騎士団長!!参る!!

cyaru

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オパール農場荒らされる!

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翌日、遠征帰りなのでお休みのフェリックスですが朝の鍛錬は欠かしません。

「昨夜はかなり無理をさせてしまった‥‥だがあれはオパールが…可愛いのが堪らんッ」

煩悩を打ち消すかのように竹刀を振りまくるフェリックス。

「好きだッ」ブンッ
「愛しているッ」ブンブンっ
「ウォォォ!可愛すぎるッ!」ブワッシュ!
「あっ!!」

気合を入れすぎてしまって竹刀が飛んで行ってしまいました。

「ん?何だこれは‥‥ウッ…トマトではないか。これはミニトマト‥こっちはナス‥」

侯爵邸の敷地内の一画に作られた【オパール農場】と木札が建てられた野菜畑。
フェリックス悩んでおりますね。

「けしからんな。3回殺しても割に合わんが、オパールが怒るからな。後で庭師に注意しておかねば」

どうやら庭師が妻オパールの名前で野菜を育てていると思ったフェリックスはグイっと苗を引っ張ると花が咲いて次は実がなるのを待つばかりの苗を引っこ抜いてしまいました。

予定よりも13分戻りが遅い主を心配して家令のスイフトがやってきます。
目の前には手をパンパンと土をはたいている主。足元には・・・。

「だっ!旦那様!何をされているのですっ!」
「スイフトか。ちゃんと庭師にも注意をしろ。オパールの名を使ってこのような事を」
「な、何を言ってるんですか!これは…これは…」

【奥様が旦那様のためにと!自ら土で汚れるのもいとわず育てている野菜ですよ!】

「何だって?オパールがっ??」
「そうです!お食事の際に旦那様が野菜を残すのは健康に悪いからと!自分が育てれば食べてくれるかもと仰って育てていたのですよ!知りませんよ!離縁って言われますよ!」
「スイフトっ!手伝ってくれ!」

慌てて引き抜いた野菜を土に戻しますが、引き抜いただけではなくえいっえいっ!と踏んづけてしまったフェリックス。流石に大男に踏みつけられたら野菜は元通りになりません。

必死で野菜を元に直そうとしますが、手を離すと当然のようにクテっとなってしまいます。
折角ついた花もほとんどが落ちてしまっていますね。

「スイフト‥‥野菜を買ってこい!」
「買ってきてどうなさるのです?」
「トマトなんかを土に植えれば育つだろう?熟したやつなら明日には芽が出るかも知れん」
「出るわけがないでしょう!苗からここまで2週間はかかったんですよ?」
「どうしたらいい?」
「どうするもこうするも‥‥謝るしかないでしょうね」
「許してくれるだろうか‥‥」
「それは奥様ではないとわかりません。ただ…」
「ただ…なんだ?」
「奥様は無駄と二度手間を嫌うのですよ。使えるものを捨てたとなると…何とも言えません」

じぃぃぃっと荒れたオパール農場を見るフェリックス。
部屋に戻り、体を清めます。えぇ。清めます。
そしてまだ夢の中にいるオパールが眠るベッドに向かいました。

☆~☆~☆~☆

「うぅ~ン‥‥フェル…ん?フェル??」

いつもなら隣で汗を流したフェリックスがいるのに目を覚ますといない?!と飛び起きたオパール。
っとベッド横の床に何やら黒くて大きな物体が丸くなっておりますよ。

「フェル?」
「おはようございます!オパール様ッ!」
「えっ?何?なんですの?フェル、朝から傷んだ木の実を拾い食いしましたの?」
「すっすっすっ‥‥すまないッ!」

目が覚めると床に土下座をする夫に混乱する妻オパール。
まぁ、ほとんどの人はそうだと思います。気持ちはわかります。

「どうしましたの?お腹が痛いの?」
「ち、違うんだ…その‥‥本当に、本当にもうしわけないッ」
「お顔を見せてくださいましな。わたくしの可愛いフェル」
「いや、見せられる顔ではないのだ」
「まぁ‥‥どうなさったの?ね、お願い、フェル。お顔を見せてくださいまし」

オパールのお願いは叶えると約束をしているフェリックス。
顔をあげますが‥‥

「どうしましたの?朝から‥‥」
「オパール…本当にすまない」
「先程から謝ってばかり。何故謝るのです?」
「その‥‥オパールの育てていた野菜を…畑を壊してしまった」
「まぁ‥‥いつですの?」
「さっき‥‥朝の鍛錬をしていて…」
「ではまだ時間はさほど経ってはおりませんのね?」
「時間はそんなに‥‥だが、壊したのは私だ。すまないッ。離縁はしないでくれッ」
「フェル。正直に言ってくれて嬉しいですわ。でもした事はダメな事ですわね。お仕置きです」

ぺちり!

フェリックスの手の甲をペチっと叩くオパール。
フェリックスには痛くもなんともない力ですが、しょぼんとしていますね。

「さ、着替えます。植え替えを手伝ってくださいまし」
「いいのか?許してくれるのか?離縁はしない??」
「お手伝いをしてくださいまし。あと今日からお野菜のお残しは禁止ですわよ?」

オパール農場に行って野菜を植えていくオパール。
踏まれて折れてしまった茎なども麻縄で添え木に括りつけていきます。

「こうなると根より葉からの栄養吸収に頼るしかありませんわ。2週間ほどは様子を見ましょう。ダメならまた苗を植えるしかないでしょう」

「すまない。オパール」

「いいえ。フェルに黙ってやっていたわたくしも悪いのですわ。ごめんなさいフェル」

結果としてほとんどはダメだったのですが、後日ちょっとだけ収穫できたトマトと形が歪んだキュウリは美味しく食卓に上がりましたよ。

この日は馬に乗ってお買い物。ポニーにフェリックス。ドスコイにオパール。
パッカパッカと向かった先は花き市場。
フェリックスは荷物持ち。オパールは楽しそうに苗を選んでいきました。
なんだかんだで仲の良い夫婦なのです。
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