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動き出す断罪劇③-②
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騎士に逃げられたと知ると、王弟は1人の男を思い出す。
学園でも異質な存在だとされていた従兄弟のドレーユ侯爵である。
王弟は兄である国王と継承を争っていた。
だが、その頃、西の国境付近で希少な資源である石炭が発見された。
王弟は王座と石炭を天秤にかけて悩んだ。
そこに当時兄の側近でもあり宰相補佐(現在の宰相)が
王弟に欲望の種を植えた。
【今は辺境の地の石炭を選び、時が来るまで資産を貯め込み
玉座を頂けばよいのでは?
ずっと健康で過ごした王などいないのですから】
同時に2つは手に入れられない。
王弟はその案に乗った。人生を賭けたとも言って良いだろう。
即座父である王に願い出る
【辺境の地を頂けるのであれば、生涯に渡り兄を支えましょう】
だが武術の心得が足らないと感じた父は息子に懸念を抱き
腕の確かな辺境伯を置き、当時第一騎士団で頭角を現していた
エイト騎士(現在のエイト司令)を配置したのは王弟の誤算だったが
採っても採っても尽きることなく掘れる石炭は
王弟が不正をせずとも、一生使っても使い切れない私財を生み出した。
辺境の地を任されるというのは、何があっても死守すると同義である。
王弟に子が生まれると世継ぎ問題が勃発してしまう。
何より王弟は男色家であったため、形ばかりの妻を
落ちぶれていた公爵家から娶った。
有り余る私財があるため、妻は実家の公爵家の立て直しと
将来を考え、自ら子を産めぬよう薬を飲んだ。
結婚後3年で妻を離宮に住まわせ、
妻は今に至るまでお気に入りの騎士を侍らせていた。
40歳を超えると、次第に王座に対しての欲望が薄れた。
そんな時である。宰相がカリナの妊娠を王弟に告げた。
薄まっていた王座への欲望がまたジワリと湧き出す。
王太子(第一王子)も第二王子もカリナと関係を持っている。
それをネタとして、カリナを始末してやったという恩を売る。
上手くいけば、どちらが王になったとしても
妻の実家に頭が上がらない甥たちである。傀儡にするに容易い。
幸いにも末端の騎士が、金に目が眩み引き入れやすかった。
ーーこいつに始末させようーー
カリナの処分を騎士にやらせれば、痴情の縺れで肩が付く。
どちらの王子にでも恩だけが売れる。
特に第一王子は王太子となり、その妻である王太子妃は妊娠中である。
カリナを処分したとあれば、公に出来ない事情で
王太子が即位しても実権は握れるはず。ほくそ笑んだ。
しかし、騎士がカリナを始末しない。
どうやら宰相が処分を渋っていると判明した。
宰相の言い分は、私生児とはいえ、外に子を作ったという事実で
王子を操ってみてはどうかという物だった。
そうこうしているうちに、第二王子妃の懐妊も発表になる。
宰相の言うようにしても良いが、妃から生まれる子が
男児であれば、その時点で継承権が発生する。
私生児などもみ消されてしまう可能性が高い。
王弟は王太子妃の出産の報を聞いて小躍りした。
ーー生まれたのは女児ーー
そうだ。男児か女児かの確率は五分なのだと考えた。
そして、カリナは男児を産んだ。
これには王弟は身震いをした。
上手くいけば、この子(ソティス)の後見人となり
この子(ソティス)を王座に据えて実権を握れるではないか!
王弟は笑いが止まらなかった。
第二王子妃が男児を出産したとの一報には落胆したが、
出産に立ち会った女中の話によると、
濃すぎる血が災いして、生後間もなく天に召されたという事だ。
生きた日数は改ざんされたが、王弟はまだ自分にツキがあると確信した。
だが…思わぬ伏兵が潜んでいた。
第三王子である。第三王子は早々に継承権を放棄し
領地に引きこもったため、存在を失念していた。大きな誤算である。
しかも生まれたのは男児で、すくすく成長しているという。
王弟に残された手段はソティスを処分し、
王太子をそのネタで揺することしかなかった。
カリナを処分と決めた時、振り出しに戻ってしまった。
時間がかかったがやるしかないと、駒である騎士に影をつける。
騎士がカリナとソティスを処分した後、
騎士を影に処分させる。簡単だった。そのはずだった。
しかし、3人は消えたままである。遺体がないのだ。
生きているとしても、一向に現れない。手詰まりだった。
そんな状態で公にすれば王座を目論んだクーデターだと
処分されてしまうのはこちらだと思うと首筋が寒くなる。
そして‥‥今である。
攻めてきた西国はドレーユ侯爵の姉が嫁ぎ皇后となっている。
そして都合よく使い捨てにしたシリウスはシャロンの夫である。
そのシャロンの姉はドレーユ侯爵の元婚約者であり、
シリウスとの離縁を神殿に申し出ると同時にドレーユ侯爵は
伯爵家と懇意にしている。
下流域にそのうち流れ着くだろうとあしらったが
シリウスの遺体はまだ見つかっていない。
同時にソティスの遺体も見つかっていないのだ。
ーー時間がない、どうすればいいーー
王弟はハァハァと口元から涎を垂れ流しながら息をする。
西国が砦を落とした。
おそらくドレーユ侯爵絡みは間違いないだろう。
だが、どうやってドレーユ侯爵を叩く??
もしかすると、シリウスはシャロン宛に何か自分との繋がりを示唆する
物を渡しているのかも知れない。
ドレーユ侯爵はシャロンが出戻った時から伯爵家と懇意にしている。
情報があったとすれば、流れてないと考える方が不自然である。
ーードレーユ侯爵はソティスを利用して
王座を狙った事を知っているーーー
ドレーユ侯爵がいる限り、ソティスの件は絶対に口外できない。
だが、砦が落とされたという責任は逃れられない。
早馬の騎士を拘束できていれば、宰相と付き合いがある東の国に
私財を持って亡命する事はできた。
だが、騎士を逃してしまった。騎士は兄である国王の元に向かっている。
今更逃げた所で、国境付近の関所で捕縛されるだろう。
ーー完全に詰んだーー
王弟は、その場で失禁し、座り込んだ。
学園でも異質な存在だとされていた従兄弟のドレーユ侯爵である。
王弟は兄である国王と継承を争っていた。
だが、その頃、西の国境付近で希少な資源である石炭が発見された。
王弟は王座と石炭を天秤にかけて悩んだ。
そこに当時兄の側近でもあり宰相補佐(現在の宰相)が
王弟に欲望の種を植えた。
【今は辺境の地の石炭を選び、時が来るまで資産を貯め込み
玉座を頂けばよいのでは?
ずっと健康で過ごした王などいないのですから】
同時に2つは手に入れられない。
王弟はその案に乗った。人生を賭けたとも言って良いだろう。
即座父である王に願い出る
【辺境の地を頂けるのであれば、生涯に渡り兄を支えましょう】
だが武術の心得が足らないと感じた父は息子に懸念を抱き
腕の確かな辺境伯を置き、当時第一騎士団で頭角を現していた
エイト騎士(現在のエイト司令)を配置したのは王弟の誤算だったが
採っても採っても尽きることなく掘れる石炭は
王弟が不正をせずとも、一生使っても使い切れない私財を生み出した。
辺境の地を任されるというのは、何があっても死守すると同義である。
王弟に子が生まれると世継ぎ問題が勃発してしまう。
何より王弟は男色家であったため、形ばかりの妻を
落ちぶれていた公爵家から娶った。
有り余る私財があるため、妻は実家の公爵家の立て直しと
将来を考え、自ら子を産めぬよう薬を飲んだ。
結婚後3年で妻を離宮に住まわせ、
妻は今に至るまでお気に入りの騎士を侍らせていた。
40歳を超えると、次第に王座に対しての欲望が薄れた。
そんな時である。宰相がカリナの妊娠を王弟に告げた。
薄まっていた王座への欲望がまたジワリと湧き出す。
王太子(第一王子)も第二王子もカリナと関係を持っている。
それをネタとして、カリナを始末してやったという恩を売る。
上手くいけば、どちらが王になったとしても
妻の実家に頭が上がらない甥たちである。傀儡にするに容易い。
幸いにも末端の騎士が、金に目が眩み引き入れやすかった。
ーーこいつに始末させようーー
カリナの処分を騎士にやらせれば、痴情の縺れで肩が付く。
どちらの王子にでも恩だけが売れる。
特に第一王子は王太子となり、その妻である王太子妃は妊娠中である。
カリナを処分したとあれば、公に出来ない事情で
王太子が即位しても実権は握れるはず。ほくそ笑んだ。
しかし、騎士がカリナを始末しない。
どうやら宰相が処分を渋っていると判明した。
宰相の言い分は、私生児とはいえ、外に子を作ったという事実で
王子を操ってみてはどうかという物だった。
そうこうしているうちに、第二王子妃の懐妊も発表になる。
宰相の言うようにしても良いが、妃から生まれる子が
男児であれば、その時点で継承権が発生する。
私生児などもみ消されてしまう可能性が高い。
王弟は王太子妃の出産の報を聞いて小躍りした。
ーー生まれたのは女児ーー
そうだ。男児か女児かの確率は五分なのだと考えた。
そして、カリナは男児を産んだ。
これには王弟は身震いをした。
上手くいけば、この子(ソティス)の後見人となり
この子(ソティス)を王座に据えて実権を握れるではないか!
王弟は笑いが止まらなかった。
第二王子妃が男児を出産したとの一報には落胆したが、
出産に立ち会った女中の話によると、
濃すぎる血が災いして、生後間もなく天に召されたという事だ。
生きた日数は改ざんされたが、王弟はまだ自分にツキがあると確信した。
だが…思わぬ伏兵が潜んでいた。
第三王子である。第三王子は早々に継承権を放棄し
領地に引きこもったため、存在を失念していた。大きな誤算である。
しかも生まれたのは男児で、すくすく成長しているという。
王弟に残された手段はソティスを処分し、
王太子をそのネタで揺することしかなかった。
カリナを処分と決めた時、振り出しに戻ってしまった。
時間がかかったがやるしかないと、駒である騎士に影をつける。
騎士がカリナとソティスを処分した後、
騎士を影に処分させる。簡単だった。そのはずだった。
しかし、3人は消えたままである。遺体がないのだ。
生きているとしても、一向に現れない。手詰まりだった。
そんな状態で公にすれば王座を目論んだクーデターだと
処分されてしまうのはこちらだと思うと首筋が寒くなる。
そして‥‥今である。
攻めてきた西国はドレーユ侯爵の姉が嫁ぎ皇后となっている。
そして都合よく使い捨てにしたシリウスはシャロンの夫である。
そのシャロンの姉はドレーユ侯爵の元婚約者であり、
シリウスとの離縁を神殿に申し出ると同時にドレーユ侯爵は
伯爵家と懇意にしている。
下流域にそのうち流れ着くだろうとあしらったが
シリウスの遺体はまだ見つかっていない。
同時にソティスの遺体も見つかっていないのだ。
ーー時間がない、どうすればいいーー
王弟はハァハァと口元から涎を垂れ流しながら息をする。
西国が砦を落とした。
おそらくドレーユ侯爵絡みは間違いないだろう。
だが、どうやってドレーユ侯爵を叩く??
もしかすると、シリウスはシャロン宛に何か自分との繋がりを示唆する
物を渡しているのかも知れない。
ドレーユ侯爵はシャロンが出戻った時から伯爵家と懇意にしている。
情報があったとすれば、流れてないと考える方が不自然である。
ーードレーユ侯爵はソティスを利用して
王座を狙った事を知っているーーー
ドレーユ侯爵がいる限り、ソティスの件は絶対に口外できない。
だが、砦が落とされたという責任は逃れられない。
早馬の騎士を拘束できていれば、宰相と付き合いがある東の国に
私財を持って亡命する事はできた。
だが、騎士を逃してしまった。騎士は兄である国王の元に向かっている。
今更逃げた所で、国境付近の関所で捕縛されるだろう。
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