26 / 48
副官は比較をしてしまう
しおりを挟む
その頃、第二騎士団では実戦を見据えた訓練を模擬刀で行っております。
ワーワー!!カンカンカンッ!!
「お前はここに意識をするんだ。相手が構えたからといって腰を引くな」
グッと腕の位置と腰を据えるようにフェリックスに指導される新人騎士。
はいと大きく返事をするとまた組み手を始めていますね。
「やはり実戦はまだ無理のようですねぇ」
「うむ。だが仕方あるまい。今度の警備は王妃様の視察の警護だったな。そろそろ人員を選ばねばならんな」
「今回は再編された第二騎士団の初陣でもありますから団長は外せませんよ」
「わかっている。苦渋の判断をせねばなるまい」
「わかってないじゃないですか。実行を伴ってください。さっさと苦渋の決断をしてください」
リカチャは手にしたボードにある遂行員の名前の一番上にあるフェリックスの文字を指さしてフフンと笑います。
稽古場を後にして廊下を歩いていると数人の女性とすれ違います。
リカチャを見ると思わずポッと頬を赤らめて恥ずかし気に俯きますが、隣にある大きな置物のようなフェリックスを見るなり壁に張り付くほど距離を取る女性達。
いつもの事なので気にしないフェリックスと、少し女性の態度にムっとするリカチャ。
「失礼な。あとで指導しておきます」
「ん?だが彼女たちは団員ではないだろう?」
「向こうで演習しているヤツラの奥方ですよ。全く、夫の上司だというのに!」
「だが、彼女たちは何をしにここにきているのだ?」
「あぁ、もうすぐ昼ですからね。弁当でも持ってきたんでしょう」
「弁当?食堂があるのにか?」
学園の騎士科でもですが、騎士になってそういう経験がないフェリックス。
食事と女性‥‥というと食堂のオバちゃんくらいでしょうか。
「食堂のメシも美味いのにな。今日の日替わりは鮭のバター炒めらしいぞ」
「団長、サケが好きなんですか?」
「あぁ、遠征で行った地区に鮭が遡上する川があってな。手づかみで獲った事もあるぞ。旨いぞ」
オパールが聞いたらめっちゃ喜びそうですな。獲り尽くすまで川に入れられそうです。
あぁ・・・光景が想像できて怖い。
「まぁ、彼女たちは食堂は利用させないでしょうね」
「何故だ?安いし旨いのに」
「牽制してんですよ。自分の男に色目を使う女を」
「色目で見る?相手がいるような男にすり寄っても時間の無駄だろうが」
「相手がいるからですよ。それだけ有望株という事です。彼女らには将来結婚した時にどれだけ楽と贅沢が出来るかってのが基準なんです。それに騎士は遠征で留守も多いし、若くして死ぬ確率も高い。有望株はもしもの時に出る見舞金の額もそれなりにありますからね。他の男でも寝取ってしまえば儲けモン。そういうのを牽制してるんですよ。折角捕まえた男を横取りされちゃたまんないってね」
フェリックスは遠い日を思い出します。
学園でも3本の指に入る令嬢から告白をされたものの、その場で返事をするより家を通した方がいいだろうと即答を控えた事が幸いして、ご令嬢の本心を聞いてしまったあの日。
令嬢に対してではなく、浮かれた自分がいた事が悔しくて樫の木に怒りをぶつけてしまったあの日。
木の幹が直径40センチほどの固い樫の木に拳を一発!そのまま倒れてしまった樫の木。
「枝に巣を作っていた小鳥には悪い事をしたな…八つ当たりはいかん。いかん」
小さく呟いて首をふるフェリックスを見てリカチャ。
「団長も奥様に弁当作ってもらったらどうです?ほら、そこの広場でみんな食ってますし」
「オパールと…昼飯…」
「そうですよ。奥様も温かい昼飯とか団長に食べて欲しいんじゃないっすかね」
思わず想像をしてしまう絶対的経験値が少ない男、フェリックス。
♡~♡ぽわ~ん♡~♡
「フェル♡いけませんわ。お残しはだめでございましょう?」
「何を言ってるんだ。トマトも全部食べだろう?」
「残っておりますわ…ほら…わたくしがまだ♡」
「あぁっ!こんな所でっ!また俺を試しているのか!」
「試していませんわ。愛を確かめているのです」
「それは期待に応えるようにしないといけないな…」
♡~♡ぽわ~ん♡~♡
「団長!どうしたんです??団長!!」
「ハッ!(ブルル)いかん、オパールが不足している」
「え?奥様どうしたんです?部屋が別になったとか?」
「いや、毎晩俺の下に…いや昨夜は上だったな」
「なっ、何を言ってんですか!!」
「あぁ、だがオパールと昼飯は食えない」
「なんでですか?団長なら団長室で食う事もできますよ」
「だからだ。夜まで抑えが利かなくなる。半勃ちになったじゃないか」
そう言いながら何食わぬ顔で歩いて行く上司。広い背中が遠ざかります。
持っていたボードを落としてしまうリカチャ。
そして自分の下半身へ視線を落とします。
「半勃ちでアレって‥‥反則だろ」
リカチャの呟きは、向こうから聞こえる騎士たちの演習の声とともに風に流されていきました。
ワーワー!!カンカンカンッ!!
「お前はここに意識をするんだ。相手が構えたからといって腰を引くな」
グッと腕の位置と腰を据えるようにフェリックスに指導される新人騎士。
はいと大きく返事をするとまた組み手を始めていますね。
「やはり実戦はまだ無理のようですねぇ」
「うむ。だが仕方あるまい。今度の警備は王妃様の視察の警護だったな。そろそろ人員を選ばねばならんな」
「今回は再編された第二騎士団の初陣でもありますから団長は外せませんよ」
「わかっている。苦渋の判断をせねばなるまい」
「わかってないじゃないですか。実行を伴ってください。さっさと苦渋の決断をしてください」
リカチャは手にしたボードにある遂行員の名前の一番上にあるフェリックスの文字を指さしてフフンと笑います。
稽古場を後にして廊下を歩いていると数人の女性とすれ違います。
リカチャを見ると思わずポッと頬を赤らめて恥ずかし気に俯きますが、隣にある大きな置物のようなフェリックスを見るなり壁に張り付くほど距離を取る女性達。
いつもの事なので気にしないフェリックスと、少し女性の態度にムっとするリカチャ。
「失礼な。あとで指導しておきます」
「ん?だが彼女たちは団員ではないだろう?」
「向こうで演習しているヤツラの奥方ですよ。全く、夫の上司だというのに!」
「だが、彼女たちは何をしにここにきているのだ?」
「あぁ、もうすぐ昼ですからね。弁当でも持ってきたんでしょう」
「弁当?食堂があるのにか?」
学園の騎士科でもですが、騎士になってそういう経験がないフェリックス。
食事と女性‥‥というと食堂のオバちゃんくらいでしょうか。
「食堂のメシも美味いのにな。今日の日替わりは鮭のバター炒めらしいぞ」
「団長、サケが好きなんですか?」
「あぁ、遠征で行った地区に鮭が遡上する川があってな。手づかみで獲った事もあるぞ。旨いぞ」
オパールが聞いたらめっちゃ喜びそうですな。獲り尽くすまで川に入れられそうです。
あぁ・・・光景が想像できて怖い。
「まぁ、彼女たちは食堂は利用させないでしょうね」
「何故だ?安いし旨いのに」
「牽制してんですよ。自分の男に色目を使う女を」
「色目で見る?相手がいるような男にすり寄っても時間の無駄だろうが」
「相手がいるからですよ。それだけ有望株という事です。彼女らには将来結婚した時にどれだけ楽と贅沢が出来るかってのが基準なんです。それに騎士は遠征で留守も多いし、若くして死ぬ確率も高い。有望株はもしもの時に出る見舞金の額もそれなりにありますからね。他の男でも寝取ってしまえば儲けモン。そういうのを牽制してるんですよ。折角捕まえた男を横取りされちゃたまんないってね」
フェリックスは遠い日を思い出します。
学園でも3本の指に入る令嬢から告白をされたものの、その場で返事をするより家を通した方がいいだろうと即答を控えた事が幸いして、ご令嬢の本心を聞いてしまったあの日。
令嬢に対してではなく、浮かれた自分がいた事が悔しくて樫の木に怒りをぶつけてしまったあの日。
木の幹が直径40センチほどの固い樫の木に拳を一発!そのまま倒れてしまった樫の木。
「枝に巣を作っていた小鳥には悪い事をしたな…八つ当たりはいかん。いかん」
小さく呟いて首をふるフェリックスを見てリカチャ。
「団長も奥様に弁当作ってもらったらどうです?ほら、そこの広場でみんな食ってますし」
「オパールと…昼飯…」
「そうですよ。奥様も温かい昼飯とか団長に食べて欲しいんじゃないっすかね」
思わず想像をしてしまう絶対的経験値が少ない男、フェリックス。
♡~♡ぽわ~ん♡~♡
「フェル♡いけませんわ。お残しはだめでございましょう?」
「何を言ってるんだ。トマトも全部食べだろう?」
「残っておりますわ…ほら…わたくしがまだ♡」
「あぁっ!こんな所でっ!また俺を試しているのか!」
「試していませんわ。愛を確かめているのです」
「それは期待に応えるようにしないといけないな…」
♡~♡ぽわ~ん♡~♡
「団長!どうしたんです??団長!!」
「ハッ!(ブルル)いかん、オパールが不足している」
「え?奥様どうしたんです?部屋が別になったとか?」
「いや、毎晩俺の下に…いや昨夜は上だったな」
「なっ、何を言ってんですか!!」
「あぁ、だがオパールと昼飯は食えない」
「なんでですか?団長なら団長室で食う事もできますよ」
「だからだ。夜まで抑えが利かなくなる。半勃ちになったじゃないか」
そう言いながら何食わぬ顔で歩いて行く上司。広い背中が遠ざかります。
持っていたボードを落としてしまうリカチャ。
そして自分の下半身へ視線を落とします。
「半勃ちでアレって‥‥反則だろ」
リカチャの呟きは、向こうから聞こえる騎士たちの演習の声とともに風に流されていきました。
86
お気に入りに追加
2,790
あなたにおすすめの小説
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。
櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。
ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。
気付けば豪華な広間。
着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。
どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。
え?この状況って、シュール過ぎない?
戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。
現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。
そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!?
実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。
完結しました。
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜
凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】
公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。
だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。
ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。
嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。
──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。
王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。
カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。
(記憶を取り戻したい)
(どうかこのままで……)
だが、それも長くは続かず──。
【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】
※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。
※中編版、短編版はpixivに移動させています。
※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。
※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
愛を知らない「頭巾被り」の令嬢は最強の騎士、「氷の辺境伯」に溺愛される
守次 奏
恋愛
「わたしは、このお方に出会えて、初めてこの世に産まれることができた」
貴族の間では忌み子の象徴である赤銅色の髪を持って生まれてきた少女、リリアーヌは常に家族から、妹であるマリアンヌからすらも蔑まれ、その髪を隠すように頭巾を被って生きてきた。
そんなリリアーヌは十五歳を迎えた折に、辺境領を収める「氷の辺境伯」「血まみれ辺境伯」の二つ名で呼ばれる、スターク・フォン・ピースレイヤーの元に嫁がされてしまう。
厄介払いのような結婚だったが、それは幸せという言葉を知らない、「頭巾被り」のリリアーヌの運命を変える、そして世界の運命をも揺るがしていく出会いの始まりに過ぎなかった。
これは、一人の少女が生まれた意味を探すために駆け抜けた日々の記録であり、とある幸せな夫婦の物語である。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」様にも短編という形で掲載しています。
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる