任を持つから安心してくれ」
「はい…いや、でも‥‥はい…」
イーカイズはルビーを養女に出しても娘は娘。
これまで同様、いや高位貴族の養女になり、さらに爵位が上の公爵家に嫁ぐのだからこれまで以上に金銭的な援助をしてもらおうと考えていた。
――甘いのよ。ほんと…クズな親って最低ね――
ルビーは淡々と「今後は関りを一切持たない」と認めた書面にサインをした。
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