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第07話 初めて芽生えた感情
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「ねぇ。ダー。素敵だと思わない?」
「先週も買ってあげたばかりだろう?」
ダリオンはいつもと同じように甘えて商会が置いて行った品を「素敵」と服の上からあてて見せるレスカの声を副音声のように聞いていた。
「ダメだよ。ここ暫くかなりの買い物をしてるだろう?」
「そうなの?お買い物って言うけど、商人が置いて行ったのよ?」
――参ったな――
女性の買い物は快く受け入れるのが男の度量だと父に教えられてきたダリオンだが、宝飾品の箱の隅に書かれた金額の数字を見て、抱きしめて髪でも撫でてやれば諦めるだろうとレスカを抱きしめた。
☆~★
レスカの身分は平民だが商売人の娘。
蝶よ花よと可愛がられて育ったのか本当に何も出来ない女だ。
これまでどうしていたんだろうとダリオンが考えてしまうくらい何も出来なかったのだ。
侯爵家に迎え入れた翌朝、なかなか部屋から出てこないレスカを心配して部屋に行くと「洗顔をしていない」と言って寝台から出てもいなかった。
確かに物語に出て来る貴族は朝から使用人の持ってきた桶で洗顔をして…そんな記述があったりもするが、使用人だって暇じゃない。当主でもないダリオンですら洗顔は自分でする。
桶は持ってきてもらうのではなく洗面所に行けば湯の入った桶が用意をされているので自分で洗うのだ。わざわざ寝台まで持ってきてくれるのは床に臥している時くらい。
仕方なく使用人を呼んで顔を洗わせれば、今度は着替えをしない。
ダリオンに「察して」と視線だけを向けて来る。
初日からもう何処の国のお姫様?
ダリオンは使用人にレスカを丁寧に扱うようにと指示を出した。
何も持っていない。
何もできない。
自分が全てをしてやらないとレスカは何も出来ないのだと思うと優越感も芽生える。
しかし、ダリオンも父に習って執務をせねばならず、ずっとレスカの相手をする事は出来ないので暇つぶしにと本を渡せば開いた形跡もない。
「ダーと一緒に読みたい」と言われれば惚れた弱みでダリオンは幼子にするような読み聞かせをした。
レスカが侯爵家に来て4年。
ただダリオンに微笑んでくれればいい。隣にいてくれればいい。
レスカの全てが可愛くて仕方が無かった。
王太子から「病気だな」「お前は馬鹿なのか?」と言われたがそれでもレスカが可愛くて仕方がなかった。
レスカへの愛は消えてはいない。
いないのだが…。
4年も一緒に居れば「少しはやってくれないかな」と思う事も増えて来たのも事実。
ゆくゆくは父から爵位を譲り受け、ダリオンが当主になる。
レスカにはただ、甘えていてほしい気持ちはあってもやはり侯爵夫人として隣に立ってもらわねばならないし、執務なども補佐して貰わねば、領地に視察にも行けない。
少なくとも学園は卒業しているのだから執務を少しづつ覚えてもらおうとしたのだがにこにこと笑うだけで書類を手に取ろうともしない。
書類を棚に戻す。たったそれだけの事でもレスカはコテンと首を傾げる。
「どうしてアタシ?従者がいるのに」
それを言われてしまえばお終いだ。
確かにレスカにさせるより慣れている従者にさせた方が早いし適格。
――書類を日付順やアルファベット順に並べるだけなんだが――
イラっとすることもあったが、レスカの事を愛しているなら許さねば。これは自分が楽になりたいという傲慢だ、と自分にそう言い聞かせて誤魔化してきた。
☆~★
ダリオンは優しくレスカに語り掛けた。
「ごめんな。今回は我慢させてしまう俺を許してくれ」
そう言うしかなかった。
ダリオンには今、レスカの我儘を聞き入れてやるだけの金が無かったからである。
鼻を啜りあげてレスカが上目使いでダリオンを見上げた。
――解ってくれたかな――
ダリオンは思ったのだか、ドン!!胸を突き飛ばしてレスカは叫ぶような声を出した。
「ダーはアタシが我慢すればいい。そう言うのね」
「そのご褒美ならもう買っただろう?」
「ご褒美?ダーのご褒美ってなんなの?」
ダリオンの腕の中から抜け出したレスカは乱暴な手つきで宝飾品を箱の中に片付け始めた。
ネックレスも箱から飛び出しているのに無理やり蓋をする。
買ってくれないダリオンに対しての当てつけだとしか見えない行為にダリオンの心には初めての感情が芽生えた。
――なんだよ。こいつ。マジでウザい――
「先週も買ってあげたばかりだろう?」
ダリオンはいつもと同じように甘えて商会が置いて行った品を「素敵」と服の上からあてて見せるレスカの声を副音声のように聞いていた。
「ダメだよ。ここ暫くかなりの買い物をしてるだろう?」
「そうなの?お買い物って言うけど、商人が置いて行ったのよ?」
――参ったな――
女性の買い物は快く受け入れるのが男の度量だと父に教えられてきたダリオンだが、宝飾品の箱の隅に書かれた金額の数字を見て、抱きしめて髪でも撫でてやれば諦めるだろうとレスカを抱きしめた。
☆~★
レスカの身分は平民だが商売人の娘。
蝶よ花よと可愛がられて育ったのか本当に何も出来ない女だ。
これまでどうしていたんだろうとダリオンが考えてしまうくらい何も出来なかったのだ。
侯爵家に迎え入れた翌朝、なかなか部屋から出てこないレスカを心配して部屋に行くと「洗顔をしていない」と言って寝台から出てもいなかった。
確かに物語に出て来る貴族は朝から使用人の持ってきた桶で洗顔をして…そんな記述があったりもするが、使用人だって暇じゃない。当主でもないダリオンですら洗顔は自分でする。
桶は持ってきてもらうのではなく洗面所に行けば湯の入った桶が用意をされているので自分で洗うのだ。わざわざ寝台まで持ってきてくれるのは床に臥している時くらい。
仕方なく使用人を呼んで顔を洗わせれば、今度は着替えをしない。
ダリオンに「察して」と視線だけを向けて来る。
初日からもう何処の国のお姫様?
ダリオンは使用人にレスカを丁寧に扱うようにと指示を出した。
何も持っていない。
何もできない。
自分が全てをしてやらないとレスカは何も出来ないのだと思うと優越感も芽生える。
しかし、ダリオンも父に習って執務をせねばならず、ずっとレスカの相手をする事は出来ないので暇つぶしにと本を渡せば開いた形跡もない。
「ダーと一緒に読みたい」と言われれば惚れた弱みでダリオンは幼子にするような読み聞かせをした。
レスカが侯爵家に来て4年。
ただダリオンに微笑んでくれればいい。隣にいてくれればいい。
レスカの全てが可愛くて仕方が無かった。
王太子から「病気だな」「お前は馬鹿なのか?」と言われたがそれでもレスカが可愛くて仕方がなかった。
レスカへの愛は消えてはいない。
いないのだが…。
4年も一緒に居れば「少しはやってくれないかな」と思う事も増えて来たのも事実。
ゆくゆくは父から爵位を譲り受け、ダリオンが当主になる。
レスカにはただ、甘えていてほしい気持ちはあってもやはり侯爵夫人として隣に立ってもらわねばならないし、執務なども補佐して貰わねば、領地に視察にも行けない。
少なくとも学園は卒業しているのだから執務を少しづつ覚えてもらおうとしたのだがにこにこと笑うだけで書類を手に取ろうともしない。
書類を棚に戻す。たったそれだけの事でもレスカはコテンと首を傾げる。
「どうしてアタシ?従者がいるのに」
それを言われてしまえばお終いだ。
確かにレスカにさせるより慣れている従者にさせた方が早いし適格。
――書類を日付順やアルファベット順に並べるだけなんだが――
イラっとすることもあったが、レスカの事を愛しているなら許さねば。これは自分が楽になりたいという傲慢だ、と自分にそう言い聞かせて誤魔化してきた。
☆~★
ダリオンは優しくレスカに語り掛けた。
「ごめんな。今回は我慢させてしまう俺を許してくれ」
そう言うしかなかった。
ダリオンには今、レスカの我儘を聞き入れてやるだけの金が無かったからである。
鼻を啜りあげてレスカが上目使いでダリオンを見上げた。
――解ってくれたかな――
ダリオンは思ったのだか、ドン!!胸を突き飛ばしてレスカは叫ぶような声を出した。
「ダーはアタシが我慢すればいい。そう言うのね」
「そのご褒美ならもう買っただろう?」
「ご褒美?ダーのご褒美ってなんなの?」
ダリオンの腕の中から抜け出したレスカは乱暴な手つきで宝飾品を箱の中に片付け始めた。
ネックレスも箱から飛び出しているのに無理やり蓋をする。
買ってくれないダリオンに対しての当てつけだとしか見えない行為にダリオンの心には初めての感情が芽生えた。
――なんだよ。こいつ。マジでウザい――
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