旦那様に離縁をつきつけたら

cyaru

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比べてしまう

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屋敷に籠ってもう数日。完全に外部との接触を遮断しているため
伯爵家には情報が入ってこない。

そんな中でも当主である伯爵は家宝の剣を磨く。
伯爵夫人も王妃から下賜された宝飾品の手入れをする。
シャロンは何もする事がないまま、リーナたちメイドに
あれやこれやと磨かれている。

「お嬢様、今朝方の書簡は神殿からだそうですよ」
「書簡?」
「えぇ、旦那様が読まれてましたが、神殿に行く日が延期になったそうで
提出する書類の日を書き換えなければとぼやいておりましたよ」
「えっ?本当に延期になったの?」

数日前、ドレーユ侯爵から言われたように屋敷に籠っているが
まさか本当に神殿の調停の日が延期になるなど思ってもみなかったシャロン。

「あれ?お嬢様…本当にって、知っておられたんですか?」
「え、いえ、そうじゃなくて…ほら感染症が流行ると
出歩けないから色々と延期になるって話だけは聞いた事があったから」

慌ててシャロンは誤魔化すように言葉を付け足す。

しかし、それよりもシャロンには心配な事があった。
自分が見舞う事でシリウスの妖精になる速度を遅くすることが出来る。
完全にあの白いモヤに取り込まれてしまったら
それはシリウスの本当の死を意味するのだと思うと寒気が止まらない。

それがもう数日、会う事もままならないのだ。

ーーもしかしてもう・・・ーー

そう考えてしまうのも無理がない。
リーナ達の手前、シリウスの事を口にするのは憚られる。

日が薬だとよく言うけれど、あんなに腹が立ったのに
わたくしは自分勝手なのかも知れない。

リーナ達による指先のマッサージとエステが終わると
今度は全身をマッサージされる。
もう何度目かのマッサージだが、メイドたちの手が背中を撫でても

ーーシリウスに撫でられる時の気持ちよさとは違うのねーー

不謹慎だと判っていても、色々な所で誰かとシリウスを
無意識に比べてしまう。
白いモヤがシリウスを取り込んでしまえば
屍になったシリウスとなると侯爵は言った。

ーーでも体は下の方からのにーー

妖精だから取り込んでしまわれても
後から具現化するのだろうかとシャロンは考えた。
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