あなたには愛、私には夢があります

cyaru

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第13話  イライラ・イライラ

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結婚をして1か月。ダリオンは日を追うごとに苛立ちが募っていた。

その原因はレスカでありアイリス。さらに両親とヴァルディスだった。

「いよいよ期日が決まったんだ。いい加減に躾もしたらどうだ」

「そうよ?読み書きもおぼつかない侯爵夫人だなんて。この先、どうやって切り盛りしていくつもりでいるの」

「解ってるよ!」


声を荒げて両親に反論をするが、レスカの教育は全く進んでいない。
進捗率を数字で表すなら1%。その1%はレスカの習得ではなく家庭教師を雇えたこと。

ファルフェス侯爵家でメイドとして住まわせているが、どこから漏れたのかレスカの評判は最悪だった。

「学園を卒業しているんだ。それなりに学問は履修している」

「と、申されましても1年ですよね。最終学年のみの入学ですよね」

「そ、それがなんだ」


ダリオンも顔を背け、見て見ぬふりをしてきたが現実は受け止めている。

諸外国に見習って開設した学園なので、それなりに学問は学べるのだが実態は金で学歴を買うようなもの。
他国では「●●学院卒」など学歴が就職をしたり事業に参入できるかの基準になるのを良いとこ取りで真似たのだ。

わざわざそんな学園で学ばずとも、帝国の学院を既に卒業し、それなりの学力を持っているヴァルディスが敢えて入学をしたのにも訳がある。コネで事業に参入できることが出来るため不正も横行している現状を王位についた時に廃止する足掛かりにするためである。

ダリオンも入学前にはヴァルディスに「力を貸してくれ」と言われ、その熱意に応えるべく入学をした。

入学をして驚いたのは「金さえ払えば学歴が手に入る」と何もしない貴族子女の多い事だった。

そしてレスカのような平民は「あわよくば王太子のお手付きに?」「王太子の御学友になれる」とそれだけが目的なので‥‥その先は言わずもがな。

卒業をしても大半の学園生は文字を覚えたての高位貴族の幼児程度の学力しかなかった。

ダリオンはレスカが自分の名前を書いた書類を見比べた。

1枚は学園を卒業したばかりで侯爵家に転がり込んできた時に書いたもの。
もう1枚は雇った家庭教師が「どの程度学力があるか知りたい」と簡単なテストをしたもの。

ダリオンは愕然とした。

――未だに自分の名前すらまともに書けないのか――

侯爵家に来た時、自分の名前も間違ってしまって「えへ♡」照れるレスカを可愛いと思った自分を殴りたい。

雇った家庭教師は「私より相応しい者を紹介します」と言った。
連れて来た講師は学問を学ぶ前にアルファベットなどを遊びの中で幼児に教える講師だった。

「読めない訳じゃないんだ」

「それは承知しております。宝飾品など商人が持ってくるパンフレットはしっかりとご理解されていますので」

「だったらもう少し程度をあげてだな!」

「それを考慮しての人選です。うっかりと書類にサインをされては困りますので。重要な書類だったら不備で突き返されるのですよ?一度突き返されたら次の申請まで2週間は必要になります。事業の申請日に間に合わなかったらどうするのです」


侯爵夫人となったあかつきにはある程度の執務も手伝ってもらわねばならない事を考えると「自分の名前」がちゃんと書けることは当たり前。

書くたびに違う部分が間違っているようでは困るのだ。

レスカにも何度も説明をした。
アイリスの存在が無かった頃は結婚の話を持ち出しても「どうせダーの親は許してくれないでしょう?」と学ぶ気が一切なく時間だけが無意味に過ぎて行った。

しかし、アイリスと結婚した。
その時も説明をしたのだ。

「アイリスと結婚し、離縁すれば再婚出来るんだ。そうすればレスカ、君を本当に迎え入れることが出来るんだ」

「嬉しい!ダー、ありがとう」

「侯爵夫人となる日は決まったんだから相応しいレディであるよう頑張ってくれよ?」

レスカはダリオンに向かって黙って微笑みを返すだけだった。


解ってくれたかと思ったのだが、レスカは講師を前にしても講師が首を傾げるくらいに手ごたえが全くない。

「聞いていますか?」と講師が問えば。

「はい、先生の言葉、聞いてますわ」と返す。

講師はダリオンに言った。

「本当に聞いているだけです。覚える事はしません」

ダリオンは言葉を失った。
レスカのやる気の無さは異常としか思えなかった。

結婚をして1か月。残りはあと11か月しかない。

過ぎた時間は「やっと1か月」ではなく「はや1か月」なのである。


アイリスは婚約中の取り決め通り一切の接触をしてこないのは僥倖だが、従者の報告によれば再々ヴァルディスがアイリスの住む別棟を訪れているという。

間者も連れての訪問で不貞を疑われるような行為はないというし、ヴァルディスも立場がありお飾りでもダリオンの妻であるアイリスに手を出すことも出来ないが、気分の良いものではない。

ダリオンの苛立ちは考えれば考えるほど高まっていった。
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