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第24話 蓄積する感情
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来月には雪解けも迎えるな。そんな事を考えながら窓の外を見てダリオンは憂鬱な気分になる。
レスカは相変わらず講師の話を聞くだけなので、何かを習得したかと言えば何もない。講師からも「やる気が全く見られない」「これ以上続ける事に意味があると思えない」と言われてしまった。
レスカにそれとなく聞いてみるが…。
「先生の話はちゃんと聞いているわよ?」
と笑って誤魔化される。
「話を聞くだけじゃなくてさ。どんな話だったか聞かせてくれないか?」
「話?」
「そう。今日聞いた話でいいんだ」
「忘れちゃった。それにダー。無理なこと言わないで?ダーだってダーのパパの話を一言も間違わずに他の人に伝えられる?」
「一言一句間違わずになんて無理だよ」
「ね?ダーも無理って解ってるじゃない。自分が出来ない事をアタシに望むのは無茶って言うのよ?」
「そこまで詳細にと言ってるわけじゃないよ。ほら、今日は王国の歴史だっただろう?歴代国王の名前で憶えているのはないか?」
「今の王様の名前も知らないのに死んだ王様の名前を憶えてどうなるって言うの?会う事もないのに。そういうの無駄な努力って言わない?」
「言いたいことは判るけどさ」
「解るならいいじゃない。はい、この話はおしまい。それより…ちゃんと先生の講義を受けているんだけど?」
レスカは上目遣いで唇を尖らせダリオンにオネダリを始めた。
ダリオンは成果が見えるのなら成果に応じて贈り物をするのはやぶさかではないけれど、何の成果も見えていないのにご褒美をやらねばならない事に疑問を感じた。
今までなら。
アイリスと結婚する前なら。
疑問すら感じる事も無かったが、父親から託される執務の量も減った。
他に何か仕事をしている訳でもなく、当然父親から渡される給金の金額も減った。個人資産もレスカと結婚をするための再婚を目論んでアイリスと結婚をした事で吐き出してしまい、この3か月でさらに目減りした。
手持ちが少なくなると気持ちに余裕も無くなってしまうのだろうか。
それとも、父からの執務が減ってレスカと過ごす時間が長くなり、粗が目につきだしたからか。
レスカに対して蓄積した負の感情が時にブワっと高まる事も増えた。
「そうだな。ご褒美…考えておくよ」
「考える?この前もそう言ったけど?考える事が多くてアタシの事が後回しになってる気がするわ」
レスカは都合よくその時の言葉に別の事象を当てはめて自分の不出来を無かった事にする。それもダリオンを苛立たせる要因の1つだった。
言いたくはなかったがダリオンは余裕も無かった。
先日妹のミシェルの元に両親が出かけて行った。
ミシェルは嫁いだとは言え、両親からすれば実の娘で生まれてくる子供は外孫だが初孫になる。心配であるのも解るし、行く事に不思議がる必要もないが、行った先の子爵家にヴァルディスも来ていたと父の従者が話しているのを聞いて急に不安になった。
ミシェルが出戻る事は先ずない。夫婦仲は非常に良いし公爵家との関係も良好なのだ。仮にあったとしても生まれた子供は公爵家の子息でもあるミシェルの夫が引き取るだろう。
ミシェルが単独で出戻ってきたからと言って何も変わる事はない。
無いのだが…。
――この言いようのない不安はなんだ?――
正体が判らないものに恐怖感を覚えるのは人として当たり前だが、ダリオンは不安を感じた事に余裕も失っていた。
このままじゃ取り返しがつかない事になりそうで数日前から考えていたことをつい言葉にしてしまった。
「レスカ。このままじゃ君を妻に迎える事は出来ない」
ダリオンの気持ちとしては言うつもりはなかったけれど、同時に「遂に言ってやったぞ」「これで反省をするだろう」そんな思いもあった。
なのに言い終わった後、ダリオンの言葉にレスカの反応は驚くほど薄かった。
口を開かずにレスカの目はダリオンを見るだけ。
妻にならなければずっと愛人。
若しくは別れを示唆するものと受け取り、慌てるかと思ったがそんな素振りもない。
――レスカは何を考えているんだ?――
貴族であれば「あぁ、ハッタリか」「虚勢張ってるな」と表情から感じるものがあるがレスカの表情からはダリオンが考えているような思いは読み取れなかった。
スッと立ち上がったレスカはダリオンではなくメイドに声を掛けた。
「アップルティーが飲みたいわ。部屋に持ってきて」
「畏まりました」
そのまま部屋に引いて行ったレスカはダリオンを振り返る事も無かった。
レスカは相変わらず講師の話を聞くだけなので、何かを習得したかと言えば何もない。講師からも「やる気が全く見られない」「これ以上続ける事に意味があると思えない」と言われてしまった。
レスカにそれとなく聞いてみるが…。
「先生の話はちゃんと聞いているわよ?」
と笑って誤魔化される。
「話を聞くだけじゃなくてさ。どんな話だったか聞かせてくれないか?」
「話?」
「そう。今日聞いた話でいいんだ」
「忘れちゃった。それにダー。無理なこと言わないで?ダーだってダーのパパの話を一言も間違わずに他の人に伝えられる?」
「一言一句間違わずになんて無理だよ」
「ね?ダーも無理って解ってるじゃない。自分が出来ない事をアタシに望むのは無茶って言うのよ?」
「そこまで詳細にと言ってるわけじゃないよ。ほら、今日は王国の歴史だっただろう?歴代国王の名前で憶えているのはないか?」
「今の王様の名前も知らないのに死んだ王様の名前を憶えてどうなるって言うの?会う事もないのに。そういうの無駄な努力って言わない?」
「言いたいことは判るけどさ」
「解るならいいじゃない。はい、この話はおしまい。それより…ちゃんと先生の講義を受けているんだけど?」
レスカは上目遣いで唇を尖らせダリオンにオネダリを始めた。
ダリオンは成果が見えるのなら成果に応じて贈り物をするのはやぶさかではないけれど、何の成果も見えていないのにご褒美をやらねばならない事に疑問を感じた。
今までなら。
アイリスと結婚する前なら。
疑問すら感じる事も無かったが、父親から託される執務の量も減った。
他に何か仕事をしている訳でもなく、当然父親から渡される給金の金額も減った。個人資産もレスカと結婚をするための再婚を目論んでアイリスと結婚をした事で吐き出してしまい、この3か月でさらに目減りした。
手持ちが少なくなると気持ちに余裕も無くなってしまうのだろうか。
それとも、父からの執務が減ってレスカと過ごす時間が長くなり、粗が目につきだしたからか。
レスカに対して蓄積した負の感情が時にブワっと高まる事も増えた。
「そうだな。ご褒美…考えておくよ」
「考える?この前もそう言ったけど?考える事が多くてアタシの事が後回しになってる気がするわ」
レスカは都合よくその時の言葉に別の事象を当てはめて自分の不出来を無かった事にする。それもダリオンを苛立たせる要因の1つだった。
言いたくはなかったがダリオンは余裕も無かった。
先日妹のミシェルの元に両親が出かけて行った。
ミシェルは嫁いだとは言え、両親からすれば実の娘で生まれてくる子供は外孫だが初孫になる。心配であるのも解るし、行く事に不思議がる必要もないが、行った先の子爵家にヴァルディスも来ていたと父の従者が話しているのを聞いて急に不安になった。
ミシェルが出戻る事は先ずない。夫婦仲は非常に良いし公爵家との関係も良好なのだ。仮にあったとしても生まれた子供は公爵家の子息でもあるミシェルの夫が引き取るだろう。
ミシェルが単独で出戻ってきたからと言って何も変わる事はない。
無いのだが…。
――この言いようのない不安はなんだ?――
正体が判らないものに恐怖感を覚えるのは人として当たり前だが、ダリオンは不安を感じた事に余裕も失っていた。
このままじゃ取り返しがつかない事になりそうで数日前から考えていたことをつい言葉にしてしまった。
「レスカ。このままじゃ君を妻に迎える事は出来ない」
ダリオンの気持ちとしては言うつもりはなかったけれど、同時に「遂に言ってやったぞ」「これで反省をするだろう」そんな思いもあった。
なのに言い終わった後、ダリオンの言葉にレスカの反応は驚くほど薄かった。
口を開かずにレスカの目はダリオンを見るだけ。
妻にならなければずっと愛人。
若しくは別れを示唆するものと受け取り、慌てるかと思ったがそんな素振りもない。
――レスカは何を考えているんだ?――
貴族であれば「あぁ、ハッタリか」「虚勢張ってるな」と表情から感じるものがあるがレスカの表情からはダリオンが考えているような思いは読み取れなかった。
スッと立ち上がったレスカはダリオンではなくメイドに声を掛けた。
「アップルティーが飲みたいわ。部屋に持ってきて」
「畏まりました」
そのまま部屋に引いて行ったレスカはダリオンを振り返る事も無かった。
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