あなたには愛、私には夢があります

cyaru

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第39話  二度目は引導

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ヴァルディスはこの1か月。
日々の執務や国賓への対応と並行してアイリスの窮地を救うために動いた。

「殿下、お忙しいと思いますがお時間、宜しいでしょうか?」

やってきた男性2人の名を聞いて「先を越されたか」と呟く。

「あぁ。通してくれ」

先触れも無くヴァルディスの第3執務室に従者に案内をされて入ってきたのは金融商会の会頭と番頭だった。

2人の顔を見てヴァルディスは側に居た従者に声をかけた。

「今日は王宮内でファルフェス侯爵が会合に参加しているはずだ。終わったらここに来るように伝えてくれないか」

「畏まりました」

従者が一礼をして部屋を出て行くと金融商会の番頭が分厚い書類をカバンから取り出した。

ヴァルディスの元にはダリオンとレスカが3か月ほど前から豪遊をし始めた事もあって次々に証拠が上がってきた。

ヴァルディスだけでなく金融商会も動いたのも把握をしていた。

金融商会としては、金を既に貸している事もあって回収不能になる事は避けたい。
しかし、詐欺事件となってしまうと詐欺の刑事裁判とは別に民事で裁判を起こさねばならず、結審するまで回収が見込めない。爵位剥奪となれば間違いなく払えなくなるので貸し倒れとなり大損である。

なので、一番穏便にイチ抜けをするにはダリオンと偽アイリスが詐欺で捕縛をされる前に、ファルフェス侯爵家に支払ってもらう。これに尽きる。

2軒目、3軒目も同じようにレスカがアイリスに成りすまし金を借りているので、貸した金がまだダリオンの手元に残っているとは考えにくい。

予想した通り3軒が貸した金の8割に匹敵する買い物などの証拠を金融商会が押さえて来た。

ヴァルディスの集めた証拠と金融商会の集めた証拠は合致するものも多かったが、金融商会の押さえた証拠の方が数は多かった。


「闇金の方はまだ手を付けていなかったようですね。流石にそこまですると侯爵に感づかれると思ったんでしょう」

「そちらはまだだったか。僥倖だが…自由の身になれば借りる先も必要だろうな」

「御学友とお聞きしましたが、手を差し伸べては差し上げないのですか」

「差し出したが、半年前に振り払われた。二度目に差し出すのは引導だ」

「左様で。それから…当商会もですが残り2軒の商会の担当と買い物中の2人を面通ししましたところ、確認が取れました」

「憲兵隊の人間はその場に?」

「勿論。殿下に調査をするからと言われた日の午後には被害届を出し、ある程度証拠を掴んだ後は告訴状に格上げしておりますのでね。憲兵の方にも同席して頂いて確認をしております」

「抜かりがないな」

「そりゃもう。二度手間ほど無駄な時間はありませんから」


借りられるだけ借りてその先をどうしようと考えているのかを知るのはダリオンのみだが、貸した方は刑事事件で立件をされる前に返して貰わねばならない。

捕縛をされればファルフェス侯爵がダリオンを排籍し、放逐するのは考えずとも解る。単に借金をしたのと騙して金を借りたのとでは罪の重さが全く違う。侯爵家の籍を抜かれたら取れるものも取れなくなる。

今日、わざわざヴァルディスの執務室に先触れもなくやってきたと言う事は憲兵も捕縛の準備を始めたと言うことで、何時になるかカウントダウンが始まったのである。

流石に「Ⅹデー」が何時になるかまでは金融商会も調べる事は出来ないがヴァルディスなら多少の調整が出来る。その為にわざわざ番頭だけで事が済むのに会頭もやってきたのだ。

お互いの証拠の突合せとが終わって給仕が3人に茶を配ったところにファルフェス侯爵がやってきた。


「殿下、お呼びと?ミシェルの件でしょうか?」

「その件もあるが今日は別件の方が色合いが強いな」

ダリオンの妹、ミシェルはもう産み月に入っていていつ生まれてもおかしくない。
子供が生まれれば王弟の孫と婚約。男女どちらでも王弟の孫は男女の双子なので対応可能である。

婚約と同時に子供はファルフェス侯爵が「祖父から父」になるための養子縁組を行う。
この件はミシェルもその夫も、そして夫の実家である公爵家も承諾済みである。

ヴァルディスが絡む、つまり王家が絡むのだし相手は孫とは言え王弟の孫。
自由恋愛になりつつある世でも一蹴するには惜しい話が転がり込んできたのだから断る筈もない。

ただこの婚約は当人が成人する頃にはまた世の中の在り方が変わるため、当人の意思で解消できると条件を盛り込んである。

それでも子爵家に過ぎない子供の生家、ファルフェス侯爵家、そして公爵家、王弟にとっても当面は飯ウマな婚約だった。


「侯、早速だが‥‥払って貰いたい」

「払う?何をです?」

ヴァルディスは金融商会が持ち込んだ証拠とヴァルディスが集めた証拠をファルフェス侯爵に見せた。

「全てに目を通すには時間もかかる。要約をするとダリオンは詐欺を働き手に入れた金で遊んでいると言う事だ。合計金額は取り敢えず…今日までの利息も含んで2306万飛んで1883キャス。直ぐに支払うと言うのなら端数は切ってくれるそうだ」

「さっ詐欺っ?!ダリオンが?まさか!!」

ファルフェス侯爵の顔色が一瞬で蒼白になった。
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