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第34話 王都へ出発
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王都に出立する5日前にはセレニティが請け負っていた仕事は全て無くなった。
ダリウスにもバレてしまったので簡単とは言え荷造りももう終わっている。
片付けてしまえば元々、物が多くなかった家の中も随分と広くなった。
庭で落ち葉や枝を拾ってきて火をおこし、燃やせるものは燃やす。燃やすものすらウィルバートの部下が確認をしたが、数個を確認しただけであとは何も言わなくなった。
燃やしていたのはそれまで使っていた木をくりぬいて作った食器やカトラリーなどで手紙の類は一切ない。アンヌに連絡をしようと思ったこともあったが、行商に行った者から「形の残る物はやめておきましょう」とアンヌからの言伝があり、言葉を伝えてもらうだけにしていた。
ダリウスは「これは持って行けないよね?」と小さな木箱を差し出した。
中には松ぼっくりやドングリが入っていた。
「そうね。持って行くのならこの中なら2,3個かしら」
「そっか…積み木もダメだよね」
「積み木は沢山あるから持って行けないわね。ダリウスが頑張った印だけど‥飾っておく?」
「ううん。燃やす。帰ってきたらまた作るからいいよ」
家屋は人が住んでいればいいが、無人の状態が続くと傷んでしまうもの。特に雨漏りはするし壁から隙間風が抜けるこの家は無人となれば1か月もしないうちに「家くい虫」という害虫に食べられてしまう。
シロアリのようなこの地独特の害虫でダリウスの積み木は防水材も塗っていないため、格好のご馳走になってしまう。
以前は漁具などを直したり、誰かが時化の時など番をしていたけれど、改装をしてしまったのでその用途にも使えない。取り壊すにも家くい虫が湧いてしまうと、壊した埃の中に無数の卵も舞うので家に持ち帰って新たな被害を出してしまう。餌になるものは置いておかない方が良い。
兵士たちには「戻った時は暫く誰かの家を間借りする」と言い、セレニティは全てを片付けた。
心配だった手紙。無事にユーベル王国の叔母の元に届けてくれたようで、叔母からはアンヌと同じ言葉だけの伝言だが数日前に行商から戻った者が返事を持ち帰ってくれた。
【暫く使うことのなかった蜂の巣箱を使うことになり、今は蜂が巣を気に入ってくれるの祈るばかり】
その返事にセレニティはフランクリンに「迷わずユーベル王国に行ってくれ」と頼んだ。
蜂の巣箱は1つでいくつも部屋があり、大量の蜂が住んでいる。
住まいも食料も準備が出来ていると言うことだ。
出立と同時に町の者が移動を開始しないのは、念のための用心で3日あればセレニティ達は2つ目の峠に来るので戻って様子を見ようとウィルバートも判断しないだろうと言う憶測である。
懸念したのは数人の部下が町に残る事だったがその様子もなさそう。
そうしてセレニティは出立の日を迎えた。
「行ってまいります」
「気をつけてな。ダリ坊もちゃんと母ちゃんの言う事聞くんだぞ?」
「うん。僕ね、軍――」
「ダリウス。ちゃんと行ってきますのご挨拶をなさい」
「はぁい」
見送りにはダリウスの友達であるグレンをはじめ幼い子供も来ている。これから起こる事はその子供たちも知らない。魅力ある軍馬でその子たちの好奇心などを掻き立てるのも今はやめておかねばならなかった。
ウィルバートにも見送りの人が見えなくなるまでダリウスを馬に乗せないように伝えてある。
「どうしてダメなんだ」
「他の子が暫く拗ねるからよ。羨ましいが過ぎると夜泣きが始まる子もいるわ。皆に余計な手間をかけさせたくないの」
そこまでの子供がいるかはセレニティも判らないが、多少愚図る子は要るだろう。
しかし本当の目的は当面徒歩になる事で、移動はゆっくりになる。早くこの場を離れようとすれば町の人の動きを気取られるかも知れない。それは避けたかった。
「母さま。みんな小さくなったね」
少し歩いて振り返り、また少し歩いて振り返るダリウスは遠くなっていく町の人を見てセレニティに語り掛けた。
「そうね。ダリウス。足は痛くない?抱っこする?」
「ううん。抱っこは赤ちゃんがするんだよ。僕は歩けるよ」
「足が痛くなったら直ぐに言うのよ?」
「うん」
ウィルバートも兵士たちも常に騎乗しているわけではなく、馬が疲れるのを軽減するために基本は歩く。普通の旅人と違うのは馬を途中で入れ替えることはない。
その為、1つ目の峠を歩いて超えるのはウィルバート達にもありがたい申し出だった。
休み休みだが4,5時間経った頃、ウィルバートが話しかけて来た。
「2つ目の峠を越えたら宿場町で馬車も調達する。辛抱してくれ」
「馬車?僕、馬車にも乗れるの?」
「あぁ、乗れるぞ?そろそろ馬に乗ってみるか?」
ダリウスは後ろを振り返って、町そのものが見えなくなっていることに「うん!」大きな返事を返した。
ダリウスにもバレてしまったので簡単とは言え荷造りももう終わっている。
片付けてしまえば元々、物が多くなかった家の中も随分と広くなった。
庭で落ち葉や枝を拾ってきて火をおこし、燃やせるものは燃やす。燃やすものすらウィルバートの部下が確認をしたが、数個を確認しただけであとは何も言わなくなった。
燃やしていたのはそれまで使っていた木をくりぬいて作った食器やカトラリーなどで手紙の類は一切ない。アンヌに連絡をしようと思ったこともあったが、行商に行った者から「形の残る物はやめておきましょう」とアンヌからの言伝があり、言葉を伝えてもらうだけにしていた。
ダリウスは「これは持って行けないよね?」と小さな木箱を差し出した。
中には松ぼっくりやドングリが入っていた。
「そうね。持って行くのならこの中なら2,3個かしら」
「そっか…積み木もダメだよね」
「積み木は沢山あるから持って行けないわね。ダリウスが頑張った印だけど‥飾っておく?」
「ううん。燃やす。帰ってきたらまた作るからいいよ」
家屋は人が住んでいればいいが、無人の状態が続くと傷んでしまうもの。特に雨漏りはするし壁から隙間風が抜けるこの家は無人となれば1か月もしないうちに「家くい虫」という害虫に食べられてしまう。
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兵士たちには「戻った時は暫く誰かの家を間借りする」と言い、セレニティは全てを片付けた。
心配だった手紙。無事にユーベル王国の叔母の元に届けてくれたようで、叔母からはアンヌと同じ言葉だけの伝言だが数日前に行商から戻った者が返事を持ち帰ってくれた。
【暫く使うことのなかった蜂の巣箱を使うことになり、今は蜂が巣を気に入ってくれるの祈るばかり】
その返事にセレニティはフランクリンに「迷わずユーベル王国に行ってくれ」と頼んだ。
蜂の巣箱は1つでいくつも部屋があり、大量の蜂が住んでいる。
住まいも食料も準備が出来ていると言うことだ。
出立と同時に町の者が移動を開始しないのは、念のための用心で3日あればセレニティ達は2つ目の峠に来るので戻って様子を見ようとウィルバートも判断しないだろうと言う憶測である。
懸念したのは数人の部下が町に残る事だったがその様子もなさそう。
そうしてセレニティは出立の日を迎えた。
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「気をつけてな。ダリ坊もちゃんと母ちゃんの言う事聞くんだぞ?」
「うん。僕ね、軍――」
「ダリウス。ちゃんと行ってきますのご挨拶をなさい」
「はぁい」
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「他の子が暫く拗ねるからよ。羨ましいが過ぎると夜泣きが始まる子もいるわ。皆に余計な手間をかけさせたくないの」
そこまでの子供がいるかはセレニティも判らないが、多少愚図る子は要るだろう。
しかし本当の目的は当面徒歩になる事で、移動はゆっくりになる。早くこの場を離れようとすれば町の人の動きを気取られるかも知れない。それは避けたかった。
「母さま。みんな小さくなったね」
少し歩いて振り返り、また少し歩いて振り返るダリウスは遠くなっていく町の人を見てセレニティに語り掛けた。
「そうね。ダリウス。足は痛くない?抱っこする?」
「ううん。抱っこは赤ちゃんがするんだよ。僕は歩けるよ」
「足が痛くなったら直ぐに言うのよ?」
「うん」
ウィルバートも兵士たちも常に騎乗しているわけではなく、馬が疲れるのを軽減するために基本は歩く。普通の旅人と違うのは馬を途中で入れ替えることはない。
その為、1つ目の峠を歩いて超えるのはウィルバート達にもありがたい申し出だった。
休み休みだが4,5時間経った頃、ウィルバートが話しかけて来た。
「2つ目の峠を越えたら宿場町で馬車も調達する。辛抱してくれ」
「馬車?僕、馬車にも乗れるの?」
「あぁ、乗れるぞ?そろそろ馬に乗ってみるか?」
ダリウスは後ろを振り返って、町そのものが見えなくなっていることに「うん!」大きな返事を返した。
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