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第27-1話 王国、終わりの始まり④―①
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エナはその後も国王に手引きをしてもらうとクラブに通い詰めた。
最初は1週間に1回。それが3日に1回となり、グレイスに婚約解消を言い渡し1年目になる頃には毎日となった。
勝てば勝っただけ、負けても財布は国王。エナは散々に賭け事を楽しんで国王に「救済人の知恵」を小出しにして知恵を授けた。
エナを知恵を以てしても井戸の水は元に戻らず「兎に角レバーを」と鳥を買おうにも経済は大きく不況に傾いていて鳥1羽を買うにも平民には手の届かない価格に高騰。
川で水を汲もうにもグレイスがいた頃は澄んだ水をたたえて、川底も見えて小魚も泳いでいたのに、今では大雨の翌日のような濁った水になっていた。
とても飲めたものではないと思っていたが、井戸に水はなく汚れた川の水を汲んで飲むしかなかった。
いい加減仕事もないのに鳥を買い求めても仕方がないと王都を去っていく者が増えた。
人がいなくなれば商売にならず、細々と商いを続けていた店も閉店をしていく。
仕事にようやくありつけて賃金を貰っても食料品も満足に調達できないとまた人が王都を去っていく。
エナが【グラっと揺れたら机の下に入れば良い】【うがいと手洗いで感染予防】など授けた知恵は掲示板に張り出されたが、民衆には机の下にと言われてもこの頃の地震は立っているのがやっとの揺れ。
机の下に潜り込んでも机が床の上を滑っていくのだから机を追いかけて怪我をする者が多く出た。
いい加減水がないのに手洗いとうがいを言われても困る。
しかし救済人の言う事なのだからと手洗いをした水でうがいをして、あっという間に流感が蔓延した。
岬が崩壊した領地の領主はエナの知恵は必要ないと独自に海から石を取り除く復興を始めていたが、エナが「池にしちゃえば?」と言ったことで救済人が言う事と領主が指示する事が違うため、どちらを信じたらいいのかわからず作業が止まる。
作物の収穫は過去50年で最低となり、国内自給率も17%まで落ち込んで収穫した作物を王都に運ぶ荷馬車の襲撃も相次いだ。護衛に騎士を付ければその騎士が賊と通じていたなんてこともあった。
そんなある日、アルフレットは従者を呼んだ。
「お呼びでしょうか」
「あぁ…すまないが明日、花束を用意してくれないか」
「花束?で御座いますか。何故?」
「明日はグレイスの命日なんだ。命を落とした場所に花を手向けたい。グレイスも私が来るのを待っているはずだ」
部屋にいた従者たちはあんぐりと開いた口が元に戻らなくなった。
全員の心の声は同じ言葉で重なる。
<< 何言ってるんだ、こいつ >>
従者たちもグレイスはもう儚くなったと信じている。
グレイスは従者やメイドなど王宮で働く者には崇められていた。
それこそ、国王よりもグレイスの方を慕っていた。
城で働く者達の働き方を見て、アルフレットに「こうした方が効率が良いのではないか」と案を出し、申請しない限り無かった休日も、部署を超えて応援に行っても無償奉仕だった働き方も、月に3回の公休、持ち場でない部署に回された時の特別手当などが法によって定められた。
他にも交代制で何時、誰が出仕など表にした事で作業効率は目に見えて良くなった。
グレイスだけが城で働く者の実態を知り、尽力してくれた。恩を感じないはずがない。
尤も、アルフレットの名前で出された案なのでアルフレットの実績となって、アルフレットも当たり前のように自分の手柄だと思っているが。
グレイスが婚約を白紙にされた日。
使用人の中にはクーデターを起こそうとする者までいたのだ。
グレイスが死を選ぶより他に方法がない、そんな理由を作った男に今更花を手向けてもらったところで喜ぶどころか、天罰を下してくれと神に頼むのではないかとすら従者たちには思えた。
最初は1週間に1回。それが3日に1回となり、グレイスに婚約解消を言い渡し1年目になる頃には毎日となった。
勝てば勝っただけ、負けても財布は国王。エナは散々に賭け事を楽しんで国王に「救済人の知恵」を小出しにして知恵を授けた。
エナを知恵を以てしても井戸の水は元に戻らず「兎に角レバーを」と鳥を買おうにも経済は大きく不況に傾いていて鳥1羽を買うにも平民には手の届かない価格に高騰。
川で水を汲もうにもグレイスがいた頃は澄んだ水をたたえて、川底も見えて小魚も泳いでいたのに、今では大雨の翌日のような濁った水になっていた。
とても飲めたものではないと思っていたが、井戸に水はなく汚れた川の水を汲んで飲むしかなかった。
いい加減仕事もないのに鳥を買い求めても仕方がないと王都を去っていく者が増えた。
人がいなくなれば商売にならず、細々と商いを続けていた店も閉店をしていく。
仕事にようやくありつけて賃金を貰っても食料品も満足に調達できないとまた人が王都を去っていく。
エナが【グラっと揺れたら机の下に入れば良い】【うがいと手洗いで感染予防】など授けた知恵は掲示板に張り出されたが、民衆には机の下にと言われてもこの頃の地震は立っているのがやっとの揺れ。
机の下に潜り込んでも机が床の上を滑っていくのだから机を追いかけて怪我をする者が多く出た。
いい加減水がないのに手洗いとうがいを言われても困る。
しかし救済人の言う事なのだからと手洗いをした水でうがいをして、あっという間に流感が蔓延した。
岬が崩壊した領地の領主はエナの知恵は必要ないと独自に海から石を取り除く復興を始めていたが、エナが「池にしちゃえば?」と言ったことで救済人が言う事と領主が指示する事が違うため、どちらを信じたらいいのかわからず作業が止まる。
作物の収穫は過去50年で最低となり、国内自給率も17%まで落ち込んで収穫した作物を王都に運ぶ荷馬車の襲撃も相次いだ。護衛に騎士を付ければその騎士が賊と通じていたなんてこともあった。
そんなある日、アルフレットは従者を呼んだ。
「お呼びでしょうか」
「あぁ…すまないが明日、花束を用意してくれないか」
「花束?で御座いますか。何故?」
「明日はグレイスの命日なんだ。命を落とした場所に花を手向けたい。グレイスも私が来るのを待っているはずだ」
部屋にいた従者たちはあんぐりと開いた口が元に戻らなくなった。
全員の心の声は同じ言葉で重なる。
<< 何言ってるんだ、こいつ >>
従者たちもグレイスはもう儚くなったと信じている。
グレイスは従者やメイドなど王宮で働く者には崇められていた。
それこそ、国王よりもグレイスの方を慕っていた。
城で働く者達の働き方を見て、アルフレットに「こうした方が効率が良いのではないか」と案を出し、申請しない限り無かった休日も、部署を超えて応援に行っても無償奉仕だった働き方も、月に3回の公休、持ち場でない部署に回された時の特別手当などが法によって定められた。
他にも交代制で何時、誰が出仕など表にした事で作業効率は目に見えて良くなった。
グレイスだけが城で働く者の実態を知り、尽力してくれた。恩を感じないはずがない。
尤も、アルフレットの名前で出された案なのでアルフレットの実績となって、アルフレットも当たり前のように自分の手柄だと思っているが。
グレイスが婚約を白紙にされた日。
使用人の中にはクーデターを起こそうとする者までいたのだ。
グレイスが死を選ぶより他に方法がない、そんな理由を作った男に今更花を手向けてもらったところで喜ぶどころか、天罰を下してくれと神に頼むのではないかとすら従者たちには思えた。
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